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初心者おすすめSF小説10選+地獄の地雷10選|最高に読みやすくて面白いSF

最高のおすすめSFと地獄の地雷10選

一番書きたかった記事

私が一番好きなジャンルはSFである。様々なジャンルの本を読むがルーツはあくまでもSFなのだ(ホラーもだけど)

幼少期に『エイリアン』『ブレードランナー』『スターウォーズ』『ターミネーター』『プレデター』『マッドマックス』『ウォータワールド』『未来少年コナン』『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』などを観て、SFキチガイ少年の原型はすでに出来上がっていたと思われる中、思春期に『パラサイト・イヴ』や『らせん』を映画で鑑賞して、原作を読んだことによってほぼSFマニアの土台は完成した。トドメに高校時代の70%を『ファンタシースターオンライン』に捧げ、『クトゥルフ神話』を読み漁ったことによって私は完全なるSF信者になった。

したがってこのブログはSF小説好きを一人でも多く増やすというのが目的の一つなのだが、これまでにSF特化記事を書けていなかったので、満を持してSF小説記事を書くことにした。

SF小説はマニアだけが崇拝する作品と、一般人でも楽しめる作品があると私は認識している。しかし”SF小説 おすすめ”でググると、あからさまに初心者がSFアレルギーを起こすようなマニア向け作品が紹介されていている。そこに危機感を感じ、この記事では回避すべきマニアックな地雷作品10選を紹介した後に、厳選に厳選した超読みやすく面白いSF小説をおすすめしたい。これからSF小説を読む方の参考になれば幸いである。

 

地雷作品滅ぶべし!!

さて、まずは地雷作品を10作品紹介したい。

実際は10作品どころではないのだが、おすすめされがちな「これぞSF」な作品にもかかわらず初心者が読んだら爆死する小説を10作品紹介しよう。ここで挙げる地雷作品を読んでSF食わず嫌いになってしまった方は、安心してSF界に戻っていただきたい。読みやすいSF小説などいくらでもある。

なお念のため注釈しておくが、地雷作品=駄作では当然ない。あくまでも初心者にとっての地雷であることを先にお伝えしておく。

 

10位 ハーモニー / 伊藤計劃(2008年)

 

21世紀後半、“大災禍”と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した―それから13年。死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰に、ただひとり死んだはずの少女の影を見る―『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。

 

最初にして最強候補の地雷SFである。

国産かつラノベっぽい装丁についつい騙されてしまうが、内容は非SFマニアには理解不能な領域に達している。だが安心してほしい。『ハーモニー』が理解不能で心が折れたとしても、それはあなたの理解力が低いからではない。

そもそもこの本は最低でも”HTML”を理解し、自らコーディングしたことがあるような人でなければ理解しようがない。無論、これらの専門用語が分からない人はお呼びではない。

私も初読時は「ぶっちゃけつまらん....ていうかネーミングセンスwww」という感じだったが、それなりにSF小説を読んでから再読すると良さが分かってくる。すぐれたSFというのは一読しただけでは理解不能なパターンが多いというのを知っていただきたい。

 

 

9位  ハローサマー、グッドバイ / マイクル・コーニィ(1975年)

 

夏休暇をすごすため、政府高官の息子ドローヴは港町パラークシを訪れ、宿屋の少女ブラウンアイズと念願の再会をはたす。粘流が到来し、戦争の影がしだいに町を覆いゆくなか、愛を深める少年と少女。だが壮大な機密計画がふたりを分かつ…少年の忘れえぬひと夏を描いた、SF史上屈指の青春恋愛小説、待望の完全新訳版。

 

続いてはこいつだ。いかにも読みやすそうでいてなかなか厳しい。

装丁やあらすじから判断すると非常に読みやすそうな印象を受けそうだが、実際には独自の世界観を持つSF×ファンタジーで、SF慣れしていれば大丈夫かも知れないが、初心者からすれば装丁イラストからは想像もつきにくいほど読みずらい。

さらに言うと、可愛いと噂のブラウンアイズがそんなに可愛くない!日本とイギリスの日英同盟が崩れたのは萌えに対する認識の相違だと推測する(笑)

しかも音に聞く衝撃のラストはあくまでもSFマニア向けの衝撃なので、マニア以外が読んだら「ふーん」で終わることだろう。騙されてはならない。

 

 

8位  地球の長い午後 / ブライアン・W・オールディス(1962年)

 

大地をおおいつくす巨木の世界は、永遠に太陽に片面を向けてめぐる、植物の王国と化した地球の姿だった! 人類はかつての威勢を失い支配者たる植物のかげで細々と生きのびる存在に成り果てていた……。イギリスSF界を代表する巨匠が、悠久の時の果てにSF的想像力の精髄を展開する名作

 

個人的には超好きな、人類が衰退し植物が地球を支配する遠未来SFである。

本作の読みづらさは遠未来という設定のため、現代の地球の常識は完全にブッ飛んでおり、SFというよりもファンタジーに近い世界観なので、とにかく景色を想像しにくいことにある。初心者はイラストなどをググって世界観を脳内補完しなければ、「さっぱり分からん(泣)」で終わる可能性が非常に高い危険な作品である。『風の谷のナウシカ』の元ネタの一つとも称され、素晴らしい作品だが、SFとファンタジーそれぞれにある程度の慣れがなければ読んではならない。

 

 

7位 ニューロマンサー / ウィリアム・ギブスン(年)

 

ハイテクと汚濁の都、千葉シティの空の下、コンピュータ・ネットワークの織りなす電脳空間を飛翔できた頃に思いを馳せ、ケイスは空虚な日々を送っていた。今のケイスはコンピュータ・カウボーイ能力を奪われた飢えた狼。だがその能力再生を代償に、ヤバい仕事の話が舞いこんできた。依頼を受けたケイスは、電脳未来の暗黒面へと引きこまれていくが……新鋭が華麗かつ電撃的文体を駆使して放つ衝撃のサイバーパンクSF!

 

最古クラスのサイバーパンクSF小説

サイバーパンクと聞いてピンと来ない方はあきらめてください。否、ピンと来ても無理ゲーかもしれない(笑)

当方『攻殻機動隊』や『マトリックス』は大好きにもかかわらず、本書を最後まで読み切るのは死ぬほど苦労した割に、理解度は低く、しかも再読する勇気がないため、恥ずかしながらいまだに「よく分からん(´;ω;`)」状態である。

 

 

6位 全作品 / グレッグ・イーガン(nnnn年)

 

全部ですってばwww

 

当代最高のハードSF作家ことグレッグ・イーガン

私は最初に『祈りの海』を読んで撃沈しつつも、ちょこちょこ他の作品も読み進めたのだが、結論から言うとさっぱりである。凄いことは分かる。しかし文系出身インフラSEと、それなりにそっち系の知識を持つ私でも残念ながら理解が及ばぬようだ。短編なら比較的読みやすいものもあるが、初心者が読んだら宇宙の塵になるだろう。

 

⇩いっそのこと初戦から『ディアスポラ』を読んで玉砕するのはいかがだろうか(笑) たしか『バーナード嬢』でも紹介されていたはず。あと『プランクダイブ』...これも死ぬ(笑)

 

5位 ソラリス  / スタニスワム・レム(1961年)

 

惑星ソラリス―この静謐なる星は意思を持った海に表面を覆われていた。惑星の謎の解明のため、ステーションに派遣された心理学者ケルヴィンは変わり果てた研究員たちを目にする。彼らにいったい何が?ケルヴィンもまたソラリスの海がもたらす現象に囚われていく…。人間以外の理性との接触は可能か?―知の巨人が世界に問いかけたSF史上に残る名作。レム研究の第一人者によるポーランド語原典からの完全翻訳版。

 

オールタイムベストSF筆頭の作品。

ネームバリューに釣られて読むとこれがなかなかキツイ。純文学が娯楽を追求していないのと同様、本書もエンターテイメント追及したような作品ではなく、とにかく説明が詳細でクッソ眠くなるという睡眠小説である。ソラリスがあればドリエル(睡眠薬)は不要と言える(笑)

後世に名を残す作品というのは読めば納得だが、初心者が手を出すべき作品ではないことは確かである。

 

 

4位  幼年期の終わり / アーサー・C・クラーク(1953年)

 

地球上空に、突如として現れた巨大な宇宙船。オーヴァーロード(最高君主)と呼ばれる異星人は姿を見せることなく人類を統治し、平和で理想的な社会をもたらした。彼らの真の目的とはなにか?異星人との遭遇によって新たな道を歩み始める人類の姿を哲学的に描いた傑作SF。

 

おそらく万人が認める人類最高のSF小説である。

したがって他の追随を許さぬ圧倒的な完成度を誇る作品だが、大きく分けて三章に分かれる本作の中で、面白いと言えるのは一章のみだと言えるだろう。(二章もちょっとは面白いかも) 哲学的な内容に移行していく中盤以降は思弁系SFとしては比類なき内容だが、娯楽小説としては正直つまらない。『新世紀エヴァンゲリオン』の人類補完計画など後世に与えた影響を鑑みると必読の作品だが、初心者には荷が重いだろう。後回しを推奨する。

ちなみに本作は早川書房東京創元社、光文社からそれぞれ出版されていて、私は前二者版を読んだのだが、噂では光文社版が読みやすいらしい。もし意地でも読みたいのなら光文社版を選ぶのが良いのかもしれない。

 

 

3位 1984年 / ジョージ・オーウェル(1949年)

 

“ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…。二十世紀世界文学の最高傑作が新訳版で登場。

 

ディストピアの超傑作にしてネームバリューも最高峰の作品。

しかしお世辞にも読みやすいとは言えず、SFというよりは海外文学をそれなりに読んだうえで、ディストピアSF系の作品もそれなりに読んでから挑むべき作品だと思う。出版された時代を考えると凄まじい先見性を持ち、後世に圧倒的な影響を与えた作品だと思う。(難しいけどね)

意識高い系(笑)がかっこつけて読みがちな作品だが(勝手な想像)、そういった痛い人の心を折る小説兵器としては素晴らしい。

 

 

2位 華氏451度 / レイ・ブラッドベリ(1953年)

 

華氏451度―この温度で書物の紙は引火し、そして燃える。451と刻印されたヘルメットをかぶり、昇火器の炎で隠匿されていた書物を焼き尽くす男たち。モンターグも自らの仕事に誇りを持つ、そうした昇火士のひとりだった。だがある晩、風変わりな少女とであってから、彼の人生は劇的に変わってゆく…。本が忌むべき禁制品となった未来を舞台に、SF界きっての抒情詩人が現代文明を鋭く風刺した不朽の名作、新訳で登場!

 

こちらも意識高い系(笑)に読まれがち(であろう)超傑作ディストピアSF。

しかしまぁ読みずらい。SF度はそこまで高くないのでSF入門者にはおすすめしがたく、ディストピア小説を読みたい方にも、敷居が高いかもしれない。主張は分かりやすいし、プロットもシンプルなのだが読めばわかる読みづらさ....。意識高い系の人が読んでかっこつけているとしても、90%くらい知ったかなので笑ってあげよう。

 

 

1位 アンドロイドは電気羊の夢を見るか / フィリップ・K・ディック(1968年)

 

長く続いた戦争のため、放射能灰に汚染され廃墟と化した地球。生き残ったものの中には異星に安住の地を求めるものも多い。そのため異星での植民計画が重要視されるが、過酷で危険を伴う労働は、もっぱらアンドロイドを用いて行われている。また、多くの生物が絶滅し稀少なため、生物を所有することが一種のステータスとなっている。そんななか、火星で植民奴隷として使われていた8人のアンドロイドが逃亡し、地球に逃げ込むという事件が発生。人工の電気羊しかえず、本物の動物を手に入れたいと願っているリックは、多額の懸賞金のため「アンドロイド狩り」の仕事を引き受けるのだが…。

 

栄えある一位は文句なしに本作である。レベルが違い過ぎる。

そもそも私は映画『ブレードランナー』の大ファンなのだが、原作である本作を読んだ印象は「は?」である。映画は50回は観たし、ヴァンゲリスによるサウンドトラックも購入したくらいには愛しているにも関わらず....。くれぐれもネームバリューとお洒落な邦題に釣られて読んではならない。爆死必至である。

ちなみにPKD作品は全体的に読みづらいので、気合を入れて集中して読むか、酒を飲んで泥酔中に読むのが良いだろう。

 

 

楽しくなくては意味がない!

さて、上記の作品はいかがであっただろうか。他にも地雷は大量にあるのだが、キリがないのでとりあえず代表的な作品に抑えてみた。

ここからは①読みやすさ面白さ本格SF度のバランスが良い作品を超厳選して10作品挙げてみたい。読みやすくて面白くても肝心なSF度が低ければSF作品として紹介する意味がなくなるので、上記を十分に考慮したうえで紹介していく。

 

10位 星を継ぐもの / ジェイムズ・P・ホーガン(1977年)

 

月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見された……。ハードSFの新星が一世を風靡した出世作

 

私を読書沼に沈めた思い入れのある作品.....ということは考慮せずともオールタイムベストSFでトップクラスの神傑作である。

ではなぜ10位なのか。それは初心者にはやや敷居が高いということと、創元SF文庫の活字が小さくフォントが微妙に読みづらいこと、また三部作であるため最後まで読まなければ、本作品の魅力を最大限に味わうことができないからである。

やや敷居が高いという点を除けば古今東西SF最強の作品なので、ぜひとも読んでみてほしい。というかこれを読んで合わなければSFは読まなくても良いとすら言える。

ちなみに私はkindleを購入後に初めて買ってみたのが、本作なのだが創元SF文庫の破滅的に読みにくい活字で慣れていたこともあり、あまりの読みやすさに涙を流した。紙の本でムリゲーだと思った方には電子書籍を推奨したい。

 

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9位 夢みる葦笛 / 上田早夕里(2016年)

 

ある日、街に現れたイソギンチャクのような頭を持つ奇妙な生物。不思議な曲を奏でるそれは、みるみる増殖していく。その美しい歌声は人々を魅了するが、一方で人間から大切な何かを奪い去ろうとしていた。(表題作)人と人あらざるもの、呪術と科学、過去と未来。様々な境界上を自在に飛翔し、「人間とは何か」を問う。収録作すべてが並々ならぬ傑作!奇跡の短篇集。

 

本格的なSFであり様々なジャンルを扱いながらも、読みやすさと優れた娯楽性を兼ね備えた恐るべきクオリティの神短編集。

10作品収録のためそれぞれの作品はとても読みやすいボリュームにまとまっているのだが、本当に短編かよ...と思うほど深い読後感に浸ることができる凄まじい傑作が揃っている。しかも各作品が非常にバラエティ豊富なので、もし肌に合わない作品があったとしても、SFに興味があるような人であれば何かしら好きになる作品があるはずである。国産ということもあり最も推奨したい作品の一つだ。

 

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8位 われはロボット / アイザック・アシモフ(1950年)

 

ロボットは人間に危害を加えてはならない。人間の命令に服従しなければならない…これらロボット工学三原則には、すべてのロボットがかならず従うはずだった。この三原則の第一条を改変した事件にロボット心理学者キャルヴィンが挑む「迷子のロボット」をはじめ、少女グローリアの最愛の友である子守り用ロボットのロビイ、ひとの心を読むロボットのハービイなど、ロボット工学三原則を創案した巨匠が描くロボット開発史。

 

ロボット工学三原則を提唱した最重要SF小説の一つである。

SFとして圧倒的なクオリティを誇るだけでなく、連作短編集で比較的読みやすく、しかも著者お得意の本格ミステリとの融合作品でもあるので、娯楽要素も非常に高い。こんなのが戦後すぐに書かれてしまったら、後進の心を折りまくってしまった罪深き作品なのかもしれない。起源にして頂点といったところだろうか。

 

 

7位 涼宮ハルヒの消失 / 谷川流(2004年)

 

涼宮ハルヒ?誰のこと?」珍しく俺の真後ろの席が空席だった12月18日の昼休み。颯爽と現れてその席に座ったのはハルヒではなく、長門との戦いに敗れて消滅したはずの委員長・朝倉涼子だった。困惑する俺に追い打ちをかけるように、名簿からもクラスメイトの記憶からもハルヒは消失していた。昨日まで普通だった世界を改変したのは、ハルヒなのか。俺は一縷の望みをかけて文芸部部室を訪れるが―。

 

アニメ好きなら知らぬ者はいない作品。

ラノベということもあり私自身、長年忌避してしまったのだが、角川文庫版収録の日本SF御三家こと筒井康隆氏の熱い解説を信じて読んでみたら、4作目の本作で「ウオォーーーーーーー!」となってしまったのである。読みやすさ、面白さ、本格SF度を高水準で満たしており、なおかつ”ツインテール萌え”という必殺兵器を備えた本作を読まないわけにはいかないだろう。

一作目から読まなければならないという敷居の高さを差し引いても絶対的におすすめの作品。(というか一作目もかなりの傑作なので安心されたし)

 

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6位 円 / 劉慈欣(2021年)

 

円周率の中に不老不死の秘密がある――10万桁まで円周率を求めよという秦の始皇帝の命を受け、荊軻(けいか)は300万の兵を借りて前代未聞の人列計算機を起動した! 第50回星雲賞に輝く「円」。麻薬密輸のために驚愕の秘密兵器を投入するデビュー短篇「鯨歌」。貧しい村で子どもたちの教育に人生を捧げてきた教師の“最後の授業"が信じられない結果をもたらす「郷村教師」。漢詩に魅せられた超高度な異星種属が、李白を超えるべく、あまりにも壮大なプロジェクトを立ち上げる「詩雲」。その他、もうひとつの五輪を描く「栄光と夢」、少女の夢が世界を変える「円円のシャボン玉」など、全13篇。中国SF界の至宝・劉慈欣の精髄を集める、日本初の短篇集。

 

本当は人類最高傑作『三体』を挙げておきたいところだが、三部作で圧倒的なボリュームがあるため、初心者向けに短編集である『円』をおすすめする。

読めば分かるが、アジア人史上初めて”ヒューゴー賞”を受賞された中国SFの至宝・劉慈欣の力は本物で、短編集である本作も個々の作品が途轍もないクオリティを備えている。いわゆる”三体ロス”に陥って虚無空間を彷徨っていた私は本作に救われた。

中国の貧しい村から太陽系を遠く離れた宇宙まで話のスケールの幅が広く、内容もバラエティ豊富でSFの魅力を200%教えてくれるので、大長編『三体』に恐れをなしているのならまずは本作から読んでみてほしい。

 

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5位 滅びの園 / 恒川光太郎(2018年)

 

わたしの絶望は、誰かの希望。
ある日、上空に現れた異次元の存在、<未知なるもの>。それに呼応して、白く有害な不定形生物<プーニー>が出現、無尽蔵に増殖して地球を呑み込もうとする。
少女、相川聖子は、着実に滅亡へと近づく世界を見つめながら、特異体質を活かして人命救助を続けていた。だが、最大規模の危機に直面し、人々を救うため、最後の賭けに出ることを決意する。世界の終わりを巡り、いくつもの思いが交錯する。壮大で美しい幻想群像劇。

 

我が激推し異世界作家・恒川光太郎によるSF寄りの作品である。

ファンタジー寄りでもあるためこの順位にしているが、読みやすさと面白さでは他の追随を許さない非の打ち所の無い超絶エンターテイメント作品である。ページを開くや否や即効で異世界に飛ばされてしまい、そのまま面白すぎて確実に一気読みしてしまうだろう。ホントにどうしたらこんな物語が描けるのか不思議でならない。

 

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4位 ループ / 鈴木光司(1998年)

 

科学者の父親と穏和な母親に育てられた医学生の馨にとって家族は何ものにも替えがたいものだった。しかし父親が新種のガンウィルスに侵され発病、馨の恋人も蔓延するウィルスに感染し今や世界は存亡の危機に立たされた。ウィルスはいったいどこからやって来たのか?あるプロジェクトとの関連を知った馨は一人アメリカの砂漠を疾走するが…。そこに手がかりとして残されたタカヤマとは?「リング」「らせん」で提示された謎と世界の仕組み、人間の存在に深く迫り、圧倒的共感を呼ぶシリーズ完結編。否応もなく魂を揺さぶられる鈴木文学の最高傑作。

 

国民的ジャパニーズホラーの金字塔『リングシリーズ』3作目。

ホラー要素はまったく無くジャンルはずばりハードSFである。しかも相当ガチなSFなのだから意表を突かれること間違い無しである。2作目の『らせん』もSF的要素を備えた傑作だが、『ループ』は完全なる別物となっていて、リアルタイムで読んだ方や映画から原作を追った人それぞれの度肝を抜いたことだろう。

愛する者のために全存在をかけた熱い男の物語でもあり、まさかの大号泣である。”貞子”は知っているが原作は読んでいないSF好きがいれば絶対に読むべきである。

 

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3位  新世界より / 貴志祐介(2008年)

 

ここは病的に美しい日本(ユートピア)。
子どもたちは思考の自由を奪われ、家畜のように管理されていた。
手を触れず、意のままにものを動かせる夢のような力。その力があまりにも強力だったため、人間はある枷を嵌められた。社会を統べる装置として。
1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖(かみす)66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄(しめなわ)で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力(念動力)」を得るに至った人類が手にした平和。念動力(サイコキネシス)の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた……隠された先史文明の一端を知るまでは。

 

もはや説明不要の神傑作。神の中の神本である。

一位最有力候補だが、SFだけではなく様々なジャンルが複合された作品であることと、文庫版三分冊で1500ページ級のボリュームを考慮して3位としている。貴志祐介特有の優れたリーダビリティは本作でも全開なので、スラスラ読めてしまうことも強力なセールスポイントだ。

SFに興味があるがページ数に躊躇して『新世界より』を読もうか検討されている方は恐れることなくただちに読み進めるべし。究極の傑作である。

 

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2位 タイタン / 野﨑まど(2019年)

 

至高のAI『タイタン』により、社会が平和に保たれた未来。人類は“仕事”から解放され、自由を謳歌していた。しかし、心理学を趣味とする内匠成果のもとを訪れた、世界でほんの一握りの“就労者”ナレインが彼女に告げる。「貴方に“仕事”を頼みたい」彼女に託された“仕事”は、突如として機能不全に陥ったタイタンのカウンセリングだった―。

 

超天才・野﨑まどによる未来お仕事小説。

読みやすさと面白さを完璧に備えているのは当たり前として、びっくり仰天な超スケールかつ超展開が待っていて、私はあまりのテンションの高まりに血管が破裂するかと思ってしまった。

仕事とは何か?”という問いに対して、AIとのカウンセリングを通じて、著者の思想とも言える解答を示す作品として超優秀である。野﨑まどは本作に限らずいずれの作品もSF初心者におすすめしたい。

 

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1位 プロジェクト・ヘイル・メアリー / アンディ・ウィアー(2021年)

 

グレースは、真っ白い奇妙な部屋で、たった一人で目を覚ました。ロボットアームに看護されながらずいぶん長く寝ていたようで、自分の名前も思い出せなかったが、推測するに、どうやらここは地球ではないらしい……。断片的によみがえる記憶と科学知識から、彼は少しずつ真実を導き出す。ここは宇宙船〈ヘイル・メアリー〉号――。ペトロヴァ問題と呼ばれる災禍によって、太陽エネルギーが指数関数的に減少、存亡の危機に瀕した人類は「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を発動。遠く宇宙に向けて最後の希望となる恒星間宇宙船を放った……。

 

SF小説のおすすめはどれかと聞かれたら本作の名を上げることを神に誓っている。

少々長めなボリュームを考慮しても、SF入門者から玄人まで自信を持っておすすめできる、SF界に名を刻むであろう新たなマスターピースである。

ミステリー要素があり、事前情報は極力ない方が楽しめるので、気になったのであればただちに読むことを推奨する。21世紀になってなお、アホみたいな戦争を繰り返してしまう人類には必読書とすべき内容だ。人類同士で争っている場合ではない世界がここにある。

 

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SF好きが一人でも増えることを祈って

本記事で紹介した作品は本当に本の一部である。最高のSFが読みたいのであれば問答無用に『三体』を読めば良いと思いつつも、やはり敷居が高いと思われるので、本当に読みやすい小説と危険な地雷SFをお伝えした。

本記事に興味を持たれたようであれば、SF好きの私が紹介する100選などの記事も以下にリンクを貼るので参照していただければ幸いである。

 

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『残月記』小田雅久仁|ルナティックな世界観のSFファンタジー

月にまつわる驚異の物語

 

 

作品紹介

小田雅久仁による『残月記』は2021年に双葉社より出版された作品で、単行本で400ページ程度の中・短編集である。(表題作は長編級の尺)

いかにも本格SFのようなタイトルと表紙だが、意外にも一話目「そして月がふりかえる」はあまりSF要素はなく”世にも奇妙な物語”のような不条理小説となっていて、続く二話目の「月景石」は日常が突如崩れ去って異世界に雪崩れ込むダークファンタジー風に仕上がっている。そして圧巻の三話目「残月記」はディストピアSF×ファンタジーを筆頭に、ありったけのエンターテイメント要素をぶち込んだ途轍もない物語である。

いずれの作品も””にまつわる話ということと予想不可能な展開という共通点があるが、それぞれがジャンル違いの異なる魅力と、そして強烈な世界観を持っているので、心に深く刻み込まれること請け合いである。通読後は放心してしまうだろう。

それでは奇跡的な傑作『残月記』について書いていきたい。

 

 以下、あらすじの引用

近未来の日本、悪名高き独裁政治下。世を震撼させている感染症「月昂」に冒された男の宿命と、その傍らでひっそりと生きる女との一途な愛を描ききった表題作ほか、二作収録。「月」をモチーフに、著者の底知れぬ想像力が構築した異世界。足を踏み入れたら最後、イメージの渦に吞み込まれ、もう現実には戻れない――。最も新刊が待たれた作家、飛躍の一作!

 

 

想像していたイメージと違い過ぎ

月をモチーフにしたSF要素のある恋愛短編集的な内容を勝手に想像していたのだが、実際はまるで違い良い意味で期待を裏切ってくれた。

まずは収録数と物語の尺である。収録作のページ数はそれぞれ70ページ、90ページ、220ページ程度で、単行本で改行少なめの文字びっしりのため、長めの短編2編に、短めの長編という感じなので非常に読みごたえがあり、中短編よりも長編が好きな私にとっては嬉しい誤算であった。

次に作風である。月が舞台のキラキラしたお話かと思いきや、最初の「そして月がふりかえる」は家族でレストランに行った主人公が、トイレに席を立って戻ってみると妻子が主人公のことを知らないという不条理ホラーな作風である。「こんな感じだったのかぁ...これなら本屋大賞にノミネートされてもおかしくないな」などと思いながら一気読みし、続く二作目の「月景石」を読み進めていくと、ちょっとファンタジー要素があるっぽい日常系の話から一転、恐ろしいダークファンタジーの世界に引きづり込まれる。

そして圧巻の表題作である。架空の病気の感染者を隔離するという、コロナ渦のような社会から全体主義の突き進んだディストピアSFなのだが、どうしてこうなったという感じの展開を迎え、血沸き肉躍るエンターテイメントを味わうことができたのである。

ザコ敵(失礼極まりない)かと思ったら、裏ボス級の大物だったという希少な読書となり、テンションが上がりまくってしまった。まさにルナティック!!

 

月がふりかえってしまった

「そして月がふりかえる」は収録作の中では最も日常度が高く、読者によっては我が身に置き換えてしまいそうな内容なので、読みやすく共感しやすい作品である。

突然自分の妻子が冗談ではなく「あんた誰?」となったらどうだろうか。しかも自分の代わりに別の夫が登場したり、自分には面識がないのに別の妻(?)がいきなり現れたらどうだろうか。本作を読書中の私はちょうど作中の主人公と年齢や家族構成が近いので、いろいろと「俺ならこうする」と妄想しながら読んでいたら、「あ!やってもうた」な展開かと思わせつつ、やはりかくかくしかじかな感じになり、ラストでちょっとした衝撃を喰らったりと、短めな話なのにかなり思い読後感が残るだろう。

世にも奇妙な物語”を思わせる作風で、想像するとなかなかのホラー要素を秘めているので、好みな方にはハマる作品だと思われる。

 

そんな夢は見たくないです

「月景石」は電波系の叔母(夭逝した美女)が残した、月景石という枕の下に入れて寝るととんでもない夢を見てしまうというトンデモな代物がキーになる物語だ。

物語はある地点まではアラサー独身で10歳年上のモテ男と同棲している女性の日常的な話を中心に進んでいくのだが、途中から「おや?」となりついには一気に「うおぉーーーッ!!」となる展開である。月景石が見せる悪夢の世界だと半ば分かってはいても、あまりの超展開に頭が混乱すること請け合いである。

ダークファンタジー全開な月世界ではかなり残酷な描写が続くので、ここいらでふるいにかけられる読者は多そうだが、エグイのがOKな方やリョナラーにとってはたまらない作品になるだろう。どちらが現実だか分からなくなってくる展開と、某SF作品が脳裏をよぎるラストは本当に最高だった。

 

グラディエーターだと...!?

完全無敵な表題作は尺的にも重厚な内容からも、まさに大長編に匹敵するほど圧巻の超傑作である。(でも激しく人を選びそう&好みが分かれそう)

架空の日本を舞台に、”月昂”という感染症にかかった男の生涯が描かれるディストピアSF×ファンタジーな物語なのだが、話の展開が斜め上過ぎてテンションが猛烈に上がってしまい、まさに私自身が”月昂”に感染してしまったかのような状態に陥ってしまった。ちなみに”月昂”とは超強烈なインフルエンザのような症状が発端となり、最初の段階で死亡する罹患者もいるが、そこを乗り切るとスタンド使い満月期に超パワーアップし、新月期に深い賢者タイムに入り3%くらいの確率で死ぬという状態になる病気である。

架空の日本が舞台だけあって、独裁政治のもとに月昂発症者を隔離するのだが、そこでまさに古代ローマ帝国のような剣闘が行われている。主人公はそこに太刀使いのサムライとして参戦することになり、とある事情で女を愛することになり....という胸アツな展開が待っている。

私は恋愛ものには相当な拒絶反応を示す体質であり、くだらない小説のくだらない恋愛シーンでは「マジでかんべんしてくれよ....」となってしまうのだが、「残月記」の恋愛はいろいろと完璧に決まってしまっており、『北斗の拳』とか『男塾』が好きな小生は、物語が終盤に差し掛かるや涙腺が緩んでしまう状態であった。

激アツな中盤戦とスーパーハードな逃避行とせつない純愛の物語はツボにはまればとことん好きになるだろう。読後はしばらく方針してしまった。

 

ほんとにこんな感じ

 

究極のリアリティ”トイレ愛”

超どうでもいいことなので完全に蛇足なのだが、それを承知で書いておきたい。

『残月記』収録の作品はいずれもトイレとか小便・大便関連のネタが頻出するんです(笑) なんでだろうと考えてみると、おそらく著者の小田さんはトイレが近いんだろうとか、はたまたひょっとしてスカ〇ロ好きなのかしらんとか、くだらない考えが次々と浮かんでしまうのである。

というのは置いておくとして、何が言いたいかというと、私は頻尿なので基本的に常にトイレを探すことから行動が始まる人間である。そのため小説を読んでいて「トイレはどうするんだろう??」と常々ツッコミを入れてしまうものなのである。そんな中『残月記』は生まれて初めて出会ったトイレのことを考慮した小説なのだ。くだらないことだが私は感動したし、小田雅久仁氏の作品は今後もずっと読み続けたいと心に決めたのである。......(笑)

 

至高の傑作

プロットや世界観の完成度の高さや、洗練された文章など読む人を選ぶものの、稀に見る傑作なので多くの方におすすめしたい。今後新刊が出たら即購入する作家が一人増えたのは幸せなことである。

 

 

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自己紹介と書評ブログについて|PV数や収益など公開

10万PV記念に「私」と「ブログ」をネタバレ

2020年8月から『神本を求めて』と題して始めたこの書評ブログだが、2022年5月に10万PVに達した。興味本位で調べてみたところ、本ブログは更新頻度や記事数を考慮すると、それなりに読まれている書評ブログだとみなして良さそうである。

そのためこれから書評ブログを書いて儲けようかなぁなんて考えている無謀な方(笑)には、そこそこ需要があるとみなして私の自己紹介と本ブログのステータスをネタバレ解説していく。

私の自己紹介など興味がないのは分かっているが、どんな人が書いているのか把握することで、本ブログの見方も変わってくるかもしれない。何らかの参考になれば幸いである。

私のステータス

書評ブログに関係しそうなパラメータを箇条書きしていく。

  • 生年月日:1986年(昭和の民)
  • 家族構成:妻+子供2人+猫
  • 最終学歴:大卒
  • 職歴:TSUTAYAブックオフ的な業態の会社に5年勤務後、ブラック派遣IT企業を経て某IT上場企業への転職に成功。以降はインフラSEとして現在に到る。
  • 自己PR:SF好きのデスメタラー

こんなところだろうか。紹介するに値するであろう読書歴は次の項で書いていく。

 

私の読書歴

私は後天的な読書好きである。かつては(今もだけど)SF映画やB級ホラー映画、RPGをメインとするゲーマーでデスメタラーでブラックメタラーであった。そんな私が読書マニアになっていくまでに読んだ本を覚えている範囲で紹介していく。

 

小学生

中学生

 

高校生

読んでない!たぶん。
リア充(死語か?)だったため本を読む暇などなかったはず。

 

大学生

ブラック企業(2010~2016)

思い出しただけで発狂するような地獄のブラック企業時代。そこそこ高学歴なのに映画や本を扱う会社に行こうと思ったのが運の尽きだった.....。もちろん小説など1冊も読んでいない。2014年の結婚を機に転職を考え、2015年に転職するもそこではさらなる地獄が待っていたが、何とか経験を積みまともな会社への転職に成功した。
ここではっきり確信したが、幸せになるためには公務員になるか大企業に就職するしかないのである。この時期は地獄から脱出するために何冊かの自己啓発本やビジネス書を読んだが、書いてあることはすべてクソである。公務員になるか大企業に就職するか。人生にはこの二つしかないのである。
この記事を学生が読まれているのなら、企業や自営業、中小企業への就職は地獄への入り口であることを強く心に刻んでほしい。残業代なし、夜勤手当なし、休日出勤手当なし、昇給は雀の涙、賞与はほぼゼロ、残業時間は毎月100時間越え、なのに手取り給与は20万に満たない。まさに悪夢である。

 

ホワイト企業(2016~)

ここから私の本当の人生は始まった。労働時間が激減したにもかかわらず給与は4割増し。精神的にも金銭的にも余裕ができたのか、転職した直後に妻は妊娠し、2018年には東京郊外にマイホームを購入している。自由時間が劇的に増えたため、およそ7年ぶりに何か趣味を作ろうと思い、2016年にkindleを購入したことから読書マニア生活がスタートした。2020年に管理職に昇格するまでは年間250~300冊のペースで読めていて。役職がついてからは、精神的に忙しくなった関係で読書量が減少したが、それでも年間200冊程度は読めている。そして今に到る。

2016年にKindle端末を購入してからリハビリも兼ねて読み漁っていたのは、著作権切れで無料で読めた江戸川乱歩である。乱歩は神です。ちなみに購入したのはKindle Paperwhiteである。

 

 

書評ブログ『神本を求めて』について

『神本を求めて』という題名はFFⅥの神曲『仲間を求めて』から名付けている。ちなみにはてなブログで本ブログを書き始める前は、アメブロで書評ブログ+αのクトゥルフ神話の『未知なるカダスを夢に求めて』をもじったタイトルのブログを書いていた。

私は無料プランでしかブログを書くつもりがないので、アメブロの方が収益は多かったような気がしなくもないが、ランキング形式などのまとめ記事を書くと、アメブロだと文字数制限の関係で書ききれないという事情で、必然的にはてなブログに移行している。

ブログはあくまでも趣味でやっており、また将来我が子におすすめするための備忘録として書いているので、ブロガーになって稼ぐというつもりはない。そのためグーグルアドセンスは利用していないし(そもそも無料プランなのでドメイン名的に利用不可っぽい)、商品リンクを加工して貼るのが面倒なのでアフィリエイトAmazonのみにして、楽天のリンクは貼っていない。書評ブログでバリバリ稼ぎたい方(まぁそんなことは無理だろうが)その辺に詳しそうな方の記事を読むのが良いだろう。

稼ごうと思うと途端につまらなくなり、やる気が失せるのがブログである。ゆる~く継続するのが何よりだろうと考え、無料プランで月に1~2記事という亀ペースながらも着実に更新している。

 


www.youtube.com

 

PV数推移

書評ブログを書いたことがある人なら誰でも通る道だと思うが、最初の内は全く読まれない。というか戦略をミスると永遠に1日あたり0~10PV位という残念な結果を叩き出し続けることになるだろう。

読まれるようになるための王道の手段は読者を増やすことではなく、Googleなどの検索エンジンからの流入を増やすことである。というかそれ以外の手段は全部クソと言っても良いだろう。悲しいことだが他人はだれもあなたに興味はない。興味があるのは記事の情報であるTwitterなどのSNSで相互フォローを増やしまくって宣伝するのは、あくまでも最初の頃の苦肉の策といってよい。

私の場合はアメブロの複数記事がすでにGoogle上位表示されていたので、その記事をはてなブログに引っ越しして、アメブロにはリンクを貼っておくという姑息な手段を用いたため、最初からそこそこのPVがあった。「強くてニューゲーム」というやつである。

しかしPV数が安定して100を超えるようになったのは以下の二つの記事がGoogle上位表示されてからである。たしか書いてから2ヶ月くらい経ってGoogleでヒットするようになり、じわじわ上位に挙がってきたような気がする。

 

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タイトルを見ていただければ「この野郎!」と思われるかもしれない。そう、Googleに上位表示されそうなタイトルにしているのである。いかにも狙ってそうでしょ(笑)

いくらブログで稼ぐつもりがないと言っても、まったく読まれないのではテンションだだ下がりなので、モチベーションアップのためにいわゆるSEO対策とやらを実施している。

ちなみに10万PVを突破した2022年5月では、過去3ヶ月を見てもほぼ150~250PVという数字に収まっている。アクセス元の内訳は概ね以下の通りである。

  1. Google:60%
  2. Yahoo!検索:20%
  3. ブログ内リンク:15%
  4. Bing:5%
  5. その他:0~5%未満

ちなみにTwitterで書評ブログの告知をすると人間不信になるので気を付けよう(笑)

200いいねがついてもリンク先に飛ぶ人は3割に満たないだろう。下手したらもっと少ないかも。

 

収益推移

前述の通り私はブログで稼ぐつもりはないため、グーグルアドセンスは利用しないし、アフィリエイトAmazonのリンクしか貼らないようにしている。したがって、収益が発生するのはAmazonアフィリエイト収入だけである。

さあ....恐るべき雀の涙的な収益を教えてあげようではないかないか。

  • 単価が低い
    Amazonで新品の本を購入いただいた場合は3%還元である。仮に1000円の本が購入されたとしてもたかが30円だ。
    しかも多くの方はマケプレで中古の本を買われる。Amazonマケプレでは商品代が1円で送料が300円などもあり、その場合はもちろん収入はない。

  • kindle版なら多少はマシ
    kindle版の還元率は8%である。1000円の本が売れれば80円バック。おまけにマケプレは存在し得ないので安定している。たまに開催されるkindleセールで合本が買われると「うおっ」となる。

  • 最大の収入源はメンバー紹介
    私は特に意識していないのだが、何らかの商品リンクから飛んでKindleUnlimitedやアマプラなどサービス契約がなされると500円入る。ついつい金儲けのためにリンクを貼りまくりたいと思う気持ちが湧いたりするが、そうしたら趣味ではなくなるし、収益が増えすぎると会社に怒られそうなのでやらないようにしておく。

そして肝心な本ブログの収益だが、概ね月に1000円から2000円である(笑)
だが私は月に1~2記事程度しか更新せず、ブログを書いている時間は月に10時間に満たないため、時給100円は超えているのである。やったね!(泣)

アフィリエイト収入はAmazonギフト券で届くようにしているので、書評ブログで儲けた金はAmazonで本の購入に捧げている。本で稼いだ金で本を買う。自給自足である。これがまた何ともいえない醍醐味なのです。

ちなみに以下に過去30日間の収益の画面キャプチャを貼ったので参照してほしい。大体いつもこんな感じだが、いつもはもう少し単価が低い代わりに50冊くらい売れることが多い。

 

これぞまさに雀の涙

 

稼ぎたいなら働きましょう(笑)

結論、書評ブログは趣味である。趣味以外の目的でやってはいけない。

おそらく私が有料プランにして独自ドメインを作り、グーグルアドセンスを利用して楽天やhontoなどのアフィリエイトリンクも貼り、さらに月に10記事くらい書けば1万円くらいは稼げそうな気がしなくもない。しかしそれで1万円....まさにアホである。そもそも私は本当に紹介したい本しか記事にしないので、10記事書こうとノルマを設けるとゴミのような作品も紹介することになってしまう。それでは価値がなくなる。

何の社会貢献にもならないような残念な仕事で金を稼ごうなどとは笑止千万!地道に働こうではありませんか。好きな本のことを記事で紹介するのは面白い、そんな方に書評ブログはおすすめである。

 

ふぅ...疲れた

始めて小説以外の内容を中心に書いてみたが、やはり疲れるし書いていてあまり面白いものではないですな。しかし前々から自己紹介的な記事を書かなきゃなぁと考えていたのでスッキリした感がある。1年前くらいから書こうと思ってたかも(笑)

本については書評以外に語りたいことがあるので、いつかまたこんな感じの記事を書くかもしれない。例えば紙の本VS電子書籍とか小口研磨本許すまじ!やらメルカリとか...etc。

 

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『日本アパッチ族』小松左京|日本SF総大将衝撃のデビュー作

食鉄人種アパッチ族 VS 人類

 

こんな奴がいたら怖いって.....

作品紹介

小松左京による『日本アパッチ族』は1964年に光文社より出版された作品で、文庫版でおよそ400ページの長編であり、国内SFの御三家として君臨する小松左京のデビュー作である。新婚ほやほやだが超貧乏だった当時の小松左京が、妻を楽しませるために書いたという経緯があるためか、次作の『復活の日』以降の作品と比べると、ハードSF的な要素や風刺小説の側面を持ちつつも、エンターテイメントに特化した大衆娯楽小説となっている。

社会風刺と豊富な知識から生まれた奇想、そしてセンスのいいユーモアが組み合わさって、荒唐無稽だがやたら面白い物語に仕上がっている。また食鉄人種こと”アパッチ族”の生体については、気合いの入った詳細な描写がなされており、若かりし頃の著者がすでに博識であったことが伺える。さらにアホな設定からしっかりしたプロットを組み立てて、最後まで読者を楽しませるという点で、ストーリーテラーの才能も発揮している。偉大な作家のすべてが詰まったデビュー作について書いていく。

 

 以下、あらすじの引用

会社の上司の鼻をひっぱったために懲戒免職。さらに三か月以内に就職しなかったとして、失業罪で逮捕、追放の判決を受けた木田福一。砲兵工廠跡地に追放された彼は、餓死寸前で野犬に食われそうになっていたところを、アパッチ族に助けられた。赤銅色の肌を持ち、鉄を主食としているアパッチ族。木田は、彼らの一員となり、謎に包まれた生体と生き様について、記録していく。初の長編にして最高傑作の呼び声高い記念碑的作品!

 

 

冒頭からスーパーハイテンション

『日本アパッチ族』は労働が国民の権利ではなく義務となり、失業が重大な罪となる改変された1960年代の日本が舞台となっている。

アホな理由で懲戒免職をくらい失業した主人公・木田(キィコ)が実質死刑と同義の”追放刑”となり、警察に追放地に連行されるところから物語は幕を開ける。連行されるシーンがのほほんとしていて緊張感がないのに、いざ追放地に放たれると食べ物無し、飲み物無し、周囲には飢えた野犬が無数に存在するというと地獄が待っているというギャップ萌えを楽しむことができる。なおこの追放地は放り込まれたら最後、脱獄を試みても配備された兵器に木端微塵に粉砕されることになる。

そんな地獄に追放早々なすすべなく死にかけていると、山田捻という追放された政治犯に命を助けられ知恵を絞って脱獄を試みようとするものの.....。

ここまでが序盤。しかしすでに長編を一本読み終えた級の感覚を味わえてしまうのである。この時点で奇妙な怪物の噂は耳に入っていて、ついに奴らとの邂逅を迎えるのである。

 

食鉄人種アパッチ族

ついに登場アパッチ族!....で、彼らがとても面白いのである。やたら詳細に書かれるアパッチ族の生体も面白いのだが、さらに笑えるのが彼らのキャラでまさに鉄人なのである。みな口数は乏しく、表情は硬く笑うことも無いのだが(死ぬとき以外)、流麗な関西弁と危機に陥っても平然としてのほほ~んとしているところがとにかく笑えるのだ。

書いてみてどう笑えるのか全然伝わらないであろうことは認識しているのだが、軍隊が攻めてきてものんびり我関せずで、リーダーはいつも鼻毛を抜いているし緊張感が皆無というのは「ぷっ(笑)」という笑いを連発させること必至なのである。

続いて彼らの生体。いうまでもなく鉄を喰う。そしてガソリンや塩酸を飲む。皮膚は鉄になっていて、身体能力は人間の時から飛躍的に強化される。体が欠損しても溶接すれば回復可能で、弾丸が撃ち込まれまくっても、突き刺さった弾丸がやがて肉体に取り込まれるという無敵っぷり。ちんこも鋼鉄になっていて、酸性の精子アルカリ性卵子にぶっかけることによる中和作用で受精するなど、アホな設定が細部まで描写される。これも笑える。ちなみにアパッチ族のうんこは非常に優秀な鋼鉄である。(汚いけど)

通常の人間が鉄を喰うことによってアパッチ化が進むのだが、完全アパッチ族化されるにはそれなりの時間がかかる。この設定が微妙にゾンビっぽいのがたまらない。アパッチ族とは人間が進化した別の生命体らしい。

 

軍隊 VS アパッチ族

アパッチ族が危険視されたことにより、政府が軍隊を派遣してアパッチ族を抹殺しようと試みるのだが、身体能力が高いわ、銃弾が効かないわ、戦車や銃器は食べられてしまうなど、アパッチ族が想定外に強力で軍隊は手も足も出ない。熾烈な戦いなのにアパッチはのんびりしているし、死ぬ時だけ笑うので不気味だし、なんか笑えるしで、軍隊側は気の毒だけど読んでいて非常に面白い戦闘なのである。

鉄を喰うだけで人間ではなくなる代わりに、不死身に超人になれるとしたらなりたいだろうか....私はなりたいかもしれない。

 

政治的な思惑と日本滅亡

前述の通り、アパッチ族のうんこは貴重な鉄資源なのでとても価値が高い。そのうんこをめぐって政治的なあれこれがあり、アパッチ族と人間の最終戦争がはじまり、ついに日本滅亡というとんでもない状況を迎えるのである。

この辺は書きすぎるとネタバレになるので、あまり触れないようにするのだが、アパッチ族がじわじわと数を増やしてきて、人類に取って代わっていく流れはずばりバイオハザードのようであり、また『復活の日』や『日本沈没』を上梓したシミュレーション小説を書かせたら日本一の著者だけあって、滅亡に向かう過程が異様にリアリティがあるのだ。

生き残ったのは人類かアパッチ族か.....そこは読んで確かめてほしいのだが、どちらかが勝利したかという部分には哲学的な問いかけがなされているようでもある。この物語は社会から棄てられた棄民が逆襲するという風刺的な側面がとても強いので、ただ話が面白いだけでなく、何かと考えさせられるのが素晴らしい。

 

これを書いたのが30代前半だと...!?

色々な意味で凄すぎるデビュー作だし、大御所が書かれているのでついついご年配の方が書いたという錯覚を覚えるのだが、計算してみると『日本アパッチ族』と『復活の日』が上梓されたのは1964年で、当時小松左京氏はなんと30代前半。こんなの震えるしかねぇよ。この時代の作家は怪物ばかりだが、小松御大はレベルの違いが際立っているように感じる。

まぁそんなことはさておき、デビュー作だけあって小松作品の中でも様々な要素が詰まっていて、何よりエンターテイメント作品としての質が高いので、昨今のコロナ渦で『復活の日』を読まれた方やドラマ化されたことで『日本沈没』の原作を読まれた方が次に読むのは『日本アパッチ族』で決まりだぜ!

 

 

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『ここから先は何もない』山田正紀|『星を継ぐもの』に挑んだハードSFミステリ

国内SFの重鎮による渾身の一撃

 

作品紹介

山田正紀による『ここから先は何もない』は2017年に河出書房新社より出版された作品で、文庫版で450ページ程度の書き下ろし長編である。

日本SF界の大御所がオールタイムベストSF『星を継ぐもの』に”異議あり”を唱え書かれた作品のため、『星を継ぐもの』のオマージュが随所にみられるが、著者の集大成ともいえる内容となっており、ハードSF・本格ミステリ・冒険小説の要素が余すところなく盛り込まれていて、オリジナリティの高い物語に仕上がっている。

また当時60代後半のお爺さんが書いたとは到底信じられないほど、豊富なIT知識が披露されており著者の健在振りが見て取れる。只者ではない。

そんなハードSFと本格ミステリが融合した傑作について書いていきたい。

 

 以下、あらすじの引用

日本の無人探査機が三億キロ彼方の小惑星〈パンドラ〉で採取してきたサンプルには、なぜか化石人骨が含まれていた。アメリカが不当にも自国の管理下に秘匿したその化石人骨“エルヴィス”を奪還するために、民間軍事会社のリーダー大庭卓は奪還チームを結成する。天才的なハクティビストハッカー+アクティビスト)・神澤鋭二、早朝キャバクラでアルバイトをする法医学者・藤田東子、非正式の神父にして宇宙生物学の研究者・任転動、そして正体不明の野崎リカ。厳重な警備が敷かれた米軍施設から、“エルヴィス”を奪還することはできるのか。そして、三億キロ彼方の“密室”では一体何が起こったのか……?

 

ハッキング冒険活劇

『ここから先は何もない』は『星を継ぐもの』に挑んだ作品だが、中盤まではハクティビストハッカー+アクティビスト)と称される主人公が、アメリカに奪われてしまった三億キロ彼方の小惑星で発見された化石人骨を、ハッキングの技術を駆使して取り戻すという流れになっている。

そのため『007』や『ミッションインポッシブル』のような映画を見ているのと同じような感覚で楽しむことができる。ここで披露される著者のIT知識は相当なもので、ITに興味がある方や、ITエンジニアが読めば「このお爺さん(著者)はいったいどうなっているのだ...?」となることは必定である。だからといってマニアックで読みにくいかと言えばそんなことはなく、スマホを普通に使ってるような人なら問題なく楽しむことができるだろう。むしろ情報セキュリティの勉強になっていいと思う。当方インフラエンジニア寄りの技術者のため、血沸き肉躍るような高揚感を得ることができた。

 

スタンドアローン超絶密室

『ここから先は何もない』はどちらかというと、SFよりも本格ミステリに力が注がれた作品だと言えるのかもしれない。というのも本作で描かれる密室は、ある意味最大最強の密室と言えるからである。

冒険活劇が展開される一方で、三億キロ彼方の小惑星〈パンドラ〉で見つかった化石人骨を発見された経緯が描かれるのだが、そこでの密室事件が凄まじい。密室事件と言っても人が殺されるような殺人事件ではなく、以下のような内容である。

  • 三億キロ彼方の完全に断絶された宇宙空間で、無人探査機が本来の目標である小惑星の間近で突如制御不能になってしまった。制御が復帰するとなぜか別の小惑星に近づいていた。

突如制御を失ったというのは、ハッキングなどの攻撃を受けたと考えるのが妥当だろうが、そもそも無人探査機を攻撃する必要がないし、何より完全にスタンドアローン(何とも繋がっていない)な状況なので攻撃をできるはずがないのである。

これを読んで熱くなった方ならSFにあまり興味が無くても読む価値は十二分にある。ガストン・ルルー『黄色い部屋の謎』を引き合いに出しながら、謎解きされていく展開は超高品質な本格ミステリと言えるだろう。

そしてメインの謎は当然”化石人骨”の方なので、すた丼を食った後に二郎系ラーメンが出されるようなものである。気合いを入れて読まなければならないのだ。

 

無駄に個性的なキャラクター

『星を継ぐもの』のように化石人骨の謎に迫る研究チームが結成されるのだが、それが「果たしてその設定は必要なのか?」とツッコミを言わずにはいられない程度には無駄に個性的で魅力的なメンバーが集結している。

  • 神澤鋭二:主人公で天才的なハクティビスト
  • 大庭卓:民間軍事会社の経営者
  • 野崎リカ:正体不明の超スタイルの良い美女、強い。萌え
  • 藤田東子:早キャバでアルバイトをする法医学者
  • 任転動:任天堂(笑)、非正規の神父にして宇宙生物学の研究者

上の三人もそれなりに強烈なキャラクターなのだが、後半活躍する下の二人は無駄にインパクトのあるプロフィールを持つ。それが作中で何かキーになったかというとそんなことはなかったような....(笑)これは著者が面白いものを書いてやるぜ!というサービス精神なのだろう。どんなに優れたSFもミステリも肝心なエンターテイメント要素が弱くてはダメダメだと私は考えているので、こういうのは大歓迎なのである。

 

化石人骨”エルヴィス”

やっとたどり着いたメインテーマ。化石人骨”エルヴィス”の正体の究明こそが、本作の真の醍醐味を最大限に味わうことができるのである。

そして(もしかしたら違うかもしれないけど)、化石人骨が発見されたカラクリこそが、山田正紀が『星を継ぐもの』に待ったをかけるに至った箇所なのだろうと思われる。ここを書いてしまうと本作の楽しみを大いに奪うことになるので、どんな秘密があるのかはご自身でご確認いただきたい。(ネタバレを求めていた方はごめんなさい!)

ここまでの一連の流れの裏で潜む真相の深淵さは凄まじいものがあり、あんまり関係ないのかもしれないが、野﨑まど氏の『正解するカド』....というか『幼年期の終わり』が脳裏をよぎったりした。

超理論から導かれる壮大なスケールの真相は圧巻である。しかも最後の最後には『三体 黒闇森林』的な必殺技が披露されるので最後の最後まで、緩むことなく楽しむことができる。”ここから先は何もない”けれども何せスケールがデカいというのがポイント。

 

『星を継ぐもの』を超えたか

この記事を読まれた方は『星を継ぐもの』と比較してどうなのかが気になることと思われるが、比べるような作品ではないというのが答えである。

ハードSFと本格ミステリを核にしつつ、エンターテイメント要素を要素をこれでもかと注ぎまくったのが『ここから先は何もない』なので、物語の方向性も楽しむべき部分もまったく異なるからだ。国産SFミステリで面白いものをお求めなら読んで損はないだろう。

 

 

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『狐笛のかなた』上橋菜穂子|菜穂子が乙女ってる和風ファンタジー

縛りプレイ恋愛に心が締めつけられる(嘘)

 

文庫の装丁も良いけど単行本はさらにいとおかし

作品紹介

上橋菜穂子による『狐笛のかなた』は2003年に理論社より出版された作品で、文庫版で400ページ弱の著者にしては短めな長編である。

本作の特徴は昔の日本を思わせる国が物語の舞台となっていること、ファンタジー要素が上橋作品の中では強めなこと、上橋女神の乙女チックな側面が発揮されまくっていることだろう。また文庫本1冊で完結するというのも大きなセールスポイントである。

他の単発作品にはデビュー作の『精霊の木』や『月の森に、カミよ眠れ』があるのだが、この2作品は初期作品ということもあり、まだ粗削りな感じが否めない。しかし本作では安定の上橋クオリティなので万人に安心しておすすめすることができる。

それなりに恋愛要素がある上橋作品の中でも、『狐笛のかなた』は特にせつなく熱々な感じになので、そっち方面が好きな方にはたまらないだろうし、単発で終わらせるには惜しい魅力的なキャラクターがいるのも個人的には良い。そんな本作について書いていく。

 

 以下、あらすじの引用

小夜は12歳。人の心が聞こえる“聞き耳”の力を亡き母から受け継いだ。ある日の夕暮れ、犬に追われる子狐を助けたが、狐はこの世と神の世の“あわい”に棲む霊狐・野火だった。隣り合う二つの国の争いに巻き込まれ、呪いを避けて森陰屋敷に閉じ込められている少年・小春丸をめぐり、小夜と野火の、孤独でけなげな愛が燃え上がる…愛のために身を捨てたとき、もう恐ろしいものは何もない。

 

鶴の恩返し

『狐笛のかなた』は上橋版『鶴の(過剰)恩返し』である。

ただし鶴ではなく狐。それもただの狐ではなく、呪者に使い魔として使役される霊狐と呼ばれる霊的で戦闘能力の高い狐である。そんな霊狐の野火が超ピンチになっているところを偶然通りすがっていた主人公にして心の声が読めたり色々できる不思議系少女・小夜が着物をバッと開いて衣の中に狐を非難させて、そのままヤバ目な屋敷に逃げ込んで命を助けたところから物語は幕を開ける。それ以降人間の姿になるとイケメンの野火がひっそりと小夜を見守り、ピンチになるとさりげなく登場して助けてくれるという、上橋作品にしてはめずらしい胸キュン系(笑)な乙女物語なのである。

小夜もイケメン野火が助けてくれることにまんざらではないため、ラブラブしたいところなのだが、二人の立ち位置と呪者に使い魔とされている野火の境遇により、その恋愛は禁断の恋となってしまっていることにこの物語の素晴らしさがある。

世界観は明言されてはいないものの、平安時代あたり(全然違うかも)の日本が舞台となっていて、上橋女史の筆致や悲恋の物語と相まって、読んでいて本当に作品世界に引きずり込まれることになるだろう。

というか女の人ってイケメン狐と乙女な少女の恋愛がやたら好きな感じがするのだけど、上橋女史もだったのですなぁ。女性のこのカップリングフェチにはなにか理由があるのだろうか(笑) BLと狐×乙女だけは永遠の謎となりそうである。

 

手加減なしで創り込まれた設定

上橋作品と言ったら創り込まれていて、地に足のついた世界観のファンタジーが売りだが、『狐笛のかなた』もその例に漏れず、400ページ程度の尺で終わらせるには惜しいほどに世界観や呪者や使い魔などの設定が創り込まれており、登場人物もとても良キャラばかりである。

『狐笛のかなた』の物語では大国の中にある二つの小国が、憎しみあい争いを続けている。地位的に優勢な方の国に小夜は属しており、国力的には劣勢だが強力な呪者を抱えることにより戦力的には優勢な国に霊狐の野火は属している。大昔(と思われる)世界なので、強力な呪者の有無が勝敗を左右し、その呪者の主戦力が使い魔の霊狐である。野火は呪者に使役される使い魔の一人で、小夜とは戦わなければならない宿命にあり、呪者に逆らうと命を落としてしまうため、悲恋となるのである。

国や登場人物の背景を細かいところまで徹底的に、設定されているのでとにかく没入感が凄い。上橋女史は思いつきで物語を書き始めるということだが、それが信じられないくらいのプロットは毎度のことながら驚嘆するのみである。

 

玉緒(萌)

呪者は三人(匹かも)の霊狐を使い魔として使役しているのだが、その内の一人に妖艶な美女として描かれる玉緒というキャラクターがいるのだが、これがもうめっちゃたまらん良キャラなんです。

上橋作品といったら魅力的なキャラクターも数多く存在していて、個人的には『守り人シリーズ』のバルサやジグロ、『鹿の王』のヴァンやサエが特に好きなのだが(渋いキャラばっかり笑)、玉緒はそういったキャラクターとは異なるタイプでありながらも、勝るとも劣らない魅力を持っているのである。多作のキャラに例えるならば、『鬼滅の刃』の堕姫(お兄ちゃんが出てくる前)的な感じなので、男の読者が読むと大抵は好きになると思われる。しかもこの玉緒さん、敵キャラであるにも関わらず、かなり良い仕事をしてくれるため好感度はさらに爆上がりだ。何をやらかしてくれるのかは、ぜひ読んで確かめてみてほしい。

いや~...玉緒さんいいよ、玉緒さん。

ちなみに読書ブログだし一応書いておくと、この玉緒さん、私が生涯最高の作品の一つにしている『三体 死神永世』の最強萌えキャラとも通じるものがあり、やはりたまらないのです。

 

展開もラストも最高

400ページ弱で終わらせるにはもったいないほど創り込まれているだけあって、物語は無駄なくゴリゴリ進んでいくので、スピーディな展開を見せる。

小夜の出自が徐々に判明してきて、ますます野火との対峙が避けられなくなる一方、小夜と野火の相思相愛度が高まっていくなど、終始勢いがあるので読み始めたら最後まで読み通すことになる可能性が高い。

終盤の小夜と呪者が対峙するシーンはかなりテンションが上がるシーンであり、ファンタジー要素満載な結末も、何とも言えないが、どちらかというと幸福な余韻に浸ることができて、読んで良かったなぁと思えること間違いなしである。

 

ファンタジー好きにはマスト

上橋作品はファンタジーでありつつも、意外にもファンタジー要素は少ない作品が多いと思っている。『獣の奏者』以降は科学的ミステリーな要素が高まってきてなおさらその傾向が強いのだが、『狐笛のかなた』は文句なしにファンタジーしまくっているので、上橋作品にファンタジーを求めるのなら最高の選択肢になるだろう。

それと乙女チックな上橋女史を知りたい方にもマストな作品である。『精霊の守り人』を読んだ後に、大作に恐れをなして尻込みしているような方には、単発読み切りの傑作『狐笛のかなた』を強くおすすめしたい。

 

 

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『香君』上橋菜穂子|植物(稲)と虫の香りファンタジー

もはやファンタジーというより科学小説

 

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美しい世界に迫りくる”ヤツら”

作品紹介

上橋菜穂子による『香君』は2022年に文芸春秋社より出版された作品で、単行本の上下巻で900ページ級の大長編である。

ファンタジー界の重鎮である上橋女神は、これまでにも『守り人シリーズ』や児童文学と見せかけて子どもに読ませて良いのか怪しい『獣の奏者』、そしてこれまた児童文学を超越した医療ファンタジーの『鹿の王』という、これでもかというほど世界観が創り込まれたハイクオリティな作品を上梓されてきた。本作『香君』も安定の上橋品質で、上記の神作品群と比べても遜色ない超絶傑作に仕上がっているので安心して手に取ってほしい。

今回のテーマはおおまかにいえば”農業”である。上橋菜穂子が描く物語は、ファンタジーの皮を被ったガチ科学小説の傾向があるのだが、『香君』はその傾向が過去最高となっていて、架空の世界と現実にはない植物や虫、超人的な嗅覚を除けば、現実世界から大きく逸脱した部分はなく、SF好きの私からすれば『香君』を読んでいる時の感覚はまさにハードSF(科学がベースの本格的なSF)と変わらない。

そんな創造主・上橋菜穂子の新たなる代表作について語っていきたい。

 

 以下、あらすじの引用

遥か昔、神郷からもたらされたという奇跡の稲、オアレ稲。ウマール人はこの稲をもちいて帝国を作り上げた。この奇跡の稲をもたらし、香りで万象を知るという活神〈香君〉の庇護のもと、帝国は発展を続けてきたが、あるとき、オアレ稲に虫害が発生してしまう。時を同じくして、ひとりの少女が帝都にやってきた。人並外れた嗅覚をもつ少女アイシャは、やがて、オアレ稲に秘められた謎と向き合っていくことになる。『精霊の守り人』『獣の奏者』『鹿の王』の著者による新たなる代表作の誕生です。

 

THE・ページをめくる手が止まらない本

香君』は上橋名物”開幕早々ベリーハード”を惜しげもなく披露しているので、掴みはOKで一気に引き込まれる。その後に登場人物ラッシュや世界観の説明があるので少し手間取るかもしれないが、そこを乗り越えて世界観に馴染んでくると物語に強く引き込まれていくのは間違いない。

しかも第四章以降は怒涛の展開がひたすら続き、全体で900ページ近くある内の実に500ページ以上に渡ってページをめくる時間すら惜しくなるほどで、読み終わるまで何も他につかなくなるかもしれない。少なくとも私は下巻は一気に読み進めてしまったし、他の読者の意見を見ても、後半は一気読みしたというを多々見受けられるので、本作の破壊力は絶大である。

上橋作品は絶妙なミステリー要素が良い仕事をしていて、巧みに読みやめるタイミングを失わせるのだが、『香君』は上橋史上最強の徹夜本かもしれない。

 

洗練された完成度の高さ

上橋大先生は『守り人シリーズ』などのあとがきで、”ノリで書いてる”といった内容の発言をされていて、実際に『守り人シリーズ』や『獣の奏者』はそれなりに行き当たりばったりな印象を受けるのだが(もちろんノリで書いても完成度は高い)、『鹿の王』はそこそこ計算された感じがするし、それに続く『鹿の王 水底の橋』はミステリと言っても過言ではないほど計算された物語になっていた。

しかし『香君』は水底の橋の比ではないくらい物語がしっかりとまとまっていて、テーマも一貫しているので、脇道に逸れたりせず大団円を迎えるまで綺麗に物語は展開されていく。徹底的に”オアレ稲”という本作の世界において、神からもたらされたとされる、どこでも育つ代わりにオアレ稲を植えると他の植物が育たなくなる謎の性質を持つ稲の秘密に話が集約されているためである。

この奇跡の稲とオアレ稲をもたらしたとされる香君の威光により周辺の藩国を支配した帝国と、従来の農業から奇跡の稲に切り替えて依存してしまった諸国が、オアレ稲が訳あって不作になったことで直面する問題にどう対処するのかが、物語の軸となっていて、その問題に超人的な嗅覚を持つ主人公アイシャが苦心して立ち向かっていく様は、とても分かりやすく、そして非常に面白い。

 

気付けば好きになっているキャラクターたち

登場人物は長い物語に見合ったそれなりの数がいるのだが、メインキャラクターは超人的な嗅覚を持ち、香りで万物を理解できる主人公の少女・アイシャ、同じくアイシャほどではないものの優れた嗅覚を持つ帝国の重鎮マシュウ、そして常人並みの嗅覚しか持ち合わせないが活神である香君として担ぎ上げられたオリエの三人である。

もちろん他にも魅力的な登場人物はいるのだが、やはりメインは上記の三名である。そしてこの三人は、正直なところあまり読み進めていないうちは、これまでの作品の良キャラに比べたらイマイチ印象が薄いかなぁ...などと思っていたが、物語の終盤ではファンクラブを結成したいほどみんな好きになっていた。ちなみに皇帝や帝国の重鎮オブ重鎮の男もかなりの良キャラだと思う。

上橋作品が素晴らしいのは、徹底的に創り込まれた世界観だけでなく、魅力的な登場人物がいることが大きな要因だとあらためて認識した。私はこれまでに相当な数の小説を読んできたが、ぶっちゃけクソつまらない話でもキャラが良ければ万事問題なしということに気付き始めてきたので、最高の物語に魅力的な人物を想像する上橋大先生はチートなのだと思う。

 

人はそれをハードSFと呼ぶ

私は知性が感じられない小説が嫌いである。本を読んで人生を変えるといった残念な考えは甚だ不愉快だし、自己啓発本やビジネス本を読み漁っている人は心底軽蔑したくなってしまうのだが、それでも小説を通じて何か学べた方が良いとは思っている。つまり著者が労力を費やして、気合いの入った取材や大量の参考文献を読み漁って得た知識から書かれる物語が好きなのだ。

そんな私にとって『香君』はこの上ない素晴らしい作品だと言える。ファンタジーだからといってやりたい放題することは決してなく、むしろファンタジーにもかかわらず極めて現実的なのである。特別な性質を持つ”オアレ稲”という架空の稲を描きつつも、その性質を極めて科学的に分析していき、試行錯誤によって秘密を暴いていく様はもはやハードSFと言っても過言ではないし、そんじょそこらのSF作品よりも遥かにサイエンスしている。巻末に主な参考文献だけで20冊以上の本が挙げられているし、コネを使って参考にした書籍の著者とZOOMミーティングをして、より正確にすることに努めたというのだから脱帽である。

そもそも本作には上橋作品でおなじみの戦闘シーンが実質存在せず、ただひたすら”オアレ稲”を科学しまくっているので、SF好きだがファンタジーはあまり好きになれないという方には『香君』をぜひおすすめしたい。

 

新たなる代表作

本当はもっとモリモリ語りまくりたいが、ミステリー的な側面が強い本作ではあまりネタバレすべきではないと思うので、ぼちぼちまとめてみたい。

香君』はそこまで派手さは無いが、全体的な完成度の高さは他の作品を圧倒しているように感じる。また学者としての上橋大先生の能力が遺憾なく発揮されているので、著者自身の集大成のような印象を受ける。これからどのように評価されていくのかが心底気になる次第である。

 

上橋菜穂子は神説

これまで新潮社、講談社KADOKAWA、そしてこの度文芸春秋社に物語を与えたもうている。ひょっとしたら他の大手出版社のためにも、物語を温存していたりして....などとどうでも良いことを考えてしまうのだが、その考えはあながち間違っていなかいのかも。早川書房からSF寄りのファンタジーが出たら嬉死するなぁなどと思いつつ締めたい。

 

 

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