神本を求めて

小説を読みまくって面白い本を見つけたら紹介するブログ

最強に面白い人生最高のおすすめ小説100選

神本を求めて

 
年間200~300冊以上は読んでいるため、100冊に絞ることは困難を極める。
そこで以下の観点で作品を選別している。
  1. ジャンルはSF/ファンタジー/ホラー寄りの作品を優先
  2. ミステリ/オカルト/サイコ/エロ/ユーモア要素のある作品を優先
  3. 新しい作品よりも古い作品を優先(読み継がれる作品には理由がある)
  4. 人気過ぎる作家や作品は除外(だってみんなおすすめしてるし....)

趣味が近そうな方の参考になれば幸いである。

 

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神本を求めて本を積みまくる日々

 

1. 星を継ぐもの / J.P.ホーガン(1977年)

 

月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見された……。ハードSFの新星が一世を風靡した出世作

 

月で5万年前の真紅の宇宙服をまとった死体が見つかった。

こんな魅力的な"謎"がある時点で本作が傑作であることは確定している。

しかも月の人の謎を解明していく最中、木星の衛生ガニメデで2500年前の宇宙船が発見されるというさらなるミステリー。

 圧倒的な"謎"に対して学者たちが科学的に解明していく流れはまさしく本格ミステリであり、論理的な帰結として辿り着く真相は驚愕の一言。

 本作は三部作だが一作目だけでも一応の完結はしているので、古い作品だからと身構えず読んでみてほしい。最高のSFとミステリーが待っている。

 

星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)

 

 

2. ガニメデの優しい巨人 / J.P.ホーガン(1978年)

 

木星の衛星ガニメデで発見された異星の宇宙船は二千五百万年前のものと推定された。ハント、ダンチェッカーら調査隊の科学者たちは、初めて見る異星人の進歩した技術の所産に驚きを禁じ得ない。そのとき、宇宙の一角からガニメデ目指して接近する物体があった。遥か昔に飛びたったガニメアンの宇宙船が故郷に戻って来たのだ。

 

『星を継ぐもの』で解明されなかった木星の衛星ガニメデで発見された2500万年前の宇宙船を調査していると、なんとその宇宙船を造った異星人に遭遇するというファーストコンタクト作品である。

 異星人ガニメアンの底抜けの優しさの理由に始まり、ホモサピエンスとガニメアンの関係、2500万年という空白の時間の謎を、地球の学者コンビ×異星人の圧倒的な科学力と人工知能ゾラックにより、またしても論理的に解明していく流れは前作同様に知的好奇心を刺激されまくる。

全編に渡りと~っても平和なのが愛おしいSFの大傑作。

 

ガニメデの優しい巨人 (創元SF文庫)
 

 

3. 巨人たちの星 / J.P.ホーガン(1981年)

 

冥王星の彼方から〈巨人たちの星〉のガニメアンの通信が再び届きはじめた。地球を知っているガニメアンとは接触していないにもかかわらず、相手は地球人の言葉のみならず、データ伝送コードを知りつくしている。ということは、この地球という惑星そのものが、どこかから監視されているに違いない……それも、もうかなり以前から……!! 5万年前月面で死んだ男たちの謎、月が地球の衛星になった謎、ミネルヴァを離れたガニメアンたちの謎など、からまったすべての謎の糸玉が、みごとに解きほぐされる。前2作で提示された謎のすべてが見事に解き明かされる。

 

 前作とは打って変わって不穏な空気が漂う三部作の最終作である。

宇宙規模の陰謀と戦争という圧倒的な規模の物語の中で、一作目から張り巡らされていたありとあらゆる謎が解明され、迎える大団円は衝撃という言葉すら生温い超絶なものである。

 歴史に名を残すほどの名作『星を継ぐもの』は三部作すべてを読み終えてこそ真価を発揮する。究極SF×本格ミステリの頂点を体感されぃッ!!

 

巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3))

巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3))

 

 

4. 甲賀忍法帖 / 山田風太郎(1959年)

 

家康の秘命をうけ、徳川三代将軍の座をかけて争う、甲賀・伊賀の精鋭忍者各十名。官能の極致で男を殺す忍者あり、美肉で男をからめとる吸血くの一あり。四百年の禁制を解き放たれた甲賀・伊賀の忍者が死を賭し、秘術の限りを尽し、戦慄の死闘をくり展げる艶なる地獄相。恐るべし風太郎忍法、空前絶後の面白さ。

 

 能力バトル作品の始祖とされる作品だが、この時代に書かれたとは思えないほど練りに練られた能力や戦闘になっている。
甲賀卍谷衆VS伊賀鍔隠れ衆の10人対10人が出し惜しみなしの忍術によって潰し合う戦いが面白くないはずがない!

 能力によって相性があったり、忍者であるため正々堂々ではなく奇襲、闇討ち、だまし討ちに多対一といった卑怯な戦術までバリエーション豊富なことが面白さに拍車をかけている。

 またありがたいことに(?)、くノ一たちはやたら妖艶なキャラが多く、使用する忍術が忍術だけに漂うエロスも尋常ではない。

 純粋に面白い小説が読みたいなら『甲賀忍法帖』を読めば間違いないだろう。

 

〇個別紹介記事

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甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1) (講談社文庫)

甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1) (講談社文庫)

 

 

5. クリムゾンの迷宮 / 貴志祐介(1999年)

 

藤木芳彦は、この世のものとは思えない異様な光景のなかで目覚めた。視界一面を、深紅色に濡れ光る奇岩の連なりが覆っている。ここはどこなんだ? 傍らに置かれた携帯用ゲーム機が、メッセージを映し出す。「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された……」それは、血で血を洗う凄惨なゼロサム・ゲームの始まりだった。『黒い家』で圧倒的な評価を得た著者が、綿密な取材と斬新な着想で、日本ホラー界の新たな地平を切り拓く、傑作長編。

 

 「面白い小説を教えて」と漠然と聞かれた時に紹介する本の筆頭である。

圧倒的なエンタメ性を持つ至高のデスゲーム作品であり、まったく無駄がなく最初から最後までめちゃくちゃ面白いのがポイントだ。

貴志作品に共通する高いリーダビリティと、ちょうど良いページ数により普段小説を読まない人にも自信をもっておすすめできる。

〇個別紹介記事

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クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

  • 作者:貴志 祐介
  • 発売日: 1999/04/09
  • メディア: 文庫
 

 

6. 夢魔の標的 / 星新一(1977年)

 

腹話術師の私と、息ぴったりで幼児番組に出演し活躍していた、かわいらしい人形のクルコちゃん。ある日、クルコちゃんが生きた人間のように勝手にしゃべり出した。私の言うことを聞かないばかりか、ついに暴走を始めてしまい――。
これは夢なのか現実なのか、妄想なのか。それとも異次元からの知られざる指令なのか。

 

ミステリー要素のあるSF/ファンタジー/ホラーが好みな私にとって、これ以上ないほどそういった要素をぶち込んだ作品で、星新一の数少ない長編の一作である。

腹話術人形のクルコちゃんがある日突然話し出すというサイコホラーな謎が、世界の存亡にまでおよぶというスケールの大きいミステリーとなっている。

ショートショートを繋げて長編にしたような読みやすさと切れ味、不気味で怖可愛いクルコちゃんの魅力など読みどころ満載だ。

 

夢魔の標的 (新潮文庫)

夢魔の標的 (新潮文庫)

  • 作者:星 新一
  • 発売日: 1977/12/22
  • メディア: 文庫
 

 

7. 暗いところで待ち合わせ / 乙一(2002年)

 

視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。職場の人間関係に悩むアキヒロ。駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。奇妙な同棲生活が始まった――。

 

これを読んで批判する人はいないのではないかと思うくらい神がかりの傑作である。

こんな作品が書けるのは若かりし頃の乙一くらいのものだろう。天才が全盛期に発表したセンスの塊である。
殺人犯と思われる男が盲目の女の家にこっそり潜伏するという変態的なシチュエーションから大きな感動が生み出される。

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

  • 作者:乙一
  • 発売日: 2002/04/01
  • メディア: 文庫
 

 

8. 旅のラゴス / 筒井康隆(1986年)

 

北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か? 異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。

 

 この世には人生を変える本というものが存在するらしいが、本作こそまさにそんな1冊なのだと思う。

人生を台無しにする可能性を秘めた諸刃の剣であり、私はこの本を読んで家族も放ったらかしにしてひたすら読書をするようになってしまった。

男であれば必読の作品である。(もちろん女性が読んでもいいと思うよ)

旅のラゴス (新潮文庫)

旅のラゴス (新潮文庫)

 

 

9. 夏への扉 / ロバート.A.ハインライン(1956年)

 

ぼくの飼い猫のピートは、冬になるときまって「夏への扉」を探しはじめる。家にあるドアのどれかひとつが、夏に通じていると固く信じているのだ。そして1970年12月、ぼくもまた「夏への扉」を探していた。親友と恋人に裏切られ、技術者の命である発明までだましとられてしまったからだ。さらに、冷凍睡眠で30年後の2000年へと送りこまれたぼくは、失ったものを取り戻すことができるのか──新版でおくる、永遠の名作。

 

日本で最も愛されているSF作品で、時間旅行を扱った作品としてはとても読みやすく、キャラも物語も魅力的な古典的名作である。

2020年の早川書房の新版は元々読みやすかった訳が現代的にアップデートされていてさらに読みやすさに磨きがかかっているので超おすすめ。

何もかも失った男が冷凍睡眠、時間遡行することによって取り戻していく展開はとても引き込まれる。

SFに興味があるものの、何から手を付けてよいのか分からない方にはSF入門用としてもベストだろう。

 

夏への扉 [新版] (ハヤカワ文庫SF)
 

 

10. コンビニ人間 / 村田沙耶香(2016年)

 

「普通」とは何か?
現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作
36歳未婚、彼氏なし。コンビニのバイト歴18年目の古倉恵子。
日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、
「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる――。
「いらっしゃいませー!!」
お客様がたてる音に負けじと、今日も声を張り上げる。
ある日、婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて、
そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい、と突きつけられるが……。

 

 私は失礼ながら芥川賞=偉い人たちにつまらない本であると認定された不名誉な賞だと考えていたのだが、本作を読んだことでそれは誤りだと気付かされた。

クレイジー沙耶香と称されるキチ〇イ変態作家による、変態成分が控えめでありながらもキレまくりの大傑作。これは全人類必読の書だ。

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

 

 

11. 六番目の小夜子 / 恩田陸(1992年)

 

 津村沙世子――とある地方の高校にやってきた、美しく謎めいた転校生。高校には十数年間にわたり、奇妙なゲームが受け継がれていた。三年に一度、サヨコと呼ばれる生徒が、見えざる手によって選ばれるのだ。そして今年は、「六番目のサヨコ」が誕生する年だった。学園生活、友情、恋愛。やがては失われる青春の輝きを美しい水晶に封じ込め、漆黒の恐怖で包みこんだ、伝説のデビュー作。

 

 恩田陸のデビュー作にしてすべてが詰まった一冊。

様々なジャンルの作品を上梓する多才な恩田陸だが、本作はホラーやファンタジー、ミステリーにとどまらず、多ジャンルにまたがった作品となっている。
作中の文化祭の演劇のシーンは特に素晴らしく、恩田女史の高い筆力に感銘を受けると同時に、完全に小説の世界に吸い込まれてしまった。
真のホラーとはこんな作品のことをいうのだろう。

六番目の小夜子 (新潮文庫)

六番目の小夜子 (新潮文庫)

  • 作者:陸, 恩田
  • 発売日: 2001/01/30
  • メディア: 文庫
 

 

12. 鋼鉄都市 / アイザック・アシモフ(1953年)

 

警視総監に呼びだされた刑事ベイリが知らされたのは、宇宙人惨殺という前代未聞の事件だった。地球人の子孫でありながら今や支配者となった宇宙人に対する反感、人間から職を奪ったロボットへの憎悪が渦まく鋼鉄都市へ、ベイリは乗り出すが……〈ロボット工学の三原則〉の盲点に挑んだSFミステリの金字塔!

 

SF✕本格ミステリの超傑作で、SFとしても本格推理小説としても楽しめるだけでなく、ストーリー良し、キャラ良し、世界観良しとまったくと言っていいほど弱点の無い圧倒的な完成度を誇る。

普段はSFを読まないような人であっても、特殊設定ミステリとして一度は読んでみてほしい作品だ。

 

鋼鉄都市

鋼鉄都市

 

 

13. 精霊の守り人 / 上橋菜穂子(1996年)

 

精霊の卵を宿す皇子チャグムを託され、命をかけて皇子を守る女用心棒バルサの活躍を描く物語。著者は2014年国際アンデルセン賞作家賞受賞。

老練な女用心棒バルサは、新ヨゴ皇国の二ノ妃から皇子チャグムを託される。精霊の卵を宿した息子を疎み、父帝が差し向けてくる刺客や、異界の魔物から幼いチャグムを守るため、バルサは身体を張って戦い続ける。建国神話の秘密、先住民の伝承など文化人類学者らしい緻密な世界構築が評判を呼び、数多くの受賞歴を誇るロングセラーがついに文庫化。痛快で新しい冒険シリーズが今始まる。

 

 日本を代表するファンタジー小説守り人シリーズ』はシリーズのどの作品も圧倒的に面白いため、本当は全作品を本記事に挙げたいところだが、1作目の『精霊の守り人』のみに留めておく。(詳細は下記URLのシリーズ紹介記事をご参照ください。)

 完成された世界観、物語のスピーディな展開や臨場感のある戦闘シーン、魅力的なキャラクター、そしてハイレベルなリーダビリティ。エンタメ作品として完璧である。

 このシリーズのすごいところは、1作目が最高傑作かと思いきや先に進めば進むほどさらに面白くなっていくことにある。

 

〇シリーズ紹介記事

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精霊の守り人 (新潮文庫)

精霊の守り人 (新潮文庫)

 

 

14. 今夜、すべてのバーで / 中島らも(1991年)

 

「この調子で飲み続けたら、死にますよ、あなた」。それでも酒を断てず、緊急入院するはめになる小島容。ユニークな患者たち、シラフで現実と対峙する憂鬱、親友の妹が繰り出す激励の往復パンチ。実体験をベースに生と死のはざまで揺らぐ人々を描いた、すべての酒飲みに捧ぐアル中小説。

 

酒とドラッグにおぼれた天才作家・中島らもによる、ほぼ実話に近いノンフィクション風な私小説である。

私はこの著者はただの変な人だと思っていたのだが、作品を読めば読むほど圧倒的な知性とセンスを感じて驚ろかされるのだが、本作はアルコールについて相当な研究がなされたうえで描かれており、センス×蘊蓄×実体験という要素が掛け合わされたことで素晴らしい作品になっている。

酒好きは飲みながら読もう。そしてやめよう。

 

今夜、すベてのバーで 〈新装版〉 (講談社文庫)

今夜、すベてのバーで 〈新装版〉 (講談社文庫)

  • 作者:中島 らも
  • 発売日: 2020/12/15
  • メディア: 文庫
 

 

15. 魍魎の匣 / 京極夏彦(1995年)

 

箱を祀る奇妙な霊能者。箱詰めにされた少女達の四肢。そして巨大な箱型の建物――箱を巡る虚妄が美少女転落事件とバラバラ殺人を結ぶ。探偵・榎木津、文士・関口、刑事・木場らがみな事件に関わり京極堂の元へ。果たして憑物(つきもの)は落とせるのか!?日本推理作家協会賞に輝いた超絶ミステリ、妖怪シリーズ第2弾。

 

 アホみたいに分厚い本が並ぶ京極夏彦先生の百鬼夜行シリーズの中でも、1,2位を争う尋常ではない傑作であり、SFや怪奇幻想要素を持った超絶ミステリーである。

冒頭の美しい文章は芸術的であり、文章を読んで心が震えた数少ない作品である。

これを読んで京極先生の天才っ振りに呆れてしまったものだ。

訳が分からないほど謎まみれなのに最後は見事にすべての伏線を回収。
腰を抜かすほど猟奇的なので注意。

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

  • 作者:京極 夏彦
  • 発売日: 1999/09/08
  • メディア: 文庫
 

 

16. 魔性の子 / 小野不由美(1991年)

 

どこにも、僕のいる場所はない──教育実習のため母校に戻った広瀬は、高里という生徒が気に掛かる。周囲に馴染まぬ姿が過ぎし日の自分に重なった。彼を虐(いじ)めた者が不慮の事故に遭うため、「高里は祟(たた)る」と恐れられていたが、彼を取り巻く謎は、“神隠し”を体験したことに関わっているのか。広瀬が庇おうとするなか、更なる惨劇が……。心に潜む暗部が繙(ひもと)かれる、「十二国記」戦慄の序章。

 

 国内ファンタジーの最高峰『十二国記』の1作目ではあるが、シリーズの番外編に位置する作品となっていてこの1冊で話が完結している。

したがって十二国記には興味が無くても面白いホラー小説に興味があるような方にぜひおすすめしたい。数々の傑作ホラーを生み出している小野不由美女史の作品の中でも、エンタメ要素が高めで素晴らしい内容となっている。

魔性の子 十二国記 0 (新潮文庫)

魔性の子 十二国記 0 (新潮文庫)

 

 

17. 月の影 影の海 / 小野不由美(1992年)

 

「お捜し申し上げました」──女子高生の陽子の許に、ケイキと名乗る男が現れ、跪く。そして海を潜り抜け、地図にない異界へと連れ去った。男とはぐれ一人彷徨(さまよ)う陽子は、出会う者に裏切られ、異形(いぎょう)の獣には襲われる。なぜ異邦(ここ)へ来たのか、戦わねばならないのか。怒濤(どとう)のごとく押し寄せる苦難を前に、故国へ帰還を誓う少女の「生」への執着が迸(ほとばし)る。

 

 事実上の『十二国記』1作目であり、現在アニメに溢れかえっている異世界ものの頂点に君臨する完成度である。

 女子高生が妖しいイケメンに連れられて血も涙もない異世界に放り込まれて、まさに地獄のような旅を余儀なくされる様は、人によっては勇気をもらえることだろう。

 練りに練られた設定は話が進んでも破綻することがないので、『魔性の子』や本作を書く前に一体どれだけ本気で妄想したんだろう....と若き日の小野不由美女史に聞いてみたいものである。

 

十二国記の紹介記事

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月の影  影の海 (上) 十二国記 1 (新潮文庫)

月の影 影の海 (上) 十二国記 1 (新潮文庫)

 

 

18. ビアンカ・オーバースタディ / 筒井康隆(2012年)

 

あらゆる男子生徒から熱視線を浴びまくる超絶美少女・ビアンカ北町は、生物研究部員としての生殖の研究が大好き。ウニを使ったいつもの実験に飽き飽きしていたところで、ついに閃いてしまう。毎日凄まじい愛の波動を送ってくる可愛い後輩・塩崎哲也に、研究に協力してもらおう!そんな中、部活の先輩・千原信忠が実は未来人だったと判明して!?まさかまさかの美少女ライトノベル、まだ見ぬ筒井康隆の新世界、開幕!

 

SF界の巨匠として後世に多くの影響を与えたであろう筒井御大が『涼宮ハルヒ』に触発されて書いたという伝説のラノベである.....そして史上最強の精液小説でもある。

ページを開くや否やスペルマラッシュというエロ過ぎる展開に、執筆当時すでに70歳を超えられていたお爺ちゃんの頭が狂ったかと思ったほどである。

とりあえず全男必読の書物である。

 

 〇個別紹介記事

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ビアンカ・オーバースタディ (角川文庫)

ビアンカ・オーバースタディ (角川文庫)

  • 作者:筒井 康隆
  • 発売日: 2016/05/25
  • メディア: 文庫
 

 

19. クラインの壺 / 岡嶋二人(1989年)

 

現実も真実も崩れ去る最後で最恐の大傑作。200万円で、ゲームブックの原作を謎の企業「イプシロン・プロジェクト」に売却した上杉彰彦。その原作をもとにしたヴァーチャルリアリティ・システム『クライン2』の制作に関わることに。美少女・梨紗と、ゲーマーとして仮想現実の世界に入り込む。岡嶋二人の最終作かつ超名作。そのIT環境の先見性だけでも、刊行年1989年という事実に驚愕するはず。

 

 最強の徹夜本であり読み始めたら最後、読了まで何も手につかなくなるだろう。

伝説の作家ユニット岡嶋二人名義の作品ではあるが、実質はコンビの一人井上夢人氏の作品と言われるSF×ミステリーの至高の傑作である。

1989年に刊行され、VRをメインテーマにしているにも関わらず今読んでもまったく古臭さをまるで感じさせないのは、著者の先見の明と圧倒的な力量だろう。

またSFなのに異常に読みやすいのも高ポイントだ。

クラインの壺 (新潮文庫)

クラインの壺 (新潮文庫)

 

 

20. 天使の囀り / 貴志祐介(1998年)

 

北島早苗は、終末期医療に携わる精神科医。恋人の高梨は、病的な死恐怖症(タナトフォビア)だったが、新聞社主催のアマゾン調査隊に参加してからは、人格が異様な変容を見せ、あれほど怖れていた『死』に魅せられたように自殺してしまう。さらに、調査隊の他のメンバーも、次々と異常な方法で自殺を遂げていることがわかる。アマゾンでいったい何が起きたのか? 高梨が死の直前に残した「天使の囀りが聞こえる」という言葉は、何を意味するのか? 前人未踏の恐怖が、あなたを襲う。

 

 貴志ホラーとして、またグロ系ホラーとして最高傑作だと思う。

ミステリー的な要素と終始漂う不穏な空気、人々の恐ろしい死に様、気持ち悪い描写の数々に完全にやられてしまった。

おぞましい作品だが、エンタメ作品として素晴らしい作品でもあるため、グロを覚悟してでも読んでおくべき作品である。

天使の囀り (角川ホラー文庫)

天使の囀り (角川ホラー文庫)

  • 作者:貴志 祐介
  • 発売日: 2000/12/08
  • メディア: 文庫
 

 

21. 殺戮にいたる病 / 我孫子武丸(1992年)

 

永遠の愛をつかみたいと男は願った―。東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。叙述ミステリの極致!

 

 あのトリックを使ったミステリーの中でも最高峰の完成度を誇る大傑作だが、そんなことはどうでも良い。至高のエログロこそが本作の核だ。

恐るべきエロさとやたらリアリティのあるなまなましいグロさが襲い掛かってくる。

口が裂けても女性や子どもにはおすすめできない作品だが、小説の楽しさを教えるという意味でいつかは我が子におすすめしてしまうかもしれない1冊である。

新装版 殺戮にいたる病 (講談社文庫)

新装版 殺戮にいたる病 (講談社文庫)

 

 

22. くノ一忍法帖 / 山田風太郎(1961年)

 

大坂城を攻め滅ぼし、天下を手にしたはずの家康を驚愕させる情報がもたらされた。真田幸村の秘策により、信濃忍法を駆使した5人のくノ一が秀頼の子を身ごもった。しかもその女たちは愛孫・千姫の侍女の中に潜んでいるという。禍根を断つべく、家康は伊賀忍者の精鋭5人を呼び寄せ、隠密裡にくノ一たちを葬るよう命ずる。性の極致で繰り広げられる凄艶奇抜な忍法合戦。千姫と家康、勝つはのいずれの執念か。忍法帖の究極作。

 

ただのエロ本です(笑)

直木賞作家の馳星周は童貞時代『くノ一忍法帖』をオカズにしていたという、歴史のある由緒正しきエロ本をとくと味わっていただきたい!

 

〇個別紹介記事

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23. 涼宮ハルヒの憂鬱 / 谷川流(2003年)

 

「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」高校入学早々ぶっ飛んだ挨拶をかましたえらい美人、涼宮ハルヒ。誰もが冗談だと思うこの言葉が大マジだったことを、俺はのちに身をもって知ることになる。ハルヒと出会ってしまったことから、気づけば俺の日常は非日常になっていて!?ライトノベルの金字塔が、豪華解説つきで襲来!

 

ライトノベルということで読んでいなかった作品だが、角川文庫化&筒井康隆解説に惹かれて読んでみると.....こいつはとんだSFだぜッ!と驚くことに。

いかにも萌え学園生活の序盤に「あー...やっぱつまんないかも」となっていると、突然の超展開に一気読みさせられた。SFに興味がある方には超おすすめ。

 

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川文庫)

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川文庫)

  • 作者:谷川 流
  • 発売日: 2019/01/24
  • メディア: 文庫
 

 

24. 涼宮ハルヒの消失 / 谷川流(2004年)

 

涼宮ハルヒ?誰のこと?」珍しく俺の真後ろの席が空席だった12月18日の昼休み。颯爽と現れてその席に座ったのはハルヒではなく、長門との戦いに敗れて消滅したはずの委員長・朝倉涼子だった。困惑する俺に追い打ちをかけるように、名簿からもクラスメイトの記憶からもハルヒは消失していた。昨日まで普通だった世界を改変したのは、ハルヒなのか。俺は一縷の望みをかけて文芸部部室を訪れるが―。

 

涼宮ハルヒシリーズの4作目にして映画化された、本格SF×ミステリ×萌えを兼ね備えた完全無欠の超傑作である。

最低でも1作目と3作目の一部を読んでおかなければ話が理解できないが、『涼宮ハルヒの消失』の面白さは圧倒的なので、憂鬱から消失まで一気に読み進めることをおすすめしたい。

本気で面白いので何ならアニメから見てもいいと思う!なにせYouTubeにほとんどの話がアップされているのでね。

 

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

涼宮ハルヒの消失 (角川文庫)

涼宮ハルヒの消失 (角川文庫)

  • 作者:谷川 流
  • 発売日: 2019/02/23
  • メディア: 文庫
 

 

25. 新世界より / 貴志祐介(2008年)

 

ここは病的に美しい日本(ユートピア)。
子どもたちは思考の自由を奪われ、家畜のように管理されていた。
手を触れず、意のままにものを動かせる夢のような力。その力があまりにも強力だったため、人間はある枷を嵌められた。社会を統べる装置として。
1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖(かみす)66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄(しめなわ)で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力(念動力)」を得るに至った人類が手にした平和。念動力(サイコキネシス)の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた……隠された先史文明の一端を知るまでは。

 

 宇宙最強に面白い小説であり、我が生涯のベスト作品である。

ファンタジーでSFでミステリーでホラーでもある神作家・貴志祐介の最終兵器。

数々の傑作を上梓している貴志だが、本作は著者の全身全霊が込められた究極の完成度を誇っている。

文庫で1500ページにもおよぶ超大作でありながら、まったくと言っていいほどダレるところはなく、ひたすら睡眠時間を削られまくったのは良い思い出だ。

 

〇個別紹介記事

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新世界より 上中下巻セット

新世界より 上中下巻セット

  • メディア: セット買い
 

 

26. 隻眼の少女 / 麻耶雄嵩(2010年)

 

山深き寒村で、大学生の種田静馬は、少女の首切り事件に巻き込まれる。犯人と疑われた静馬を見事な推理で救ったのは、隻眼の少女探偵・御陵みかげ。静馬はみかげとともに連続殺人事件を解決するが、18年後に再び惨劇が…。日本推理作家協会賞本格ミステリ大賞をダブル受賞した、超絶ミステリの決定版。

 

絶対に何かをやらかさずにはいられない作家、麻耶雄嵩だが栄光ある賞をW受賞した本作は横溝的な世界観の中で行われる連続殺人に、萌え探偵が成長しながら論理的な推理をするまともな作品かと思いきや......まぁもちろんそんなわけがありません(笑)

本格ミステリという枠の中で周到かつやりたい放題やってしまったわけである。犯人、トリック、動機、狂気(凶器)いずれも伊賀忍者もびっくりな超絶無敵仕様!!

(著者は伊賀の里の出身です)

 

隻眼の少女 (文春文庫)

隻眼の少女 (文春文庫)

  • 作者:麻耶 雄嵩
  • 発売日: 2013/03/08
  • メディア: 文庫
 

 

27. 粘膜人間 / 飴村行(2008年)

 

 「弟を殺そう」――身長195cm、体重105kgという異形な巨体を持つ小学生の雷太。その暴力に脅える長兄の利一と次兄の祐二は、弟の殺害を計画した。だが圧倒的な体力差に為すすべもない二人は、父親までも蹂躙されるにいたり、村のはずれに棲む“ある男たち”に依頼することにした。グロテスクな容貌を持つ彼らは何者なのか? そして待ち受ける凄絶な運命とは……。第15回日本ホラー小説大賞長編賞を受賞した衝撃の問題作。

 

 飴村氏のデビュー作であり、エログロ好きは死んでも読むべき1冊である。

中学生が考えそうなおバカ物語と変態エログロを、廃人文豪が本気を出して小説にしてしまったかのような異常な作品に仕上がっている。

 巨体で凶暴な小学生雷太を殺すため、2人の兄がその殺害を河童に依頼するというアホな話と、エログロ超全開のハイパー怪奇幻想ミステリーで構成されている。

とにかく面白いので、クソ文学に耐性がある方はぜひ手に取って頂きたい。

 生きた女のケツの穴から槍をぶっ刺して、口まで通して串刺しにしてみたいというリョナのあなたは絶対に読みなさいッ!!

 

粘膜人間 (角川ホラー文庫)

粘膜人間 (角川ホラー文庫)

  • 作者:飴村 行
  • 発売日: 2008/10/24
  • メディア: 文庫
 

 

28. 粘膜蜥蜴 / 飴村行(2009年)

 

国民学校初等科に通う堀川真樹夫と中沢大吉は、ある時同級生の月ノ森雪麻呂から自宅に招待された。父は町で唯一の病院、月ノ森総合病院の院長であり、権勢を誇る月ノ森家に、2人は畏怖を抱いていた。〈ヘルビノ〉と呼ばれる頭部が蜥蜴の爬虫人に出迎えられた2人は、自宅に併設された病院地下の死体安置所に連れて行かれた。だがそこでは、権力を笠に着た雪麻呂の傍若無人な振る舞いと、凄惨な事件が待ち受けていた……。

 

 私は『粘膜シリーズ』を上梓した飴村行氏のおかげで読書沼に落とされたと言っても過言ではない。

本作は一部の変態にカルト的な人気な人気を誇る『粘膜シリーズ』の二作目であり、まさかの推理作家協会賞を受賞した作品である。

本作の特徴はとにかく面白いということだ。飴村行と言ったらデビュー作の『粘膜人間』の名前が挙がるのが普通だと思うが、はっきり言って本作はホラー小説界ではカルト的な人気を誇る『粘膜人間』よりも遥かに上をいく傑作である。

推理小説としても冒険小説としても最高な『粘膜蜥蜴』をぜひみんなに読んでいただきたい!!「怨敵、粉砕撃滅!!

粘膜蜥蜴 (角川ホラー文庫)

粘膜蜥蜴 (角川ホラー文庫)

  • 作者:飴村 行
  • 発売日: 2009/08/22
  • メディア: 文庫
 

 

29. 粘膜兄弟 / 飴村行(2010年)

 

ある地方の町外れに住む双子の兄弟、須川磨太吉と矢太吉。戦時下の不穏な空気が漂う中、二人は自力で生計を立てていた。二人には同じ好きな女がいた。駅前のカフェーで働くゆず子である。美人で愛嬌があり、言い寄る男も多かった。二人もふられ続けだったが、ある日、なぜかゆず子は食事を申し出てきた。二人は狂喜してそれを受け入れた。だが、この出来事は凄惨な運命の幕開けだった…。待望の「粘膜」シリーズ第3弾。てていた。二人には同じ好きな女がいた。駅前のカフェーで働くゆず子である。美人で愛嬌があり、言い寄る男も多かった。二人もふられ続けだったが、ある日、なぜかゆず子は食事を申し出てきた。二人は狂喜してそれを受け入れた。だが、この出来事は凄惨な運命の幕開けだった…。待望の「粘膜」シリーズ第3弾。

 

『粘膜シリーズ』に共通する軍国主義の独特な世界観はそのままに、圧倒的にパワーアップしたセンスの良いギャグが火を噴く圧倒的なエンタメ傑作。個人的にはシリーズ最高傑作である。

さほど知名度が高い作品でないことは承知している。でもお願いします、読んで。

こんなに面白い本には滅多に出会うことはできないのだから。

くびとまらぼうをながくしてまってます へるぷみー

 

〇飴村行元帥のまとめ記事

kodokusyo.hatenablog.com

粘膜兄弟 (角川ホラー文庫)

粘膜兄弟 (角川ホラー文庫)

  • 作者:飴村 行
  • 発売日: 2010/05/22
  • メディア: 文庫
 

 

30. 虐殺器官 / 伊藤計劃(2007年)

 

9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?現代の罪と罰を描破する、ゼロ年代最高のフィクション。

 

 夭逝の天才伊藤計劃のデビュー作にして完成度の高い傑作SF。

ただしSFとしてすごい作品の宿命である娯楽性がやや低く、重いし残酷なシーンも多いため人を選ぶかもしれない。

しかし大規模なミステリー、サスペンス要素が知的好奇心を刺激しまくり睡眠時間を奪う危険な小説である。

 

虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者:伊藤計劃
  • 発売日: 2014/08/08
  • メディア: 文庫
 

 

31. ハーモニー / 伊藤計劃(2008年)

 

21世紀後半、“大災禍”と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した―それから13年。死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰に、ただひとり死んだはずの少女の影を見る―『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。

 

虐殺器官』に続く夭折の天才2作目にして遺作。

享年が34歳だというのだから本当に惜しい方を失った.....と言わざるをえない異常な完成度を誇る作品だが、SF的な描写に注力されているようで、エンターテイメント作品としては少々弱いかもしれない。

しかし最後まで読んだ時に『ハーモニー』に仕掛けられたギミックに心を奪われること必至である。

 

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者:伊藤計劃
  • 発売日: 2014/08/08
  • メディア: 文庫
 

 

32. 神様ゲーム / 麻耶雄嵩(2005年)

 

自分を「神様」と名乗り、猫殺し事件の犯人を告げる謎の転校生の正体とは? 神降市に勃発した連続猫殺し事件。芳雄憧れの同級生ミチルの愛猫も殺された。町が騒然とするなか謎の転校生・鈴木太郎が事件の犯人を瞬時に言い当てる。鈴木は自称「神様」で、世の中のことは全てお見通しだというのだ。そして、鈴木の予言通り起こる殺人事件。芳雄は転校生を信じるべきか、疑うべきか?

 

 講談社ミステリーランドという児童向けのレーベルから刊行された作品にも関わらず、冗談のように邪悪で不謹慎な内容である。問題作ばかり発表し、神だの変態だのと称される麻耶雄嵩の本領発揮だ。全知全能の神が犯人を推理することもなく告げるという特殊な推理小説なので、もちろん犯人当ての要素はないのだが、だれも予想できない狂った真相が待ち受ける。

神様ゲーム (講談社文庫)

神様ゲーム (講談社文庫)

  • 作者:麻耶 雄嵩
  • 発売日: 2015/07/15
  • メディア: 文庫
 

 

33. 幻の女 / ウィリアム・アイリッシュ(1942年)

 

妻と喧嘩し、あてもなく街をさまよっていた男は、風変りな帽子をかぶった見ず知らずの女に出会う。彼は気晴らしにその女を誘って食事をし、劇場でショーを観て、酒を飲んで別れた。その後、帰宅した男を待っていたのは、絞殺された妻の死体と刑事たちだった!迫りくる死刑執行の時。彼のアリバイを証明するたった一人の目撃者“幻の女”はいったいどこにいるのか?最新訳で贈るサスペンスの不朽の名作。

 

私はミステリーは好きだが、事件があって探偵役が解決するようないわゆる本格ミステリが苦手なのだが、江戸川乱歩も絶賛したという『幻の女』の面白さは別格である。

本当に存在していたのか怪しいほど幻過ぎる女に探偵役の人が気の毒に思うほどだ。幻想的な謎に驚きの結末、そしていい感じで古さを感じさせない訳と非の打ち所の無い名作である。

 

 

34. 太陽黒点 / 山田風太郎(1963年)

 

昭和30年代後半の東京。才気に満ちた美貌の苦学生・鏑木明は、アルバイト先の屋敷で社長令嬢・多賀恵美子と出会い、偶然にも特権階級への足掛かりを手にする。献身的だが平凡な恋人・容子を捨て、明は金持ち連中への復讐を企て始める。それが全ての悲劇の序章だとは知らず…。“誰カガ罰セラレネバナラヌ”―静かに育まれた狂気が花聞く時、未曾有の結末が訪れる。戦争を経験した著者だからこそ書けた、奇跡のミステリ長編。

 

物語の後半まではミステリとは思えないような青春恋愛小説といった展開だが、裏では驚愕の仕掛けが施されており、誰もが予想不可能な結末が待っている。

また戦後の精神を描いた作品としても秀逸である。古いからと言って読まないのはもったいなさ過ぎる!

 

 

35. 〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件 / 早坂吝(2014年)

 

アウトドアが趣味の公務員・沖らは、仮面の男・黒沼が所有する孤島での、夏休み恒例のオフ会へ。赤毛の女子高生が初参加するなか、孤島に着いた翌日、メンバーの二人が失踪、続いて殺人事件が。さらには意図不明の密室が連続し……。果たして犯人は? そしてこの作品のタイトルとは? 「タイトル当て」でミステリランキングを席巻したネタバレ厳禁の第50回メフィスト賞受賞作

 

 こんなこと書いたらミステリーマニアとして村八分にされそうだが、本格推理小説としては5本の指に入るほどの傑作だと感じてしまったし、なによりキャラがとても良くて、意味のあるエロが満載なところがたまらない。

愛しすぎてネタバレ無しの個別作品記事も書いてしまったので、ぜひとも参考していただきたい!!

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

○○○○○○○○殺人事件 (講談社文庫)

○○○○○○○○殺人事件 (講談社文庫)

  • 作者:早坂 吝
  • 発売日: 2017/04/14
  • メディア: 文庫
 

 

36. 暗闇坂の人喰いの木 / 島田荘司(1990年)

 

さらし首の名所・暗闇坂にそそり立つ樹齢2000年の大楠。この巨木が次々に人間を呑み込んだ? 近寄る人間たちを狂気に駆り立てる大楠の謎とは何か? 信じられぬ怪事件の数々に名探偵・御手洗潔が挑戦する。だが真相に迫る御手洗も恐怖にふるえるほど、事件は凄惨を極めた。本格ミステリーの騎手が全力投球する傑作。

 

 クララが死んだ!!

正直言ってこんな凄まじいミステリーに出会えるとは夢にも思っていなかったレベルの超絶傑作である。

ミステリーであると同時に非常に恐ろしいホラー小説でもあり、さらに冒険小説としての楽しさを合わせ持っているという規格外の作品で、物語と魅力的な謎に惹かれてただひたすらページをめくってしまった。

すさまじくグロい作品でもあるので注意が必要だ。

 

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

改訂完全版 暗闇坂の人喰いの木 (講談社文庫)

改訂完全版 暗闇坂の人喰いの木 (講談社文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 2021/03/12
  • メディア: 文庫
 

 

37. ダークゾーン / 貴志祐介(2011年)

 

「戦え。戦い続けろ」プロ将棋棋士の卵・塚田は、赤い異形の戦士と化して、闇の中で目覚めた。突如、謎の廃墟で開始される青い軍団との闘い。敵として生き返る「駒」、戦果に応じた強力化など、奇妙なルールの下で続く七番勝負。頭脳戦、心理戦、そして奇襲戦。“軍艦島”で繰り広げられる地獄のバトル。圧巻の世界観で鬼才が贈る最強エンターテインメント!

 

 謎に包まれた空間ダークゾーンにて訳も分からず繰り広げられる"人間将棋デスゲーム"。そこはかとなく漂うせつなさと虚無感がたまらない。

ダークゾーンとは一体何なのか?現実世界では何があったのか?戦いの先に待つものとは?謎が謎を呼びグイグイ物語に引き込まれることになるだろう。

貴志作品の中でも最もエンターテイメントに特化した作品である。

ダークゾーン

ダークゾーン

  • 作者:貴志 祐介
  • 発売日: 2011/02/11
  • メディア: 単行本
 

 

38. ボッコちゃん / 星新一(1971年)

 

 著者が傑作50編を自選。SF作家・星新一の入門書。バーで人気の美人店員「ボッコちゃん」。彼女には、大きな秘密があった……。表題作品をはじめ「おーい でてこーい」「殺し屋ですのよ」「月の光」「暑さ」「不眠症」「ねらわれた星」「冬の蝶」「鏡」「親善キッス」「マネー・エイジ」「ゆきとどいた生活」「よごれている本」など、とても楽しく、ちょっぴりスリリングな自選50編。

 

星新一はかなり強烈な毒を持っている。

そんな作家が選ぶ自選傑作編なので50作あるショートショート作品それぞれのクオリティが異様に高く、一発一発がタイプの異なる毒をぶちまけてくるので読後はかなりのダメージを覚悟した方がいい。

平均10ページにも満たない作品集なので寝る前に少しづつ読むのもおすすめだが.....きっと悪い夢を見るだろう(笑)

 

⇩以下著者によるあとがきより引用

特徴をもうひとつあげるとすれば、作品のバラエティを多くするよう心がけた。ミステリー的なものもあり、SF的なものもある。ファンタジーもあれば、寓話がかったものもあり、童話めいたものもある。いずれも私が関心を抱いている分野である。だからこの一冊は、私、星新一というあやしげな作家そのものを、ショートショートに仕上げた形だといえるかもしれない。

 

ボッコちゃん (新潮文庫)

ボッコちゃん (新潮文庫)

  • 作者:新一, 星
  • 発売日: 1971/05/25
  • メディア: 文庫
 

 

39.  滅びの園 / 恒川光太郎(2018年)

 

わたしの絶望は、誰かの希望。
ある日、上空に現れた異次元の存在、<未知なるもの>。それに呼応して、白く有害な不定形生物<プーニー>が出現、無尽蔵に増殖して地球を呑み込もうとする。
少女、相川聖子は、着実に滅亡へと近づく世界を見つめながら、特異体質を活かして人命救助を続けていた。だが、最大規模の危機に直面し、人々を救うため、最後の賭けに出ることを決意する。世界の終わりを巡り、いくつもの思いが交錯する。壮大で美しい幻想群像劇。

 

著者が得意とする"ここではないどこか"へ読者を導く稀有なファンタジーの世界観と、深遠な思弁SFが見事に両立した比類無き傑作である。

本を開いてほんの数ページめくるだけで、のどかな異世界に連れ去られ、さらに読み進めると、突如話は人類滅亡に関わる壮大なSFへと物語は姿を変える。

異世界と破滅の危機に陥った地球で繰り広げられる群像劇は魂を揺さぶるほど素晴らしい。もちろんエンタメ的にも完璧。

『夜市』で有名な著者だが、ラノベのように読みやすい筆致はそのままに、猛烈にパワーアップされた筆力には脱帽である。

 

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

40. 復活の日 / 小松左京(1964年)

 

吹雪のアルプス山中で遭難機が発見された。傍には引き裂かれたジュラルミン製トランクの破片。中には、感染後70時間以内に生体の70%に急性心筋梗塞を引き起こし、残りも全身マヒで死に至らしめるMM菌があった。春になり雪が解け始めると、ヨーロッパを走行中の俳優が心臓麻痺で突然死するなど、各地で奇妙な死亡事故が報告され始める―。人類滅亡の日を目前に、残された人間が選択する道とは。

 

まさにコロナ渦を予言したかのごとき怒涛の終末ハードSFである。

半世紀以上前に書かれた小説にも関わらず古びれた感じはあまりせず、著者の博識さに裏づけられた圧倒的なリアリティで世界の終焉が襲い掛かってくる。

ただの風邪だよ」というパワーワードが出た時には震えた。

少々敷居が高い作品なのは否めないが、プロットの秀逸さに支えられて徹夜させられること間違いなしである。

 

復活の日 (角川文庫)

復活の日 (角川文庫)

  • 作者:小松 左京
  • 発売日: 2018/08/24
  • メディア: 文庫
 

 

41. ガダラの豚 / 中島らも(1993年)

 

アフリカの呪術医研究の第一人者、大生部多一郎は、テレビの人気タレント教授。超能力ブームで彼の著者「呪術パワーで殺す!」はベストセラーになった。しかし、妻の逸美は8年前の娘・志織のアフリカでの気球事故での死以来、神経を病んでいた。そして奇跡が売り物の新興宗教にのめりこんでしまった。逸美の奪還をすべく、大生部は奇術師ミラクルと組んで動き出す。

 

 娯楽小説の最終到達点と言っても過言では無いほど徹底的に面白い作品である。

ただ面白いだけでなく、超能力や呪術といった超自然的なことについてしっかりと研究された上で書かれているため、ブッ飛んだ内容にも関わらず確かなリアリティがあり、読者自身の知識も増える。

最強に面白い小説が読みたいなら本作を読んでおけばまず間違いない。

ガダラの豚(集英社文庫) 全3冊セット
 

 

42. 99%の誘拐 / 岡嶋二人(1988年)

 

岡嶋二人の代表作!末期ガンに冒された男が、病床で綴った手記を遺して生涯を終えた。そこには8年前、息子をさらわれた時の記憶が書かれていた。そして12年後、かつての事件に端を発する新たな誘拐が行われる。その犯行はコンピュータによって制御され、前代未聞の完全犯罪が幕を開ける。

 

 SFに近いほどのハイテクを駆使した誘拐もので、"人攫いの岡嶋"と称されるほど誘拐モノが得意な岡嶋作品の中でも最高傑作という意見も多い作品。

刊行されたのが1988年とは到底考えられないほどのハイテク犯罪は桁が違いの完成度であり、時代がやっと岡嶋二人に追いついたといったところだろうか。

物語としても非常に面白く非の打ち所の無い1冊である。

99%の誘拐 (講談社文庫)

99%の誘拐 (講談社文庫)

  • 作者:岡嶋 二人
  • 発売日: 2004/06/15
  • メディア: 文庫
 

 

43. 地球星人 / 村田沙耶香(2018年)

 

私はいつまで生き延びればいいのだろう。いつか、生き延びなくても生きていられるようになるのだろうか。地球では、若い女は恋愛をしてセックスをするべきで、恋ができない人間は、恋に近い行為をやらされるシステムになっている。地球星人が、繁殖するためにこの仕組みを作りあげたのだろう―。常識を破壊する衝撃のラスト。村田沙耶香ワールド炸裂!

 

 マジキチの中のマジキチ本。

著者の村田沙耶香さんは年齢を重ね芥川賞を受賞したことによって、もはや思い残すことはなくなってしまったのか、超えてはならない一線を超えてしまわれた....最強変態本である。ジャンルはサイコホラーだろう。どう考えても。

村田作品は異常な本のオンパレードだが、この本から先はヤバい意味で次のステップに入ったとしか思えない。狂った本が読みたい人にだけおすすめな狂気の一冊。ヤバすぎDEATH!!

 

地球星人 (新潮文庫)

地球星人 (新潮文庫)

 

 

44. 孤島の鬼 / 江戸川乱歩(1930年)

 

私(蓑浦金之助)は会社の同僚木崎初代と熱烈な恋に陥った。彼女は捨てられた子で,先祖の系譜帳を持っていたが,先祖がどこの誰ともわからない。ある夜,初代は完全に戸締まりをした自宅で,何者かに心臓を刺されて殺された。その時,犯人は彼女の手提げ袋とチョコレートの缶とを持ち去った。恋人を奪われた私は,探偵趣味の友人,深山木幸吉に調査を依頼するが,何かをつかみかけたところで,深山木は衆人環視の中で刺し殺されてしまう……!

 

 前半は密室と衆人環境での殺人という二つの殺人事件の謎を追う推理小説、中盤は江戸川乱歩の変態趣味が炸裂する怪奇幻想小説、そして後半は冒険小説と進む。

物語自体が尋常ではない面白さであるため、古い作品だからと言う理由で読まないのはもったいなすぎる。

BLの超傑作でもあるので、腐女子は死んでも読まなければならない。

孤島の鬼 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
 

 

45. NO.6 / あさのあつこ(2009年)

 

 2013年。理想都市『NO.6』に住む少年・紫苑は、9月7日が12回目の誕生日であった。だが、その日は同時に彼の運命を変える日でもあった。『矯正施設』から抜け出してきた謎の少年・ネズミと出会い、負傷していた彼を介抱した紫苑だが、それが治安局に露見し、NO.6の高級住宅街『クロノス』から準市民の居住地『ロストタウン』へと追いやられてしまう。

4年後、紫苑は奇怪な事件の犯人として連行されるところをネズミに救われ、彼と再会を果たす。NO.6を逃れ、様々な人々と出会う中で紫苑は、理想都市の裏側にある現実、『NO.6』の隠された本質とその秘密を知っていく…。

 

児童文学なのかと思いきや、いきなり主人公の幼馴染とのやり取りで以下のシーンがある。

わたし、あなたから貰いたいものがあるんだけど

精子

セックスしたい

つまりこれはヤバい作品なのだ。BL全開だったり、トラウマ級の地獄展開が待っていたりと殺る気満々過ぎてちょっと怖いです.....でも強烈に物語に引き込まれる素晴らしい作品だ。

 

 〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

NO.6♯1 (講談社文庫)

NO.6♯1 (講談社文庫)

 

 

46. 私の頭が正常であったなら / 山白朝子(2018年)

 

 私の哀しみはどこへゆけばいいのだろう――切なさの名手が紡ぐ喪失の物語。

突然幽霊が見えるようになり日常を失った夫婦。首を失いながらも生き続ける奇妙な鶏。記憶を失くすことで未来予知をするカップル。書きたいものを失くしてしまった小説家。娘に対する愛情を失った母親。家族との思い出を失うことを恐れる男。元夫によって目の前で愛娘を亡くした女。そして、事故で自らの命を失ってしまった少女。わたしたちの人生は、常に何かを失い、その哀しみをかかえたまま続いていく。暗闇のなかにそっと灯りがともるような、おそろしくもうつくしい八つの“喪失”の物語。

 

 せつなさの名手、乙一.....ではなく山白朝子の健在を確信した作品である。

かつて乙一名義で発表された『失はれる物語』を大人向け(子どもがいる層)にしたような内容で、より洗練されたせつなさを堪能することができる。

 美しい装丁にふさわしい物語だけでなく、エンタメとしても優れている。

 

私の頭が正常であったなら (角川文庫)

私の頭が正常であったなら (角川文庫)

  • 作者:山白 朝子
  • 発売日: 2021/01/22
  • メディア: 文庫
 

 

47. オフシーズン / J.ケッチャム(1980年)

 

避暑客が去り冷たい秋風が吹き始めた九月のメイン州の避暑地。ニューヨークから六人の男女が休暇をとって当地にや
って来る。最初に到着したのは書箱編集者のカーラ。すこし遅れて、彼女の現在のボーイフレンドのジム、彼女の妹の
マー ジーとそのボーイフレンドのダン、そしてカーラのかつてのボーイフレンドのニックとそのガールフレンドのロー
ラが到着した。六人全員が到着した晩に事件は勃発した。当地に住む“食人族"が六人に襲い掛かったのだ。“食人族
"対“都 会族"の凄惨な死闘が開始する。

 

 絵に描いたようなB級スプラッタホラーの超傑作。

エロもグロも突き抜けて凄まじいことになっており、怒涛の勢いで阿鼻叫喚の地獄絵図が展開される様は、この手の話が好きなら恋人に嫌われようが必読である。

 世の中にはあからさまなエロやグロを追求した作品が溢れかえっていて、正直興醒めしてしまうのだが、『オフシーズン』は強烈でありながらも狙った感は皆無であり、結末の容赦の無さも実に教訓的で自然である。

 

モダンホラーの帝王S.キング曰く

全米一怖い作家は誰だ?きっとジャック・ケッチャムさ。

『オフシーズン』の無修正版を感謝祭の日に読んだら、

きっとクリスマスの日まで眠れなくなること請け合いだ。

ティーブおじさんが警告しなかったなんて言うなよ、

はっはっはっ……(by スティーブン・キング)

 

オフシーズン (海外文庫)

オフシーズン (海外文庫)

 

 

48. 絡新婦の理 / 京極夏彦(1996年)

 

当然、僕の動きも読み込まれているのだろうな――2つの事件は京極堂をしてかく言わしめた。
房総の富豪、織作(おりさく)家創設の女学校に拠(よ)る美貌の堕天使と、血塗られた鑿(のみ)をふるう目潰し魔。連続殺人は八方に張り巡らせた蜘蛛の巣となって刑事・木場らを眩惑し、搦め捕る。中心に陣取るのは誰か?シリーズ第5弾。

 

 個人的には『百鬼夜行シリーズ』の最高傑作であり、ミステリー小説の中でも最も複雑かつ緻密に描かれた美女だらけの超絶ミステリー。

とにかく複雑な事件で、そもそも作中に登場する事件が一つの事件なのかどうかすらさっぱり分からない、まさに女郎蜘蛛に絡め取られるかのような感じである。

最初と最後がこの世のものとは思えない美しい描写で、読了後は100%最初のページに戻らされてしまう。

世の中、絶対に本作の"蜘蛛"のような人間はいるはずだ。

文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

  • 作者:京極 夏彦
  • 発売日: 2002/09/05
  • メディア: 文庫
 

 

49. 水晶のピラミッド / 島田荘司(1991年)

 

エジプト・ギザの大ピラミッドを原寸大で再現したピラミッドで起こる怪事。冥府の使者アヌビスが5000年の時空を超えて突然甦り、空中30メートルの密室で男が「溺死」を遂げる! アメリカのビッチ・ポイントに出現した現代のピラミッドの謎に挑む名探偵・御手洗潔。壮大なテーマに挑んだ本格ミステリーの大作。

 

 限界突破してしまったミステリー小説。

推理小説という枠を超えて、純粋なミステリーを提供している。

本筋に関係あるのかどうかも分からない、古代エジプトタイタニックの挿話が200ページ近くあるのだが、そこがものすごく面白い。

こんな小説、島田御大にしか書けません。

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

水晶のピラミッド (講談社文庫)

水晶のピラミッド (講談社文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 1994/12/07
  • メディア: 文庫
 

 

50. 七瀬ふたたび / 筒井康隆(1975年)

 

人を避け、旅に出た七瀬が出会った超能力者たち。
彼らを抹殺しようとする組織との戦いが始まる。七瀬シリーズ第二作。

生れながらに人の心を読むことができる超能力者、美しきテレパス火田七瀬は、人に超能力者だと悟られるのを恐れて、お手伝いの仕事をやめ、旅に出る。その夜汽車の中で、生れてはじめて、同じテレパシーの能力を持った子供ノリオと出会う。その後、次々と異なる超能力の持主とめぐり会った七瀬は、彼らと共に、超能力者を抹殺しようとたくらむ暗黒組織と、血みどろの死闘を展開する。

 

 七瀬シリーズ第二作だがこのシリーズは作品ごとにかなり作風が異なり、一作目を読んでいなくても『七瀬ふたたび』は問題なく読める。

超能力者が集結して超能力の抹殺をもくろむ組織との対峙するというエンタメ全開の展開でありつつも、文学性もSFとしての完成度も高い傑作である。

超能力者VS一般人、超能力者VS超能力者、超能力者VS暗黒組織の立ち回りや心理的物理的距離感が『ジョジョの奇妙な冒険』の戦闘っぽくてすごく楽しい。

 

七瀬ふたたび (新潮文庫)

七瀬ふたたび (新潮文庫)

  • 作者:筒井 康隆
  • 発売日: 1978/12/22
  • メディア: 文庫
 

 

51. 超・殺人事件 推理作家の苦悩 / 東野圭吾(2001年)

 

 新刊小説の書評に悩む書評家のもとに届けられた、奇妙な機械「ショヒョックス」。どんな小説に対してもたちどころに書評を作成するこの機械が、推理小説界を一変させる――。発表時、現実の出版界を震撼させた「超読書機械殺人事件」をはじめ、推理小説誕生の舞台裏をブラックに描いた危ない小説8連発。意表を衝くトリック、冴え渡るギャグ、そして怖すぎる結末。激辛クール作品集。

 

 まさに自虐テロといった感じの危険な内容である(笑)

ただのギャグ小説なのに手加減無用なところがとても好ましい。特定の作家をディスっているようにも思われる、強烈なブラックユーモアに噴き出すこと間違いなしである。出版業界がこんなになったらいやだ....

超・殺人事件―推理作家の苦悩 (新潮文庫)

超・殺人事件―推理作家の苦悩 (新潮文庫)

 

 

52. 殺人鬼 覚醒篇(1990年)

 

伝説の傑作『殺人鬼』、降臨!!’90年代のある夏。双葉山に集った“TCメンバーズ”の一行は、突如出現したそれの手によって次々と惨殺されてゆく。血しぶきが夜を濡らし、引き裂かれた肉の華が咲き乱れる…いつ果てるとも知れぬ地獄の饗宴。だが、この恐怖に幻惑されてはいけない。作家の仕掛けた空前絶後の罠が、惨劇の裏側で読者を待ち受けているのだ。―グルーヴ感に満ちた文体で描かれる最恐・最驚のホラー&ミステリ。

 

 『館シリーズ』で有名な綾辻行人氏ではあるが、個人的には『殺人鬼 覚醒篇』こそが最高傑作だと思っている。最も好きなスプラッタホラーでもある。

13日の金曜日』のような王道のスプラッタ全開ホラーかと思いきや、さすがは新本格ムーブメントの筆頭、ミステリとしての仕掛けもよく練られておりかなり強烈な1冊である。エロ注意、グロ注意。

 

殺人鬼 ‐‐覚醒篇 (角川文庫)

殺人鬼 ‐‐覚醒篇 (角川文庫)

  • 作者:綾辻 行人
  • 発売日: 2011/08/25
  • メディア: 文庫
 

 

53. 殺人鬼 逆襲篇(1993年)

 

伝説の『殺人鬼』、ふたたび。双葉山の惨劇から三年、最初にそれと遭遇したのは休暇中の一家。正義も勇気も家族愛も、ただ血の海に消えゆくのみ。そしてそれは山を降り、麓の街に侵攻するのだ。病院を、平和な家庭を、凄惨な地獄風景に変えていく。殺す、殺す、殺す…ひたすら殺戮を欲する怪物に独り立ち向かうのは、不思議な“能力”を持った少年・真実哉。絶望的な闘いの果てに待ち受ける、驚愕と戦慄の結末とは!?―。

 

 アホみたくグロさとエグさに特化した鬼畜の続編。鬼。

はっきり言ってミステリ×スプラッタホラーのミステリの部分は前作よりも大幅に劣化している。もう取って付けたようなオマケと言えるだろう。

しかしその代わりに、スプラッタ要素が”この作家、頭大丈夫か”と本気で心配してしまうほど残虐性が向上している。
冒頭から鬼畜無双だが、その残虐性が最後の最後まで続くのだからたちが悪い。

私はこの本を読んでいなければ他の綾辻作品に興味を持たなかったと思う。

 

殺人鬼  ‐‐逆襲篇 (角川文庫)

殺人鬼 ‐‐逆襲篇 (角川文庫)

  • 作者:綾辻 行人
  • 発売日: 2012/02/25
  • メディア: 文庫
 

 

54. 玩具修理者 / 小林泰三(1996年)

 

玩具修理者は何でも直してくれる。独楽でも、凧でも、ラジコンカーでも…死んだ猫だって。壊れたものを一旦すべてバラバラにして、一瞬の掛け声とともに。ある日、私は弟を過って死なせてしまう。親に知られぬうちにどうにかしなければ。私は弟を玩具修理者の所へ持って行く…。現実なのか妄想なのか、生きているのか死んでいるのか―その狭間に奇妙な世界を紡ぎ上げ、全選考委員の圧倒的支持を得た第2回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作品。

 

不気味グロ怪奇幻想クトゥルフ短編『玩具修理者』と時間SF中編「酔歩する男」の2作が収録されていて、表題作である前者は幻想的な雰囲気、後者はSFがホラー的な感覚を生み出す作品となっていてどちらも高品質だ。

クトゥルフ神話好きなら「ようぐそうとほうとふ」という名状しがたき名称に「ヨグ=ソトース」が浮かぶこと間違いないしだろう。

 

玩具修理者 (角川ホラー文庫)

玩具修理者 (角川ホラー文庫)

  • 作者:小林 泰三
  • 発売日: 1999/04/08
  • メディア: 文庫
 

 

55. エンダーのゲーム / オースン.スコット.カード(1985年)

 

地球は恐るべきバガーの二度にわたる侵攻をかろうじて撃退した。容赦なく人々を殺戮し、地球人の呼びかけにまったく答えようとしない昆虫型異星人バガー。その第三次攻撃に備え、優秀な艦隊指揮官を育成すべく、バトル・スクールは設立された。そこで、コンピュータ・ゲームから無重力訓練エリアでの模擬戦闘まで、あらゆる訓練で最高の成績をおさめた天才少年エンダーの成長を描いた、ヒューゴー賞/ネビュラ賞受賞作!

 

新世紀エヴァンゲリオン』の元ネタの一つとして有名な作品で、内容もずばりエヴァを宇宙規模に拡大して、使徒をバガーに置き換えたようなものである。

決定的に違うのはへっぽこオナニスト碇シンジ君と異なり、主人公のエンダーがベジータ様級の超エリート(ちなみにそのお兄さんもお姉さんも超エリート)であることだろう。

エヴァに乗ったのがエンダー三兄弟だったら使徒も真っ青だろう(笑)

少年少女の成長物語という点で少々敷居は高いが子供にもおすすめである。

 

エンダーのゲーム〔新訳版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)
 

 

56. 月の裏側 / 恩田陸(2002年)

 

九州の水郷都市・箭納倉。ここで三件の失踪事件が相次いだ。消えたのはいずれも掘割に面した日本家屋に住む老女だったが、不思議なことに、じきにひょっこり戻ってきたのだ、記憶を喪失したまま。まさか宇宙人による誘拐か、新興宗教による洗脳か、それとも? 事件に興味を持った元大学教授・協一郎らは〈人間もどき〉の存在に気づく……。

 

 不気味な雰囲気が溢れたSFホラー的な傑作。

私はこのような世界観が大好きなため、猛烈な勢いで一気読みしてしまった。

読んでいる最中は紛れもなく最強の傑作なのだが、そこは恩田陸
予想通りというか恩田流投げっぱなしジャーマンが本領発揮する(笑)。

月の裏側 (幻冬舎文庫)

月の裏側 (幻冬舎文庫)

  • 作者:恩田 陸
  • 発売日: 2002/08/01
  • メディア: 文庫
 

 

57. 江戸川乱歩傑作選 / 江戸川乱歩(1960年)

 

読者諸君、これが日本で一番美しい犯罪小説だ。
耽美的トリック×倒錯的フェティシズムが交錯する、本格探偵小説を確立した初期傑作9編。

日本における本格探偵小説を確立したばかりではなく、恐怖小説とでも呼ぶべき芸術小説をも創り出した乱歩の初期を代表する傑作9編を収める。特異な暗号コードによる巧妙なトリックを用いた処女作「二銭銅貨」、苦痛と快楽と惨劇を描いて著者の怪奇趣味の極限を代表する「芋虫」、他に「二癈人」「D坂の殺人事件」「心理試験」「赤い部屋」「屋根裏の散歩者」「人間椅子」「鏡地獄」。

 

もはや説明不要な由緒正しき傑作選である。

一応特徴を説明するならば、時代を感じさせない普遍性があり圧倒的に読みやすい、推理小説というより物語として純粋に面白い、各話30~40ページ程度でお手頃なのにインパクトは絶大といったところだろうか。

以下の解説から引用する。

 

繰り返して言えば、ここに収められた九篇は、初期の乱歩を代表する傑作である。一般に探偵小説は、犯人が判ってしまうと再読に耐えない。だが、乱歩の場合は例外で、普通の小説と同じように、何度読んでも印象が新鮮である。乱歩は、日本の本格探偵小説を確立したばかりでなく、仮に恐怖小説とでも呼ぶべき芸術小説を創り出したのである。その功績は、文学史上に残るものと思われる。
――荒正人(文芸評論家)

 

江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)

江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)

 

 

58. 江戸川乱歩名作選 / 江戸川乱歩(2016年)

 

「陰獣」「押絵と旅する男」ほか、大乱歩の魔術に浸れる全七編を収録。

見るも無残に顔が潰れた死体、変転してゆく事件像(「石榴(ざくろ)」)。
絶世の美女に心奪われた兄の想像を絶す る“運命"(「押絵と旅する男」)。
謎に満ちた探偵作家・大江春泥(しゅんでい)に脅迫される実業家夫人、彼女を恋する私は春泥の影を追跡する――後世に 語り継がれるミステリ「陰獣」。
他に「目羅博士」「人でなしの恋」「白昼夢」「踊る一寸法師」を収録。
大乱歩の魔力を存分に味わえる厳選全7編。

 

歴史ある『江戸川乱歩傑作選』には入らなかったが、傑作選にある作品と比べても遜色ないレベルの作品で構成されている。

「石榴」と「陰獣」という乱歩作品の中でも本格ミステリ度の高い中編に怪奇幻想の傑作短編がサンドイッチされておりバランスも良い。

特に「押絵と旅する男」と「陰獣」は乱歩の中でも最高ランクの作品なのでとてもおすすめである。

 

江戸川乱歩名作選 (新潮文庫)

江戸川乱歩名作選 (新潮文庫)

 

 

59. 獣の奏者 / 上橋菜穂子(2006年)

 

リョザ神王国。闘蛇村に暮らす少女エリンの幸せな日々は、闘蛇を死なせた罪に問われた母との別れを境に一転する。母の不思議な指笛によって死地を逃れ、蜂飼いのジョウンに救われて九死に一生を得たエリンは、母と同じ獣ノ医術師を目指すが―。苦難に立ち向かう少女の物語が、いまここに幕を開ける。

 

 児童文学ではない。大人ですら心を揺さぶられずにはいられない情け容赦ない本気のファンタジー小説である

 『獣の奏者』が圧倒的に面白い理由の一つに、Ⅰの闘蛇編からひたすらに作中の歴史や世界に関する謎をひっぱりまくるところにある。
Ⅰ闘蛇編とⅡ王獣編でいったん物語は完結しており、作者自身も続編を考えていなかったとのことだが、完結編の最後の最後まで謎が明かされないことにより、続きが気になりまくりもはや徹夜は避けられないだろう。

 

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60. GOTH / 乙一(2002年)

 

 連続殺人犯の日記帳を拾った森野夜は、未発見の死体を見物に行こうと「僕」を誘う……人間の残酷な面を覗きたがる者〈GOTH〉を描き本格ミステリ大賞に輝いた乙一出世作

世界に殺す者と殺される者がいるとしたら、自分は殺す側だと自覚する少年「僕」。もっとも孤独な存在だった彼は、森野夜に出会い、変化していく。彼は夜をどこに連れて行くのか? 「僕」に焦点をあてた3篇を収録。

 

「僕」と「夜」のキャラが最高すぎる、ラノベ寄りの傑作連作短篇集。

私はこの二人の会話が好きで好きでたまらない。きっとみんなも好きになることだろう。本格ミステリ大賞に選ばれただけあって推理小説としての完成度は非常に高い。

乙一の最高傑作といってもいいかもしれない。

ちなみに夜の章が先だというのを忘れてはならない。私は順番を間違えて泣いた。

続編である番外編もとても素晴らしいので絶対に読もう。

GOTH―リストカット事件

GOTH―リストカット事件

  • 作者:乙一
  • メディア: 単行本
 

 

61. アトポス / 島田荘司(1993年)

 

虚栄の都・ハリウッドに血でただれた顔の「怪物」が出没する。ホラー作家が首を切断され、嬰児が次々と誘拐される事件の真相は何か。女優・松崎レオナの主演映画『サロメ』の撮影が行われる死海の「塩の宮殿」でも惨劇は繰り返された。甦る吸血鬼の恐怖に御手洗潔が立ち向かう。渾身のミステリー巨編が新たな地平を開く。

 

 1000ページ近い大作にも関わらずまったくと言っていいほど長さを感じることが無い奇跡的な作品である。

作中作ではギネス級の大量殺人鬼エリザベート・バートリーの挿話が200ページ以上続くのだが、この挿話が尋常ではない面白さでありページ数的にも1冊の超傑作歴史ホラー小説として十分に成り立っている。

戦時中の魔都上海やサロメのエピソードもあり何から何まで謎まみれであり、島田式本格ミステリーが完成した作品といっても過言ではないと思う。

御手洗はまさに白馬の王子様である。嗚呼レオナよ.....。

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アトポス (講談社文庫)

アトポス (講談社文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 1996/10/14
  • メディア: 文庫
 

 

62. 魔界転生 / 山田風太郎(1967年)

 

島原の乱に敗れ、幕府への復讐を誓う天草側の軍師、森宗意軒は死者再生の秘術「魔界転生」を編み出した。それは、人生に強い不満を抱く比類なき生命力の持ち主を、魂だけ魔物として現世に再誕させる超忍法だった。次々と魔界から蘇る最強の武芸者軍団。魔人たちを配下に得た森宗意軒は紀伊大納言頼宣をも引き込み、ついに柳生十兵衛へと魔の手を伸ばす…。群を抜く着想と圧倒的スケールで繰り広げられる忍法帖の最高傑作。

 

ずばりこの世で一番面白い小説の最有力候補である。

エンターテイメントの極致と言っても過言ではなく、少年ジャンプで人気になる要素の大半をすでに半世紀以上前に完成させてしまっている。

読み始めたが最後、長大な物語に睡眠時間を奪い去られることだろう。

 

 

63. インスマスの影 / H.P.ラブクラフト(2019年)

 

ラヴクラフトは不遇のままその生涯を閉じた。だが、彼の創造したクトゥルー神話は没後高く評価され、時代を越えて世界の読者を虜にしている―。頽廃した港町インスマスを訪れた私は、魚類を思わせる人々の容貌の恐るべき秘密を知る(表題作)。漂流船で唯一生き残った男が握りしめていた奇怪な石像とは(「クトゥルーの呼び声」)。英文学者にして小説家、南條竹則が選び抜いた、七篇の傑作小説。

 

 短~中編程度の傑作選で、 クトゥルフ神話に興味はあるけど何から手を付けていいのか分からない方には超おすすめのラインナップとなっている。

 原文がそもそも難解なため、新訳ではあってもかなり読みずらいのはご愛嬌だが、活字がでかい分、創元推理文庫の全集よりは読みやすい。

 クトゥルフ神話全体でみても知名度が高い「クトゥルーの呼び声」と「インスマスの影」はThe・クトゥルフ神話である。

イア!イア! クトゥルー フタグン!!

 

以下、収録作品

①異次元の色彩
②ダンウィッチの怪
クトゥルーの呼び声
ニャルラトホテプ
⑤闇にささやくもの
⑥暗闇の出没者
インスマスの影

 

 

64. 狂気の山脈にて / H.P.ラブクラフト(2020年)

 

地質、生物、物理学者らによるミスカトニック大学探検隊が、南極大陸に足を踏み入れた。彼らは禁断の書『ネクロノミコン』の記述と重なる、奇怪きわまる化石を発見する(表題作)。一九〇八年五月十四日、ピーズリー教授の身に異変が起きた。“大いなる種族"との精神の交換がなされたのだ(「時間からの影」)。闇の巨匠ラヴクラフトの神話群より傑作八篇を精選し、新たに訳出。あなたに、眠れぬ夜を約束する。

 

 新潮社のクトゥルー神話傑作選第二弾。

大傑作長編「狂気の山脈にて」と「時間からの影」が収録されているため、個人的には傑作選第一弾の『インスマスの影』よりもこちらが好みである。

 南極大陸にそびえ立つエベレストよりも高い山脈で、未知の文明や謎の生命体が見つかることにピンとくる方は必読だ。

テケリ・リ、テケリ・リ” by ショゴたん

 

以下、収録作品

ランドルフ・カーターの陳述
②ピックマンのモデル
③エーリッヒ・ツァンの音楽
④猟犬
ダゴン
⑥祝祭
⑦狂気の山脈にて
⑧時間からの影

 

 

65. 屍鬼 / 小野不由美(1998年)

 

人口わずか千三百、三方を尾根に囲まれ、未だ古い因習と同衾する外場村。猛暑に襲われた夏、悲劇は唐突に幕を開けた。山深い集落で発見された三体の腐乱死体。周りには無数の肉片が、まるで獣が蹂躪したかのように散乱していた―。闇夜をついて越して来た謎の家族は、連続する不審死とどう関わっているのか。殺人か、未知の疫病か、それとも…。超弩級の恐怖が夜の帳を侵食し始めた。

 

 長い...退屈...暗い...そして登場人物多過ぎ。
相当読書慣れしてない人はまず読もうとは思えないだろうが、覚悟を決めて読んだら間違いなく心に残る1冊になるだろう。

最も作中に没入できた作品で、読んでいる最中はすごい幸せだった....。

 

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屍鬼(一) (新潮文庫)

屍鬼(一) (新潮文庫)

 

 

66. 黒い家 / 貴志祐介(1997年)

 

若槻慎二は、生命保険会社の京都支社で保険金の支払い査定に忙殺されていた。ある日、顧客の家に呼び出され、期せずして子供の首吊り死体の第一発見者になってしまう。ほどなく死亡保険金が請求されるが、顧客の不審な態度から他殺を確信していた若槻は、独自調査に乗り出す。信じられない悪夢が待ち受けていることも知らずに……。恐怖の連続、桁外れのサスペンス。読者を未だ曾てない戦慄の境地へと導く衝撃のノンストップ長編。第4回日本ホラー小説大賞受賞作。

 

 最恐レベルのホラーサスペンスであり、サイコパスを書かせたら貴志祐介に並ぶ者はいないのではないかと思われるほど、狂った人の描写にリアリティがある。

 一番怖い小説に『黒い家』を挙げる人が多いのも納得であり、”人間が怖い系”の作品の中でも飛び抜けた完成度である。

 なお著者自身のサラリーマン時代の経験が主人公に活かされており、とにかく臨場感が半端ではないのも『黒い家』の恐ろしいところである。

黒い家 (角川ホラー文庫)

黒い家 (角川ホラー文庫)

  • 作者:貴志 祐介
  • 発売日: 1998/12/10
  • メディア: 文庫
 

 

67. 倒錯のロンド / 折原一(1989年)

 

”原作者”と”盗作者”の緊迫する駆け引きに息を呑む。受賞間違いなし、と自信を持って推理小説新人賞に応募しようとした作品が、何者かに盗まれてしまった! そして同タイトルの作品が受賞作に。時代の寵児になったのは、白鳥翔。山本安雄がいくら盗作を主張しても誰も信じてくれない。原作者は執念で盗作者を追いつめる。巧緻極まる仕掛けが全編に張り巡らされ、その謎が解き明かされていく衝撃、そして連続する衝撃! 叙述トリックの名手・折原一の”原点”に位置づけられる名作、32年越しの改訂が加わった新装完成版。

 

 最強に面白い本格ミステリの最有力候補である。

折原一といったら叙述トリックなので、もはや隠す必要はないだろうから書いてしまうと、『倒錯のロンド』は非常にレベルの高い叙述トリックものである。

 だがそんなことはどうでもいいほど物語が面白いのである。
猛烈に勢いのある筆致に、なんとなくブラックユーモアめいたセリフ、そしてS・キングの『シャイニング』を全力でパロっていたりととことん面白さを追求している。

 

倒錯のロンド 完成版 (講談社文庫)

倒錯のロンド 完成版 (講談社文庫)

  • 作者:折原 一
  • 発売日: 2021/01/15
  • メディア: 文庫
 

 

68. ユービック / フィリップ・K・ディック(1969年)

 

一九九二年、予知能力者狩りを行なうべく月に結集したジョー・チップら反予知能力者たちが、予知能力者側のテロにあった瞬間から、時間退行がはじまった。あらゆるものが一九四〇年代へと逆もどりする時間退行。だが、奇妙な現象を矯正するものがあった――それが、ユービックだ! ディックが描く白昼夢の世界。

 

SF小説には2種類ある。SF作品として傑作なパターンと娯楽作品として優れているパターンだ。フィリップ・K・ディックといえば『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』が挙げられるだろうが、電気羊は典型的な前者である。対して『ユービック』は後者のパターンでエンターテイメント性が高く、最初から最後まで一気読み級の徹夜本なのだ。

難しい本を読んでSFから離れてしまうのはもったいない!.....と言いつつもSF慣れしていないと少々難しいかも。

 

ユービック (ハヤカワ文庫 SF 314)

ユービック (ハヤカワ文庫 SF 314)

 

 

69. アルケミスト / パウロ・コエーリョ(1988年)

 

半飼いの少年サンチャゴは、その夜もまた同じ夢を見た。一週間前にも見た、ピラミッドに宝物が隠されているという夢――。少年は夢を信じ、飼っていた羊たちを売り、ひとりエジプトに向かって旅にでる。
アンダルシアの平原を出て、砂漠を越え、不思議な老人や錬金術師の導きと、さまざまな出会いと別れをとおし、少年は人生の知恵を学んでいく。
「前兆に従うこと」「心の声を聞くこと」「何かを強く望めば宇宙のすべてが協力して実現するように助けてくれること」――。
長い旅のあと、ようやくたどり着いたピラミッドで、少年を待ち受けていたものとは――。人生の本当に大切なものを教えてくれる愛と勇気の物語。

 

世界的なベストセラーなのでもはや説明不要かもしれない。

私は浪人中に駿台予備校の名物英語講師に勧められて読んだのだが、ずばり人生を変える1冊となった。

さて、思い出話は置いといて本作の素晴らしいところは自己啓発書的な物語でありつつも、優れた冒険小説でありエンタメ要素が高いという点であろう。

どんなに良い本でも面白くなければ読みたくはならない。本作は素晴らしいエンターテイメント作品なのである。

アルケミスト 夢を旅した少年 (角川文庫)
 

 

70 アルカトラズ幻想 / 島田荘司(2012年)

 

一九三九年十一月二日、ワシントンDCのジョージタウン大学脇にあるグローバーアーチボルド・パークの森の中で、娼婦の死体が発見された。被害者は両手をブナの木の枝から吊るされ、性器の周辺がえぐられたため股間から膣と子宮が垂れ下がっていた。時をおかず第二の殺人事件も発生し、被害者には最初の殺人と同様の暴虐が加えられていた。凄惨な猟奇殺人に世間も騒然とする中、恐竜の謎について独自の理論を展開される「重力論文」を執筆したジョージタウン大学の大学院生が逮捕され、あのアル・カポネも送られたサンフランシスコ沖に浮かぶ孤島の刑務所、アルカトラズに収監される。やがて、ある事件をきっかけに犯人は刑務所を脱獄し、島の地下にある奇妙な場所で暮らし始めるが……。先端科学の知見と作家の奔放な想像力で、現代ミステリーの最前線を走る著者の渾身の一作がついにベールを脱ぐ!

 

 島田御大の到達点というところだろうか。まさにゴッドオブミステリーである。

はっきり言って小説の体を成していないハチャメチャ作品なのかもしれないが、ミステリーの求道者は死んでも読むべき1冊である。

猟奇的殺人、恐竜絶滅の謎、アルカトラズ刑務所、地球空洞説、パンプキン王国???

開いた口が塞がらない伝説の作品である。

アルカトラズ幻想 上 (文春文庫)

アルカトラズ幻想 上 (文春文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 2015/03/10
  • メディア: 文庫
 
 

71. 羆嵐 / 吉村昭(1977年)

 

北海道天塩山麓の開拓村を突然恐怖の渦に巻込んだ一頭の羆の出現!日本獣害史上最大の惨事は大正4年12月に起った。冬眠の時期を逸した羆が、わずか2日間に6人の男女を殺害したのである。鮮血に染まる雪、羆を潜める闇、人骨を齧る不気味な音…。自然の猛威の前で、なす術のない人間たちと、ただ一人沈着に羆と対決する老練な猟師の姿を浮彫りにする、ドキュメンタリー長編。

 

 まるでその場で惨劇を見ているかのような最強のリアリティ小説である。

描写の臨場感は尋常ではなく、読んでいると羆の息遣いがすぐそこで聞こえてくるようで、相手はクマなので言うまでもなく残虐さも最恐クラスである。

 くまのプーさんが危険なファンタジーであることが分かる強烈な一冊。

羆嵐 (新潮文庫)

羆嵐 (新潮文庫)

  • 作者:昭, 吉村
  • 発売日: 1982/11/29
  • メディア: 文庫
 

 

72. Another / 綾辻行人(2009)

 

夜見山北中学三年三組に転校してきた榊原恒一は、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に違和感を覚える。同級生で不思議な存在感を放つ美少女ミサキ・メイに惹かれ、接触を試みる恒一だが、謎はいっそう深まるばかり。そんな中、クラス委員長の桜木が凄惨な死を遂げた! この”世界”ではいったい何が起きているのか!?

 

 萌え系学園ホラーミステリー

文体からしてかなりラノベ寄りの作品だが、ホラーとしてもミステリーとしても非常によくできた作品である。

私は小説でしかできないあのトリックを妻に思い知らせたくて、本作のアニメ版を無理やり見せたら無事に「えッ!?」と言わせることに成功した。

Another

Another

  • 作者:綾辻 行人
  • 発売日: 2009/10/30
  • メディア: 単行本
 

 

73. 鹿の王 / 上橋菜穂子(2014年)

 

強大な帝国・東乎瑠から故郷を守るため、死兵の役目を引き受けた戦士団“独角”。妻と子を病で失い絶望の底にあったヴァンはその頭として戦うが、奴隷に落とされ岩塩鉱に囚われていた。ある夜、不気味な犬の群れが岩塩鉱を襲い、謎の病が発生。生き延びたヴァンは、同じく病から逃れた幼子にユナと名前を付けて育てることにする。一方、謎の病で全滅した岩塩鉱を訪れた若き天才医術師ホッサルは、遺体の状況から、二百五十年前に自らの故国を滅ぼした伝説の疫病“黒狼熱”であることに気づく。征服民には致命的なのに、先住民であるアカファの民は罹らぬ、この謎の病は、神が侵略者に下した天罰だという噂が流れ始める。古き疫病は、何故蘇ったのか―。治療法が見つからぬ中、ホッサルは黒狼熱に罹りながらも生き残った囚人がいると知り…!?たったふたりだけ生き残った父子と、命を救うために奔走する医師。生命をめぐる壮大な冒険が、いまはじまる―!

 

 本屋大賞の大賞受賞作品。

 ファンタジー×医療サスペンスという面白くないはずがない組み合わせで、読めば読むほど止まらなくなる超面白本である。

 様々な政治的な思惑が交錯する中、伝説の疫病“黒狼熱”を用いたバイオテロというもはやあまりファンタジーっぽくない本気っぷりが見どころだ。

 二組の男女の絶妙な距離感が素晴らしい隠れ恋愛小説でもある。

 

〇個別紹介記事

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鹿の王文庫全4巻セット(角川文庫)

鹿の王文庫全4巻セット(角川文庫)

 

 

74. 鹿の王 水底の橋 / 上橋菜穂子(2019年)

 

伝説の病・黒狼熱大流行の危機が去った東乎瑠帝国では、次の皇帝の座を巡る争いが勃発。そんな中、オタワルの天才医術師ホッサルは、祭司医の真那に誘われて恋人のミラルと清心教医術発祥の地・安房那領を訪れていた。そこで清心教医術の驚くべき歴史を知るが、同じころ安房那領で皇帝候補のひとりの暗殺未遂事件が起こる。様々な思惑にからめとられ、ホッサルは次期皇帝争いに巻き込まれていく。『鹿の王』、その先の物語!

 

 鹿の王のその後の物語ではあるが、前作との繋がりは希薄で物語の方向性も異なるため外伝にあたる作風である。こちらも本編に勝るとも劣らない傑作だ。

 ファンタジー要素はますます薄れ、医療サスペンスの度合いが大幅に高まると同時に、恋愛小説としてもパワーアップしている。

 上橋菜穂子の類稀なる物語だけでなく、技巧も冴えわたる作品である。

 

鹿の王 水底の橋 (角川文庫)

鹿の王 水底の橋 (角川文庫)

 

 

75. 犬神家の一族 / 横溝正史(1951年)

 

信州財界一の巨頭、犬神財閥の創始者犬神佐兵衛は、血で血を洗う葛藤を予期したかのような遺言状を残して永眠した。佐兵衛は生涯正室を持たず、女ばかり三人の子があったが、それぞれ生母を異にしていた。一族の不吉な争いを予期し、金田一耕助に協力を要請していた顧問弁護士事務所の若林がやがて何者かに殺害される。だが、これは次々と起こる連続殺人事件の発端にすぎなかった! 血の系譜をめぐる悲劇、日本の推理小説史上の不朽の名作!!

 

不気味な白いマスクと池にぶっ刺さった逆立ち死体でおなじみの国民的大傑作....にも関わらず今では原作はおろか映画の内容すら知らない人が大多数かもしれない。

少々強引な点を差し引いても推理小説として非常に良くできていて、娯楽性も申し分ないという稀代のエンターテイメント作品である。

原作を読んでいないのなら今すぐ読むべし!

 

犬神家の一族 金田一耕助ファイル 5 (角川文庫)

犬神家の一族 金田一耕助ファイル 5 (角川文庫)

  • 作者:横溝 正史
  • 発売日: 1972/06/12
  • メディア: 文庫
 

 

76. 花嫁の家 / 郷内心瞳(2014年)

 

拝み屋を営む著者が、これまで一度も最後まで語ることも記録に残すことも許されなかった。忌まわしき怪異譚をここに開陳する。“花嫁が必ず死ぬ”といわれる東北の旧家では、これまで代々の花嫁が数年の内に亡くなっていた。この家に嫁いだ女性から相談を受けた著者は、幾度も不可解な現象に悩まされる―。戦慄の体験談「花嫁の家」と、「母様の家」の連作4篇を収録した怪談実話集。

 

 知る人ぞ知る最恐ホラー小説。

しかし『花嫁の家』の特筆すべき点はその怖さだけでなく、練りに練った物語の構成と優れたサスペンスであるということだ。

 とにかく話が面白く、めちゃくちゃ怖いのにゴリゴリ読み進めてしまうのは間違いない。様々な伏線が恐怖で恐怖で結びついた時の鳥肌の立ち方は尋常ではない。

 なぜか文庫が絶版しており、前作が角川ホラー文庫から再販されているにも関わらず、本作が再販されないのが禍々しさを助長する。

 ちなみに前作を読んでから読むと恐怖が2割増しになる。

 

拝み屋郷内 花嫁の家 (MF文庫ダ・ヴィンチ)
 

 

77. puzzle / 恩田陸(2000年)

 

学校の体育館で発見された餓死死体。高層アパートの屋上には、墜落したとしか思えない全身打撲死体。映画館の座席に腰掛けていた感電死体―コンクリートの堤防に囲まれた無機質な廃墟の島で見つかった、奇妙な遺体たち。しかも、死亡時刻も限りなく近い。偶然による事故なのか、殺人か?この謎に挑む二人の検事の、息詰まる攻防を描く驚愕のミステリー。

 

 恩田陸的な投げっぱなし感が強烈な中編幻想ミステリ。

広義のミステリとしてみれば素晴らしいのだが、本格推理小説としてみると途端に壁投げ本と化すというかなり好みが分かれる作品だが、幻想的な雰囲気は恩田陸ならではの美しさがある。

200ページに満たない尺でやりたい放題やらかしてるのが最高。

puzzle (祥伝社文庫)

puzzle (祥伝社文庫)

  • 作者:恩田 陸
  • 発売日: 2000/10/01
  • メディア: 文庫
 

 

78. パノラマ島奇談 / 江戸川乱歩(2008年)

 

小説家人見広介は、自分と瓜二つの旧友、菰田源三郎の急死を知らされる。広介は大富豪の源三郎になりすまし、菰田家の莫大な財産を手に入れるという、荒唐無稽な計画を実行する。そして広介は、無人の孤島に自分が空想した終生の夢のパノラマ島を創り上げた!パノラマ島で展開される妖美な幻覚ともいえるあやしの怪奇譚は、読者を夢幻の世界へと誘い込んでゆく・・・・・・。 表題作のほか、「白昼夢」「鬼」「火縄銃」「接吻」4編を収録。

 

おそらく最も江戸川乱歩要素が濃厚に凝縮された変態世界の到達点である。

乱歩に変態×おバカな男を描かせたら並ぶものがいないのは誰もが認めるところであろうが(?)、『パノラマ島奇談』ではおバカで変態な男の夢のスケールがデカすぎるのである。

心に焼き付く幻想的な世界観は唯一無二の美しさを放つ。

 

パノラマ島奇談 (江戸川乱歩文庫)

パノラマ島奇談 (江戸川乱歩文庫)

 

 

79. 三体 / 劉 慈欣(2008年)

 

物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望した中国人エリート女性科学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)。失意の日々を過ごす彼女は、ある日、巨大パラボラアンテナを備える謎めいた軍事基地にスカウトされる。そこでは、人類の運命を左右するかもしれないプロジェクトが、極秘裏に進行していた。
数十年後。ナノテク素材の研究者・汪淼(ワン・ミャオ)は、ある会議に招集され、世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられる。その陰に見え隠れする学術団体〈科学フロンティア〉への潜入を引き受けた彼を、科学的にありえない怪現象〈ゴースト・カウントダウン〉が襲う。そして汪淼が入り込む、三つの太陽を持つ異星を舞台にしたVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは

 

アジア作家初のヒューゴー賞受賞作という超話題作。

最初は中国人名や先が読めない展開に読みずらさを感じたが、ページが進めば進むほど猛烈に面白くなってくるという神仕様である。

こてこてのハードSFのようでありつつも、高いエンターテイメント性を兼ね備え、中国人的な発想なのか「計算陣形」や「飛刃」といった 登場する頃には脳内麻薬が爆裂しているだろう。

葉文潔にかなりイラっときたが、この意志の強さは中国人の性質なのだろうか。

ちなみにSF慣れしていない人には結構難しいと思うので注意。

 

三体

三体

  • 作者:劉 慈欣
  • 発売日: 2019/07/04
  • メディア: ハードカバー
 

 

80. リング / 鈴木光司(1991年)

 

同日の同時刻に苦悶と驚愕の表情を残して死亡した四人の少年少女。雑誌記者の浅川は姪の死に不審を抱き調査を始めた。―そしていま、浅川は一本のビデオテープを手にしている。少年たちは、これを見た一週間後に死亡している。浅川は、震える手でビデオをデッキに送り込む。期待と恐怖に顔を歪めながら。画面に光が入る。静かにビデオが始まった…。恐怖とともに、未知なる世界へと導くホラー小説の金字塔。

 

 国民的アイドル貞子が活躍するジャパニーズホラーの超傑作である。

 意外かもしれないがあまり怖くはなく、呪いのビデオによってかけられた一週間後に死ぬという呪いから逃れる方法を論理的に解明していくホラー×ミステリである。
とはいえいかにも怖がらせようとする恐怖描写はなくても不気味さはあるためそれなりには怖いかもしれない。

 ホラーと言うよりはむしろ愛する者の命を救うため、全身全霊をかけて呪いに挑むという熱い物語なので、小説として純粋におすすめできる大傑作である。

 

リング (角川ホラー文庫)

リング (角川ホラー文庫)

  • 作者:鈴木 光司
  • 発売日: 1993/04/30
  • メディア: 文庫
 

 

81. らせん / 鈴木光司(1995年)

 

幼い息子を海で亡くした監察医の安藤は、謎の死を遂げた友人・高山竜司の解剖を担当した。冠動脈から正体不明の肉腫が発見され、遺体からはみ出た新聞紙に書かれた数字は、ある言葉を暗示していた。…「リング」とは?死因を追う安藤が、ついに到達する真理。それは人類進化の扉か、破滅への階段なのか。史上かつてないストーリーと圧倒的リアリティで、今世紀最高のカルトホラーとしてセンセーションを巻き起こしたベストセラー。

 

 『リング』がミステリ小説でいうところの問題編だとすると、『らせん』は解答編にあたる作品である。

 呪いの正体が”あるもの”であることが判明するため、ジャパニーズホラー的なノリはほとんどなく、物語も別の路線として大きな飛躍を遂げているのだが、考えようによってはこちらの方が怖いかもしれない。

 設定がいろいろとブッ飛んでいるので、ホラー好きというよりもSF好きであれば絶対に読まなければならないだろう。

らせん - (角川ホラー文庫)

らせん - (角川ホラー文庫)

  • 作者:鈴木 光司
  • 発売日: 2000/04/06
  • メディア: 文庫
 

 

82. ループ / 鈴木光司(1998年)

 

科学者の父親と穏和な母親に育てられた医学生の馨にとって家族は何ものにも替えがたいものだった。しかし父親が新種のガンウィルスに侵され発病、馨の恋人も蔓延するウィルスに感染し今や世界は存亡の危機に立たされた。ウィルスはいったいどこからやって来たのか?あるプロジェクトとの関連を知った馨は一人アメリカの砂漠を疾走するが…。そこに手がかりとして残されたタカヤマとは?「リング」「らせん」で提示された謎と世界の仕組み、人間の存在に深く迫り、圧倒的共感を呼ぶシリーズ完結編。否応もなく魂を揺さぶられる鈴木文学の最高傑作。

 

一体どうやったらこんな展開を思いつくのだろうかというハードSF作品である。
『リングシリーズ』3作目だがホラー要素はまったく無い。

とにかく設定が予想の斜め上を言っていることは間違いなく、SF好きなら確実に押さえていただきたいところだ。

愛する者のためにすべてをかけた熱い男の物語としても至高。

 

kodokusyo.hatenablog.com

ループ (角川ホラー文庫)

ループ (角川ホラー文庫)

  • 作者:鈴木 光司
  • 発売日: 2000/09/07
  • メディア: 文庫
 

 

83. アラビアの夜の種族 / 古川日出夫(2001年)

 

語られるのは、存在しない物語。13世紀エジプトを舞台とした奇書の登場!
聴きたい者の前に、物語は姿を見せる。ナポレオンのエジプト侵攻をくい止めるため、奴隷アイユーブが探しだした「災厄の書」。そして、物語が現実を浸食し始める。

 

  なぜか日本推理作家協会賞日本SF大賞をW受賞しているが、内容的には推理要素もSF要素も皆無に等しく、純粋なファンタジー小説である。

 しかも剣と魔法全開のこてこてのファンタジーにも関わらずラノベではないことが大きなポイント。『アラビアの夜の種族』は”Wizardry”小説なのである。

 面白い架空の物語を書いて献上することによって、エジプトに侵攻してくるナポレオン軍を退けちゃお☆といったふざけた本なのだが、何も考えずに読めばこれほど世界観に引きずり込まれる小説はない。

 

アラビアの夜の種族 I (角川文庫)

アラビアの夜の種族 I (角川文庫)

 

 

84. ゴーストハント / 小野不由美(1930年)

 

 学校の旧校舎には取り壊そうとすると祟りがあるという怪奇な噂が絶えない。心霊現象の調査事務所である渋谷サイキックリサーチ(SPR)は、校長からの依頼で旧校舎の怪異現象の調査に来ていた。高等部に通う麻衣はひょんなことから、SPRの仕事を手伝うことに。なんとその所長は、とんでもなく偉そうな自信家の17歳になる美少年、渋谷一也(通称ナル)。調査に加わるのは個性的な霊能者たち。ミステリ&ホラーシリーズ。

 

 小野不由美と言ったらホラー×ミステリーの名手だが、結構読みずらい本が多いので、手に取る本を誤ると挫折する可能性もあるかもしれない。

代表作である『十二国記』ですらけっこう読みずらいのである。
そんな中この『ゴーストハント』はとても読みやすく、魅力的なキャラクターたちによって繰り広げられる、超高品質なホラー×ミステリーである。

もともとはティーン向けの作品だったが、怪奇現象を例の仕業なのか人間の仕業なのか論理的に追及する流れは大人が読んでも楽しむことができる。

 

〇紹介記事

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ゴーストハント1 旧校舎怪談 (角川文庫)

ゴーストハント1 旧校舎怪談 (角川文庫)

 

 

85. 八つ墓村 / 横溝正史(1950年)

 

戦国の頃、三千両の黄金を携えた八人の武者がこの村に落ちのびた。だが、欲に目の眩んだ村人たちは八人を惨殺。その後、不祥の怪異があい次ぎ、以来この村は“八つ墓村"と呼ばれるようになったという――。大正×年、落人襲撃の首謀者田治見庄左衛門の子孫、要蔵が突然発狂、三十二人の村人を虐殺し、行方不明となる。そして二十数年、謎の連続殺人事件が再びこの村を襲った……。現代ホラー小説の原点ともいうべき、シリーズ最高傑作! !

 

何度も映像化されているため誰もが名前だけは知っている作品だと思うが、意外に原作を読んでいる方は多くないのではないだろうか。

映像作品の影響でおどろおどろしい先入観を持っている方が多いと思われるが、映像化作品は原作に忠実ではないようで、実際はおどろおどろしさはほとんどない。

それどころかこれでもかというほどの萌え要素が詰め込まれているので、萌え豚は何がなんでも読もう。

八つ墓村 (角川文庫)

八つ墓村 (角川文庫)

  • 作者:横溝 正史
  • 発売日: 1971/04/26
  • メディア: 文庫
 

 

86. リカ / 五十嵐貴久(2002年)

 

妻子を愛する42歳の平凡な会社員、本間は、出来心で始めた「出会い系」で「リカ」と名乗る女性と知り合う。しかし彼女は、恐るべき“怪物”だった。長い黒髪を振り乱し、常軌を逸した手段でストーキングをするリカ。その狂気に追いつめられた本間は、意を決し怪物と対決する。単行本未発表の衝撃のエピローグがついた完全版。第2回ホラーサスペンス大賞受賞。

 

 おっさんが出会い系に手を出したらとんでもない化け物にストーカーされちゃった!という、THEホラーサスペンスな作品である。

貴志祐介の傑作ホラー『黒い家』にノリが近いのだが、『リカ』はリアリティよりも純粋なホラーとしての要素が強く、リカが人間離れし過ぎているのがポイント。

 お世辞にも面白いとは言えない続編が何作も出ているが、著者のデビュー作でありシリーズ1作目となる『リカ』は文句なしに面白い。
 

リカ (幻冬舎文庫)

リカ (幻冬舎文庫)

 

 

87. 陽だまりの彼女 / 越谷オサム(2008年)

 

 幼馴染みと十年ぶりに再会した俺。かつて「学年有数のバカ」と呼ばれ冴えないイジメられっ子だった彼女は、モテ系の出来る女へと驚異の大変身を遂げていた。でも彼女、俺には計り知れない過去を抱えているようで―その秘密を知ったとき、恋は前代未聞のハッピーエンドへと走りはじめる!誰かを好きになる素敵な瞬間と、同じくらいの切なさもすべてつまった完全無欠の恋愛小説。


 ありがちな恋愛小説っぽくて話自体も王道恋愛小説といった具合に進行するのだが、彼女の正体というミステリー要素が読者をグイグイ引っ込み一気読み確定な作品となっている。

話が進むとファンタジー要素も入ってきてますます読む手は加速していき、ラストは読者によってだいぶ感想が異なってくると思う。

 特に男女でハッピーエンドと見るかバッドエンドと見るか変わってくると思う。
ちなみに私はバッドだと思う(泣)

 

陽だまりの彼女 (新潮文庫)

陽だまりの彼女 (新潮文庫)

 

 

88. パラサイト・イブ / 瀬名秀明(1995年)

 

事故で亡くなった愛妻の肝細胞を密かに培養する生化学者・利明。Eve 1と名付けられたその細胞は、恐るべき未知の生命体へと変貌し、利明を求めて暴走をはじめる―。空前絶後の着想と圧倒的迫力に満ちた描写で、読書界を席巻したバイオ・ホラー小説の傑作。

 

私が人生で初めて自分でお金を払って買って読了した小説なのでとにかく思い入れのある作品だ。

ミトコンドリアが人間に反逆するというブッ飛んだ内容も、科学者である著者の手にかかれば圧倒的なリアリティで描かれ、小学生だった当時は本気でビビった記憶が懐かしい。

最初の日本ホラー小説大賞の大賞受賞作ということもあり、その完成度はとても高く時が経っても廃れない傑作である。

 

パラサイト・イヴ (新潮文庫)

パラサイト・イヴ (新潮文庫)

 

 

89. メドゥサ、鏡をごらん / 井上夢人(2000年)

 

作家・藤井陽造は、コンクリートを満たした木枠の中に全身を塗り固めて絶命していた。傍らには自筆で〈メドゥサを見た〉と記したメモが遺されており、娘とその婚約者は、異様な死の謎を解くため、藤井が死ぬ直前に書いていた原稿を探し始める。だが、何かがおかしい。次第に高まる恐怖。そして連鎖する怪死! 身の毛もよだつ、恐怖の連鎖が始まる

 

 謎が謎を呼ぶ最強一気読み小説。

ミステリーでありホラーであり、SFっぽくもある本作だが、読んでいる最中の面白さは最強と呼ぶにふさわしい。気が付けば徹夜していることだろう。

最も井上夢人らしい作品だとも思っており、岡嶋二人時代の超名作『クラインの壺』的な感覚を彷彿とさせられる。

メドゥサ、鏡をごらん (講談社文庫)

メドゥサ、鏡をごらん (講談社文庫)

 

 

90. われはロボット / アイザック・アシモフ(1950年)

 

ロボットは人間に危害を加えてはならない。人間の命令に服従しなければならない…これらロボット工学三原則には、すべてのロボットがかならず従うはずだった。この三原則の第一条を改変した事件にロボット心理学者キャルヴィンが挑む「迷子のロボット」をはじめ、少女グローリアの最愛の友である子守り用ロボットのロビイ、ひとの心を読むロボットのハービイなど、ロボット工学三原則を創案した巨匠が描くロボット開発史。

 

有名なロボット工学三原則に基づいて発生する事故を解明していくような連作短編集で、壮大なSF作品であると同時に、意外にもミステリ要素が強く読む手が止まらなくなってしまうタイプの作品である。

(最後の話以外)読みやすく、ユーモアがあり学べることも多いというお得な内容で、これほどセンス・オブ・ワンダーを感じやすい作品はないんじゃないかというような大傑作。

 

 

91. 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない / 桜庭一樹(2004年)

 

その日、兄とあたしは、必死に山を登っていた。見つけたくない「あるもの」を見つけてしまうために。あたし=中学生の山田なぎさは、子供という境遇に絶望し、一刻も早く社会に出て、お金という“実弾”を手にするべく、自衛官を志望していた。そんななぎさに、都会からの転校生、海野藻屑は何かと絡んでくる。嘘つきで残酷だが、どこか魅力的な藻屑となぎさは序々に親しくなっていく。だが、藻屑は日夜、父からの暴力に曝されており、ある日―。直木賞作家がおくる、切実な痛みに満ちた青春文学。

 

 最強に面白いという形容詞がふさわしい作品ではないが、魔力と言っても良い不思議な魅力があり、読み始めたら一心不乱に最後まで読み進めてしまう作品。

 読む前のイメージと読んだ後の印象が天と地ほどの差があり、えげつなさが精神にダメージとせつなさをもたらす。

ちょくちょく名前を見る作品だし、短くて読みやすそうだからという理由で読んだのだが、想定外の素晴らしい読書体験となった。

 

 

92. 塗仏の宴 / 京極夏彦(1998年)

 

「知りたいですか」。郷土史家を名乗る男は囁く。「知り――たいです」。答えた男女は己を失い、昏(くら)き界(さかい)へと連れ去られた。非常時下、大量殺戮の果てに伊豆山中の集落が消えたとの奇怪な噂。敗戦後、簇出(そうしゅつ)した東洋風の胡乱(うろん)な集団6つ。15年を経て宴の支度は整い、京極堂を誘い出す計は成る。シリーズ第6弾。

「愉しかったでしょう。こんなに長い間、楽しませてあげたんですからねえ」。その男はそう言った。蓮台寺温泉裸女殺害犯の嫌疑で逮捕された関口巽と、伊豆韮山の山深く分け入らんとする宗教集団。接点は果たしてあるのか? ようやく乗り出した京極堂が、怒りと哀しみをもって開示する「宴(ゲーム)」の驚愕の真相。

 

 絡新婦の理で「こんな複雑な事件がこの世にあったとは.....」と思ったが、塗仏はさらにスケールアップしていて驚愕してしまった。

洗脳、催眠、気功等などそっち系の要素がフルコースで提供されるため、オカルトマニアは何が何でも読むべき1冊である。

 レンガ本オンリーの『百鬼夜行シリーズ』でも最長のページ数を誇っているが、シリーズの中でも最もエンタメ要素が高く、前半の支度は連作短編の形式で描かれているため、あまり長さを感じることはなく読みやすい。

 

文庫版 塗仏の宴 宴の支度 (講談社文庫)

文庫版 塗仏の宴 宴の支度 (講談社文庫)

  • 作者:京極 夏彦
  • 発売日: 2003/09/12
  • メディア: 文庫
 
文庫版 塗仏の宴 宴の始末 (講談社文庫)

文庫版 塗仏の宴 宴の始末 (講談社文庫)

  • 作者:京極 夏彦
  • 発売日: 2003/10/15
  • メディア: 文庫
 

 

93. 夜市 / 恒川光太郎(2009年)

 

妖怪たちが様々な品物を売る不思議な市場「夜市」。ここでは望むものが何でも手に入る。小学生の時に夜市に迷い込んだ裕司は、自分の弟と引き換えに「野球の才能」を買った。野球部のヒーローとして成長した裕司だったが、弟を売ったことに罪悪感を抱き続けてきた。そして今夜、弟を買い戻すため、裕司は再び夜市を訪れた―。奇跡的な美しさに満ちた感動のエンディング!魂を揺さぶる、日本ホラー小説大賞受賞作。


  日本ホラー小説大賞受賞作した『夜市』と表題作以上に素晴らしい『風の古道』を収録した中編集である。

 どちらの作品もホラー要素はあまり強くなく、美しく儚い幻想的な世界観のダークファンタジーで、表題作はジブリの『千と千尋の神隠し』のような印象もある。
圧巻は『風の古道』であり、映像化など絶対にできない圧倒的な異世界に読者を導いてくれるだろう。

日常に疲れて現実逃避したい時にはこれ以上のものはないだろう。

 

夜市 (角川ホラー文庫)

夜市 (角川ホラー文庫)

 

 

 

94. 墓地を見おろす家 / 小池真理子(1993年)

 

新築・格安、都心に位置するという抜群の条件の瀟洒なマンションに移り住んだ哲平一家。問題は何一つないはずだった。ただ一つ、そこが広大な墓地に囲まれていたことを除けば…。やがて、次々と不吉な出来事に襲われ始めた一家がついにむかえた、最悪の事態とは…。復刊が長く待ち望まれた、衝撃と戦慄の名作モダン・ホラー

 

 なかなか怖い本だが、霊がめっちゃアグレッシブでやたら面白いのがポイント。

ホラー小説は怖さを重視するとエンタメ性が低下するし、面白くしようとすると怖くなくなるというパターンに陥るが、『墓地を見おろす家』は恐怖とエンタメのバランスがよくとても面白い。

おとなしそうな装丁からは予想もつかない大暴れが待っている。

 

墓地を見おろす家 (角川ホラー文庫)

墓地を見おろす家 (角川ホラー文庫)

 

 

95. 酒気帯び車椅子 / 中島らも(2004年)

 

家族をこよなく愛する小泉は中堅の商社に勤める平凡なサラリーマン。彼は、土地売買の極秘巨大プロジェクトを立ち上げた。必死の思いで進めた仕事のメドがたったある日、計画を知るという謎の不動産屋から呼び出される。彼を待っていたのは暴力団だった。家族を狙うという脅しにも負けず敢然と立ち向かう小泉だったが…。容赦ない暴力とせつない愛が交差する中島らもの遺作バイオレンス小説。

 

 エンタメを追求することにすべてをかけたような著者の遺作。

のほほん→地獄→復讐→皆殺しと実にシンプルに話は進むが、著者のセンスの良いギャグが随所に入れられることにより、普通ならどんより激重な話になりそうなところだが、清々しさと爽快感が溢れる仕様となっている。

 

 〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

酒気帯び車椅子 (集英社文庫)

酒気帯び車椅子 (集英社文庫)

  • 作者:中島 らも
  • 発売日: 2008/07/18
  • メディア: 文庫
 

 

96. ジェノサイド / 高野和明(2011年)

 

創薬化学を専攻する大学院生・研人のもとに死んだ父からのメールが届く。傭兵・イエーガーは難病を患う息子のために、コンゴ潜入の任務を引き受ける。2人の人生が交錯するとき、驚愕の真実が明らかに――。

 

 絶対に読むべき1冊である。はっきり言ってあまり万人受けする作品ではないと思うのだが、それでもベストセラーになったのはまだまだ日本人も捨てたもんじゃないな...などと調子に乗ったことを思ってしまった。

私の感想は本作はエンタメに振り切った作品ではなく、著者の政治的な思想が色濃く出ている社会派ミステリーであるため、エンタメに振り切らなかったという点で少々惜しいのだが、その点を差し引いても、これを読まずして何を読むのかというレベルの作品である。

小説を通じて何かを学びたいという方にはうってつけの素晴らしい内容である。

ジェノサイド

ジェノサイド

  • 作者:高野 和明
  • 発売日: 2011/03/30
  • メディア: 単行本
 

 

97. MAZE / 恩田陸(2001年)

 

アジアの西の果て、荒野に立つ直方体の白い建物。一度中に入ると、戻れない人間が数多くいるらしい。その「人間消失のルール」を解明すべくやってきた男たちは、何を知り得たのか?めくるめく幻想と恐怖に包まれる長編ミステリー。人間離れした記憶力を持ち、精悍な面差しで女言葉を繰り出す、魅惑のウイルスハンター・神原恵弥を生み出した、シリーズ第一作!

 

 これこそが真のミステリーと言いたい、SFやファンタジー要素の強い作品である。

恩田陸の良いところと悪いところ(笑)がぎっしり詰まっているので、本格ミステリ好きは肩透かしかもしれないが、ミステリー寄りの恩田作品に慣れたファンなら感涙モノだろう。ずばりおすすめ。

 

MAZE 新装版 (双葉文庫)

MAZE 新装版 (双葉文庫)

  • 作者:恩田 陸
  • 発売日: 2015/04/16
  • メディア: 文庫
 

 

98. メアリー・スーを殺して / 著者複数(2016年)

 

奇想ホラーの名手・乙一を筆頭に、
感涙ラブコメ中田永一、異色ホラーの山白朝子、
そして'10年以降沈黙を守っていた越前魔太郎、と鬼才4名が揃い踏み、幻夢の世界を展開する。
そしてその4名を知る安達寛高氏が、それぞれの作品を解説。

 

 乙一のすべてが結集した究極の一人アンソロジーである。

別名義も含めた乙一のすべてが堪能できるだけでなく、乙一の本名名義で各短編の解説もされているという徹底された乙一本だ。

名義が変われば作風もばっちり変わるため、バラエティ豊かであり個々の作品は名義ごとの個性が色濃く出ていて完成度も高い。

乙一ファンだが別名義の作品は追えていなかったという方には超おすすめだ。

 

 

99. 屋上 / 島田荘司(2016年)

 

 自殺する理由がない男女が、次々と飛び降りる屋上がある。足元には植木鉢の森、周囲には目撃者の窓、頭上には朽ち果てた電飾看板。そしてどんなトリックもない。死んだ盆栽作家と悲劇の大女優の祟りか?霊界への入口に名探偵・御手洗潔は向かう。人智を超えた謎には「読者への挑戦状」が仕掛けられている!

 

 ゴッドオブミステリーによる最強のバカミスである。

賛否両論を呼んでいるが、本格推理小説として考えずに純粋にエンタメ作品としてみれば稀に見る傑作である。

これでもかというほど自殺するはずがない人が次々と屋上から飛び降り自殺するという怪事件が、アホみたく面白おかしく描かれる。

 島田御大はたまに笑える作品を書かれるのだが、『屋上』はお笑い本としては最高傑作であり、ミステリーとしてもしっかりしているので万人におすすめ。

 

〇個別紹介記事

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屋上 (講談社文庫)

屋上 (講談社文庫)

 

100. 嫉妬事件 / 乾くるみ(2011年)

 

城林大ミステリ研究会で、年末恒例の犯人当てイベントが開催され、サークル一の美人・赤江静流が、長身の彼氏を部室へ連れてきた当日、部室の本の上には、あるものが置かれていた。突如現れたシットを巡る尾篭系ミステリの驚愕の結末とは!?「読者への挑戦」形式の書き下ろし短編、「三つの質疑」も特別収録。

 

 まさにクソな内容だが、いろいろな意味ですごい本である。

とにかく人に読ませたいという強い衝動を呼び起こさせる、汚すぎるが論理的な内容は著者ならではなのだろう。

まぁいないとは思うが推理小説が好きな女性がいたら、悪意を持って強くおすすめしてしまいそうだ。

 

嫉妬事件 (文春文庫)

嫉妬事件 (文春文庫)

  • 作者:乾 くるみ
  • 発売日: 2011/11/10
  • メディア: 文庫
 

 

神本探しに終わりはない

 素晴らしい本に出会ったらその都度作品を入れ替えながら更新していく。

 この記事が読書好きやこれから小説を読もうと考えている方の参考になれば幸いである。

 

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