神本を求めて

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『霧が晴れた時/牛の首』小松左京|SFホラー短編の最高到達点

SF風味ホラーに紛れる真の恐怖譚

 

作品紹介

小松左京による『霧が晴れた時』および『牛の首』は1964年~1978年に発表されたされたホラー要素のある短編の傑作選である。各作品集には15編ずつ収録されていて、それぞれ文庫版でおよそ400ページ程度になる。国内SFの御三家として君臨する小松左京によるホラー作品を堪能できる良作品集である。

SF界の大御所だけあってSF要素がある作品が多数を占めるが、日本ホラーの最高傑作とも称される「くだんのはは」等、純粋なホラー作品も収録されている。いずれの作品も30ページ程度の短めな尺にも関わらず、読み応えのある傑作が揃っているので、あと一作品、あと一作品....とついつい読み耽ってしまうことだろう。

1993年に出版された『霧が晴れた時』はホラー短編の金字塔とされるだけあって、現在発表されているホラー短編の大半は、小松左京がすでに書いていた内容の焼き直しに過ぎないと思ってしまうほど、様々なタイプの恐怖譚をカバーしている。またいかにも「怖がらせるために書きました」といった浅はかな作品が一つもないのも素晴らしい。

 

 以下、あらすじの引用

『霧が晴れた時 自選恐怖小説集』

太平洋戦争末期、少年が屋敷で見た恐怖の真相とは!? 名作中の名作「くだんのはは」をはじめ、日本恐怖小説界に今なお絶大なる影響を与えつづける、ホラー短編の金字塔。

 

『厳選恐怖小説集 牛の首』

「あんな恐ろしい話はきいたことがない」と皆が口々に言いながらも、誰も肝心の内容を教えてくれない怪談「牛の首」。一体何がそんなに恐ろしいのかと躍起になって尋ね回った私は、話の出所である作家を突き止めるが――。話を聞くと必ず不幸が訪れると言われ、都市伝説としても未だ語り継がれる名作「牛の首」のほか、「白い部屋」「安置所の碁打ち」など、恐ろしくも味わい深い作品を厳選して収録した珠玉のホラー短編集。

 

収録作品など

各作品集の収録作品は以下の通り。2作品集まとめて紹介で全30作品もあるため、特に素晴らしいと感じた作品にフォーカスして紹介していく。

 

■『霧が晴れた時』収録作品

  • すぐそこ(69年) / まめつま(70年) / くだんのはは(68年)
    秘密(タプ)(73年) / 影が重なる時(63年) / 召集令状(64年)
    悪霊(73年) / 消された女(65年) / 黄色い泉(73年) / 逃げる(76年)
    蟻の国(63年) / 骨(72年) / 保護鳥(71年) / 霧が晴れた時(71年)
    さとるの化物(64年)

■『牛の首』収録作品

  • ツウ・ペア(73年) / 安置所の碁打ち(71年) / 十一人(64年)
    怨霊の国(71年) / 飢えた宇宙(68年) / 白い部屋(65年) / 猫の首(69年)
    黒いクレジット・カード(71年) / 空飛ぶ窓(74年) / 牛の首(65年)
    ハイネックの女(78年) / 夢からの脱走(65年) / 沼(64年)
    葎生の宿(73年) / 生きている穴(66年)

 

すぐそこ

一発目から個人的に最高に好きな作品である。田舎にハイキングに来ていた主人公が、国道に出るために近道しようとしたら、なかなか国道に出ることができず、地元民に道を訪ねると皆口をそろえて「すぐそこ」と言ってくるのである。最初からオチまで含めてとても良くできており、田舎と都会の心理的生活的な断絶から生まれた幽霊(?)の解説がたまらない。

また本作で語られる理論は後世の多くのホラー作品に影響を与えまくっていると思われる。そのためこれを読んでいると、他のホラー作家(またはSF作家)のこの手の作品を読んだ時に「あぁ...小松左京の「すぐそこ」パターンか....」と思ってしまうであろう。

 

まめつま

純粋なホラー作品である。しかもかなり凶悪。女性の扱いから昭和の気配をぷんぷん感じるのも高ポイントだろう。(女が読んだら怒るかもしれないが)
本作は言ってしまえば『呪怨残穢』型ホラーであり、20ページに満たない尺に恐怖要素がマシマシに盛られている。

 

くだんのはは

言わずと知れた日本ホラーの最高到達点。怖い話は平安時代から存在しているらしいし、江戸時代ともなれば有名な怪談も多数存在している。そんな中、本作は第二次世界大戦と結びついているという点で、昭和以降の最恐ホラーと言えると思う。

戦禍の描写が秀逸であるのは言うまでもなく、見てはならないと言われている娘の不気味さや、事の発端、結末に至るまで非の打ち所がない作品である。前述の通り怖がらせるために書いた恐怖譚とは一線を画した凄みを持っている。未読の方がいれば絶対に読むべき作品である。

 

秘密(タプ)

食人系のカンニバルホラーである。ただしそんじょそこらの食人もの(なんじゃそら)と比べて、これまた異様に完成度が高く、「不思議・不気味・残酷」だが、さほどグロくないし、知的なところが小松左京作品らしく素晴らしい

 

影が重なる時

星新一筒井康隆の某作品と近い印象感じる逸品。本作のポイントは他のSF御三家2名の某作品と異なり、ホラー作品とされているだけに、シチュエーションを想像すると不気味であること、オチを知るとSF要素が強いことがポイントである。

 

召集令状

超絶傑作。タイトル通り戦争が関わるが、時代背景は終戦後20年ほど経っている昭和の高度経済成長期である。戦争を知らない若者(といっても第二次世界大戦時に幼児だった世代)に突如、赤紙が届いて、召集時間になると赤紙を受け取ったものが消滅してしまうという作品である。

オチを知ると、ジョジョ好きの私としてはスケールの大きい超強力なスタンド攻撃のように感じてめちゃくちゃ熱くなってしまった。結末は救いようがないが....「天皇陛下万歳

 

黄色い泉

なかなかエロい古事記が関連する作品。時代背景もあるのかもしれないが、小松左京はエロ描写も頻繁に書くんですよな。女の野糞という私の大好きな(笑)シチュエーションからの「おっぱいのペラペラソース by バイオハザード4」的なノリはたまらないのである。異種交配輪姦とか好きな方の性癖を100%刺激するだろう。なおせつなくて悲しいので注意。

 

逃げる

ややコミカルでおバカ寄りの作品だが、いい感じの怪談になっていてオチが秀逸。女衒のおっさんに「足がヤバいことになっている(?)」いい女を紹介してもらってセクロスしちゃった後に衝撃の事実がッ!的な感じである。こんな作品を書けてしまうところも小松左京の凄いところだろう。

 

蟻の国

個人的にクトゥルフ神話が頭に浮かんだSFホラー(コズミックホラー型)の作品。不思議な事件から高次元的な恐怖に繋がる展開は小松左京ならではだと思う。1963年に発表された作品とのことで、小松左京の中でも最初期の作品なので、著者の根底にある世界観を知るという点でも読むべき作品だと思う。

 

保護鳥

海外旅行が怖くなる系の作品。某国に行った主人公が意味不明なことを熱心に地元民に聞かれるところから話は始まる。郷に入っては郷に従えというか、危険な好奇心は持ってはならないということが身に染みる。

 

霧が晴れた時

SF風味のあるある意味一番恐ろしい話。超好き。突然人が消える系の不思議な本作を未読の方は是非読んでほしい。怖い話には悪霊が怖い系、呪いが怖い系、人間が怖い系などがあるが、個人的には宇宙的恐怖こそ最恐だと思っている。

 

ツウ・ペア

『牛の首』収録の1発目であり、唯一のホラー作品と言えるかもしれない。他の作品はSF要素が強かったり、世にも奇妙な物語系であったりと、純粋なホラーは無い。

意味不明で理不尽な怪異に苦しむ話で、先に紹介した「召集令状」と同様、ジョジョ好きの私としては、発動条件が難しい代わりに強力かつ不可避なスタンド攻撃だと感じた。普通に面白い。

 

安置所の碁打ち

不思議不死系の物語。昭和を強く感じる描写も良い。ある日突然、様々な感度が鈍くなり、実は心臓が止まっていて肉体的には死んでいるのに、なぜか意識があるという謎の状況が面白い。全然怖くないが作品的には非常に面白く、また怖くないと言いつつ、終盤のシチュエーションを想像すると相当不気味である。

 

飢えた宇宙

The SFホラーである。宇宙船で乗組員が一人、また一人と消滅していくという話が、古典的なホラーとも結びついて意外な真相を知ることになる。男女が追い詰められた状況下でやることは一つ。無駄にエロシーン全開なところがツボ。

 

猫の首

自宅の塀に猫の切断された首が乗っているという、ネコ好きにはショッキングなシーンから話は始まる。私もネコを飼っているのでキツイところだが、小松左京氏も愛猫家だったらしい。

猫が殺される事件ものかと思いきや、実はなかなか面白い設定のディストピアSFであり、恐ろしい結末も含めて非常に面白い。

 

黒いクレジット・カード

典型的な世にも奇妙な物語系の作品。偶然拾った不気味なクレジットカードの謎も面白いが、何よりクレジットカードがまだあまり普及していない71年に書かれた作品であるため、当時のつけ払いの描写が面白い。

 

牛の首

まず間違いなくこの世で一番恐ろしい話である。そしてこれからも本作を超える恐怖は存在し得ないだろう。どんな話なのかはぜひ読んでみてほしい。あまりの恐ろしさに内容に触れることすら躊躇してしまうのだから....。

 

ハイネックの女

「牛の首」収録作品では個人的に最も面白かった作品。ネタバレ厳禁な内容のためあまり深く触れられないが、タイトル通りハイネックで首を隠している女の秘密がトンデモないことになっている。

日本の怪談とSFが悪魔合体した結果、良い感じに凄い話に仕上がった感じである。ちなみに小松左京作品を読むと、京極夏彦は影響受けてるんだろうなぁと思うことがたまにあるが、本作もそう思った作品である。

 

葎生の宿

山で道に迷った男が遭遇するそんなバカな系の話だが、ブッ飛び具合がとても面白い。そして超展開に至るまでの流れは不思議で美しい。デビュー長編の『日本アパッチ族からして奇想は本作でも全開である。

 

生きている穴

異次元に通じているっぽい生きた穴がいたるところに発生する話。穴はものだけでなく人間にもできるし、できても死にはしないという不気味な現象である。小松左京による穴のSF的解釈がとても面白い。

 

まとめ

全体的に『霧が晴れた時』に優秀なホラー作品が多いので、まずは『霧が晴れた時』を読んでみて、気に入ったら『牛の首』を読むことをおすすめする。小松左京といったら何と言っても『復活の日』や『日本沈没』が浮かぶかもしれないが、ホラー作家としても超一流であることが分かる。

 

 

 

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『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』ドニー・アイカー|地球最悪の禁足地

真の本格ミステリ

 

タイトルが滑っているのは堪忍

作品紹介

ドニー・アイカーによる『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』は2018年に河出書房新社より出版された、ディアトロフ峠事件を調査したノンフィクション作品で、文庫で400ページ程度の作品である。本国では2014年に出版されている。

男女9人のトレッカーが雪山で遭難して全滅するという事件だが、不可解な要素が多く「事実は小説よりも奇なり」を地で行くような怪奇事件であり、オカルトな超常現象説やソ連の秘密兵器説、宇宙人説、雪崩説など様々な見解が飛び交っている。そんな怪事件に魅せられたアメリカはフロリダの映画監督・ディレクター・ジャーナリストのドニー・アイカーが現地に赴き、まさに命をかけた調査の結果、極めて現実味のある真相を導き出すのが本作の内容である。

ノンフィクション作品ではあるが、構成がとても凝っているため、本格ミステリや冒険小説のようなエンターテイメント性があり、物語として純粋に楽しむことができるため、万人におすすめできる優れた作品となっている。

 

 以下、あらすじの引用

一九五九年、冷戦下のソ連ウラル山脈で起きた遭難事故。登山チーム九名はテントから一キロ半ほども離れた場所で、この世のものとは思えない凄惨な死に様で発見された。氷点下の中で衣服をろくに着けておらず、全員が靴を履いていない。三人は頭蓋骨折などの重傷、女性メンバーの一人は舌を喪失。遺体の着衣からは異常な濃度の放射線が検出された。最終報告書は「未知の不可抗力によって死亡」と語るのみ―。地元住民に「死に山」と名づけられ、事件から五〇年を経てもなおインターネットを席巻、われわれを翻弄しつづけるこの事件に、アメリカ人ドキュメンタリー映画作家が挑む。彼が到達した驚くべき結末とは…!

 

 

ディアトロフ峠事件とは

こんなことを言うと不謹慎であることは理解しているが、この事件は人知を超えた内容であり、実際に未知の不可抗力が原因と公表されるくらい不可解なので、最高峰に魅力的な事件だと言える。

私が大好きな作家である島田荘司京極夏彦(特に初期)は、推理小説としての完成度をある程度放棄してでも、怪異のような魅力的な謎を提示することに全身全霊をかけるタイプの作家だ(と考えている)が、ディアトロフ峠事件はそんな彼らがフィクションで創り上げる超不可解な謎に勝るとも劣らない、トンデモな内容である。

事件の詳細はWikipediaや各種媒体でもりもり解説されているので、ここでは私が超適当に要約して説明する。

 

■ディアトロフ峠事件とは  by 俺

1959年ソ連パリピ...ではなく育ちの良い男女の学生トレッカーたちが、バチクソ寒い雪山で全滅した。クッソ寒いうえに風もめちゃくちゃ強いので、テントから離れる=死に直結するにもかかわらず、なぜかみんなまともに服を着ていなかったり、靴を履いていない状態でテントを引き裂いてから飛びだし、テントからそこそこ離れた場所で死亡していた。メンバーみんなが一箇所に固まっていたわけでもなく、しかも争った形跡がないのに頭がい骨骨折やら肋骨骨折、眼球&舌喪失というヤバ気な状態の遺体もあった。さらに何人かの犠牲者の衣服にはありえな線量の放射能汚染があった....etc

 

⇩詳細はWikipedia参照

ja.wikipedia.org

 

構成の妙と物語の魅力

本書は1959年の遭難死したトレッカー、同年に事件を調査した調査兵団、2012に調査をした著者の3つの視点で描かれていく。そのためノンフィクション作品というより、本格ミステリ小説に近い感覚で楽しむことができる。

何なら私は作中で40年前の未解決事件である『占星術殺人事件』に挑んだ島田荘司の同作とほぼ同じ感覚で楽しむことができた。不可解極まる事件の真相が気になってページをめくる手が止まらず、次の日に仕事があることも忘れて徹夜してしまう系なので、連休前に読み始めた方が良いような危険な徹夜本である。

さらに素晴らしいことに、本作は日本人には聞きなれないロシア人名が複数登場する割には、主要な人物にフォーカスして話が展開するため、かなり読みやすいと感じた。1959年当時の写真が多数載せられているため、臨場感が強くそれぞれの部隊と一緒に旅をしているような気分にもなれた。普段ほとんど小説しか読まないような方でも間違いなく楽しめるだろう。

 

著者の執念

本格ミステリには安楽椅子探偵といって、現場に赴くことはせずその名の通り安楽椅子から離れずに推理をする探偵がいる。実際にディアトロフ峠事件は、真相について多くの人が様々な説を挙げているが、そのほとんどは現地調査せずして発表されたものらしい。その点、著者のドニー・アイカーは危険を省みず冬に現地を訪れてみたところ、一番濃厚な説である”雪崩説”は現場の傾斜具合からして一目でありえないことを突き止めている。

そんな著者だが、ロシアに調査で二度訪れている。当時の年齢は30代半ばで、最初にロシアを訪れた時は恋人が妊娠しており、2度目の来訪時は子供が産まれていた。そんな人生の超大事な時期に多くのリスクを背負い、また全財産をはたいてまで行動した著者の覚悟と行動力には敬意を表したい。またこれほどの犠牲を払って行っている調査だけに、調査結果はいよいよ信頼できるのである。

 

追体験する冒険小説

繰り返すが、本作はノンフィクション作品でありながらも、優れた構成と、ふんだんに載せられた写真により、臨場感に溢れた冒険小説として楽しむこともできる。

著者が多くのリスクを払って、ロシアで協力してくれた仲間とともに足が凍傷になりそうになりながらも気合で突き進んだ過程はとてもリアリティがある。また遭難死したディアトロフグループのトレッキングの軌跡も、ディアトロフグル-プに同行しながらも、途中持病の悪化で引き返したことにより唯一の生き残りとなったメンバーとの直接交流によって得られた話が盛り込まれているので、まるで途中まで一緒に冒険したような感覚になれる。一緒に冒険した感覚になるだけに、ディアトロフグル-プが死の直前に撮影した写真を見た時は何とも言えない気持ちになることだろう。

 

※ネタバレ注意 事件の真相

以下、ドニー・アイカーがたどり着いた真相に触れるので、未読で今後読みたいと思った方は読まないことを推奨する。

 

著者がたどり着いた真相とは、カルマン渦と呼ばれる気象現象が地形の関係で、テント付近で偶然にも発生してしまい、カルマン渦によって引き起こされる超低周波音の影響で恐怖や呼吸困難からパニックに陥り、錯乱状態でまともに服も着ずにテントから出てしまったというものである。

低周波音の影響射程から離れて正気に戻ったことで、たちまち生命に危険が迫っていることを察知し、各々生命を守る行動をとる過程で、雪の下に埋もれた岩にぶつかるなどの事故がおきたことが、謎の外傷の原因と推理している。その他、ありえない放射線被爆や眼球、舌の消失にも回答が示されている。

本当かなぁ...と思わないこともないが、実際のところ否定できる要素が少ないことから、真相である可能性が否定できない説であることは確かなようだ。私は映画『ディアトロフインシデント』を見ているので、もっとオカルト的であったりSF的な説であってほしい願望もあるのだが、当面は本説が正だと考えるようにする。

 

本当の真相は

タイムマシーンでも発明されない限り、本当の真相は分からないというのが事実だろう。そういった意味で本作も可能性が高い説の域を出ていないような気もするが、書物として純粋にとても素晴らしい完成度なので、ディアトロフ峠事件に興味がある方や、本格ミステリはぜひ読んでいただきたい。

 

 

 

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『超新星紀元』劉慈欣|奇想の超新星爆発

秩序の崩壊に伴い爆発する著者の奇想

 

有害オーロラ降臨

作品紹介

劉慈欣による『超新星紀元』は2023年に早川書房より出版された著者のデビュー作で、単行本で470ページ程度の長編である。本国では2003年に単行本化されている。

太陽系から8光年の距離にある恒星が超新星爆発を起こしたことで、未知の宇宙線が地球に飛来し、人体の染色体が破壊されることで、修復能力を持つ12歳以下の子供たち以外は1年以内に皆確実に死亡するため、大人たちが絶滅するまでの過程と、子供だけになった世界を描かれる。

デビュー作には作家のすべてが現れるという伝説の通り、劉慈欣作品が持つ魅力の片鱗は余すところなく詰め込まれているが、本作はハード的な要素よりも、大人が死に絶えていく過程のせつなさと、その後に待ち受ける圧倒的な奇想が目立つ作品と成っている。少々粗削りというか、後の作品群に比べると自由に特攻しているため、物足りない感があることは否めないが、劉慈欣ファンであれば絶対に読むべきクオリティは備えている。
そんな本作を最終局面の超奇想といった肝心な部分を除いて、ネタバレを気にせず紹介していく。

 

 以下、あらすじの引用

1999年末、超新星爆発によって発生した放射線バーストが地球に降り注ぎ、人類に壊滅的な被害をもたらす。一年後に十三歳以上の大人すべてが死にいたることが判明したのだ。"超新星紀元"の地球は子どもたちに託された……! 『三体』劉慈欣の長篇デビュー作

 

 

 

最初からエンタメ作家だった

この記事を読まれる方はほぼ間違いなく『三体』シリーズを読了済みだと考えられるので、同意していただだけるだろうが、劉慈欣作品はハードSFとして優れていることよりもむしろ、物語の面白さこそが最大の強みといっても過言ではないだろう。

長編でも短編でもストーリー展開がやたら面白く、奇想や超展開が頻繁に見られるので、とにかく先が気になって読み耽ってしまうのである。本作もその例に漏れず、とにかく先が気になりまくって、そこそこのボリュームがあるにも関わらず、早く読み終えてしまうだろう。本作では続きが気になりまくって、重要ではない部分を読み飛ばしてしまったりすることもあるだろう。デビュー作ながらエンタメ要素全開の作品である。

 

超新星爆発から大人絶滅まで

本作は全10章構成(プロローグとエピローグ有り)である。1~4章が大人が絶滅するまでの物語だが、はっきり言って子供だけになった世界を描く後半よりも、大人絶滅までを描く前半部分の方がぶっちぎりで面白い(と私は思う)。

ストーリー展開はシンプルで、超新星爆発発生!→ヤバいことになるかも→げっ....マジでヤバい奴だった(´;ω;`)→優秀な子供たちを選別するぜ!→選ばれし子供たちの修行→いよいよタイムリミット→新世界へ....である。

思えば『三体』の記事でも書いているが、劉慈欣作品は何となくドラゴンボールが頭に浮かぶことがある(笑)。『三体』では三体艦隊が数百年後に攻めてくるというところが、もろにサイヤ人の襲来を彷彿とさせるが、『超新星紀元』においても、1年後に大人たちが絶滅するため、選ばれし子供たちを学習(修行)させる過程は、ピッコロさんが孫悟飯をスパルタ教育するシーンやセルゲームを控えて精神と時の部屋で修業するシーンを想起させる。

ヤバいことが発覚してから子供たちの修行の過程はかなり面白く、人間ドラマとして普通に完成度が高いと思うが、特筆すべきは大人たちの死が迫ってからである。大人たちは時が来ると別れも告げずに「終の地」に旅立って行くのだが、その時のせつなさと言ったら...。SF作家や推理作家はヒューマンドラマ要素がクソ以下であることが常だが、本作ではとにかくこのシーンの描写がうまいのである。ここからが本番ではあるが、ある意味ここまでがハイライトであり、この後は色々な意味で崩壊が始まっていく。

 

超新星紀元開始

子供だけの世界が始まるまでが最大の読みどころだと前述したが、大人が絶滅してから問題が勃発しまくる最初の数時間と、最大の難所を乗り切って安定していくかと思いきや少しずつ崩壊していく中盤シーンもかなり面白い。

あたりまえだが、大人がいない状態は小さい子供にとって致命的である。そのため速攻でヤバすぎる状況が発生しまくり、これはもう無理ゲーだろとしか言いようのない状況が、臨場感あふれる筆致で描いていく。しかしその状況はどう考えても何よりも優先して頼るだろ...とツッコミを入れたくなるあるものによって打開される。

読んでいて普通に面白いのだが、ここらへんのシーンは、子供しかいなくなった世界では通常ルートの藩中にとどまっているように思われ、奇想をぶっ放しまくる劉慈欣以外の作家でも同じような展開を書くのではないだろうか。劉慈欣の真価が発揮されるのは次章移行の破滅ルートに入ってからである(それが楽しいかは別として)。

 

一気に崩壊

大人がいなくなった世界で子供はどのように生活していくのだろうか。このあたりは人によって考え方は異なってくるだろうが、劉慈欣は娯楽を追求すると考えた。大人がいない世界で子供たちは相当にブラックな感じで働くのだが、そんなものは長持ちせずに、面白い世界を求めて暴走していくのである。言葉の使い方は違うかもしれないが、悪ガキたちが求めるものは、パンとサーカスであり、古代ローマで行われた愚民政策を自ら行っていくこととなる。

さすがにそこまで酷いことにはならないんじゃないか、と思いつつ劉慈欣は極限までヤバい方向に悪ガキたちを突き進ませていく。戦争をオリンピックの如く競技として行っていくのである。この戦争から著者自身の暴走も始まっていき、やたらめったら詳細に戦争描写を書いていくのである。劉慈欣らしさが発揮されまくった戦争シーンではあるが、賛否両論のように思われるし、私個人もまぁ戦争を書くのは良いがここまで注力して書くべきだったかというと、もう少しテンポよくあっさりした描写でも良かったんじゃないかと思う。

 

まさにこんな感じかもしれん(笑)

 

マジで意味わからん

戦争の時点で相当ぶっ飛んだ感じになっているが、劉慈欣が謎の超理論をぶちまくのは最後の最後である。どう考えても意味不明な壮大なトンデモゲーム(?)を中国とアメリカでおっ始めるのだ。「えッ.... (笑) それをやって何でそうなると考えたの???」という誰もが感じるであろうクエスチョンは放っておくとして、これが劉慈欣なのだ。

どんな意味不明ゲームを始めたのかはぜひ実際に読んで確かめてほしい。ありえないことだが、このような訳の分からない奇想こそが、今後伝説的な傑作を連発していく著者の魅力なのである。

 

正直なところ

劉慈欣の他の作品よりも数ランクは劣る作品だと思う。人気作品から順番に翻訳されていくであろうことを考ると、デビュー作にも関わらずほぼ代表作が出揃った後に翻訳された本作は早川書房の編集者も正直微妙と考えたのかもしれない。

ただし、劉慈欣基準で評して他の作品より劣っているだけであり、読みどころは数多くあるうえに、劉慈欣ならではの奇想はある意味本作が一番ぶっ飛んでいるので、著者のルーツを知りたい方や、SF好きな方はまず読んで損はないだろう。

 

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小説好きが選ぶ自己啓発書とビジネス本|本当に役立つおすすめ10選+α

自己啓発書とかビジネス本を読む意識高い人(笑)

よくいますよね....自己啓発書とかビジネス本を読みまくって意識爆上がりしているウザくてイタい人。私はそういう意識高い系の人が大嫌いなのだが、小説好きという事情からAmazon神のKindle Unlimitedに登録していることが多い。
Kindle Unlimitedを利用していると、どうしても気分転換したい気分や元を取りたいという欲張り精神の働きによって、自己啓発書やビジネス本もちょこちょこ読んでしまうのである。そして気付けばメモしているだけでも4桁冊を読んでしまっていることが判明したため、小説をメインとした本ブログではあるが、せっかくなので本気で役にたった自己啓発書とビジネス本の10選を紹介してみたい。
なお私自身は99.9%の自己啓発書とビジネス本はゴミであると考えており、読んでて気持ち悪っと思うことが多々ある。そうであるがゆえにここで紹介する本は、謎の意識高い著者の武勇伝系ではなく、実際に読む価値がある本に限定していると考えていただきたい。
 

基本はSF小説ばかり読んでいる

 

ランキング形式で評価する

紹介する本は本来ランキング形式で紹介すべきものではないが、私が実際に再読している頻度を考慮して順位を付けて紹介する。別に10位の本と1位の本に優劣がある訳ではないので初めにご認識いただきたい。

 

10位  「食べない」健康法 / 石原結實

 

現代人の食べすぎが病気を増やしている!ガン、脳梗塞心筋梗塞、糖尿病、通風…これらの病気は、1日2食以下の「少食生活」で改善できる。本書は、断食が体に良い根拠から、その具体的な実践法、「飲酒はOK?」「いつまで続けるべき?」などの素朴な疑問までを解説。永年、断食指導を行なってきた著者が明かす「少食健康本」の集大成。

 

いきなり自己啓発書やビジネス本っぽい内容の本ではないが、とても良い内容なのでとりあえず読んでおくべき一冊。(大人であれば)一日三食がベストでないこという考え方を押さえるだけで諸々変わってくる。

ちなみに小食を唱える著者は他にもいるので、別にこの本以外の小食健康本でも良いと思うが、この著者はマッチョなので信憑性が高い(笑)。実年齢よりかなり若く見える南雲良則という著者の本もとても良いので、気になったら参照されたし。

 

 

9位  どんな本でも大量に読める「速読」の本 / 宇都出雅巳

 

速読界を席巻した“高速大量回転法”は、フォトリーディングなどの速読に挫折した方はもちろん、速読未経験の方から積読している方まで、さらには読書が苦手な方まで実践できます。「速読って難しそう」「あまり深く読んでなさそう」そんな誤解も今日まで!特別な技術も練習も必要とせず、その割に本の内容を覚えられて深く理解できます!

 

この記事に辿り着く方の中には、ありったけの本を読んでおきたいというちょっとヤバめな人もいるかもしれない。私自身は多読を推奨しないが、速読してみたいなぁ~という人には本書をおすすめする。

この本の良いところはインチキ臭さがまったくない正統派な速読という点である。速読本と言えばフォトリーディングなどのオカルトの匂いがぷんぷん漂うものだが、本書はそういったアホみたいなテクニックではなく、あたりまえのことをあたりまえに書いているので、効果は保証できるのである。

 

 

8位  脳が冴える15の習慣 / 築山 節

 

最近、何となく頭がぼんやりしている―。記憶力や集中力、思考力が衰えたように感じている。そんな「冴えない脳」を治すために必要なのは、たまに行う脳トレーニングではなく、生活の改善である。『フリーズする脳』で現代人の脳に警鐘を鳴らした著者が、すぐにでも実行できて、有効性が高い15の習慣を提案。仕事ができる脳、若々しい脳を取り戻すためのポイントを分かりやすく示す。

 

脳がなんちゃら系の本はわけの分からないクソみたいな本から、頭のおかしいキチガイ本まで山のように出ているが、本書は王道 of the王道のような本で、びっくりするくらいあたりまえのことが書かれている。しかし結局のところ誰もがあたりまえだと考える良さげなことをそれとなく習慣に取り入れることが最強ということが分かる内容になっている。

ちょっと書くと、毎日同じ時間に起きて、散歩して、音読して、ラジオ聞いて.....次の日の予定を決めて、7時間半睡眠する的な内容である。普通でしょう...でも最強。それが本書である。

 

 

7位  一冊の手帳で夢は必ずかなう - なりたい自分になるシンプルな方法 / 熊谷正寿

 

手帳は、仕事や時間を管理するためだけのものではない。 夢や、人生をマネジメントするものだ。そう信じて実践してきた著者は、手帳に書いた目標通りに会社を設立し、東証一部上場企業グループに成長させた。 本書では、手帳を使った夢の実現方法を中心に、著者の仕事術や、時間管理術、マネジメントの極意を紹介する。

 

私はシステム手帳好きなので、何冊もシステム手帳本を読んできた結果、1冊挙げるならこの本かなぁという印象なので紹介する。

まず先にこの記事を見に来るような方はシステム手帳を使った方が良いと思う。スマホが猛威を奮う現在だが、スマホにメモったことは忘れることが多く、システム手帳にメモっておいたことは何となく忘れずに達成できている気がするためである。

具体的なシステム手帳の運用というより考え方の方に注力されているので、システム手帳なんて持ってないけど、これからビッグになってやるぜッ的な人にもおすすめできる。ちなみに私はワタミ元社長の「夢に日付を!」という本も良いと思っている。(ブラックはダメだけど)

 

 

6位  怒らないこと / アルボムッレ・スマナサーラ

 

新アンガーマネジメント!
怒らない人にこそ智慧がある。
人類史上もっとも賢明な人、ブッダは「怒り」を全面否定しました。
その真意を平明に解き明かします。

 

とりあえず全人類が読んでおくべき1冊。仏教には三毒という考え方があり、「怒・欲・おバカ」の3つを指しているのだが、本書では怒りについて超偉いお坊さんにめちゃくちゃ説教されまくる内容になっている。

このお坊さんは黒人をゴキブリみたいなことを言っちゃう結構毒舌なので、なかなかハードな内容になっているが、説教を書物にまとめたような感じの文書なのでとても読みやすい(本に説教されている感じ)になれる名著である。

とりあえずこの記事に辿り着いた方は読んでいただき、気に入ったら著者の他の本を読みまくってみるといいだろう。

 

 

5位  話し方入門 / デール・カーネギー

 

歴史的ベストセラー『人を動かす』『道は開ける』の
著者として知られるカーネギーの輝かしいキャリアは、
話し方教室の講師をつとめたことからはじまる。
長年にわたる経験を土台に、カーネギーは深い人間洞察に根ざした
独自のスピーチ術を編み出し、授業や講演の現場で磨いていった。
話す前の心構えから、テーマの選び方、準備、始め方、終わり方まで、
人の心をつかみ、自信を持って人前で話すためのノウハウを懇切に手ほどきする。

 

「話し方」に関する本もイヤになるくらい大量に出版されているが、はっきり言ってこの本だけ読んでおけば、大半の問題は解決するだろう。

私はこの本にはかなり思い入れがあり、社会人経験が浅い時期にヤバめなプレゼンを客先でしなければならなくなり、「もはやこれまでか......」と万策尽きてあきらめていた時にやけくそで手に取ったことで何とか乗り切ったという思い出がある。

デール・カーネギーといえば自己啓発界の神であり、『人を動かす』と『道は開ける』が有名だが、本書こそ本当に役に立つ名著である。ロジカルに話すことは極めて重要だが、本書は「自信を持つ」「バッチリ準備する」といった、超あたりまえのことを本気で教えてくれる。

 

 

4位  世界のエリートがやっている最高の休息法 / 久賀谷亮

 

マインドフルネスは脳科学の最前線とどう接触しているのか?
イェール大学を舞台にしたストーリーを楽しみながら、「科学的な脳の休め方」がわかる一冊!!

 

中二病的な思考で瞑想しようと思っていて出会った1冊である。なのでこの本は基本的に瞑想の本だと考えてよい。ドラクエのラスボスたちは瞑想を使ってHPを回復させることがあるが、きっとこの本を読んだのだろう。

本書はとにかく読みやすく、極めて実践的であるため、この本に従ってとりあえず試してみるだけで効果が体感できるのがポイントである。瞑想の本は他にも大量に出版されまくっていて、実際にお坊さんがやるような瞑想やヨガの行者がやるような瞑想もあるが、瞑想で手っ取り早く超パワーアップしたい方はまずは本書を読んでみることを推奨する。

 

 

3位  スタンフォードの自分を変える教室 / ケリー・マクゴニガル

 

スタンフォード大学の超人気講義、ついに日本上陸。心理学、神経科学から経済学まで、最新の科学的成果を盛り込み、受講した学生の97%の人生に影響を与えた「驚くべきレッスン」。

 

意志力について気合をいれて説明しまくっている、自己啓発系の本では最強格の1冊である。スタンフォード大学の講義を書物にしているためテンポがよく読みやすいのが特徴だが、東大を超える超名門スタンフォード大学の講義だけあって、読書とかまったくしない人には少し難しい可能性もある。

世には数多のハウツー本が出ているが、意志力があればハウツー本で大半のことはカバーできるという点で、クソみたいな本を1000冊読むよりも本書を読み込んだ方が効果があることは容易に考えられる。

 

 

2位  反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」 / 草薙龍瞬

 

悩みは「消す」ことができる。そしてそれには「方法」がある――ブッダの「超合理的で、超シンプル」な教えを日常生活に活かすには? 注目の“独立派”出家僧が原始仏教からひもとく“役に立つ仏教”。

 

DQNHSPの人には強制的に読んでほしい1冊(笑)

本当の仏教は宗教ではなく、宇宙的超絶天才である釈迦の超合理的な考え方を教えるものだと考えているが、本書はセンス良すぎるお坊さんの著者が、めちゃクソ実生活に役立つようにまとめて聖典である。この記事を書くにあたりAmazonのレビュー数を見たら10000件を超えていて度肝を抜かれたが、それだけ人気になるのも納得の書物である。ちなみにより実践的な続編も超優秀なので、セットで読むことを推奨する。

 

 

1位  洗脳護身術 / 苫米地英人

 

「洗脳」はあなたと無関係の出来事ではない。カルト、悪徳商法は言うにおよばず、国家、メディア、より身近な社会や教育、家庭が、知らず知らずのうちにあなたの脳に入り込んでいる。オウムなどカルト信者の脱洗脳体験、西洋哲学、東洋哲学、心理学、認知科学への深い造詣から編み出された洗脳のメソッドをイラスト入りで解説し、自らの意志と力で洗脳を抜け出し、自由をつかむ道を示す。

 

 この世で一番怪しい男、苫米地英人の中でも最も根本的な内容が記された1冊。内容がブッ飛び過ぎていて説明しずらいが、世に跋扈する魑魅魍魎のごとき洗脳攻撃から自身を守る方法(笑)が紹介されている。

本書は200冊以上の本を上梓している著者の2冊目の本で内容が相当マニアックな内容であることと、著者がかなり変な人なので読者を選びまくると思うが、この著者の他の著書には普通に役に立つ本も多く、気になった方は読んでみてほしい。

なお著者の本はkindle Unlimitedにかなり多く登録されている。イラストがないため紙の本より分かりにくい部分もあるが気になった方は試してみるのも良いかと思う。

 

洗脳護身術

洗脳護身術

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自己啓発書やビジネス本は電子書籍推奨

個人的には紙の本の方が読みやすいと考えており(所有欲もちょっとある)、小説であれば90%以上は紙の本で購入している。しかし自己啓発書やビジネス本はちょこちょこ読み返して定着させることが何よりも重要なので、電子書籍(Kindle)をおすすめする。

私は専用機であるKindle PaperWhiteを長年使っているが、正直なところここ最近はスマホ電子書籍を読むことの方が多いので、専用機は無くても問題ないだろう。

 

『AΩ 超空想科学怪奇譚』小林泰三|大怪獣とヒーローが、 この世を地獄に変える(笑)

やっちゃった感満載の超SFハード・バトルアクション

 

作品紹介

小林泰三による『AΩ 超空想科学怪奇譚』は2001年にKADOKAWAより出版された作品で、文庫で500ページ程度の長編である。2023年に角川ホラー30周年で小林泰三作品が復刊される中で新装丁となって復刊された。

長めの長編ということもあり、複数ジャンルを内包する内容になっているが、本作のメインと言えるのはハードSFである。次いで著者お得意の超絶グロだろうか。読者を選ぶ要素がオンパレードな作品だが、宇宙生命体を説明したハードSFのパートはとても完成度が高く、SF好きで小林泰三の作品を読んでいる方にはたまらない内容であると言える。

続いて悪ノリ感もあるグロホラー要素が濃厚になってくる後半は、悪趣味極まりなくグロホラーを求めて小林泰三作品を読む変態を満足させることだろう。

正直に言うならば、無駄にグロ過ぎたり、作品の質を落とす要素でしかないと感じるオマージュがあるなど、惜しい部分が多過ぎてごく限られた方にしかおすすめできない作品になってしまっている。しかしダメな部分を許容して楽しめる読者にとっては至高の作品となり得るだろう。

人を選ぶが、選ばれし者にとって聖典になり得る作品というのは私が本ブログで最も重視する要素であり、ある意味最もおすすめしたい作品である『AΩ』を紹介していく。

 

 以下、あらすじの引用

大怪獣とヒーローが、 この世を地獄に変える。旅客機の墜落事故が発生。凄惨な事故に生存者は皆無だったが、諸星隼人は一本の腕から再生し蘇った。奇妙な復活劇の後、異様な事件が隼人の周りで起き始める。謎の新興宗教「アルファ・オメガ」の台頭、破壊の限りを尽くす大怪獣の出現。そして巨大な「超人」への変身――宇宙生命体“ガ”によって生まれ変わり人類を救う戦いに身を投じた隼人が直面したのは、血肉にまみれた地獄だった。科学的見地から描き抜かれた、超SFハード・バトルアクション。

 

 

小林泰三作品

SFとホラー好きから読書好きになった私にとって、小林泰三は最初期から贔屓にしていた作家である。しかし本ブログでは著者の作品を本記事執筆時点でほぼ紹介していないのには理由がある。

ハードSFとグロホラーの領域で非常にハイスペックな著者だが、この度小林作品が復刊される中、作品を読み返して感じたのは、人物が描けていないとネタにされる新本格ミステリ以上に人物が描けていないことである。登場人物はテンプレートのようなキャラクターが多く、言動も三文芝居のような印象が濃厚なのだ。どんなに優れたアイデアによって書かれた作品でも読後の印象が弱ければあまり紹介する気になれないのである。

しかし本作は、色々とブッ飛び過ぎていることと、エンターテイメントに特化しまくっているため紹介しようと思った次第である。

 

めちゃクソ面白そうなプロット

ネタバレにならない(であろう)範囲であらすじを書くが、書いていてもクッソ面白そうだなぁ...という感じである。

始まりは旅客機野墜落事故である。旅客機に乗っていた主人公の妻が事故現場を訪れて夫の生死の確認(死んでいるに決まっているような凄惨な状況)をしていたところ、夫の遺体の一部っぽい部分を発見する。悲しむシーンに入る展開なのだが、かくかくしかじかで夫は再生→復活→びびって嘔吐ッ!!

そして謎の宇宙知的生命体の話になり、宇宙生命体の生態や旅客機を墜落させるに至るまでの経緯が説明される。その後再生した主人公はウルト〇マンに変身して、謎の生命体・怪獣と戦いを繰り広げ、世界がびっくり仰天の超絶地獄になっていくのである(笑)

あらすじの時点で「なんじゃそりゃ」な感じだが、中身はもっととんでもないことになっている。とりわけ腐乱死臭が匂い立つ冒頭シーンや宇宙生命体の生態、ウ〇トラマンへの変身シーンの詳細な描写は素晴らしく、中盤までの完成度でいえば確実に小林泰三作品の最高傑作と言えるだろう。なのに後半と言ったら....(それはそれでいいんだけど)

 

墜落遺体

冒頭の夫の生死を確認に行くシーンは、小林泰三お得意のグロテスクな描写が全開と言いたいところだが、飛行機が夏に墜落した場合、バラバラになった遺体の腐敗進行も早く、実際に地獄的な腐乱死臭地獄になるそうである。

話が逸れてしまうが、飯塚訓による『墜落遺体 御巣鷹山日航123便』というノンフィクション作品では、地獄と化した実際の現場が非常にリアルに描かれている。私の読書人生の中でも、小説非小説含めたランキングでトップクラスに入る神本なので、この場でおすすめしておこう。こんな紹介をすると不謹慎だが、創作のグロを超えた真のグロ地獄が待っている。

 

1985年8月12日、群馬県御巣鷹山日本航空123便が墜落。覚悟も準備もできないまま、一瞬にして520人の生命が奪われた。奇蹟の生存者はわずか4人。本書は、当時、遺体の身元確認の責任者として、最前線で捜査に当たった著者が、全遺体の身元が確認されるまでの127日間を、渾身の力で書きつくした、悲しみ、怒り、そして汗と涙にあふれた記録。

 

プラズマ生命体の生態系

個人的に私が小林泰三に求めているのはハードSFであり、デビュー作『玩具修理者』でも表題作よりも「酔歩する男」に惹かれたという事情がある。

どちらかというと小林泰三作品のファンはグロホラーそして入った層が多く、何なら女性ファンも多いのではないかという気がしている。そんな中、非SFファン層にはついていけないレベルのハードSF描写でプラズマ生命体の生態系ともう一人の主人公”ガ”の状況が説明される。(”ガ”というネーミングセンスが光るが、本当のフルネームは最後に明かされる)

プラズマ生命体を説明するという時点で気合が入りまくっているが、説明は多岐にわたっていて、人間(というより地球の生命体)とはまるで異なる生殖行為など、オリジナリティ溢れまくった解説が楽しめる。私はそれなりにSF小説を読んでいると自認しているが、既視感は感じなかったことからも独創的だと言えると思う。

 

ウルト〇マン VS 怪獣

色々あって墜落遺体から復活した主人公は超人に変身し、これまた色々あって地球に現れた怪獣と「ダッ!!」などとあからさまにウ〇トラマンの気合声を発して戦うのである。怪獣との戦闘シーンにも力は入っているが、人間からウルト〇マンに変身する過程が異様に詳細に描かれていて、本物のウルトラマンもこうやって大きな犠牲を払いながら変身しているのかなぁ...と思いながら読んでいた。

変身シーンや変身後の描写を妙に丁寧に書くあたりが理系のハードSF作家という感じだが、この辺が著者の、そして本作の魅力だと思う。他に面白いというか強烈なのが、ウルト〇マンに変身した主人公の必殺技が鬼強いことである。最初から使えよ...と思わざるを得ないレベルのオーバーキルっぷりで笑えてくることだろう。

ヒーローと怪獣が戦うこのあたりのシーンまでは本当に面白く、ここでうまいこといい感じに締めくくっていれば、本作は超傑作になっていたと思う。ここから先は悪夢のヤスミンワールドに突入していく。。。

 

悪趣味全開の地獄が幕を開ける

後半の悪趣味っぷりは尋常ではない。小林泰三作品はエグイ描写や悲惨な描写が多々あるが、本作の悪趣味さは最悪レベルであり、グロい、キモい、痛い、苦しい、臭い、BBAの口から脱糞危機などありったけの最悪を詰め込んだかのようである。

また『ジョジョの奇妙な冒険 第一部』をパロった怪物との戦闘も、怪物の異形とギャグのような怪物のネーミングにそこはかとないB級感から来る気持ち悪さがある。この悪趣味な後半シーンは高く評価する人もいるかもしれないが、個人的には悪ノリし過ぎてちょっともったいない、という印象である。(ちなみにクトゥルフ神話要素もごく微妙に入れてきている)

過去のSFやホラーの傑作をオマージュする形で盛り込むのは良いと思うのだが、露骨にセリフまでそのままで入れてしまうのは、前半のオリジナリティ溢れる部分を帳消しにしてしまう感じがするし、作品の品位を落としてしまっているようにも思う。

とはいえこの悪趣味地獄を超えたラストシーンはなかなか胸に込み上げてくるものがある良シーンなので、読後感はある程度の喪失感とカタルシスを味わうことができる。

 

角川ホラー文庫よもっとやってくだされ

角川ホラー文庫小林泰三作品は新品では入手できなくなっており、また昔の角川ホラー文庫あるあるで表紙のイラストの手抜き感が否めないので、新装版での復刊は大変ありがたいものである。願わくば『臓物大展覧会』くらいまでの作品は新装版で復刊してほしいものである。

 

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『禍』小田雅久仁|HENTAI奇想七連戦

ほとばしる(著者の)変態性

 

作品紹介

小田雅久仁による『禍』は2023年に新潮社より出版された、2011年から2023年に上梓された作品が収録されたジャンル分け不能な7編からなる短編集で、単行本で320ページ程度の作品集である。

日本SF大賞を受賞した神傑作である前作『残月記』と比べると、作品数が多い短編集になっていることと、各作品の書かれた時期がばらけていることから、より一層著者の根源的な部分(というより性癖笑)が発揮されており、短編集ではあるものの非常に読みごたえがある。

収録作中何作かは日常から非日常への移行が急展開極まりなく、いつの間にかとんでもないことになっているという著者の持ち味を存分に味わうことができる。癖の強い作品集であり万人にはおすすめできないが、変な作品が読みたい方(笑)にはぜひ手に取っていただきたい一冊である。

 

 以下、あらすじの引用

「俺はここにいると言ってるんだ。いないことになんかできねえよ」。恋人の百合子が失踪した。彼女が住むアパートを訪れた私は、〈隣人〉を名乗る男と遭遇する。そこで語られる、奇妙な話の数々。果たして、男が目撃した秘技〈耳もぐり〉とは、一体 (「耳もぐり」)。ほか、前作『残月記』で第43回吉川英治文学新人賞受賞&第43回SF大賞受賞を果たした著者による、恐怖と驚愕の到達点を見よ!

禍

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著者初読みにはおすすめできない作品

そもそも小田雅久仁作品自体が少ないので、読むべき順番もおすすめ作品もあったものではないが、とりあえず『禍』は最初に読まない方が良い。

また『本にだって雄と雌があります』と本作では同じ著者が書いたとは思えないほど作風や雰囲気が異なるので、『残月記』を読んで気に入った方が本作を読むのが良いだろう。(あまりいないと思われるが)いきなり本作を読んで肌に合わずに小田作品に見切りをつけてしまうのはもったいないからである。

と言いながらも、本作は作品集のタイトルや想定のイラストから連想されるほどはぶっ飛んではおらず、また難解でもなければ読みにくくもないので、気合の入った奇想を楽しみたい方には悪くないと思われる。

なお参考までに『残月記』の記事を貼っておく。『残月記』は本屋大賞にランクインしているとは思えないほど万人受けしない作風だが、SFやファンタジー好きにはたまらない作品となっている。

 

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食書(2013年)

タイトルの通り本を食べるという話である(笑)

まず話の内容がどうこう言う前に、私は『残月記』を読んだ後に「この作家はやけにトイレを気にするなぁ~」と思っていたのだが、短編集一発目である本作の最初の一文が「子供の時分から腹が弱くて苦労したせいか、便所を探しまわる夢を夢をやたらと見る」から始まるのである。その一文を読んだだけで普段あまり共感することのない私は「やっぱりな...この人はトイレフェチだ」と感激してしまったのである。

ようやく内容だが、本のある1ページを食べるととんでもない体験ができるという話であり、食べることで起きる体験が鮮烈であるがゆえに大変なことになってしまうというものである。

気合いの入った奇想が跋扈する本作品集の中では比較的まともな部類だが、前述の通りトイレやおしっこネタがやたら盛り込まれている関係で、物語の本筋とはあまり関係がないところで著者の性癖が出てしまっているのがたまらない。

 

耳もぐり(2011年)

コミカライズされた作品とのことで出版社からの評価は高いと思われる『ドグラ・マグラ』感が漂う奇書っぽい作品。

”耳もぐり”という謎プレイが奇想の中の奇想といった感じでかなりブッ飛んでいるし、実際かなり変なことをしまくっている。つかみはミステリーっぽい感じだが、読み進めれば読み進めるほど奇書っぷりが発揮されて結局は奇書でしたという感じ。

奇書という言葉を連発して恐縮だが、意味が分からない方はググってみるか三大奇書のどれかを読んでみることを推奨する。

 

喪色記(2022年)「灰色の獣たち」改題

『禍』収録作品の中では最もファンタジー要素が強く、日常から非日常への移行がとても巧い作品。独創的な世界観だが他の作品と比べれば変態的な要素が少なく、ファンタジーが好きな人なら気に入りそうな内容になっている。

個人的に最も推している作家の一人である恒川光太郎と作風がかなり似ていて、恒川作品の短編集に紛れていても気付かないと思われる。

破滅に向かう世界感は冷静に想像すると不気味なのだが、何もかもが失われていく儚い描写が、そこはかとない美しさとせつなさを感じさせる。前述の通り、いたって普通の日常から想像もつかない非日常に移っていく描写がとてもテクニカルで、どちらが本当の世界なのか分からなくなっていく感覚が堪能できる。

 

柔らかなところへ帰る(2014年)

奇妙なデブフェチ物語。

著者の性癖なのかは不明だが、肥えた女性への欲望が日に日に強まっていく展開は非常にキモいと同時に意外とリアリティも感じてしまう。

欲望が限界に達して暴走モード突入かなぁ....と思いながら読んでいくと、微妙に斜め上な方向でハイパー変態プレイが始まり、日常が完全にどこかへ行ってしまうのは著者ならではの奥義だと思う。ヤバめなHENTAI作品を想像させられるラストシーンはこの手のフェチズムを持っている方にはご褒美になるのかもしれない。

 

農場(2014年)

常軌を逸した奇想に引き込まれまくる、本作品集の中では最も長尺な作品。

よくこんな訳の分からない設定を思いつくよなぁ....と思わずにはいられない不気味極まりない”ハナバエ”なるものの秘密が気になりまくり、一気読みは避けられないだろう展開になっている。

思わず「え?......ちょ...ちょっとマジかよ....ぶおっ」となること必至である。SFやファンタジー小説、またそっち系のアニメやゲームに普段から触れていると、謎設定のクリーチャーはよく見るものだが、”ハナバエ”の奇妙さは最高峰に達していると思う。とにかくブッ飛んでいるので、個人的に本作がベスト。

想像すればするほど不気味さやマニアックなエロさに包まれる本当に変な作品である。

 

髪禍(2017年)

ちょっとぶっ壊れ過ぎなヤバい作品。

意味不明な教義を持つ怪しい宗教団体と、「いやいや、さすがにその量は無理でしょ笑」と突っ込まざるを得ないキモさと妖しさ全開の”とある服”など、ヤバいことになるフラグが経ちまくっているのだが、実際に想像を限界を超えてヤバいことになっていくのがたまらない。

というか宗教団体の秘技がヤバすぎワロタ状態で、そのシーンを想像すると気持ち悪がればいいのか、笑えばいいのかよく分からない感じになってしまう。ちなみに超ヤバシーンで大量の女性が糞尿を垂れ流してしまうのだが、やはり著者はこの手のネタが性癖なのではないかと思わざるを得ない。

ラストが少々投げやりな感じだが、強烈なインパクトを味わえるだけでもう十分だろう。

 

裸婦と裸夫(2021年)

ある意味ゾンビ作品と言えなくもないぶっ壊れ作品。

作品の内容から逸れるが、電車で小説を読む女性(眼鏡ポニーテール)の考察が著者の思考駄々洩れで愛おしい。やっぱり著者は変態だと思う。

そして変態暴走からのパンデミック(?)と、怒涛の勢いにごり押しされまくっているうちに、これまた強引な展開を迎える。こちらもちょっと投げやりな感じが否めないが、普通に面白い作品と言えるだろう。

何となくアニメ『キルラキル』が脳裏をよぎったのだが、同じような考えが浮かんだ方とはとても仲良くなれそうな気がする(笑)

 

次は長編を読んでみたい

『禍』はかなり気合の入った奇想作品集であり、個人的に大好きな作品ばかりなのだが、短編であるがゆえに似たような読後感に浸る作品が多い。例えば「喪色記」や「髪禍」、「裸婦と裸夫」あたりは長尺にすればより良い作品になった気がしてならない。

著者のストーリーテリングの巧さは「残月記」で証明されており、本作品集では途方もない奇想を持っていることを示したので、次回作はぜひ圧倒的な奇想を最高の物語に載せた長編を期待してしまう。

何はともあれ次回作を期待せずにはいられない素晴らしい作家、素晴らしい作品である。

 

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読んで後悔した地雷小説20選|時間を無駄にする読むべきではない小説ランキング

ビジネスマンにとって時間は命より重いッ!

 

多忙ビジネスマンに時間のロスは許されない

まずはじめに

私は東証一部上場IT企業の中間管理職である。このブログをお読みいただいている方は2022年9月頃から更新頻度が激減していることに気付かれているかもしれない。
そう、2022年7月からワンランク上の役職に昇格してしまい、そのせいでもはや本を読む時間の確保とブログを書く時間を確保することさえ難しくなってしまったのだ。
ビジネス書などをそこそこ読んだ結果、私の考えとしては個人年収500万程度で世帯収入として600万円くらいあれば十分、というより世帯収入600万円で満足できる精神を構築することが真の成功だと考えている。
したがってこれ以上昇格はしたくないし、むしろ役職を蹴って平社員に戻りたいとすら思っているといった状況の中、この記事を執筆時点でさらに昇格してしまい、若い社員は私を見るだけでペコペコするような地位になり、いよいよ最悪な状況に陥った。時間が何よりも惜しい....こんな状況が私にこの記事を書かせる原動力となったのである。
このブログ『神本を求めて』では私が好きな本のみの紹介に専念しており、基本方針として好きな本しか紹介しない方針を貫いていた。しかしながらそろそろディスる系の記事を書いてみるのもいいだろうということで、以下のルールに則り徹底的にこき下ろしてみたい。

ルール

  1. 世間的に知名度が高く人気作品であること
  2. つまらない本ではなく世間的評価の割には微妙だったこと
  3. エンタメ作品であること
 

20位  残像に口紅を / 筒井康隆(1989年)

 

「あ」が使えなくなると、「愛」も「あなた」も消えてしまった。世界からひとつ、またひとつと、ことばが消えてゆく。愛するものを失うことは、とても哀しい…。言語が消滅するなかで、執筆し、飲食し、講演し、交情する小説家を描き、その後の著者自身の断筆状況を予感させる、究極の実験的長篇小説。

 

稀にみる神本である。ではなぜこのランキングに挙げたか。

それは芸能人やSNSで過剰に紹介されてしまったからである。私は筒井康隆を崇拝しており、本作は筒井康隆でしか成し得ない稀代の超絶傑作である。しかし普段そこまで本を読まない人が芸能人やSNSの影響で、天才による実験小説である本作を手に取ったら何が起こるだろうか。ずばり本嫌いが一人量産されるのである。

インフルエンサーにはぜひとも責任をもって本を紹介していただきたいものだ。これで本嫌いや筒井康隆嫌いが誕生したらどうしてくれるんじゃい。

 

 

19位  そして誰もいなくなった / アガサ・クリスティー(1939年)

 

その孤島に招き寄せられたのは、たがいに面識もない、職業や年齢もさまざまな十人の男女だった。だが、招待主の姿は島にはなく、やがて夕食の席上、彼らの過去の犯罪を暴き立てる謎の声が響く…そして無気味な童謡の歌詞通りに、彼らが一人ずつ殺されてゆく!強烈なサスペンスに彩られた最高傑作。

 

まさに王道 of the 王道の神孤島ミステリである。

犯人・トリック・動機とどこをとっても欠点の無い永遠に読み継がれるべき作品だが、有名過ぎるがゆえに数々のオマージュを生み出し、その中には屈指の完成度を誇る綾辻行人の『十角館の殺人』も含まれている。

何が言いたいかというと、『そして誰もいなくなった』は完璧な作品だが、ミステリとしての完成度やエンタメ性でいえば『十角館の殺人』の方が上回っていると判断するため、あえて読む必要がないということである。

 

 

18位  むかし僕が死んだ家 / 東野圭吾(1994年)

 

「あたしには幼い頃の思い出が全然ないの」。7年前に別れた恋人・沙也加の記憶を取り戻すため、私は彼女と「幻の家」を訪れた。それは、めったに人が来ることのない山の中にひっそりと立つ異国調の白い小さな家だった。そこで二人を待ちうける恐るべき真実とは…。

 

東野圭吾は超人である。どんなジャンルも書けるうえに、そのクオリティがずば抜けているからだ。その異常な高品質っぷりはゴーストライターが10人はいるのではないかと邪推してしまうほど凄まじい。

そこであえて本作をランクインさせる。東野圭吾の本領発揮分野を本格/社会派含むミステリだとすると、本作はミステリー要素は持ちつつもモダンホラーのような雰囲気を持つ作品のため、これはこれで凄い完成度なのだが、いまいち他の作品に比べるとインパクトが足りないのである。

とはいえこのジャンルでこのレベルの作品には滅多に出会うことがないため、素晴らしいといえば素晴らしいのだが、あえて東野作品で読む必要はないという考えである。

 

 

17位  儚い羊たちの祝宴 / 米澤穂信(2008年)

 

夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。米澤流暗黒ミステリの真骨頂。

 

はっきり言って嫌い過ぎて発狂しそうな作品の一つである。

私は読書歴が比較的少ない時期に世間的な評判に惑わされて本作を読んでみたのだが、読んだ感想は「は?きもっ」であった。歯に衣着せず発言しているTwitterでは本作を昔からけなしまくっているのだが、そのたびにフォロワーが減少するので、やはり世間的には評価は高いのだと思われる。

本当にこの本のどこが良いのかさっぱり分からない。そこはかとなく溢れ出る童貞臭さに頭がおかしくなっていまいそうである。おまけにラストもくだらな過ぎて拍子抜けにもほどがある。

まぁ著者自身は非常に高い力量を持っていて、ラノベも書いているのでライト層向けの作品と思えば読みやすさという点で良さはあるのかもしれない。

 

 

16位  獄門島 / 横溝正史(1947年)

 

門島――江戸三百年を通じて流刑の地とされてきたこの島へ金田一耕助が渡ったのは、復員船の中で死んだ戦友、鬼頭千万太に遺言を託されたためであった。『三人の妹たちが殺される……おれの代わりに獄門島へ行ってくれ』瀬戸内海に浮かぶ小島で網元として君臨する鬼頭家を訪れた金田一は、美しいが、どこか尋常でない三姉妹に会った。だが、その後、遺言通り悪夢のような連続殺人事件が! トリックを象徴する芭蕉の俳句。後世の推理作家に多大な影響を与えたミステリーの金字塔!!

 

東西ミステリーベスト100というオールタイムベストを決める企画で1985年、2012年と連続で1位を取った作品である。

動機と犯人はちょっとやり過ぎた感はあるが、当時の日本の環境だからこそ成立した事件だと思えば完成度は非常に高い。....のだが、他の横溝作品と比べるとインパクトも少なければ、エンターテイメント性も劣っているように思えてならない。

デビュー作『本陣殺人事件』のトリックは神をも凌駕する超変態インパクトだし、『八つ墓村』には飛び抜けたエンタメ性がある。そういった作品群と比べるとかなり微妙な感じなので、あえて読む必要はないと判断した。

 

 

15位  慟哭 / 貫井徳郎(年)

 

連続する幼女誘拐事件の捜査は行きづまり、捜査一課長は世論と警察内部の批判をうけて懊悩する。異例の昇進をした若手キャリアの課長をめぐり、警察内に不協和音が漂う一方、マスコミは彼の私生活に関心をよせる。こうした緊張下で事態は新しい方向へ!幼女殺人や怪しげな宗教の生態、現代の家族を題材に、人間の内奥の痛切な叫びを、鮮やかな構成と筆力で描破した本格長編。

 

 基本的には大変優れた作品である。著者の執筆時の年齢を考慮すると驚くほどこなれていおり、著者の実力の高さを知らしめる内容でもある。

ではなぜこのランキングに挙げたのかということだが、本作は「あのトリック」が使われていることでも有名だからである。本格ミステリにハマりかけの人がこの本にあのトリックを期待して読んだらどう思うだろうか。

正直なところあのトリックの完成度で見れば、かなりレベルは低いと言わざるをえず、何冊かそっち系のトリックを読んでいればすぐに気づくと思われるので、何の驚きを得ることもないだろう。というかこの本は物語自体を楽しむタイプの作品であり、本来社会派ミステリやイヤミス好きが読む本なので、本格マニアは肩透かしにならないよう気をつけた方が良いだろう。

 

 

14位  オーデュボンの祈り / 伊坂幸太郎(2000年)

 

コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?卓越したイメージ喚起力、洒脱な会話、気の利いた警句、抑えようのない才気がほとばしる!

 

 伊坂作品は安定して面白い。そして安定してなんかイラっとくるのである。さらに言うとどの作品も同じタイプの読後感である。(伊坂信者に刺されそう....)

まぁ上記に同感の方もいると思うので書いてしまうが、伊坂作品はどれも似たような感じなのでどれを読んでも一緒だろう、それならばより面白い作品を読んだ方が良いだろうということで本作をランキングに入れた。『オーデュボンの祈り』ははっきり言ってあんまり面白くない。それでいて伊坂作品の悪い要素がマシマシで詰め込まれている。ずばり伊坂デビュー作が読みたいという人以外は読む必要はないだろう。

しかし伊坂作品って本当に毎回似てるよなぁ.....クズが出てきて天誅をくだすというパターンは初っ端からできあがっている。

 

 

13位  ラットマン / 道尾秀介(2008年)

 

結成14年のアマチュアロックバンドのギタリスト・姫川亮は、ある日、練習中のスタジオで不可解な事件に遭遇する。次々に浮かび上がるバンドメンバーの隠された素顔。事件の真相が判明したとき、亮が秘めてきた過去の衝撃的記憶が呼び覚まされる。本当の仲間とは、家族とは、愛とは―。

 

私が考えるくだらない小説の要素を100%備えた作品である。ちなみにかなり伊坂幸太郎っぽくて驚いた記憶がある。

最もくだらない小説の一つに、事件が起こる系の内容なのに肝心の事件がまるで興味をそそられない、というものがある。この本はそのパターンの要素を完膚なきまでに備えているのである。どうしてこういう本が評判になるのか私にはさっぱり分からない。どんでん返しに次ぐどんでん返しなどと言われているが、登場人物の心境の変化に過ぎずがっかりし過ぎて発狂しそうになった。

まぁ私はヒューマンドラマ系の作品は例外なく大嫌いなので、相性が悪かったと言えばそれまでだが、どんでん返しを期待しても全然ダメだろう。売ろうとして書いているとしか思えないラストも耐え難いものがある。これぞ時間のムダである。

 

 

12位  くちびるに歌を / 中田永一(乙一)(2011年)

 

長崎県五島列島のある中学校に、産休に入る音楽教師の代理で「自称ニート」の美人ピアニスト柏木はやってきた。ほどなく合唱部の顧問を受け持つことになるが、彼女に魅せられ、男子生徒の入部が殺到。それまで女子部員しかいなかった合唱部は、練習にまじめに打ち込まない男子と女子の対立が激化する。一方で、柏木先生は、Nコン(NHK全国学校音楽コンクール)の課題曲「手紙~拝啓十五の君へ~」にちなみ、十五年後の自分に向けて手紙を書くよう、部員たちに宿題を課した。そこには、誰にもいえない、等身大の秘密が綴られていた。

 

 私は乙一大好き人間だが、乙一が本領発揮するのは短編~中編程度の短めな作品だと考えている。さらに言うと中田永一名義の作品はあまり好みではない。

上記のような前提があっての評価だが、果たして『くちびるに歌を』は推薦図書になったりするほど評判になるべき作品だろうか?答えは否である。はっきり言って乙一の全作品の中でもキレがなくハズレの部類だと思わざるを得ない。

ガッキー主演で映画化されたのは大変素晴らしかったし、映像向けの作品であることは間違いないが、どう考えても乙一作品としては色々な要素が欠けているので、時間のムダだと感じてしまう。

 

 

11位 アンドロイドは電気羊の夢を見るか / フィリップ・K・ディック(1968年)

 

長く続いた戦争のため、放射能灰に汚染され廃墟と化した地球。生き残ったものの中には異星に安住の地を求めるものも多い。そのため異星での植民計画が重要視されるが、過酷で危険を伴う労働は、もっぱらアンドロイドを用いて行われている。また、多くの生物が絶滅し稀少なため、生物を所有することが一種のステータスとなっている。そんななか、火星で植民奴隷として使われていた8人のアンドロイドが逃亡し、地球に逃げ込むという事件が発生。人工の電気羊しかえず、本物の動物を手に入れたいと願っているリックは、多額の懸賞金のため「アンドロイド狩り」の仕事を引き受けるのだが…。

 

普段小説を読まない意識高めな方が手に取りがちな作品である。(勝手なイメージ)

圧倒的なネームバリューの高さと、それに正比例する超絶的読みづらさを合わせ持ち、意識高い系を滅殺する小説兵器である。

PKDは間違いなくSFのレジェンドだが、どの作品も基本的には読みづらく、物語としてのエンタメ性には乏しい。知名度の高い本作も例外ではなく、原作に勝るとも劣らない知名度と完成度を誇る映画『ブレードランナー』を見ても理解するのが難しいほどである。絶対に素人は手を出してはならない。時間のムダである。

 

 

10位  贖罪 / 湊かなえ(2009年)

 

15年前、静かな田舎町でひとりの女児が殺害された。直前まで一緒に遊んでいた四人の女の子は、犯人と思われる男と言葉を交わしていたものの、なぜか顔が思い出せず、事件は迷宮入りとなる。娘を喪った母親は彼女たちに言った―あなたたちを絶対に許さない。必ず犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できる償いをしなさい、と。十字架を背負わされたまま成長した四人に降りかかる、悲劇の連鎖の結末は!?

 

 イヤな話を書きたくてがんばっちゃいました感全開な作品。

ミステリーとして評価されていなければ、ここであえて書くような作品ではなかったのだが、海外でもやたら高く評価されているということで槍玉に挙げる

正直なところ劣化版『告白』と言わざるを得ない完成度で、とにかく無理矢理感が半端ないのである。イヤミス作家ってどうしてわざわざイヤミスにこだわるのだろう。まぁ読者や出版社が求めているからであろうことは間違いないのだろうが、あまりにもくだらないしただのやらせにしか感じない。

そもそも被害者の母に咎められる理由がさっぱり分からん。ご都合主義である。

 

 

9位  ユージニア / 恩田陸(2006年)

 

「ねえ、あなたも最初に会った時に、犯人って分かるの?」こんな体験は初めてだが、俺は分かった。犯人はいま、俺の目の前にいる、この人物だ―。かつて街を悪夢で覆った、名家の大量毒殺事件。数十年を経て解き明かされてゆく、遺された者たちの思い。いったい誰がなぜ、無差別殺人を?見落とされた「真実」を証言する関係者たちは、果たして真実を語っているのか?

 

 あたりはずれの大きさが他の追随を許さない(笑)作家、恩田陸

そんな恩田作品のダメな部分を極限まで濃縮還元したのが、まさかの日本推理作家協会賞を受賞してしまった『ユージニア』である。何で恩田陸っていつもこうなんだろう.....と思わざるを得ないフワッとした結果には多くの人が発狂するだろう。もちろん時間のムダである。考察厨はすぐにくだらない考えを停止すべきだ。

ちなみに私は恩田陸の作風は大好きである。ハズレ作品も含めて嫌いではないのだが、どうしても納得できないのは著者のスタンスである。どうやら作家の矜持としてそれなりの頻度で作品を上梓することを重要視しているようだが、それは読者にとっては迷惑ではなかろうか。1年に一冊未満のペースでも構わないので、作家には1冊1冊にすべてをかけていただきたいものである。

 

 

8位  殺人鬼フジコの衝動 / 真梨幸子(2008年)

 

一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして、新たな人生を歩み始めた十歳の少女。だが、彼女の人生は、いつしか狂い始めた。人生は、薔薇色のお菓子のよう…。またひとり、彼女は人を殺す。何が少女を伝説の殺人鬼・フジコにしてしまったのか?あとがきに至るまで、精緻に組み立てられた謎のタペストリ。最後の一行を、読んだとき、あなたは著者が仕掛けたたくらみに、戦慄する!

 

 何の魅力もない最低の小説。先に行っておくと真梨幸子の気合の入ったイヤミスは嫌いではない。特にメフィスト賞受賞したデビュー作の『孤虫症』や『みんな邪魔』あたりは本当に最高である。

しかし本作と言ったら....サイコキラーやエログロが書きたかったのかもしれないが何もかもが中途半端で著者の魅力がイマイチ発揮されておらず何もいいところがない。ヤバい描写を書きたいのなら徹底的に研究し、その一点のみにすべての力を注いでほしいものである。

もちろんこんな本は読むだけ時間のムダであり、このレベルの内容の作品がベストセラーになってしまったのは異常事態である。ちなみに続編も読んだが(時間に余裕のあったあの頃に戻りたい...)そもそもくだらない前作に後付け設定モリモリ仕様なので言うまでもなくつまらないし、ますます読む価値はないので気をつけてほしい。

 

 

7位  凍りのクジラ / 辻村深月(2005年)

 

藤子・F・不二雄を「先生」と呼び、その作品を愛する父が失踪して5年。高校生の理帆子は、夏の図書館で「写真を撮らせてほしい」と言う一人の青年に出会う。戸惑いつつも、他とは違う内面を見せていく理帆子。そして同じ頃に始まった不思議な警告。皆が愛する素敵な“道具”が私たちを照らすとき―。

 

辻村作品は他にも腸が煮えくり返る級の作品が、いくつもあるのだが(じゃあ読むなよというツッコミはなしで)、シンプルに最悪なのが『凍りのクジラ』だろう。

これを読んで良いと判断する人は完全に病気である。なぜこの著者はクソ女が他を見下す描写がここまで好きなのだろうか。気が狂っているとしか思えない。本作を好きだという人については人格を疑うレベルである。

クズのような登場人物と中身がないのにやたら分厚い分量、時間をムダにする要素がフル搭載されている。ドラえもんを汚した罪も重い。7位にして真打の登場である。

 

 

6位  ジェノサイド / 高野和明(2011年)

 

イラクで戦うアメリカ人傭兵と、日本で薬学を専攻する大学院生。まったく無関係だった二人の運命が交錯する時、全世界を舞台にした大冒険の幕が開く。アメリカの情報機関が察知した人類絶滅の危機とは何か。そして合衆国大統領が発動させた機密作戦の行方は―人類の未来を賭けた戦いを、緻密なリアリティと圧倒的なスケールで描き切り、その衝撃的なストーリーで出版界を震撼させた超弩級エンタテインメント

 

圧倒的に完成度を誇る作品である反面、がっかり感もまた尋常ではない肩透かし作品である。まず先に書いておくと超実力のある作家が構想10年くらいかけて書けるかどうかといった気合全開のクオリティである。

しかし著者の露骨な思想が物語にはどう考えても無関係だろうというレベルまで、モリモリ描かれ、しかも日本人として不快と感じる描写がやたら多いため、興ざめすること甚だしい残念過ぎる作品に仕上がっている。どうしてこうなった....という言葉はこの作品のために想像された言葉である。

また思想云々を抜きにしても、本作では人類を超越した超絶頭の良いキャラが登場するのだが、これと言って天才プレイを魅せていないため、そのあたりに著者の限界を感じてしまった次第である。

間違いなく読む価値はある作品だが、エンターテイメントとしては失敗作である。結局は時間のムダということになる。

 

 

5位  イノセント・デイズ / 早見和真(2014年)

 

田中幸乃、30歳。元恋人の家に放火して妻と1歳の双子を殺めた罪で、彼女は死刑を宣告された。凶行の背景に何があったのか。産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人、刑務官ら彼女の人生に関わった人々の追想から浮かび上がる世論の虚妄、そしてあまりにも哀しい真実。幼なじみの弁護士たちが再審を求めて奔走するが、彼女は…筆舌に尽くせぬ孤独を描き抜いた慟哭の長篇ミステリー。

 

究極レベルのマジキチ作品である。否、別にこの本がどうこう言うわけではなくこの本を読んで感動したといった感想を挙げる人間が真正のキチガイなのである。あろうことか日本推理作家協会賞を受賞していることも納得できない。

この本を最後まで読んで思ったことはただ一つ。「死にたい人が死んでなんか問題あるの?」である。ぜひとも勝手に死んでいただければと思っているし、死にたがりが死ぬことについて何も考える必要などないのである。

私はSNSの影響で本作を手に取ってみたのだが、この本にあれやこれやの感想を見て正直言って本当に気持ち悪く、背筋がゾッとしたのを覚えている。

 

 

4位  図書館戦争 / 有川浩(2008年)

 

2019年(正化31年)。公序良俗を乱す表現を取り締まる『メディア良化法』が成立して30年。高校時代に出会った、図書隊員を名乗る“王子様”の姿を追い求め、行き過ぎた検閲から本を守るための組織・図書隊に入隊した、一人の女の子がいた。名は笠原郁。不器用ながらも、愚直に頑張るその情熱が認められ、エリート部隊・図書特殊部隊に配属されることになったが…!?

 

完全にぶっ壊れである。私はSF好きという理由から著者や本作のことをあまり調べず手に取ったのだが、とち狂った設定に呆れ果てて読み終わるや否や合わせて揃えておいた続巻を処分した経緯がある。

そもそもSFっぽい世界観にした理由がさっぱり意味不明である。高校生が学校内で喧嘩しちゃいました(笑)くらいの設定にしておけば、自然だし読者層も著者の守備範囲に収まった思うのだが一体どうなっているのやら。

何もかもミスマッチしている変態作品である。作中で死んだ人はおバカ過ぎてもはや笑うしかない。

 

 

3位  同志少女よ、敵を撃て / 逢坂冬馬(2021年)

 

独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために。同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵"とは?

 

最低最悪の気持ち悪いラノベである。もうこれはあまりの酷さにラストは本を破り捨てたくなった....けど衝動を抑えてメルカリで売りました(笑)

はっきり言うとキモい童貞がモテたくてフェミニズム書いちゃいました☆的な感じで、とにかく極限まで気持ち悪く、残酷なまでに童貞臭が放出されているのである。主人公サイドが捕らえられて拷問、レイプの挙句殺されるような展開であれば評価は跳ね上がったと思うのだが、救いようがないキモさMAX設定に恐れ慄くしかない。著者が女性であればまだこの展開でも説得力があるのかもしれないけど、キノコおじさんではちょっと....。ちなみにジェノサイドと同じくイエーガーが登場する。イエーガーはエレンだけで十分なのです!

なおこの本は読書メーターで徹底的にこき下ろしたところ、かなりの数の反応をいただいているので、私以外にも同感の方は多いと推測される。

 

 

2位  葉桜の季節に君を想うということ / 歌野晶午(2003年)

 

「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼された。そんな折、自殺を図ろうとしているところを救った麻宮さくらと運命の出会いを果たして―。あらゆるミステリーの賞を総なめにした本作は、必ず二度、三度と読みたくなる究極の徹夜本です。

 

不快極まる最低の作品である。とにかく気持ち悪い。

読む意味がないので、このブログの方針に反してここではっきりネタバレするが、読んでみたい人はネタバレを読まないように気をつけてほしい。

以下、ネタバレ注意

主要登場人物がジジイとババアである。若者と思わせて高齢者であることが叙述トリックとなっている。はい、おしまい。

読者をはめるためだけに冒頭からセックスシーンで始まります。おじいちゃんの。読者を騙すためだけに書いた最低の小説なので間違っても読まないようにしよう。ネタバレの内容が全てなので10秒で読んだことにしてよろしい(笑)

 

 

1位  カラフル / 森絵都(1997年)

 

生前の罪により、輪廻のサイクルから外されたぼくの魂。だが天使業界の抽選にあたり、再挑戦のチャンスを得た。自殺を図った少年、真の体にホームステイし、自分の罪を思い出さなければならないのだ。真として過ごすうち、ぼくは人の欠点や美点が見えてくるようになるのだが…。不朽の名作ついに登場。

 

 最低最悪の害悪図書である。母親でこの本を子供に薦めたいなどと抜かしているようならば、冗談ではなく死んだ方が良い。いいや死ぬべきである。私は2人の子供の親父としてこの本を発禁にすべきだと考えている。

 なぜかというとこの本ではクソビッチの援助交際シーンある。世の母親でこの本を子供に読ませたいというのは、子供に援助交際をさせたいのだろうか?読むのが男であれば母親を憎み呪うようになり、子供が女であればクソビッチ開眼となるかもしれない。

この本を高評価するすべての大人にキチガイと言いたい。そして世の男たちは気をつけるべし。女という生命体は生まれつきちょっと狂っているのである。この本を読み、この本を褒め称える女を見て私は確信した。

最近は女をけなすようなことを言えない風潮があるが、昭和の男たちは当たり前のように言っていたし、今だってそうあるべきなのだ。

おっとっと、フェミニズムを語ってしもうたわ。とりあえずこの本はマジでヤバいので気をつけてほしい。

 

 

書いてるうちに憎悪が燃え上がってきた

本記事のコンセプトは世間的に高評価だが、個人的には残念だと感じた作品を紹介することであった。しかしいくつか心底憎悪している作品があるため、だんだん本音が爆裂するようになってきてしまった。しかしその分参考になるのではないだろうか。
小説は読めば読むほど飽きてきてしまい、1000冊くらい読んだだけで多くの本が時間のムダだと感じるようになるので、ここに挙げた本は読書慣れしていない人からすれば必ずしも時間のムダではないと思われる。実際、ベストセラーばかりなのでブックオフにいけば大抵は100円コーナーに並んでいるだろう。
気になる本があれば試しに読んでみてほしいが、いくつかの本は本気で読まない方が良いので、文章の温度感から判断していただけると幸いである。