神本を求めて

小説を読みまくって面白い本を見つけたら紹介するブログ

『神の蝶、舞う果て』上橋菜穂子|伝説のプロトタイプ

封印されし若かりし頃の勢い

 

作品紹介

上橋菜穂子による『神の蝶、舞う果て』は2026年に講談社から出版されたファンタジー小説で、単行本で280ページ程度の長編作品である。ただし完全新作ではなく、上橋菜穂子1999年から2001年に雑誌に連載していた作品の大幅リニューアル版である。字が大きく、1ページ当たりの文字数が少ないため短めの長編というよりは長めの中編といったようなボリュームであり、それに伴い素早い展開&フワッとした世界観構築となっている。

1999年から2001年というと上橋女史がゴリゴリの高頻度で『守り人シリーズ』を書いていた時期である。『守り人シリーズ』とその他のシリーズ作品では、その他シリーズは謎要素があるという点でやや作品の作りが違うと私は考えているのだが、本作『神の蝶、舞う果て』はその他シリーズのプロトタイプといえるような佳作であり、『獣の奏者』『鹿の王』『香君』といった超大作への布石のような内容だ。

そんな『守り人シリーズ』と他の大作の魅力をコンパクトに凝縮した本作について書いていく。

 

 以下、あらすじの引用

「ときどき思うのよ。偶然って、本当にあるのかしらって。この世には、私たちには見ることも、思い描くこともできない複雑な糸がはりめぐらされていて、その壮大な布の中では、どれもが、あるべきところにあるとしたら……」(本文より)
カタゼリム(降魔士)の少年・ジェードは、神と魔物、光と闇が共に宿っているとされる、神聖でありながらも恐ろしい聖域<闇の大井戸>で、魔物から聖なる蝶を守る役目を負って暮らしていた。ある日、ジェードの相棒である少女・ルクランが、聖なる蝶が舞い上がって来る予兆の鬼火に触れる事件が起きる。他のカタゼリムたちと違い、なぜか、予兆の鬼火に激しく反応してしまうルクランは、聖域を守る者のなかで波紋を呼んでいた。自分がなぜ、そんな反応をするのかを知りたいと願うルクランと、ルクランを守りたいと思うジェード。それぞれの思いをよそに、ふたりは壮大で複雑な運命の糸に絡め取られていく。
1999年から2001年にかけて、上橋菜穂子の代表作である『守り人』シリーズの創作と並行して執筆されたこの物語は、のちの『獣の奏者』、『鹿の王』、そして『香君』にもつながる、作者の創作の軌跡を知ることができる貴重な作品でありながら、これまで書籍化されていませんでした。この物語は、人と人との関係だけでなく、人間と他の命ある存在との繊細で複雑なつながりを描きたいという著者の想いから生まれました。執筆から20年以上の時を経て、円熟の域に達した著者の手で加筆修正され、力強くも美しい物語へと成長した物語が、ついに世界へと解き放たれます。

 

 

純粋におすすめの入門書

上橋菜穂子はファンタジーでありながらもハードSFといっても差し支えないレベルで、理詰めに世界観を構築しているような印象だ。物語自体はノリで特攻しているようだが、しっかりと構築された世界観に、その世界ならではの謎要素を入れて、謎の解明に突き進んでいくのが『獣の奏者』以降の作品の流れだと私は勝手に考えている。

そんな中で本作は、謎要素を冒頭から全力で投入し、その謎が少しずつ解明されていくという点で『守り人シリーズ』とはややノリが異なる作風だと考えている。以降の超大作と違うのは短い作品なので、謎の解明を科学的に進めるのではなく、いろいろな人と話したり伝承を読んでいるうちに、イベントが進行して謎が解けちゃうパターンである。
つまりかなり読みやすいうえに一気読み必至な内容なので、上橋作品をあまり読んだことがない人で、対策を読むのに躊躇されている方にとっては、とても良い入門書となりうる。著者が若かりし頃の作品だけあって上橋エッセンスは濃厚で、毎度感じるアダルトな恋愛描写も健在(登場キャラは未成年だけど)である。

 

蝶ざっくり解説

異世界に〈闇の大井戸〉と呼ばれる、人知を超えた謎すぎる大穴があった。その穴からは定期的に、ラムラーという一年に何度も花を咲かせて栄養満点美味な実をつける花を受粉させる神の蝶と、神の蝶を捕食してしまう蝶の影という魔物が中から湧いてくる。
ラムラーはなぜか神の蝶でないと受粉させられないので、神の蝶を守るべく降魔士(カタゼリム)というバカップル...ではなく男女でペアを組む神に認められた若者たちが、蝶の影を駆逐する役目を担う。
なのに主人公ジェード(♂)とペアを組むヒロイン ルクラン(♀)ときたら、神の蝶と蝶の影が出てくる際の前兆となる鬼火に強く反応してしまい、ミッション放棄して鬼火を見に行っちゃうという電波仕様なんです。

闇の大井戸とはいったい....?
神の蝶と蝶の影とはいったい....?
ルクランはなぜミッション放棄して鬼火を見に行っちゃうのか...?

という感じである。降魔士(カタゼリム)というカップルたちが仲良くイチャイチャしながら割とスピーディに謎が解けていくのであった...という感じである。

 

主人公ジェードが良い

毎回思うのだけど上橋菜穂子女史はどう考えても、ちょっと荒々しいが男らしくちょっとクールな男子が好きだと思われる。少なくともこの時期は。

ジェードは元DQN的な感じの15歳で、降魔士(カタゼリム)としては彼女のせいで戦績はないものの、真面目で優秀な男である。ただプライベートではDQN的な男らしさが爆裂してオラオラしている。

近い時期の他作品の主人公バルサ、エリンとは違った性別で違った良さのあるキャラクターが主人公なのはそれだけで、上橋ファンとしては刺激的なのです。

 

展開がめちゃ早い

まさに謎解きのRTAに挑んだかの如く無駄がなく、サクサク進んでいくので、タイパを重視する今の若い層には刺さると思う(文字数当たりのコスパは悪め)。

こういったあっさり感が上橋女史が単行本としてのリリースを渋った主要因な気がしているが、サクッと読めて高品質なファンタジーなので、そんじょそこらの異世界モノをラノベで読んでいる暇があれば、ちょっとこの本も読んでみてほしい。

 

謎が解明された時

〈闇の大井戸〉の正体はめっちゃ好みである。著者若かりし頃の作品なので、理詰めにたどり着いた感じではないし、ファンタジー要素もマシマシなのだが、複線回収(というほどミステリーしてはいないが)もできていて、良い感じのラストなので読後感は最高である。

だいぶボコボコになった守り人シリーズのラストや超衝撃の獣の奏者と比較したら心にダメージを負うこともなく、ある意味一番児童文学していると思う。

 

新作も読みたいなぁ...

私はファンタジーも読むが、基本的にはSF界の読者である。従って『香君』で頂点を極めたハードSF的な理系ファンタジーに連なる作品も熱望している。『香君』が2022年だから、書いていただけているのならボチボチ新作出ないかなぁと願いつつ締めたい。

 

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『宇宙の戦士』ロバート・A・ハインライン|男魂のOS

SFの皮を被った気合の思想書

 

作品紹介

ロバート・A・ハインラインによる『宇宙の戦士』は1959年に出版された、パワードスーツを着て宇宙でドンパチするSF作品...ではなく恐るべき思想書である。現在入手可能な内田訳版は文庫版で420ページ程度の長編作品である。

ハインラインと言ったらSF界のBIG3の一人であり、日本では『夏への扉』がやたら有名である。そんなハインライン少尉の代表作の一つが本作『宇宙の戦士』(原題:STARSHIP TROOPERS)だ。作中で登場するパワードスーツは機動戦士ガンダムの元ネタにもなっている。(ちなみにガンダムのストーリーは同じく代表作の『月は無慈悲な夜の女王』に影響受けまくり)

SF作品ではあるが、実際は8割以上が思想メインになっていて、令和の世では受け入れられそうもないと思いつつも、これをZ戦士(Z世代)が読もうものなら、人によっては人生が変わってしまうほど強烈な内容である。そんな恐るべき書物について語っていく。

 

 以下、あらすじの引用

恐るべき破壊力を秘めたパワードスーツを着用して、目的の惑星へと宇宙空間から降下、奇襲攻撃をかける機動歩兵。地球連邦軍に志願したジョニーが配属されたのは、この宇宙最強の部隊だった。肉体的にも精神的にも過酷な訓練や異星人との戦いの日々を通して、ジョニーは第一級の兵士へと成長していくが……。ミリタリーSFの原点ここに。映画・アニメ界にも多大な影響をもたらした、巨匠ハインラインヒューゴー賞受賞作

 

※後述するが、上記リンクは新訳版だが気になったのなら必ず旧訳版を購入すべきである。旧訳版は電子書籍で入手可能だ。

 

人生経験を積んでから読んで気付いた素晴らしさ

私は1986年(昭和61年)生まれという昭和の末裔である。そんな私は昭和人と令和人の双方の思想を中途半端に持った一族であるという事情からか、本作は読むたびに感じることが変わった。

初めて読んだのは大学二年生の時でその時は「思ったよりパワードスーツでねぇな...てかSFじゃないシーンばかりじゃん」といった感じで、さほど印象に残らなかった。次に読んだのはブラック企業を7年経てから転職をした時で、この時は疲弊し尽くしていたので「みんな楽をするために学生時代に本気で努力してきてるんだし、この本で言っていることはくだらないきれいごとだろ...」くらいに思っていた。そして今、諸々の事情からアラフォーになり人生最後の転職をするにあたり、読み直してみると「これだぜ!ど畜生のエテ公どもがァ!令和のゴミどもよ....血と汗と涙を流せ!」となった次第である。

この感想の変化により、読書で感ずるものは歩んできた人生とともに変化していくということを、身を持って学ぶこととなったのである。

 

翻訳について

先にこれは言っておかなければならない。現在紙の本でも入手可能な新訳(西田昌之訳)版は読みやすさは向上していると思うが、本作の魅力が9割減してしまっている。それどころか旧訳の荒っぽい翻訳でなければ思想もしょぼくなってしまう感があるので、絶対に旧訳(矢野徹訳)版で読むべきである。

新訳版の主人公ジョニーは一人称が「ぼく」である....おいおい...。旧訳は「おれ」「自分」である。これだけをとってももはや新訳版に価値はない。

紙の本だと古い中古本しか入手不可能なので、電子書籍で購入することをお勧めする。これは別記事でいつか気が向いたら書いてみようと思うが、私自身は紙本派であると思いつつも、最近明らかに電子書籍版を購入することが増えてきている。だって手軽で読みやすいんですもん。

ちなみに、新旧の冒頭はこんな感じだ。どうだろう。致命的とまでは言わないまでも気合がだいぶ削がれてしまっているのだ。
旧「さあこい、モンキー野郎ども!人間一度は死ぬもんだ。」
新「どうした、エイプども!そんなに命が惜しいのか?」

 

恐るべき箴言の数々

私は本を読むときにメモを取ったりすることはまずないが、本作は付箋まみれになった。それだけこの本は猛烈な教訓が込められまくっている。

まず一発目。
暴力は歴史上、他の何よりも多くの問題を解決してきた。この根本的事実を忘れた種族は命と自由という代償を払うことになる
素晴らしいよ...私は中学時代にカツアゲしてきた外道を殺す気でボコボコにしたことがある。警察に行ったし親と一緒に学校に行くことになり、内申にかなり響いたはずだが、この本を読んだことにより「おれは命と自由を守るためにやった」ということを肯定されたのだ。
二発目。
危険な武器などというものはないのだ。危険な人間だけがいるということだ
おそらく他の読者にはそこまで響かない部分かもしれないが、私はかなり気に入っている。プライベートにおいてもビジネスにおいても、敵対勢力に「あいつは危険だ」と思われることにどれだけのメリットがあるのか私は身を持って知っている。

三発目。
要約「くそったれの部下がやらかすのは、すべて上官の責任である。クソ野郎がやらかす前に貴様は殴って止める必要があった
もはや何も言うことはない。というより令和の世では何も言えぬ。ただただ涙を流すのみ。

四発目。これは最も好きであり、私の愛する一人ナウシカも言っていた。
人生で最善のものは、金銭を超えたところにある。その代価は苦しみと汗と献身だ....。最も貴重なものの代価は人生それ自身、生命である
私の周りにも何人か、子孫も残さず早期リタイアを目指す者が数多くいるが、一体それに何の価値があるのやら。血と汗と涙を流し、気合いを入れた人生にのみ価値はあるのである。

五発目。要約する。
私のうつ病やら体調不良は、信念に基づいた行為をできていなかったからだ。自分が男であることを証明できていなかった
たまらん。かつて私の部下が「ぼくの友達にまったく健常者なのに障害者手帳3級をもらったやつがいるんです。彼はぼくにも障害者手帳3級ならだれでももらえるから絶対にもらった方がいいと言ってきます。ぼくももらおうと思っています」そして私は答えて軽く回りが凍ったが「そんなクズに生きる資格はない。〇〇君もそんなことをしようものなら外道になるよ?」と回答した。そう、本作によれば私は部下がうつ病になって体調不良になるのを防いだのである!(笑)

ラスト。要約&意訳する。
優秀な係長の胸に恐怖をぶち込むことができるのは、決断できない課長の下で働いていることを知らせることだ!
(´;ω;`)ブワッ 私はSEの仕事をしていて、上官と一緒に客先に行くことがあるが、クソ上官だと私の背後に隠れて存在感を消し、話の流れで私がこれでいいですよね?と話しを振ってもすぐには判断できない、などと抜かして、明らかに決裁権限がある内容でも逃げることがある。この時本当に「このプロジェクトはヤバくなるな」と震えるものである。

こんな感じで本作は過激だが素晴らしい箴言が至る所に散りばめられているのである。

 

どんな作品か

こんな名著にまともな説明をしても無駄なので、気合いの超要約をする。

命を張ったことのないヘタレどもには市民権(選挙権/公務員就職)などない!=兵役をこなさないと市民権が得られないという世界。
ボンボンの坊ちゃんである主人公ジュアン・リコことジョニーは、金持ちだし市民権なんてなくても勝確だろ?絶対に軍隊に行くなよ?とパパに言われた。ジョニーも行く気はなかったが、めっちゃ可愛いクラスメイトの女が志願しちゃったからノリで志願したら、一番厳しくて危険な機動歩兵隊になっちった(´;ω;`)
軍隊に入りボコボコに絞られながらも成長し、敵(クモ野郎)と戦う話である。
前述の通り、敵対する宇宙人である知能のあるクモとの戦闘は全体でみるとおまけで、思想7割、パワードスーツ2割、クモとの戦闘1割という感じなのだ。まぁ一言でいうなら気合を入れてくれる書物である。

 

パワードスーツ

なんとこの本がパワードスーツの始祖らしい。機能は着た人がやろうとしたことを超強化する機能で、ぶん殴ればクッソ強いし、ジャンプしたら超跳躍できるし、ガチでジャンプしたら自動的にジェット噴射してさらに飛べる。また視覚や聴覚も超強化され、小型水爆など強力な兵器を装備しているというものである。

これがガンダムの元ネタとなったらしい。しかしそんなことはどうでもいい。本作のアニメ版を私のガキどもに見せたところ「かっこいい、おれもほしい」だったということだ。つまりいかしているいるのである。

 

愚痴を虚空に向かって吠える

人生経験を積んだからこそアラフォーで最後の転職をする今、猛烈に心に響いたというのもあるかもしれないが、その根底にあるのはZ戦士=Z世代たちに対する怒り憎しみである。

Z世代にも優秀な奴は大勢いるし、なんなら彼らは穏やかで論理的で効率的でITリテラシーが高く、一緒に仕事をしていて本当にやりやすい人も多い。しかし私は現職で10年いて階級的にはチーフマネージャー代理(中尉にあたるかな)くらいの士官だった。いい奴がそれなりにいる中、クソ野郎はとことん甘え腐ったマザコンインポ野郎であり、責任を一切果たさず権利だけ主張しやがるカスどもが一定数いたのである。

私は立場上、パワハラにならない範囲で穏やかかつ論理的に諭してきたが、内心ぶん殴って修正してやりたい気分だった。そこで本書である。本書の思想の核となるのは「権利は責任を果たした者にのみ存在する」という考えだろう。私の怒り憎しみは暴力によって晴らすことはできなかったが、この本を読むことにより救済されてのである。

そう....この本はすべての男必読なのである。Z世代というニュータイプが生まれて、団塊世代が消滅してきている令和の世では、学生だろうが新卒社会人だろうが中堅社員だろうが会社役員であろうが読まなければならないのだ。

※代わりに「ファーストガンダム」「Zガンダム」「ZZガンダム」「逆襲のシャア」「ユニコーンガンダム」を見るのもありです。(ちなみに私はエマ中尉とマリーダ中尉派)

 

最後に

付箋を貼り忘れたので箴言のところに書けなかったが、作中でもう一つ素晴らしい教訓があった。要約&意訳しまくるが、若いうちに甘やかして、成人してから突如地獄に落とすのは可哀そうだろ?というようなのがあった。

まさにその通りで、親はもちろんのこと小学校教師や中学校教師はゴリゴリに体罰をすべきだと思う。私は自分の子供らにバチくそ厳しくしているが、学校教員の事なかれ主義には本当に腹が立つ.....おっと、また愚痴ってしまった。とにかく気合い。すべてのことはコントロールされた気合でしか成し遂げられないのである。

 

ちなみに本作には映画版があり、かなり内容が変わっているがこれはこれで悪くないという内容になっている。AmazonPrimeVideoで観られるのでこちらも見ておいて損はない。」

 

 

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『ジャガー・ワールド』恒川光太郎| 光太郎超絶新兵器現る

マヤ文明×戦記物×群像劇

 

作品紹介

恒川光太郎による『ジャガー・ワールド』は2025年から講談社から出版された、マヤ文明×冒険小説(個人的には戦記物)小説で、単行本で約630ページの著者の中でも最大ボリューム級の長編作品である。

恒川光太郎といえば読者を異世界へと導く案内人であり、ホラーやファンタジー、時々SFといった作品を得意としている。これまでの作品ではどこか必ず超自然的な要素がかかわっていたが、本作は長年の光太郎ファンである私からすれば驚愕のストレートなマヤ文明時代冒険小説となっている。著者お得意の要素の大半が封印されているのである。

神傑作と殿堂入りした感のあるデビュー作『夜市』以降、概ね1年に1冊ペースで作品を上梓してきた著者が、3年も前作から感覚を開けたのも異例のことであり、過去最高の労力をかけて書かれたと考えられる本作について本音で書いていく。

 

 以下、あらすじの引用

鈍器本なのに一気読み!読み終えたら世界が変わる、徹夜本。人生ベストの読書体験がここに。
数千年前、遥か海の向こう。密林の奥では数多の文明が花開き、そして滅んでいった。小さな島で生まれ育った少年・スレイの平和な日々は、エルテカ王国の「生贄攫い」によって一変する。生きたまま胸を開かれ、心臓を太神に捧げる生贄の儀式。ある晩、不思議な女性の助けによってかろうじて逃げ出したスレイ。彼女は、叡智を司る“ウェラス族”だった。生贄屋敷から逃れた少年、最強無敵の怪力戦士、謎に包まれた最高神官、反生贄思想を語る赤いマントの少年。それぞれの人生が交叉するとき、世界の運命が大きく変わる。「ジャガーは戦いの神であった。人々はジャガーを畏怖し、崇め、戦士は己のうちにジャガーの魂を宿そうとした」

 

 

 

待ち焦がれた日々

作品紹介の通り、著者は2005年のデビューから年1冊ペースで新刊を出していたが、『ジャガー・ワールド』は神傑作である前作『箱庭の巡礼者』から3年も感覚が開いている。私は毎月推しの作家の新刊状況をチェックしていて、2023年あたりから「あっ...そろそろ光太郎さんが新作出すだろうから見逃さないようにしよっと」という感じで監視の目を強めていた。

しかし待てど暮らせど新刊発表はなく、チェックするたびに「もしや光太郎はすべてのネタを放出し尽くして隠居してしまったのでは...」という不安を覚えていた。恒川光太郎は私の推しの作家の中でも最上位の聖者なので、時を経て新刊発表を確認した時の喜びと言ったら。(私事だが本作の発売を知ったのが転職先企業の内定確信の最終面接の帰りの電車内だったということもありテンションは爆上がりだった)

しかも私は古代文明やオカルトが大好きで、中でもマヤ文明は最も好きなので、本作が神傑作であることは読む前から分かっていた。読んでいるうちに思ったのと違う感はありつつも、最後まで読んでみるとこれは恒川作品としては異色だが最高傑作かなぁという読後感であった。以降の文章ではネタバレほぼ無しで作品の魅力に触れていく。

↓恒川作品は超傑作ぞろいなので以下の記事でも、私の光太郎愛に触れていただけると幸いである。

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マヤ文明 -読む前の想像-

恒川作品と言ったら異世界。そしてほぼ全作品で超自然的な要素が登場する。本作はマヤ文明ということもあり、オカルト要素全開で宇宙的な要素が全開のSFファンタジーというのを妄想していた。しかし実際はおそらく恒川作品としては初(だったと思う)で、ゴリゴリに参考文献を挙げまくっていて、その時代地域を研究したうえで世界観を作っている。たまに伝奇小説風の作品を書きつつも、架空の異世界を構築することが多い著者なのでこれは割と本気で驚いた。

マヤ文明については下記リンクで詳細を参照いただきたいが、麻薬カルテルで有名なメキシコのユカタン半島あたりの文明で、紀元前2000年くらいから西暦1500年くらいまでの文明である(適当)。そして作品中の都市名やノリからおそらくだいぶ幅広いが、紀元800年から1400年ごろをいい感じにミックスした世界観だと思われる。

マヤ文明 - Wikipedia

いかにもファンタジー、SFオカルト要素満載かと思いきやそんなことはなく、魅力的なキャラクター達による群像劇である。書いていて思ったが、恒川作品ではどちらかというと魅力的なキャラクターよりも魅力的な世界観と設定が強みなので、キャラが立っているというのも恒川新領域だと思う。

 

どんな物語か

物語の大筋は、主人公の一人で家族を殺され拉致られ生贄にされかけたところを助けられたスレイがエルテカ王国に反旗を翻す、というものである。群像劇のようになっていて、第一部から第四部で構成され、それぞれのパートごとに中心人物と視点が異なる。

第一部では拉致被害者スレイの冒険、第二部ではエルテカ最強戦士シベリアとドルコ中心の物語、第三部は謎のお姉さんの出世劇、第四部で王国VS反乱軍の戦争となっている。本作は本当に登場人物が魅力的で、パートごとに分かれることもあり物語がやや分散してしまっている印象があるものの、人物たちの話が面白く、最初から最後まで読み止めるタイミングを見つけられないほどである。

それぞれの登場人物はいずれもキャラが立っており、主役級のキャラは全員好きなのだが、私は女最高神官推し。マヤ文明と言ったら生贄の心臓を生きたまま取り出す儀式がリョナラーの間では有名なのは言うまでもないが、本作では謎の最高神官(女性)が心臓を取り出し役なので、その女神官を萌ミステリアス美女だと妄想していたリョナラーである私はかなり感激した。

↓読み終えた後に発見した公式のキャライラストを見て、最高神官がおばさんじゃなくて感動した。こんなお姉さんなら心臓を捧げてもいい。

公式はこんな感じだったのか

 

本音で語る

読んでいる最中ずっと、間違いなく超傑作だけど恒川作品らしくないなぁ...、それと作品の世界観に対してキャラの口調が軽いなぁ...、さらに言っちゃうと物語があっち行ったりこっち行ったりしすぎじゃないかなぁ...と思っていた。恒川作品らしくないというのはここまでにも書いてきた通り、マヤ文明を舞台とした架空の世界ではあれど、特殊設定なしの時代物のように感じたためである。口調が軽いと思ったのは、そもそも恒川作品はどの作品も非常に読みやすい筆致で、会話も軽めな口調が多いのが常だが、本作は重厚な世界観ということもあり、個人的には軽い口調には少し違和感を感じた。話が散っているのは言うまでもなく部ごとに物語が分かれているからである。

そういった事情もあり、第四部の最終盤までは素晴らしい傑作だが、過去作品よりは魅力が一歩劣るのでは、と感じていた。しかし最後の最後まで読んだ時、本作の魅力は一気に跳ね上がった。

おそらく私のようにデビュー作からずっと恒川作品を追ってきた人であれば同じような印象を持たれるかもしれないが、最近辛口評価ばかりしてしまっている私が満点評価したくなるような傑作なので、分厚い単行本で値も張るが迷わず読んでみてほしい。これは間違いなく恒川光太郎の新たなる代表作となるはずだ。2025年に出版された作品で私が読んだものの中ではぶっちぎりの一位である。

 

最後が本当に素晴らしい

この作品を王国VS反乱軍だと考えると、最終決戦が極めて素晴らしい。熱く語りたいのだが、壮大なネタバレになってしまうのでやめておく。結局この物語はどこに行きついたのか、そして著者は何を主張したかった(書きたかった)のか。いっぱい本を読んでいる割に何も考えていない私にはさっぱり分からない。

ただ一つ言えること。賢い萌えキャラが最強である。案外著者もそれが書きたかったんじゃないのかな...と思えるくらい最後が激熱だったので、著者のファンであろうがなかろうが、ぜひ最後まで読んでみてほしい。

 

神は健在、それどころかアップデートされた

神(光太郎さん)が封印されていた3年間、異世界に行かれてしまったかと新たな領域に踏み込むという超進化を遂げて帰ってこられた。もうこうなったら今後も3年に1冊とか5年に1冊でもいいので、『ジャガー・ワールド』級の作品を出し続けてほしい。

恒川作品は全体でみると短編や連作短編が多いが、『金色機械』『スタープレイヤー/ヘブンメイカー』『滅びの園』などのように、長編=神傑作の方程式が成立している。今回その理論はさらに説得力を増したわけである。本作ほど次回作の期待値が高まったのは初めてかもしれない。

 

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『イクサガミ』今村翔吾|燃え盛る熱き読む少年漫画

本気なのか悪ノリなのか...

 

言いたいことは山ほどある

作品紹介

今村翔吾による『イクサガミ』は2022年から講談社より出版され、天→地→人→神と4部構成で2025年に完結したエンタメ時代小説で、文庫本で約330+450+520+470ページで全体では1800ページ弱の作品である。

「明治時代に謎の冒険デスゲームやっちゃいました」な本作は、漫画化されNetflixでドラマ化されるのも当然と言わんばかりに完全にエンターテイメントに特化した作品であるため、少年ジャンプをめっちゃ読んでいるけど、漫画だけじゃなくて小説も読んでみたいなぁ...な意識高さに目覚めつつある人にはうってつけの傑作だ。

本作の素晴らしいところ、微妙なところも含めて忖度なしに語っていくが、本編にもある程度触れなければならないため、ネタバレゼロで読みたい方はこの記事はスルーしてまずは1冊目の「天」から読み始めてほしい。面白いことは保証できる。

 

 以下、あらすじの引用

金か、命か、誇りか。刀を握る理由は、何だ。明治11年。深夜の京都、天龍寺。「武技ニ優レタル者」に「金十万円ヲ得ル機会」を与えるとの怪文書によって、腕に覚えがある292人が集められた。告げられたのは、〈こどく〉という名の「遊び」の開始と、七つの奇妙な掟。点数を集めながら、東海道を辿って東京を目指せという。各自に配られた木札は、1枚につき1点を意味する。点数を稼ぐ手段は、ただ一つ――。「奪い合うのです! その手段は問いません!」剣客・嵯峨愁二郎は、命懸けの戦いに巻き込まれた12歳の少女・双葉を守りながら道を進むも、強敵たちが立ちはだかる――。

 

 

文字で読む少年漫画

この本は面白い。ただし良くも悪くも少年漫画的なノリであり、時代と関連した謎要素がある「天」「地」はいいとして、それ以降はほぼ完全にバトル漫画となる。そのため読書慣れしている人が読んだら段々「あれれ?」となるかもしれない。

私が読んだ感想は以下のように変化していった。
①天「おもしれー!いったい蟲毒の目的って何なんだよ!続きが気になる!」

②地「ほほう...こう来ましたか。でも目的は何なんだろう...ってか続きどうなるの?」

③人「面白いけどちょっと少年漫画過ぎじゃないかぁ....ん?これ三部作完結じゃないの...おいおいちゃんと締めようよ」

④神「神って(笑) もはや完全にバトル漫画じゃん。でも面白かったしまぁいいか」

つまり猛烈に面白かった第一部の魅力をデスゲーム×時代小説×サスペンスだとしたら、第二部も同様だが少年漫画要素が出てきて、第三部はほぼ少年漫画、第四部はもう完全にインフレしたバトル漫画なのである。

繰り返しになるがこの本は面白く、最初から最後までずっとテンションの高さを維持しているのだが、前半と後半で対象年齢が変わってしまっている気がするのだ。本作の紹介で貴志祐介が「風太忍法帖×現代のデスゲーム」といったが、何となく「ジョジョ7部 スティールボールラン」とか「るろうに剣心」が近いような気がした。

 

どんな話なのか

明治時代に謎の新聞がばら撒かれて、「殺しあいながら(点数を奪いながら)京都から東京まで来たらめっちゃ金あげますぞ」と書かれていた。集まったスタンド使いや念能力者、忍者、魔法使い達はお金やらなんやらを求めて東京に向かうのだった...である。

主人公は謎の超能力を操る流派の剣士で、過去にその流派でいろいろな因縁があった訳ありなお金ほしいおじさん。過去の因縁やらなんやらでいろいろがんばっちゃう。

なのでなぜこんなデスゲームが開催されたかがこの物語の肝なのだが、この謎は割と早い段階で黒幕が判明し、これといった意外性もなくその目的も判明する。つまりひたすらバトルを楽しむだけである。

時代背景や剣士が多いことをを考慮すると前述のとおり「るろうに剣心」だが、インフレしていくたびに「NARUTO」になっていく。仲間と協力しながらチート技を持つ怪人や狂人を倒す物語なのだ。

 

どんな技があるのか

「視野が広がって一瞬先の動きを読む」「めっちゃ耳が良くなって足音も消せる」「武器破壊」「超絶防御力アップ」「自動攻撃(笑)」「呼吸法で一時的に超人化」「剣の軌道があり得ない位置に変わる」「鼻がめっちゃよくなる」「年を取らない」「体が軟体生物になる」「敵が一度使った技を使えるようになる」「毒幻術」などなどまさに少年ジャンプである。しかも能力名を言ったり、地の文でも能力名や技名が登場しまくるのである。

こういった能力を見て面白そうと思ったら読むべきだし、興醒めしたのなら読む必要はないだろう。

 

時代小説としてどうか

私は山田風太郎の大ファンなので、時代小説としてはかなり物足りなく感じてしまう。いうまでもなく本作のデスゲーム開催には理由があるのだが、いまいち深堀ができていないように思えてしまうし、「いやいや...やらんでしょ」みたいな感じになってしまうのである。

しかし再三繰り返すが、この本は面白い。ただのバトル漫画の小説版として読めば最高の作品であるので、この作品を機に時代小説に興味を持ったのなら山田風太郎の「忍法帖シリーズ」や「明治モノ」を読んでみてほしい。

 

お約束展開マシマシ

少年漫画ってヒーローと悪役がいたり、最初は敵だけど味方になったり、その逆で敵になったり、悪役が最後いい奴になったり、仲間が死んでしまうといったお約束があるものだが、本作はドストレートにだいたいの要素は網羅している。

感動させようとするし泣かせようとするし、ヒーローが自己犠牲で弱いものを守ろうとするし...などなど盛りだくさん過ぎて食傷気味になるくらいである。こういうのが好きな方にはたまらないだろうね。ただアラサーを過ぎてワンピースにうざいと感じるようになった人には厳しいかもしれない。

 

何も書けなかった....

何度でも言うのだが、この本は本当に面白かった。しかし内容的に普段から小説を読むような読者向けではないように思えるので、書こうと思っても全然かけないのである。だって竈門炭治郎と鬼の戦いが文字で書かれたものを、文字で紹介しようと思っても書けなくないかな?という感じで雑に締めくくります(笑)

まぁ私自身会社でそれなりのポジションになってしまい、読書時間をなかなか確保できない中、本作は第一部から完結編まで発売日に買って一日で読み切るような徹夜本だったのは紛れもない事実なので、駄文になってしまい恐縮だがぜひ読んでみてほしい。

私は漫画版は読んでいないが、漫画だとかなりよみやすくおもしろいかもしれない。また実写映えする内容なので、Netflix版も超楽しみである。

 

 

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最強ホラー小説おすすめランキング20|最恐のホラーを求めて

最恐とはいったい...

 

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小学生の頃から本当に多くのホラー小説を読んできた...

 

怖いって何?最恐とは一体?

この記事は昔から書こう書こうと思いつつも、どうしても書けなかった記事である。もちろん書こうとすると霊障があって書きたくても書けないなどという理由ではない。

ではなぜか?小説を読んでも怖くないのである。そこで恐怖とは何かを真剣に考えてみた。その結果、恐怖とは平穏な日常への悪影響であるという判断に至った。例として、有名な映画『呪怨』を挙げる。

呪怨はシャワーで髪を洗っていたら髪を洗う手が、自分ではない別の手に触れる(ヒッ)、安全地帯であるはずのベッドに潜り込んだら布団の中にヤバいのがいる...といった具合に日常に亀裂を入れている。これを見てしまったら、以後シャワーを浴びるのも、ベッドで眠りに就くのも怖くなる。つまりそれが恐怖であると考えたのだ。

私は男であり、妻子+猫と暮らしているので、仮に怖い話を読んだり、怖い映画を見ても、もはや怖いと感じるシチュエーションに陥ることがないため、怖いと感じないのである。

そこで本記事ではタイトル詐欺になりそうだが、一応恐怖を日常に対する悪影響と定義したうえで、でもそんな本ほとんどないじゃん...というノリで純粋に私の好きなホラー小説ランキングにすることにした。

残念ながら怖いと感じない本のオンパレードになったが、一応いずれの作品も世間的にはホラーと分類されているので、悪く思わないでください(笑)

 

二十位  ぼぎわんが、来る / 澤村伊智(2015年)

 

幸せな新婚生活を営んでいた田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。取り次いだ後輩の伝言に戦慄する。それは生誕を目前にした娘・知紗の名前であった。正体不明の噛み傷を負った後輩は、入院先で憔悴してゆく。その後も秀樹の周囲に不審な電話やメールが届く。一連の怪異は、亡き祖父が恐れていた“ぼぎわん”という化け物の仕業なのだろうか? 愛する家族を守るため秀樹は伝手をたどり、比嘉真琴という女性霊媒師に出会う。真琴は田原家に通いはじめるが、迫り来る存在が極めて凶暴なものだと知る。はたして“ぼぎわん"の魔の手から、逃れることはできるのか……。怪談・都市伝説・民俗学――さまざまな要素を孕んだ空前絶後のノンストップ・ホラー!!

 

属性:オカルト/妖怪/ゴーストバスターズ(笑)

面白さ:★★★★★★★★☆☆

恐怖度:★★★★★☆☆☆☆☆

影響度:★★★★☆☆☆☆☆☆

 

非常に良くできた作品であり、日本ホラー小説大賞の大賞受賞は納得できるのだが、何か違うんだよなぁ...と感じる作品。本当に完成度が高く、章ごとに視点が変わるなど魅力的な要素が溢れているし、妖怪は凶悪だし、キャラも立っているのだが、キャラが立っていることが逆効果なのかな...?

1章や2章のような心理描写メインのまま終わらせていれば相当な傑作として後世に名を残した気がするのだが、比嘉姉妹を売りにしてシリーズ化してしまったことが本作の評価を間接的に落とす要因になってしまったような印象。

 

 

十九位  Wi-Fi幽霊 / 乙一/山白朝子(2025年)

 

乙一&山白朝子の初期~現在までの怖い作品ばかりを厳選収録した怪奇ホラーコクション企画。「夏と花火と私の死体」でデビューした乙一は、デビューから「死」を描いてきた。山白朝子は、怪談雑誌「幽」 の創刊時、デビューした怪談作家。今回は、ホラーを描き続ける作家二人の初のホラー文庫企画。ホラー文庫創刊30周年のフィナーレを飾る記念企画。作品のセレクトはホラー評論家&ミステリ評論家の千街晶之さん。本書刊行にあたり表題作となる中編「Wi-Fi幽霊」を書き下ろし。

 

属性:せつない/エグい

面白さ:★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★☆☆☆☆☆☆☆

影響度:★★★☆☆☆☆☆☆☆

 

本作を紹介するのは反則かもしれないが、乙一の最高傑作の一つである「SEVEN ROOMS」が収録されているし、他の作品も全体的に秀逸なのでランクインさせた。

乙一は割と作風の幅が広いため、ホラー作家という印象はあまりないのだが、冷静に考えると結構ホラー作品が多い。そして本書は傑作選というわけである。正直ベストなチョイスだとは思えないが、神傑作「SEVEN ROOMS」や「呵々の夜」「首なし鶏、夜をゆく」は非常に良いと思うのでおすすめ。

 

 

乙一は本当に傑作が多いので、以下の記事もご参考いただきたい。若い頃の作品の方が知名度が高い気がするが、完成度では現在の方が上回っていると感じる。

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十八位  人体模型の夜 / 中島らも(1991年)

 

一人の少年が「首屋敷」と呼ばれる薄気味悪い空屋に忍び込み、地下室で見つけた人体模型。その胸元に耳を押し当てて聞いた、幻妖と畏怖の12の物語。18回も引っ越して、盗聴を続ける男が、壁越しに聞いた優しい女の声の正体は(耳飢え)。人面瘡評論家の私に男が怯えながら見せてくれた肉体の秘密(膝)。眼、鼻、腕、脚、胃、乳房、性器。愛しい身体が恐怖の器官に変わりはじめる、ホラー・オムニバス。

 

属性:人体/グロ/イヤミス

面白さ:★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★★☆☆☆☆☆☆

影響度:★★★★★☆☆☆☆☆

 

著者の中島らもは天才でありながらアル中(酔って階段から落ちて亡くなった)で、知的でありながらセンスで書いたような作品が多い。

本作はセンスの良い短編が多い中島らも作品の中でも、ホラー寄りで人体にまつわる短編をまとめた連作短編集である。連作と言っても個々の作品は独立した高品質短編で、プロローグとエピローグで連作としてくっつけて一撃をかますような構成となっている。

とにかくバラエティ豊かで、純粋なホラーから今でいうイヤミスのような作品、ブラックユーモアが効いた作品まで一作一作が本当によくできていると思う。とりあえず読むべき一冊。酒を飲みながら読むのがおすすめである。

 

 

どちらかというと小説家というよりエッセイストとして有名かもしれない中島らもだが、『ガダラの豚』を始め、超傑作が多々存在する。以下の記事もおすすめしたい。

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十七位  夜市 / 恒川光太郎(2005年)

 

妖怪たちが様々な品物を売る不思議な市場「夜市」。ここでは望むものが何でも手に入る。小学生の時に夜市に迷い込んだ裕司は、自分の弟と引き換えに「野球の才能」を買った。野球部のヒーローとして成長した裕司だったが、弟を売ったことに罪悪感を抱き続けてきた。そして今夜、弟を買い戻すため、裕司は再び夜市を訪れた―。奇跡的な美しさに満ちた感動のエンディング!魂を揺さぶる、日本ホラー小説大賞受賞作。

 

属性:ダークファンタジー/和風ファンタジー

面白さ:★★★★★★★★★★★★

恐怖度:★★☆☆☆☆☆☆☆☆

影響度:★★★☆☆☆☆☆☆☆

 

私が最も崇拝する作家の一人、恒川光太郎のデビュー作にして日本ホラー小説大賞の大賞作品。大賞受賞は必然としか言いようのない超傑作。ただしまったく怖くない。ファンタジーである。そもそも恒川光太郎はたまに怖い要素も入れてくるファンタジー作家と認識している。

まず読んだことのない人は絶対に読んでくだされ。ホラーとしては肩透かしかもしれないが、とにかく異世界に行ってしまったかのような臨場感に浸れること間違いなしである。

さて、本作は短めの中編「夜市」と中編「風の古道」で構成されている。表題作であり有名なのは前者だが、大半の方が「風の古道」をより高く評価しているように思われる。もちろん私も「風の古道」の方が100倍くらい好きであり、むしろ「夜市」だけならそこまで好きになっていなかったかもしれない。

恒川光太郎は布教しまくりたいので、夜市を読んで他の著書も読みたいと思われたのなら、以下の記事もぜひ参考していただきたい。

 

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十六位  アンダー・ユア・ベッド / 大石圭(2001年)

 

三井は、10年前たった一度だけ会話を交わしたことのある、憧れの的だった千尋のことを、ある日突然鮮明に思い出す。彼女の自宅を調べ、近所に引っ越し、双眼鏡で千尋の生活を覗き見するようになるが……。

 

属性:ストーカー/童貞純愛/ヒーロー

面白さ:★★★★★★★★★★★★

恐怖度:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆

影響度:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

私が火葬される時、棺に一緒に入れてほしい愛すべき一冊(人間椅子も入れてほしい)。

全童貞必読の作品である。陰キャでモテなくても愛する人ができたのなら、とにかくストーカーしよう。愛する人のベッドの下に潜り込もう。キモいのにそこはかとない暖かさと優しさに包まれる至高の読書体験となるだろう(笑)

大石圭は筆致がキモいのに温かみがあって、キモさを感じさせないんですよね。キモカワっていうのかな?これは江戸川乱歩にしかできない芸当だと思っていたが、彼もまたちょっとヤバ目な変態童貞を頼りがいのあるヒーローに書く異能の持ち主ということ。恐怖要素はほぼないが、フツーにめちゃクソ面白いので絶対に読んだ方がいい。

 

 

十五位  Another / 綾辻行人(2009年)

 

夜見山北中学三年三組に転校してきた榊原恒一は、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に違和感を覚える。同級生で不思議な存在感を放つ美少女ミサキ・メイに惹かれ、接触を試みる恒一だが、謎はいっそう深まるばかり。そんな中、クラス委員長の桜木が凄惨な死を遂げた!この“世界”ではいったい何が起きているのか!?いまだかつてない恐怖と謎が読者を魅了する。名手・綾辻行人の新たな代表作となった長編本格ホラー。

 

属性:怪異/学園/ミステリ

面白さ:★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★☆☆☆☆☆☆☆

影響度:★★★☆☆☆☆☆☆☆

 

極めて完成度の高いホラー×ミステリで、著者お得意のあの技法が『十角館の殺人』に勝るとも劣らない衝撃となって炸裂する。

本格ミステリ界の筆頭であると同時にホラー作家としても優秀な著者の作品群にあって、本作はホラー作品の位置づけだが、随所にミステリ要素が散りばめられているため、著者の持ち味がフルには活かされている傑作と言える。

もともとラノベの境界線のような作品なので、やや軽めの印象もあるが、仕掛けが完璧という点で個人的には『十角館の殺人』よりも断然おすすめである。

余談だが、私はもともとホラーやSFが好きなため、当初綾辻行人には興味を持っておらず、名前だけ知っている状況だった。そんな中『Another』のアニメを綾辻作品と知らずに視聴して著者に興味を持った経緯がある。つまり非ミステリファンであったも楽しめると言いたいのです。

 

 

十四位  屍鬼 / 小野不由美(1998年)

 

人口わずか千三百、三方を尾根に囲まれ、未だ古い因習と同衾する外場村。猛暑に襲われた夏、悲劇は唐突に幕を開けた。山深い集落で発見された三体の腐乱死体。周りには無数の肉片が、まるで獣が蹂躪したかのように散乱していた―。闇夜をついて越して来た謎の家族は、連続する不審死とどう関わっているのか。殺人か、未知の疫病か、それとも…。超弩級の恐怖が夜の帳を侵食し始めた。

 

属性:ダークファンタジー

面白さ:★★★☆☆☆☆☆☆☆(ただし後半は限界突破)

恐怖度:★★★☆☆☆☆☆☆☆

影響度:★★★☆☆☆☆☆☆☆

 

文庫版で5分冊、トータル2500ページ級の超大作。このボリュームゆえに実はあまり読んだことがない人が多いのではないかと推測する。

雰囲気は最高だがはっきり言ってまったく怖くはない。ひたすら淡々と暗くて不穏な描写が続き、とにかく退屈で最高に眠れる小説今か今かと盛り上がるのを待ち続けながら、雰囲気に浸っていく小説である。詳しくは個別記事を参照されたいが、言うなれば本書はオナ禁である。または射精しそうになったらしごくのを止めるのを永遠に続けるといったところだろうか。その分ラストスパートは超強烈であり、しかも全体が長いのでラストスパート自体が400ページを超えるという無限絶頂を体感することになる。

微妙にDISった感じに書いてしまったが、トータルで見ればまず間違いない神本なので、死ぬほど暇になった時に読破してみてほしい。

ちなみにアニメ化もコミック化もされていて、原作とは違う内容になっているのでこちらもおすすめ。どちらも共通して絵に癖があるが、特にアニメ版はリョナラーの栄養分になるシーンが多く目を離せない。

 

〇個別紹介記事

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十三位  パラサイト・イブ / 瀬名秀明(1995年)

 

事故で亡くなった愛妻の肝細胞を密かに培養する生化学者・利明。Eve 1と名付けられたその細胞は、恐るべき未知の生命体へと変貌し、利明を求めて暴走をはじめる―。空前絶後の着想と圧倒的迫力に満ちた描写で、読書界を席巻したバイオ・ホラー小説の傑作。新装版刊行に際して、発表時に研究者でもあった著者から、科学者あるいは小説家を志す人達に贈る、熱いロングメッセージを収録。

 

属性:バイオSF

面白さ:★★★★★★★★★★

恐怖度:★★☆☆☆☆☆☆☆☆

影響度:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

他の記事に書いたかもしれないが、私が生まれて初めて自分のお金で本屋で買った思い出深い作品である。

また、記念すべき日本ホラー小説大賞の初大賞受賞作であり、バイオ・ホラー屈指の超傑作である。映画化されたりゲーム化されたりと本当に素晴らしい作品で、当時小学生だった私はどっぷり浸かっていた。

本作ははっきり言ってまったく怖くない。比較的近い属性の作品である、リングの続編『らせん』や貴志祐介屈指の傑作『天使の囀り』の方が恐怖描写は格段に上だ。しかも著者は研究者であるにもかかわらず、ツッコミどころはかなり多い。ただ何が素晴らしいかって、ミトコンドリアEve1の精液くれくれ騎乗位シーンがたまらんのです(笑)...と言うのは置いておくとして、ハードSFとしては通用しなそうではあるが、何と言ってもアイデアが良いのですよ。実際にありえるのかな...と知的好奇心を熱くさせることが本書の醍醐味なのです。

 

 

十二位  墓地を見おろす家 / 小池真理子(1993年)

 

新築・格安、都心に位置するという抜群の条件の瀟洒なマンションに移り住んだ哲平一家。問題は何一つないはずだった。ただ一つ、そこが広大な墓地に囲まれていたことを除けば…。やがて、次々と不吉な出来事に襲われ始めた一家がついにむかえた、最悪の事態とは…。復刊が長く待ち望まれた、衝撃と戦慄の名作モダン・ホラー

 

属性:心霊/ポルターガイスト/オラオラ(笑)

面白さ:★★★★★★★★★☆

恐怖度:★★★★★★★☆☆☆

影響度:★★★★★★★☆☆☆

 

割と評価が分かれる作品で個人的には超好きな一冊。

基本的にはイイ感じの心霊(ポルターガイスト)作品で、序盤から中盤にかけては非常に良くできたホラーなのだが.....後半はお祭りです(笑)

属性にオラオラと書きましたが、ネタバレにならない範囲で書くと、とにかく心霊がアグレッシブなんDEATH。こういうのって静かに静かに追い込まれていくようなのがセオリーだと思われるが、なぜがゴリゴリに攻めまくってくるのはなんか違う...けど面白いからまぁいいかという感じである。気になったらぜひ。とりあえず読み物として面白いのは保証できる。

 

 

十一位  六番目の小夜子 / 恩田陸(1992年)

 

津村沙世子――とある地方の高校にやってきた、美しく謎めいた転校生。高校には十数年間にわたり、奇妙なゲームが受け継がれていた。三年に一度、サヨコと呼ばれる生徒が、見えざる手によって選ばれるのだ。そして今年は、「六番目のサヨコ」が誕生する年だった。学園生活、友情、恋愛。やがては失われる青春の輝きを美しい水晶に封じ込め、漆黒の恐怖で包みこんだ、伝説のデビュー作。

 

属性:学園モノ/青春/恋愛/怪異

面白さ:★★★★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★★★★★★☆☆

影響度:★★★☆☆☆☆☆☆☆

 

傑作を量産するが完成度の点でいろいろあれな作家こと恩田陸のデビュー作。デビュー作の時点で、すでにフワッとした感じの結末は完成している(笑)

冗談はさておき、ホラー以外の要素が多いので純粋なホラーとしてはこのあたりにランキングしているが、恐ろしいほどに高い筆力から描かれる本作屈指の恐怖描写の某シーンは、まさに文字が質量を持って襲ってくるような猛烈な臨場感を味わうことができる。文字でここまで描写できるのは凄いとしか言いようがない。

万人が楽しめるような内容なので、読んでない人がいたらぜひ読んでみてほしい。読書そのものを楽しむことができるはず。

 

 

十位  殺人鬼 / 綾辻行人(1990年)

 

伝説の傑作『殺人鬼』、降臨!!’90年代のある夏。双葉山に集った“TCメンバーズ”の一行は、突如出現したそれの手によって次々と惨殺されてゆく。血しぶきが夜を濡らし、引き裂かれた肉の華が咲き乱れる…いつ果てるとも知れぬ地獄の饗宴。だが、この恐怖に幻惑されてはいけない。作家の仕掛けた空前絶後の罠が、惨劇の裏側で読者を待ち受けているのだ。―グルーヴ感に満ちた文体で描かれる最恐・最驚のホラー&ミステリ。

 

属性:スプラッタホラー/ミステリ/グロ

面白さ:★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★★★★★☆☆☆

影響度:★★★☆☆☆☆☆☆☆

 

この作品がなければ綾辻行人を好きになることはなかった....私が初めて読んだ著者の本であり、言うまでもなく綾辻行人作品で最も好きな本である。

ミステリ要素はオマケに過ぎず、スプラッタとグロさに全力投球したある意味綾辻行人作品の中では異例の作品なのかもしれない。セックス中のカップルを二人同時に貫くシーンなど、綾辻作品をほぼすべて読んだ今からするとちょっと信じられないくらいである。

1作目の時点でかなりエグいスプラッタ描写のオンパレードだが、2作目は悪ノリしたかのようにさらに悲惨なことになっており、この著者頭大丈夫かなと思ったくらいだ。繰り返すが『十角館の殺人』と同じ著者が書いているとは信じがたいような内容である。

現在はKADOKAWAから覚醒篇と逆襲篇が出ていて、それぞれ大幅な改訂を加えた決定版となっている。入手もしやすいので、館シリーズばかり読んでいて他の作品は未読のような推理小説マニアもぜひ一度読んでみてほしい。

 

 

九位  粘膜兄弟 / 飴村行(2010年)

 

ある地方の町外れに住む双子の兄弟、須川磨太吉と矢太吉。戦時下の不穏な空気が漂う中、二人は自力で生計を立てていた。二人には同じ好きな女がいた。駅前のカフェーで働くゆず子である。美人で愛嬌があり、言い寄る男も多かった。二人もふられ続けだったが、ある日、なぜかゆず子は食事を申し出てきた。二人は狂喜してそれを受け入れた。だが、この出来事は凄惨な運命の幕開けだった…。待望の「粘膜」シリーズ第3弾。

 

属性:グロ/戦争/ファンタジー/冒険

面白さ:★★★★★★★★★★★★★★★

恐怖度:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆

影響度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

我が最愛シリーズである粘膜作品3作目。世界観を共有するものの特に1作目、2作目を読んでいなくても独立した作品として楽しめる。(4作目のみ順番通りに読む必要あり)

怪奇幻想の戦争もの(?)であり、独自の世界観が作り上げられており、本作は特にエンタメ要素に特化した超絶面白作品である。ギャグセンスも素晴らしく、読み始めたら確実に一気読み確定な徹夜小説でもある。

エググロ要素が多いのも本作のポイントだが、特に金玉拷問や、かくかくしかじかで腸がはみ出て死を待つ美女ビッチに死姦ならぬ死にかけ強姦をするシーンは最高にたまらないのだ!(笑)

 

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八位  臓物大展覧会 / 小林泰三(2009年)

 

男が旅の途中、街で見つけた「臓物大展覧会」という奇妙な看板。中に入ってみると様々な臓物が展示してある。居合わせた謎の人物から「臓物の呟きを聞きたいか」と問われ、男は異様な体験をすることに……。

 

属性:グロ/SF

面白さ:★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★★★★★☆☆☆

影響度:★★☆☆☆☆☆☆☆☆

 

タイトルの時点ですでに優勝だが、内容的に小林泰三のホラー短編集の中では最高傑作だと考えている愛してやまない一冊である。好き。LOVE。

タイトルの臓物大展覧会というのはやや釣りな印象だが、プロローグ→短編9作品→エピローグの構成となっており、プロローグとエピローグが臓物祭りである(おえっ笑)

SF寄りの作品が複数ある作品群に、ヤスミンらしいエググロ度の高い作品も紛れ込んでおり、特に1作目の「透明女」は全小林泰三作品の中でも筆頭クラスのエグさMAX作品で、冒頭からかっ飛ばしまくっている。他にも「攫われて」、「悪魔の不在証明」などSF要素がない作品はとにかく気合が入っていて、とにかくおすすめです。

角川ホラー文庫小林泰三作品を複数復刊してくれましたが、頼むからこれも復刊してくれ!!現状は電子書籍でなくては入手困難です。。

 

 

七位  首無の如き祟るもの / 三津田信三(2007年)

 

奥多摩の山村、媛首村。淡首様や首無の化物など、古くから怪異の伝承が色濃き地である。三つに分かれた旧家、秘守一族、その一守家の双児の十三夜参りの日から惨劇は始まった。戦中戦後に跨る首無し殺人の謎。驚愕のどんでん返し。本格ミステリとホラーの魅力が鮮やかに迫る。「刀城言耶」シリーズ傑作長編。

 

属性:ミステリ/怪異

面白さ:★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★★★★★★★★

影響度:★★★★★★★★☆☆

 

ホラー長編、特に『リング』以降の作品は怪異の謎解きのようなミステリ要素を持つ作品が多いと考えている。

本作『首無の如き祟るもの』は非常に完成度の高い本格ミステリでありながら、結果的にはホラー小説としても最高峰に到達した、私が把握しているミステリー×ホラーの最高傑作である。何というかミステリとしての完成度とホラーとしての完成度が連動して、共に高め合っているような印象。

最終盤の描写を見て、恐怖というよりよくもこんなのが書けたよなぁ...という意味で鳥肌が立った。

 

 

六位  オフシーズン / J.ケッチャム(1980年)

 

避暑客が去り冷たい秋風が吹き始めた九月のメイン州の避暑地。ニューヨークから六人の男女が休暇をとって当地にやって来る。最初に到着したのは書箱編集者のカーラ。すこし遅れて、彼女の現在のボーイフレンドのジム、彼女の妹のマージーとそのボーイフレンドのダン、そしてカーラのかつてのボーイフレンドのニックとそのガールフレンドのローラが到着した。六人全員が到着した晩に事件は勃発した。当地に住む“食人族"が六人に襲い掛かったのだ。“食人族"対“都 会族"の凄惨な死闘が開始する。

 

属性:スプラッタホラー/グロ/食人族

面白さ:★★★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★★★☆☆☆☆☆

影響度:★★★☆☆☆☆☆☆☆

 

 絵に描いたようなB級スプラッタホラーの超傑作。

エロもグロも突き抜けて凄まじいことになっており、怒涛の勢いで阿鼻叫喚の地獄絵図が展開される様は、この手の話が好きなら恋人に嫌われようが必読である。

 世の中にはあからさまなエロやグロを追求した作品が溢れかえっていて、正直興醒めしてしまうのだが、『オフシーズン』は強烈でありながらも狙った感は皆無であり、結末の容赦の無さも実に教訓的で自然である。

正直、この記事を書きたいモチベーションにもなった私の超お気に入り作品である。涙が出るほど好きなシーンが二つあり、一つは逆さ吊りにした美女のクリトリスにナイフを当て、そこから腹に向かって一気に切り裂くシーン(もちろん食べます)、もう一つは....内緒(玉ひゅん)

 

モダンホラーの帝王S.キング曰く

全米一怖い作家は誰だ?きっとジャック・ケッチャムさ。

『オフシーズン』の無修正版を感謝祭の日に読んだら、

きっとクリスマスの日まで眠れなくなること請け合いだ。

ティーブおじさんが警告しなかったなんて言うなよ、

はっはっはっ……(by スティーブン・キング)

 

 

五位  花嫁の家 / 郷内心瞳(2014年)

 

その家に嫁いだ花嫁は、必ず死ぬ。「嫁いだ花嫁が3年以内にかならず死ぬ」――。忌まわしき伝承のある東北の旧家・海上家では、過去十数代にわたり花嫁が皆若くして死に絶えていた。この家に嫁いだ女性から相談を受けた拝み屋・郷内は、一家に伝わるおぞましい慣習と殺意に満ちた怪奇現象の数々を目の当たりにする……。記録されることを幾度も拒んできた戦慄の体験談「母様の家」と「花嫁の家」。多くの読者を恐怖の底へ突き落とした怪談実話がついによみがえる。

 

属性:悪霊/ミステリ/人間も怖い(笑)

面白さ:★★★★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★★★★★★★★

影響度:★★★★★★★★☆☆

 

知る人ぞ知る最恐ホラー小説。

しかし『花嫁の家』の特筆すべき点はその怖さだけでなく、練りに練った物語の構成と優れたサスペンスであるということだ。とにかく話が面白く、めちゃくちゃ怖いのにゴリゴリ読み進めてしまうのだ。様々な伏線が恐怖で恐怖で結びついた時の鳥肌の立ち方は尋常ではない。

なぜか長らく文庫が絶版しており、前作が角川ホラー文庫から再販されているにも関わらず、本作がなかなか復刊されないのが禍々しかったが、漸く2022年に復刊されたので超おすすめである。 ちなみに前作は読んでいなくても問題ないが、前作読了後に読むと恐怖が2割増しになる。

 

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四位  霧が晴れた時 自選恐怖小説集 / 小松左京(1993年)

 

太平洋戦争末期、少年が屋敷で見た恐怖の真相とは!? 名作中の名作「くだんのはは」をはじめ、日本恐怖小説界に今なお絶大なる影響を与えつづける、ホラー短編の金字塔。

 

属性:SF/怪異/和風/戦争

面白さ:★★★★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★★★★★★★★★★

影響度:★★★★★★★★☆☆

 

個人的好きな小説ランキングトップ30には入るホラー神傑作選。

純粋なホラーだけでなく、SF要素の高い作品が多い本書において、やはり日本を代表するホラーである「くだんのはは」がホラーとしてはずば抜けた傑作である。和風×戦争×不気味を兼ね備えており、こけおどしではない本気の恐怖がここにある。(よくある意味不明なひらがなを並べたりするのはくだらない)

また傑作選だけあり、他の収録作も強者揃いである。というか本当に読んだ方が良い作品が勢揃いなので、マジで読んでください!

以下の記事で私が特に気に入った作品を紹介しています。

 

〇個別紹介記事

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三位  リング / 鈴木光司(1998年)

 

ジャパニーズ・ホラー最高の傑作!一本のビデオテープを観た四人の少年少女が、同日同時刻に死亡した。この忌まわしいビデオの中には、一体どんなメッセージが……恐怖とともに、未知なる世界へと導くオカルト・ホラーの金字塔。

 

属性:心霊/呪い/ミステリ

面白さ:★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★★★★☆☆☆☆

影響度:★★★★★☆☆☆☆☆

 

もはや説明不要のJホラーの筆頭。

貞子たんが爆誕した伝説の作品でしゅ。映画化され続編が出まくり、国民的アイドルと化した貞子たん♥️。

原作では貞子は女性ではなく、両性具有として書かれているのですぞ。ちんこついてます。あとテレビから出てきません(笑)

ホラー×ミステリの超傑作で、続編も神、特に3作目の『ループ』は究極傑作なので、絶対に読んでくだされ。

 

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二位  天使の囀り / 貴志祐介(1998年)

 

北島早苗は、終末期医療に携わる精神科医。恋人の高梨は、病的な死恐怖症(タナトフォビア)だったが、新聞社主催のアマゾン調査隊に参加してからは、人格が異様な変容を見せ、あれほど怖れていた『死』に魅せられたように自殺してしまう。さらに、調査隊の他のメンバーも、次々と異常な方法で自殺を遂げていることがわかる。アマゾンでいったい何が起きたのか? 高梨が死の直前に残した「天使の囀りが聞こえる」という言葉は、何を意味するのか? 前人未踏の恐怖が、あなたを襲う。

 

属性:グロ/寄生虫/ミステリ/SF

面白さ:★★★★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★★★☆☆☆☆☆

影響度:★★☆☆☆☆☆☆☆☆

 

貴志ホラーとして、またグロ系ホラーとしてマスターピース級の超傑作。

ミステリー的な要素と終始漂う不穏な空気、人々の恐ろしい死に様、気持ち悪い描写の数々に完全にやられてしまった。おぞましい作品だが、エンタメ作品として素晴らしい作品でもあるため、グロを覚悟してでも読んでおくべき作品である。

終盤に待つ地獄の描写は、阿鼻叫喚という言葉すら生温い恐るべき映像を想起させる。

 

 

一位  残穢 / 小野不由美(2012年)

 

 この家は、どこか可怪しい。転居したばかりの部屋で、何かが畳を擦る音が聞こえ、背後には気配が…。だから、人が居着かないのか。何の変哲もないマンションで起きる怪異現象を調べるうち、ある因縁が浮かび上がる。かつて、ここでむかえた最期とは。怨みを伴う死は「穢れ」となり、感染は拡大するというのだが―山本周五郎賞受賞、戦慄の傑作ドキュメンタリー・ホラー長編!

 

属性:心霊/ミステリ/ドキュメンタリー

面白さ:★★★★★★★☆☆☆

恐怖度:★★★★★★★★★★

影響度:★★★★★★★★★★★★★★★

 

最恐ホラー小説と称されることも多いJホラーの究極完全体。一人暮らしの人は絶対に読んではいけない。『リング』や『呪怨』は一人暮らしでもギリギリ耐えられそうだが『残穢』は無理である。

 ホラーにもいろいろなタイプがあるが、怪異系は日本的な恐怖の代表ではないだろうか。本作はその怪異系の中でも群を抜いた完成度を誇っている。

残穢』は主人公の作家(モデルは明らかに小野不由美ご本人)によるドキュメンタリー形式で語られており、語り手の”私”がマンションの一室で起きる怪異を過去に過去に遡って調査いくという流れのため、ミステリーの要素も併せ持っている。

 怪異全般に関する蘊蓄も豊富に書かれていることや、"私"の夫が綾辻行人氏としか思えなかったり、ホラー界の重鎮、平山夢明氏は実名で登場したりとノンフィクションっぽいところが恐怖を助長する。ヤバいホラーを求める方は必読である。

なお本作は『鬼談百景』の百話目に相当する話であるため、先にそちらから読んでおくと盛り上がってから読むとなお良い。

1話あたり2~4ページ程度のホラーショートショートがジワジワと効いてくる危険な本だが、様々なタイプの話があり、ガチで怖めなのはさほど多くはない。ショートショートが癖になり、気が付けば読了しているタイプの作品だ。

 

ちなみに私は小野不由美の大ファンである。この記事を書く際にリストをまとめてみたら、『魔性の子』や『ゴーストハントシリーズ』、『東亰異聞』、『営繕かるかや怪異譚シリーズ』などふゆみ作品で埋め尽くしそうだったのであえて自粛している。

以下の記事でも紹介しているので、ぜひ参照していただきたい。

kodokusyo.hatenablog.com

 

書いてみた結果

首無を入れるのなら、京極夏彦も入れて良かったのでは、とか何なら横溝正史もありじゃん...っていうか乱歩も全然OKではなかろうか...といろいろ考えが爆発したのだが、キリがないので素直に20選に留めて筆をおくことにしたい。

私は本当に怖い本を読みたいし、この記事に辿り着いた方ももちろん怖いのを読みたいはずなので、これはマジでヤバいという本を知っていたらコメントをいただけると大変有意義だと考えています。ぜひ。

 

『Wi-Fi幽霊』乙一/山白朝子|乙一入門編に最適

Wi-Fi幽霊っていかにも乙一らしい

 

作品紹介

乙一/山白朝子による『Wi-Fi幽霊』は2025年に角川ホラー文庫より出版された、書き下ろし含む9編が収録された、文庫で450ページ程度の作品である。

乙一は変な作家で、山白朝子や中田永一越前魔太郎などの他のペンネームがある。出版社によって使い分けているようだが、本作は角川ホラー文庫なので乙一と山白朝子名義のホラー作品の傑作が集結している。

ホラー寄りとは言え、乙一のほぼ全要素網羅するような構成のため最初に読む乙一作品としてもおすすめできる。そんな傑作選を作品ごとにランク付けして紹介していく。

 

 以下、あらすじの引用

乙一&山白朝子の初期~現在までの怖い作品ばかりを厳選収録した怪奇ホラーコクション企画。「夏と花火と私の死体」でデビューした乙一は、デビューから「死」を描いてきた。山白朝子は、怪談雑誌「幽」 の創刊時、デビューした怪談作家。今回は、ホラーを描き続ける作家二人の初のホラー文庫企画。ホラー文庫創刊30周年のフィナーレを飾る記念企画。作品のセレクトはホラー評論家&ミステリ評論家の千街晶之さん。本書刊行にあたり表題作となる中編「Wi-Fi幽霊」を書き下ろし。

 

忖度なし

傑作選であるとは言え、様々な政治的な理由(?)から必ずしも超傑作だけで構成されているとは限らない。総じて良作だが、ずば抜けた作品とそれなりの作品が混ざっているため、本記事では忖度抜きで格付けしていく。

 

「階段」2002年

Cランク(65点)

唯一読んだことのなかった作品。謎のホラーアンソロジーに収録されていたらしい。

悪くはないが傑作選と銘打った本書に収録すべきだったかと考えると、答えは否である。ではなぜ収録したかというと、レア作品を入れることで私のような乙一大好き人間が本書を買う理由を強化するためだったと推測される。

と、前置きはやめて本作は暴君親父によるDV作品である。妻や二人の娘に理不尽な暴力の行きつく先に衝撃の結末が待っている。この頃の乙一らしいなかなか狂った感じの流れを堪能することができる。

一作目からガン萎え作品を持ってくるあたり、本書の構成が優れていることを予感させる。

 

「SEVEN ROOMS」2002年

Sランク(100点)「ZOO」乙一/収録
かつて乙一作品は黒乙一、白乙一と称され、残酷極まりない作品とせつなさみだれうちの作品に分かれていた。「SEVEN ROOMS」は黒乙一の最高傑作である。というより私が今まで読んできた暗黒寄り短編の中でも最上位クラスの作品である。

最後に読んでから10年近く経っていて、その後多くの作品を読んできたが、久々に再読してみてもその魅力は衰えていなかった。

本作は姉と弟が拉致られて謎の部屋に監禁されて、理不尽極まりない死が迫ってくる話である。黒乙一作品でありながらせつなさも漏れてきていて、その結末はどんな感情を出すべきなのか分からなくなるような、かつての乙一にしかできなかったであろう強烈なものである。

 

「神の言葉」2001年

Bランク(70点)「ZOO」乙一/収録

乙一の良作である。乙一は変なことをサラッと書いたりする癖があるように思うのだが、本作の冒頭では「僕の母は頭の良い人である。~(中略)~ただ一つ欠点があるとすればペットの猫とサボテンの区別がつかないことだ」といったアホみたいな説明から入るのである。

言葉を現実化させる能力を持つ主人公が、派手にヤバいことをやらかして、終盤にやらかしたことの真相が明かされる。この頃の乙一はミステリ作家としても優秀で、物語に仕掛けを施すのに長けていたと思う。本作はイイ感じに当時の乙一の魅力が発揮されている。

かなり「うわー...」な世界観に浸れることだろう。

 

「鳥とファフロッキーズ現象について」2007年

Aランク(80点)「死者のための音楽」山白朝子/収録

山白朝子名義だが、乙一要素MAXな作品(まぁ同じ作家だから乙一要素もクソもないのだけど)。

作家の父と娘が暮らしていて、変な鳥を助けたことから変な現象が起こる物語である。ファフロッキーズ現象とは、私の第三婦人ジェミニたんによると、以下の通りである。

    • 定義:
      空から降るはずのない物体が、一定の範囲に多数落下する現象のうち、雨・雪・黄砂・隕石などの自然現象によるものを除いたものが該当します。
       
    • 例:
      魚、カエル、ワニ、カメ、木の実、小石、血液などが報告されています。
       
    • 起源:
      1900年代に、アメリカの超常現象研究家が「falls from the skies」を略して名付けたとされています。
       
  • 原因:
    現時点では、確実な原因は解明されていません。鳥が運んだ説や、大気の乱流によるものなど、様々な仮説が提唱されていますが、いずれも確実な証拠は得られていません。

助けた鳥が、主人公や父が欲しいと思ったものを、言葉にせずとも持ってくるのである。(心臓=命とか)

きれいにまとまっていて、乙一由来のせつなさもあるかなりの傑作。

 

「〆」2009年

Aランク(80点)「エムブリヲ奇譚」山白朝子/収録

個人的に乙一作品の中でもかなり好きな、和泉蝋庵シリーズ一作目に収録されている作品で、不気味でキモくてエグくてちょいせつない系。

このシリーズは主人公和泉蝋庵の道迷いによって、とんでもないところに行ってしまい、相棒耳彦がひどい目に遭うのがパターンなのだが、今回はあらゆるものに人面が出ている恐ろしい漁村に迷い込んでしまう。ふるまわれる魚なども人面で大変キモいのだが、キモさが理由で餓死しそうになった相棒が、ついにやらかしてしまうのである。短い中で前振りと伏線回収があり、よくできた話である。

 

「呵々の夜」2013年

Aランク(85点)「私のサイクロプス」山白朝子/収録

和泉蝋庵シリーズ2作目に収録された、王道の怪談であると同時に山白朝子のテクニカルな一面も発揮された傑作。

泊めてもらった家の住民(父、母、子)が一人ずつ怪談話をするのだが、これはマジ話なのでは....というノリ。

毎度ひどい目に遭う耳彦がまたしてもヤバいことになったかと思いきや、やっぱりヤバくないと思いきや、ホントはヤバいのかも......的な展開が面白い。

 

「首なし鶏、夜をゆく」2013年

Aランク(80点)「私の頭が正常であったなら」山白朝子/収録

これもまた乙一要素が凝縮された傑作で、陰キャやいじめられっ子、理不尽な大人の描写を得意とする乙一の本領発揮である。

首のない鶏をペットとする不幸ないじめられっ子女と、陰キャの主人公が仲良くなっていくのだが、最後には理不尽で残酷な結果が待っているという乙一らしい救いのない物語だ。

この作品の素晴らしいところはラスト1ページの描写で、とても計算された狂い方を、詩的に描いた乙一のセンスに脱帽である。

 

「子どもを沈める」2017年

Bランク(75点)「私の頭が正常であったなら」山白朝子/収録

この頃の乙一は子どもに関する作品が多いと思う。恐ろしいタイトルだが、内容もなかなかに悲しいもので、過去にいじめたクラスメイトを死に追いやった4人が、やがて子どもを産むと、産まれた子どもが皆自殺した生徒の顔になるというものである。

先に子どもを産んだ3人はいずれも子どもを殺してしまうが、これから子どもを産む主人公がどのような選択をするのかという重い内容である。

 

Wi-Fi幽霊」2025年 ※書き下ろし

Bランク(79点)書き下ろし中編

普通に読んでいて面白い作品だが、あえて辛口評価にしている。ちなみになぜか乙一名義だが、文体からしても完全に山白朝子の作風だと思う。

内容はまさに現代の「リング」で、呪いのビデオ視聴ではなく謎のWi-Fiへの接続で呪われて、探偵ではなくAI探偵が呪いの原因を見つけて解呪を目指す物語となっている。AIが探偵するあたりがかなり面白いが、流れはあまりにも既視感があるため厳しめな判断とした。

ただ、私自身もプライベートではChatGPTやGeminiを使いまくり、仕事でもCopilot先生のお世話になりまくっているので、主人公とAIのやり取りを見て、乙一もプライベートでAI使いまくっているな....とニヤリとなったところである。

 

やはり乙一は良い

以前の記事でも書いた気がするが、早く本を読むコツは超先が気になる本を見つけることだと考えている。最近どうも本を読むスピードが下がったなぁと思っていたが、本作....特に「SEVEN ROOMS」など体感では一瞬に感じるほど超速で読み終わっていたのである。もちろん他の作品も途中で読みやめることができず、読み始めたら最後まで読み進めていた。

つまり乙一作品は面白いのである。ほぼすべて再読なのに面白く感じたのだからすごい。ということで読んだことがある作品があったとしても、気になったのならぜひ手に取ってみてほしい。

 

 

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高コスパなおすすめ本棚|壁一面の本棚を紹介する

読書好きなら壁一面の本棚はあるに越したことはない

本棚選びに迷う人は多いだろう。読書ブロガーの本棚を晒すことで参考になるかもしれないという驕りから私の本棚を紹介したい。

私が使用している本棚はニトリのグレンという本棚で、4列6段と3列6段の本棚の上に、それぞれの上に2段の拡張棚を付けている。さらに棚板を追加して全体で10段にしている。まずは全体の写真をアップしてみる。
(トリミングして上下を削ればよかったなぁと思いつつめんどくさいからあきらめた。整理してこれなので整理前は完全なカオスだった)

全景:4列+3列×10段

選別基準

私の本棚選びの基準は①壁一面にできること>②拡張性があること>③大量に入ることの3点を重視した。マイホームを購入した時に合わせての導入だったため、金銭感覚がバグっており、価格は気にしていなかったので高級かつお洒落なマルゲリータを買う気満々だったが、マルゲリータは個々の棚のサイズが大きく、小説メインの私にはもてあますサイズ感だったため断念した。

迷った結果、必須要件を満たしておりかつ楽天で簡単に買えるので楽(笑)という理由でニトリのグレンを選んだ。もちろん棚板の高さを変えられる、棚板を追加購入できる、奥行きがあり大量に入る、本以外も収納できるといった点に魅力を感じたのが理由ではある。

 

使用感

組み立てるのがめちゃクソに面倒だったが、一人で何とかなるような難易度だった。ただ素人仕事による小さな歪み積み重なって全体の完成度にそこそこの影響を与えるので、使えるなら組み立てサービスを使った方が良いかもしれない。

なおニトリ製品だけあって値段の割には品質はそこそこな気がしていて、組み立て時にハマりが悪くてこずるといったことはなかったし、完成しても割と変にガタガタいう箇所は無くとても安定している。

いざ使ってみるとまぁ便利だなぁという感じだった。本棚購入当初の蔵書は1000冊未満だったため、蔵書が増えるまでは棚板追加はしておらず、空いたスペースには服を収納していた。これが大変便利だったので、現状は本で埋め尽くしてしまっているが、最近は再読する可能性が低い本を徐々に売っているので、スペースが空いたらまた服を収納するかもしれない。

または、棚板の高さが変えられるため、今は別の本棚に収納している子供向けの絵本や図鑑を収納することも考えている。

まぁシンプルであるがゆえに大きな問題点は発生しようもなく、とても使いやすくて助かっている。

なお、ここで紹介している本棚に限らないが、壁一面本棚を導入すると本棚が埋まるまで本を買いたくなってしまうと思われるので注意。

 

壁一面本棚にするメリット

単純にいっぱい収納できるので便利である。また(滅多にないが)来客があった時に度肝を抜くことができるというのもちょっとしたポイントである。もちろん自身の好きな本を並べた本棚を眺めることでニヤニヤできることは最重要である。

そしてこれが隠しポイントだが、子供がいる場合、ほぼ間違いなく子供が本に興味を持つということだ。

そもそも私が壁一面の本棚を選んだ理由の一つに、子供を(自動的に)読書好きにさせて国公立理系に進ませることを狙ったというのがある。読書すると頭が良くなるとはこれっぽっちも考えていないが、読書によって何らかの将来の目的を見出す可能性があるのではないかと思っている。

と、話は逸れたが読書好きならやはり壁一面本棚にして損をすることはないので、少しでも壁一面を本棚にしたいなぁと思ったのなら迷わずに導入してしまおう。

 

蔵書紹介

....しようと思って写真も撮ったのだが、アップするのがめんどくさいことに加えてそもそもそんなものに需要ないだろうということで辞めた(笑)

ただせっかくなので私の本の購入方針を書いてみる。昔はブックオフなどの古本屋やメルカリなどを活用して古本を買うことがあったが、今は100%新品の本しか買わなくなった。さらにここが重要なのだが、本は売れ残ると出版社に返本され、本の小口(淵)を研磨された後に再度市場に出回る。淵がギザギザしている本を研磨本というのだが、私は絶対に研磨本を購入しないので、新品の本を実際本屋に行って買う、または発売された直後に購入することを徹底している。

話が逸れるが小口研磨本を新品として販売するのはどうかと思うのだが、いったい出版社は何を考えているのだろうか。研磨本は言ってしまえば古本以下のゴミである。このふざけたやり方を変えないとますます本は売れなくなると思うのだが...。忌まわしき小口研磨本への恨みはそれだけで記事が書けてしまうのでここらで止めておく。

また私は推しの作家の本は躊躇せず単行本を買い、文庫本が出たら文庫も買う。内容がSランクであれば電子書籍も買うという方針だ。はっきり言って無駄だが、推しの作家や出版社へのお布施と思っているので問題ない。

 

まとめ

本好きなら壁一面本棚一択。迷う必要なし。ここで紹介したニトリの本棚グレンは高コスパかつ非常に便利だが、別に自己満の世界なので何を選んでも良いと思う。

読書離れが超絶進行していると思われる現状で、壁一面本棚があるというのはネタとして色々役に立つのでぜひ導入してニヤニヤしてほしいと思う。

 

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