神本を求めて

小説を読みまくって面白い本を見つけたら紹介するブログ

最強に面白いおすすめ小説|最高の神本リスト

神本を求めて

そこでSFやファンタジー、ホラー要素のあるミステリーを好む私がこれまでに読んで素晴らしいと思った作品を挙げていく。

趣味が近そうな方の参考になれば幸いである。

 

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神本を求めて本を積みまくる日々

 

1. 星を継ぐもの / J.P.ホーガン(1977年)

 

月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見された……。ハードSFの新星が一世を風靡した出世作

 

「月で5万年前の真紅の宇宙服をまとった死体が見つかった。」

こんな魅力的な"謎"がある時点で本作が傑作であることは確定している。

しかも月の人の謎を解明していく最中、木星の衛生ガニメデで2500年前の宇宙船が発見されるというさらなるミステリー。

本作は三部作となっており、1作目『星を継ぐもの』で月の人間ことルナリアンの謎、2作目『ガニメデの優しい巨人』でガニメデの宇宙人の謎、3作目『巨人たちの星』に至っては宇宙戦争の予感すら彷彿させる。

1作目だけでも一応の完結はしているので、古い作品だからと身構えず読んでみてほしい。最高のSFとミステリーが待っている。

星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)

 

 

2. クリムゾンの迷宮 / 貴志祐介(1999年)

 

藤木芳彦は、この世のものとは思えない異様な光景のなかで目覚めた。視界一面を、深紅色に濡れ光る奇岩の連なりが覆っている。ここはどこなんだ? 傍らに置かれた携帯用ゲーム機が、メッセージを映し出す。「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された……」それは、血で血を洗う凄惨なゼロサム・ゲームの始まりだった。『黒い家』で圧倒的な評価を得た著者が、綿密な取材と斬新な着想で、日本ホラー界の新たな地平を切り拓く、傑作長編。

 

 「面白い小説を教えて」と漠然と聞かれた時に紹介する本の筆頭である。

圧倒的なエンタメ性を持つ至高のデスゲーム作品であり、まったく無駄がなく最初から最後までめちゃくちゃ面白いのがポイントだ。

貴志作品に共通する高いリーダビリティと、ちょうど良いページ数により普段小説を読まない人にも自信をもっておすすめできる。

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

  • 作者:貴志 祐介
  • 発売日: 1999/04/09
  • メディア: 文庫
 

 

3. 暗いところで待ち合わせ / 乙一(2002年)

 

視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。職場の人間関係に悩むアキヒロ。駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。奇妙な同棲生活が始まった――。

 

これを読んで批判する人はいないのではないかと思うくらい神がかりの傑作である。

こんな作品が書けるのは若かりし頃の乙一くらいのものだろう。天才が全盛期に発表したセンスの塊である。
殺人犯と思われる男が盲目の女の家にこっそり潜伏するという変態的なシチュエーションから大きな感動が生み出される。

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

  • 作者:乙一
  • 発売日: 2002/04/01
  • メディア: 文庫
 

 

4. 死神の制度 / 伊坂幸太郎(2005年)

 

こんな人物が身近に現れたら、彼/彼女は死神かもしれません──(1)CDショップに入りびたり(2)苗字が町や市の名前と同じ(3)会話の受け答えが微妙にずれていて(4)素手で他人に触ろうとしない。1週間の調査の後、死神は対象者の死に「可」「否」の判断を下し、「可」ならば翌8日目に死は実行される。ただし、病死や自殺は除外。まれに死神を感じる人間がいる。──クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う、6つの人生。

 

 ここまでセンスの良い小説には滅多にお目にかかれないだろう。

伊坂という作家がどうして売れっ子なのかが一発で理解できる作品であり、私は売れっ子というだけで何となく伊坂作品を避けていたが、読了後はすぐに他の伊坂作品を漁っている自分がいた。

ミステリーとしてもヒューマンドラマとしても超一級品である。

死神の精度 (文春文庫)

死神の精度 (文春文庫)

 

 

5. 占星術殺人事件 / 島田荘司(1981年)

 

密室で殺された画家が遺した手記には、六人の処女の肉体から完璧な女=アゾートを創る計画が書かれていた。彼の死後、六人の若い女性が行方不明となり肉体の一部を切り取られた姿で日本各地で発見される。事件から四十数年、未だ解かれていない猟奇殺人のトリックとは!? 名探偵・御手洗潔を生んだ衝撃のデビュー作、完全版! 二〇一一年十一月刊行の週刊文春臨時増刊「東西ミステリーベスト一〇〇」では、日本部門第三位選出。

 

 学生時代にこの本に出会っていたら人生が変わっていたと思う。

トリックは『金○○○年○○件○』の某事件で盛大にネタバレされているが、それでも半端なく楽しめたのが本書の凄まじいところ。

否、メイントリックをネタバレされたことによって新たなミスリードを生むのである。

平成以降に生まれた人であればパクった作品の存在を知らないと思われるので100%楽しむことができるだろう(羨ましい....)

最強の推理小説であるだけでなく、物語としてもとても楽しめるのも素晴らしい。

占星術殺人事件 改訂完全版 (講談社文庫)

占星術殺人事件 改訂完全版 (講談社文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 2013/08/09
  • メディア: 文庫
 

 

6. クラインの壺 / 岡嶋二人(1989年)

 

現実も真実も崩れ去る最後で最恐の大傑作。200万円で、ゲームブックの原作を謎の企業「イプシロン・プロジェクト」に売却した上杉彰彦。その原作をもとにしたヴァーチャルリアリティ・システム『クライン2』の制作に関わることに。美少女・梨紗と、ゲーマーとして仮想現実の世界に入り込む。岡嶋二人の最終作かつ超名作。そのIT環境の先見性だけでも、刊行年1989年という事実に驚愕するはず。

 

 最強の徹夜本であり読み始めたら最後、読了まで何も手につかなくなるだろう。

伝説の作家ユニット岡嶋二人名義の作品ではあるが、実質はコンビの一人井上夢人氏の作品と言われるSF×ミステリーの至高の傑作である。

1989年に刊行され、VRをメインテーマにしているにも関わらず今読んでもまったく古臭さをまるで感じさせないのは、著者の先見の明と圧倒的な力量だろう。

またSFなのに異常に読みやすいのも高ポイントだ。

クラインの壺 (新潮文庫)

クラインの壺 (新潮文庫)

 

 

7. コンビニ人間 / 村田沙耶香(2016年)

 

「普通」とは何か?
現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作
36歳未婚、彼氏なし。コンビニのバイト歴18年目の古倉恵子。
日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、
「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる――。
「いらっしゃいませー!!」
お客様がたてる音に負けじと、今日も声を張り上げる。
ある日、婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて、
そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい、と突きつけられるが……。

 

 私は失礼ながら芥川賞=偉い人たちにつまらない本であると認定された不名誉な賞だと考えていたのだが、本作を読んだことでそれは誤りだと気付かされた。

クレイジー沙耶香と称されるキチ〇イ変態作家による、変態成分が控えめでありながらもキレまくりの大傑作。これは全人類必読の書だ。

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

 

 

8. 秘密 / 東野圭吾(1998年)

 

運命は、愛する人を二度奪っていく。
自動車部品メーカーで働く39歳の杉田平介は妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美と暮らしていた。長野の実家に行く妻と娘を乗せたスキーバスが崖から転落してしまう。 妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。 その日から杉田家の切なく奇妙な“秘密"の生活が始まった。 外見は小学生ながら今までどおり家事をこなす妻は、やがて藻奈美の代わりに 新しい人生を送りたいと決意し、私立中学を受験、その後は医学部を目指して共学の高校を受験する。年頃になった彼女の周囲には男性の影がちらつき、 平介は妻であって娘でもある彼女への関係に苦しむようになる。

 

 稀代の売れっ子作家が超売れるようになるきっかけになった作品だけあって、万人が楽しむことができる作品である。

超傑作量産マシーン東野圭吾の著書は100冊を超える勢いであるだけに、「どれから読めばいいんだ?」という疑問は多いと思う。初期作品は万人向けとは言いがたい推理小説が多く、代表作の中にはシリーズ物も多い。

本作を選べばまず間違いはないと断言できる。

秘密 (文春文庫)

秘密 (文春文庫)

 

 

9. 六番目の小夜子 / 恩田陸(1992年)

 

 津村沙世子――とある地方の高校にやってきた、美しく謎めいた転校生。高校には十数年間にわたり、奇妙なゲームが受け継がれていた。三年に一度、サヨコと呼ばれる生徒が、見えざる手によって選ばれるのだ。そして今年は、「六番目のサヨコ」が誕生する年だった。学園生活、友情、恋愛。やがては失われる青春の輝きを美しい水晶に封じ込め、漆黒の恐怖で包みこんだ、伝説のデビュー作。

 

 恩田陸のデビュー作にしてすべてが詰まった一冊。

様々なジャンルの作品を上梓する多才な恩田陸だが、本作はホラーやファンタジー、ミステリーにとどまらず、多ジャンルにまたがった作品となっている。
作中の文化祭の演劇のシーンは特に素晴らしく、恩田女史の高い筆力に感銘を受けると同時に、完全に小説の世界に吸い込まれてしまった。
真のホラーとはこんな作品のことをいうのだろう。

六番目の小夜子 (新潮文庫)

六番目の小夜子 (新潮文庫)

  • 作者:陸, 恩田
  • 発売日: 2001/01/30
  • メディア: 文庫
 

 

10. 十角館の殺人 / 綾辻行人(1987年)

 

十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の7人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける!

 

 超凄い。という残念な感想しか出ないほど犯人とトリックに感激してしまった。

小説でしか味わえない楽しみの一つに映像化が不可能という要素があるのだが、本作は映像化不可能トリックの中でも最高の完成度を誇っている。

コテコテのド本格推理小説であるため、100年読み継がれるであろう普遍的な傑作。 

〇『館シリーズ』紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

  • 作者:綾辻 行人
  • 発売日: 2007/10/16
  • メディア: 文庫
 

 

11. 魔性の子 / 小野不由美(1991年)

 

どこにも、僕のいる場所はない──教育実習のため母校に戻った広瀬は、高里という生徒が気に掛かる。周囲に馴染まぬ姿が過ぎし日の自分に重なった。彼を虐(いじ)めた者が不慮の事故に遭うため、「高里は祟(たた)る」と恐れられていたが、彼を取り巻く謎は、“神隠し”を体験したことに関わっているのか。広瀬が庇おうとするなか、更なる惨劇が……。心に潜む暗部が繙(ひもと)かれる、「十二国記」戦慄の序章。

 

 国内ファンタジーの最高峰『十二国記』の1作目ではあるが、シリーズの番外編に位置する作品となっていてこの1冊で話が完結している。

したがって十二国記には興味が無くても面白いホラー小説に興味があるような方にぜひおすすめしたい。数々の傑作ホラーを生み出している小野不由美女史の作品の中でも、エンタメ要素が高めで素晴らしい内容となっている。

魔性の子 十二国記 0 (新潮文庫)

魔性の子 十二国記 0 (新潮文庫)

 

 

12.  月の影 影の海 / 小野不由美(1992年)

 

「お捜し申し上げました」──女子高生の陽子の許に、ケイキと名乗る男が現れ、跪く。そして海を潜り抜け、地図にない異界へと連れ去った。男とはぐれ一人彷徨(さまよ)う陽子は、出会う者に裏切られ、異形(いぎょう)の獣には襲われる。なぜ異邦(ここ)へ来たのか、戦わねばならないのか。怒濤(どとう)のごとく押し寄せる苦難を前に、故国へ帰還を誓う少女の「生」への執着が迸(ほとばし)る。

 

 事実上の『十二国記』1作目であり、現在アニメに溢れかえっている異世界ものの頂点に君臨する完成度である。

 女子高生が妖しいイケメンに連れられて血も涙もない異世界に放り込まれて、まさに地獄のような旅を余儀なくされる様は、人によっては勇気をもらえることだろう。

 練りに練られた設定は話が進んでも破綻することがないので、『魔性の子』や本作を書く前に一体どれだけ本気で妄想したんだろう....と若き日の小野不由美女史に聞いてみたいものである。

 

 

十二国記の紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

月の影  影の海 (上) 十二国記 1 (新潮文庫)

月の影 影の海 (上) 十二国記 1 (新潮文庫)

 

 

13. 今夜、すべてのバーで / 中島らも(1991年)

 

薄紫の香腺液の結晶を、澄んだ水に落とす。甘酸っぱく、すがすがしい香りがひろがり、それを一口ふくむと、口の中で冷たい玉がはじけるような・・・・・・。アルコールにとりつかれた男・小島容(いるる)が往き来する、幻覚の世界と妙に覚めた日常そして周囲の個性的な人々を描いた傑作長篇小説。吉川英治文学新人賞受賞作。

 

酒とドラッグにおぼれた天才作家・中島らもによる、ほぼ実話に近いノンフィクション風な私小説である。

私はこの著者はただの変な人だと思っていたのだが、作品を読めば読むほど圧倒的な知性とセンスを感じて驚ろかされるのだが、本作はアルコールについて相当な研究がなされたうえで描かれており、センス×蘊蓄×実体験という要素が掛け合わされたことで素晴らしい作品になっている。

酒好きは飲みながら読もう。そしてやめよう。

今夜、すベてのバーで (講談社文庫)

今夜、すベてのバーで (講談社文庫)

  • 作者:中島 らも
  • 発売日: 1994/03/04
  • メディア: 文庫
 

 

14. 異邦の騎士 / 島田荘司(1988年)

 

失われた過去の記憶が浮かび上がり、男は戦慄する。自分は本当に愛する妻子を殺したのか。やっと手にした幸せな生活に忍び寄る新たな魔手。名探偵・御手洗潔の最初の事件を描いた傑作ミステリー『異邦の騎士』に著者が精魂こめて全面加筆した改訂完全版。幾多の歳月を越え、いま異邦の扉が再び開かれる。

 

 稀代の推理作家・島田荘司の事実上の処女作である。

ミステリーなどどうでもいいくらいストーリーが良く、恋愛小説や青春小説(アラサーではあるが)として素晴らしい内容である。
前作まで読み進めてきているのならラストは号泣することになるだろう。 

 シリーズもので他の作品を読んでいないと魅力が半減する作品はなるべく紹介しないようにしたいが、『異邦の騎士』は『占星術殺人事件』を読むだけでも大丈夫なので強くお勧めしたい。

 ちなみに御手洗シリーズは『異邦の騎士』以外の作品は順番を気にしなくてもあまり影響がない。

異邦の騎士 改訂完全版

異邦の騎士 改訂完全版

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 1998/03/13
  • メディア: 文庫
 

 

15. 天使の囀り / 貴志祐介(1998年)

 

北島早苗は、終末期医療に携わる精神科医。恋人の高梨は、病的な死恐怖症(タナトフォビア)だったが、新聞社主催のアマゾン調査隊に参加してからは、人格が異様な変容を見せ、あれほど怖れていた『死』に魅せられたように自殺してしまう。さらに、調査隊の他のメンバーも、次々と異常な方法で自殺を遂げていることがわかる。アマゾンでいったい何が起きたのか? 高梨が死の直前に残した「天使の囀りが聞こえる」という言葉は、何を意味するのか? 前人未踏の恐怖が、あなたを襲う。

 

 貴志ホラーとして、またグロ系ホラーとして最高傑作だと思う。

ミステリー的な要素と終始漂う不穏な空気、人々の恐ろしい死に様、気持ち悪い描写の数々に完全にやられてしまった。

おぞましい作品だが、エンタメ作品として素晴らしい作品でもあるため、グロを覚悟してでも読んでおくべき作品である。

天使の囀り (角川ホラー文庫)

天使の囀り (角川ホラー文庫)

  • 作者:貴志 祐介
  • 発売日: 2000/12/08
  • メディア: 文庫
 

 

16. 魍魎の匣 / 京極夏彦(1995年)

 

箱を祀る奇妙な霊能者。箱詰めにされた少女達の四肢。そして巨大な箱型の建物――箱を巡る虚妄が美少女転落事件とバラバラ殺人を結ぶ。探偵・榎木津、文士・関口、刑事・木場らがみな事件に関わり京極堂の元へ。果たして憑物(つきもの)は落とせるのか!?日本推理作家協会賞に輝いた超絶ミステリ、妖怪シリーズ第2弾。

 

 アホみたいに分厚い本が並ぶ京極夏彦先生の百鬼夜行シリーズの中でも、1,2位を争う尋常ではない傑作であり、SFや怪奇幻想要素を持った超絶ミステリーである。

冒頭の美しい文章は芸術的であり、文章を読んで心が震えた数少ない作品である。

これを読んで京極先生の天才っ振りに呆れてしまったものだ。

訳が分からないほど謎まみれなのに最後は見事にすべての伏線を回収。
腰を抜かすほど猟奇的なので注意。

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

  • 作者:京極 夏彦
  • 発売日: 1999/09/08
  • メディア: 文庫
 

 

17. 失はれる物語 / 乙一(2003年)

 

目覚めると、私は闇の中にいた。交通事故により全身不随のうえ音も視覚も、五感の全てを奪われていたのだ。残ったのは右腕の皮膚感覚のみ。ピアニストの妻はその腕を鍵盤に見たて、日々の想いを演奏で伝えることを思いつく。それは、永劫の囚人となった私の唯一の救いとなるが……。表題作のほか、「Calling You」「傷」など傑作短篇5作とリリカルな怪作「ボクの賢いパンツくん」、書き下ろし「ウソカノ」の2作を初収録。

 

 天才・乙一によるせつなさみだれうち

せつない作風と短編を得意とする乙一だが、本作はせつない短編のベスト盤だけあって一つ一つの物語の完成度が桁外れである。

表題作含めせつなさに溢れた至高の名作を体感してほしい。

失はれる物語 (角川文庫)

失はれる物語 (角川文庫)

  • 作者:乙一
  • 発売日: 2006/06/24
  • メディア: 文庫
 

 

18. プラスティック / 井上夢人(1998年)

 

54個の文書ファイルが収められたフロッピイがある。冒頭の文書に記録されていたのは、出張中の夫の帰りを待つ間に奇妙な出来事に遭遇した主婦・向井洵子が書きこんだ日記だった。その日記こそが、アイデンティティーをきしませ崩壊させる導火線となる! 謎が謎を呼ぶ深遠な井上ワールドの傑作ミステリー。

 

 最強の一気読み小説の筆頭候補で徹夜の覚悟が必要である。ミステリー作品だが仕掛けられたトリックは分かってしまうかもしれない。

しかし本作の魅力はトリックが分かろうが分かるまいが増減するものではない。ただひたすら面白く、そしてなかなか恐ろしい作品なのだ。

最後まで読み終えた時、本作の圧倒的な完成度に驚愕することになる。

プラスティック (講談社文庫)

プラスティック (講談社文庫)

 

 

19. 殺人鬼 覚醒篇(1990年)

 

90年代のある夏、双葉山に集った〈TCメンバーズ〉の一行は、突如出現した殺人鬼により、一人、また一人と惨殺されてゆく……いつ果てるとも知れない地獄の饗宴。その奥底に仕込まれた驚愕の仕掛けとは?

 

 『館シリーズ』で有名な綾辻行人氏ではあるが、個人的には本作が最高傑作だと思っている。最も好きなスプラッタホラーでもある。

13日の金曜日』のような王道のスプラッタ全開ホラーかと思いきや、さすがは新本格ムーブメントの筆頭。ミステリーとしての仕掛けもかなり強烈な1冊。エロ注意、グロ注意。続編はさらに大変なことになっている。

殺人鬼  ‐‐覚醒篇 (角川文庫)

殺人鬼 ‐‐覚醒篇 (角川文庫)

  • 作者:綾辻 行人
  • 発売日: 2011/08/25
  • メディア: 文庫
 

 

 ⇩アホみたくグロさとエグさに特化した鬼畜の続編。鬼。

殺人鬼  ‐‐逆襲篇 (角川文庫)

殺人鬼 ‐‐逆襲篇 (角川文庫)

  • 作者:綾辻 行人
  • 発売日: 2012/02/25
  • メディア: 文庫
 

 

20. 八つ墓村 / 横溝正史(1950年)

 

戦国の頃、三千両の黄金を携えた八人の武者がこの村に落ちのびた。だが、欲に目の眩んだ村人たちは八人を惨殺。その後、不祥の怪異があい次ぎ、以来この村は“八つ墓村"と呼ばれるようになったという――。大正×年、落人襲撃の首謀者田治見庄左衛門の子孫、要蔵が突然発狂、三十二人の村人を虐殺し、行方不明となる。そして二十数年、謎の連続殺人事件が再びこの村を襲った……。現代ホラー小説の原点ともいうべき、シリーズ最高傑作! !

 

何度も映像化されているため誰もが名前だけは知っている作品だと思うが、意外に原作を読んでいる方は多くないのではないだろうか。

映像作品の影響でおどろおどろしい先入観を持っている方が多いと思われるが、映像化作品は原作に忠実ではないようで、実際はおどろおどろしさはほとんどない。

それどころかこれでもかというほどの萌え要素が詰め込まれているので、萌え豚は何がなんでも読もう。

八つ墓村 (角川文庫)

八つ墓村 (角川文庫)

  • 作者:横溝 正史
  • 発売日: 1971/04/26
  • メディア: 文庫
 

 

21. 99%の誘拐 / 岡嶋二人(1988年)

 

岡嶋二人の代表作!末期ガンに冒された男が、病床で綴った手記を遺して生涯を終えた。そこには8年前、息子をさらわれた時の記憶が書かれていた。そして12年後、かつての事件に端を発する新たな誘拐が行われる。その犯行はコンピュータによって制御され、前代未聞の完全犯罪が幕を開ける。第10回吉川英治文学新人賞受賞作にして、2005年度「この文庫がすごい!」第1位のリバイバルヒットになり、改めてオカジマフタリの名を知らしめた作品でもある。

 

 SFに近いほどのハイテクを駆使した誘拐もので、"人攫いの岡嶋"と称されるほど誘拐モノが得意な岡嶋作品の中でも最高傑作という意見も多い作品。

刊行されたのが1988年とは到底考えられないほどのハイテク犯罪は桁が違いの完成度であり、時代がやっと岡嶋二人に追いついたといったところだろうか。

物語としても非常に面白く非の打ち所の無い1冊である。

99%の誘拐 (講談社文庫)

99%の誘拐 (講談社文庫)

  • 作者:岡嶋 二人
  • 発売日: 2004/06/15
  • メディア: 文庫
 

 

22. 暗闇坂の人喰いの木 / 島田荘司(1990年)

 

さらし首の名所・暗闇坂にそそり立つ樹齢2000年の大楠。この巨木が次々に人間を呑み込んだ? 近寄る人間たちを狂気に駆り立てる大楠の謎とは何か? 信じられぬ怪事件の数々に名探偵・御手洗潔が挑戦する。だが真相に迫る御手洗も恐怖にふるえるほど、事件は凄惨を極めた。本格ミステリーの騎手が全力投球する傑作。

 

 クララが死んだ!!

正直言ってこんな凄まじいミステリーに出会えるとは夢にも思っていなかったレベルの超絶傑作である。

ミステリーであると同時に非常に恐ろしいホラー小説でもあり、さらに冒険小説としての楽しさを合わせ持っているという規格外の作品で、物語と魅力的な謎に惹かれてただひたすらページをめくってしまった。

すさまじくグロい作品でもあるので注意が必要だ。

 

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

暗闇坂の人喰いの木 (講談社文庫)

暗闇坂の人喰いの木 (講談社文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 1994/06/06
  • メディア: 文庫
 

 

23. 白夜行 / 東野圭吾(1999年)

 

1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々と浮かぶが、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と「容疑者」の娘・西本雪穂――暗い目をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別の道を歩んでいく。二人の周囲に見え隠れする、いくつもの恐るべき犯罪。だが、証拠は何もない。そして19年……。伏線が幾重にも張り巡らされた緻密なストーリー。壮大なスケールで描かれた、ミステリー史に燦然と輝く大人気作家の記念碑的傑作。


恐るべき傑作であり、東野圭吾に完全に土下座することになった作品である。

長いけど読んで。としか言いようのない神傑作。

構成といい主役二人が一度も主観にならない書き方といい超絶技巧である。

これを読まずに生きていくなんて人生の損失だと言っても過言ではない。

白夜行 (集英社文庫)

白夜行 (集英社文庫)

  • 作者:東野 圭吾
  • 発売日: 2002/05/25
  • メディア: 文庫
 

 

24. アヒルと鴨のコインロッカー / 伊坂幸太郎(2003年)

 

大学入学のため引っ越してきたアパートで、最初に出会ったのは黒猫、次が悪魔めいた長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。標的は――たった一冊の広辞苑。僕は訪問販売の口車に乗せられ、危うく数十万円の教材を買いそうになった実績を持っているが、書店強盗は訪問販売とは訳が違う。しかし決行の夜、あろうことか僕はモデルガンを持って、書店の裏口に立ってしまったのだ! 四散した断片が描き出す物語の全体像とは? 注目の気鋭による清冽な傑作。第25回吉川英治文学新人賞受賞作。

 

 伊坂幸太郎のミステリー作家としての本領が発揮された作品で、広義の推理小説としてとても優れた作品であり、伊坂作品の中でも本格推理度が高いとされる1冊。

 いかにもつまらなそうなタイトル(←ごめんなさい)に読む気が失せるかもしれないが、読んでみればミステリーとしての完成度や物語の面白さに圧倒されるだろう。

 なお動物虐待描写がかなりキツいので苦手な方は要注意。

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

 

 

25. 新世界より / 貴志祐介(2008年)

 

ここは病的に美しい日本(ユートピア)。
子どもたちは思考の自由を奪われ、家畜のように管理されていた。
手を触れず、意のままにものを動かせる夢のような力。その力があまりにも強力だったため、人間はある枷を嵌められた。社会を統べる装置として。
1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖(かみす)66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄(しめなわ)で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力(念動力)」を得るに至った人類が手にした平和。念動力(サイコキネシス)の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた……隠された先史文明の一端を知るまでは。

 

宇宙最強に面白い小説であり、我が生涯のベスト作品である。

ファンタジーでSFでミステリーでホラーでもある神作家・貴志祐介の最終兵器。

数々の傑作を上梓している貴志だが、本作は著者の全身全霊が込められた究極の完成度を誇っている。

文庫で1500ページにもおよぶ超大作でありながら、まったくと言っていいほどダレるところはなく、ひたすら睡眠時間を削られまくったのは良い思い出だ。

 

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

新世界より 上中下巻セット

新世界より 上中下巻セット

  • メディア: セット買い
 

 

26. 水晶のピラミッド / 島田荘司(1991年)

 

エジプト・ギザの大ピラミッドを原寸大で再現したピラミッドで起こる怪事。冥府の使者アヌビスが5000年の時空を超えて突然甦り、空中30メートルの密室で男が「溺死」を遂げる! アメリカのビッチ・ポイントに出現した現代のピラミッドの謎に挑む名探偵・御手洗潔。壮大なテーマに挑んだ本格ミステリーの大作。

 

限界突破してしまったミステリー小説。

推理小説という枠を超えて、純粋なミステリーを提供している。

本筋に関係あるのかどうかも分からない、古代エジプトタイタニックの挿話が200ページ近くあるのだが、そこがものすごく面白い。

こんな小説、島田御大にしか書けません。

水晶のピラミッド (講談社文庫)

水晶のピラミッド (講談社文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 1994/12/07
  • メディア: 文庫
 

 

27. ガダラの豚 / 中島らも(1993年)

 

アフリカの呪術医研究の第一人者、大生部多一郎は、テレビの人気タレント教授。超能力ブームで彼の著者「呪術パワーで殺す!」はベストセラーになった。しかし、妻の逸美は8年前の娘・志織のアフリカでの気球事故での死以来、神経を病んでいた。そして奇跡が売り物の新興宗教にのめりこんでしまった。逸美の奪還をすべく、大生部は奇術師ミラクルと組んで動き出す。

 

 娯楽小説の最終到達点と言っても過言では無いほど徹底的に面白い作品である。

ただ面白いだけでなく、超能力や呪術といった超自然的なことについてしっかりと研究された上で書かれているため、ブッ飛んだ内容にも関わらず確かなリアリティがあり、読者自身の知識も増える。

最強に面白い小説が読みたいなら本作を読んでおけばまず間違いない。

ガダラの豚(集英社文庫) 全3冊セット
 

 

28. 絡新婦の理 / 京極夏彦(1996年)

 

当然、僕の動きも読み込まれているのだろうな――2つの事件は京極堂をしてかく言わしめた。
房総の富豪、織作(おりさく)家創設の女学校に拠(よ)る美貌の堕天使と、血塗られた鑿(のみ)をふるう目潰し魔。連続殺人は八方に張り巡らせた蜘蛛の巣となって刑事・木場らを眩惑し、搦め捕る。中心に陣取るのは誰か?シリーズ第5弾。

 

個人的には『百鬼夜行シリーズ』の最高傑作であり、ミステリー小説の中でも最も複雑かつ緻密に描かれた美女だらけの超絶ミステリー。

とにかく複雑な事件で、そもそも作中に登場する事件が一つの事件なのかどうかすらさっぱり分からない、まさに女郎蜘蛛に絡め取られるかのような感じである。

最初と最後がこの世のものとは思えない美しい描写で、読了後は100%最初のページに戻らされてしまう。

世の中、絶対に本作の"蜘蛛"のような人間はいるはずだ。

文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

  • 作者:京極 夏彦
  • 発売日: 2002/09/05
  • メディア: 文庫
 

 

29. 夜のピクニック / 恩田陸(2004年)

 

高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて、歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために――。学校生活の思い出や卒業後の夢など語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。

 

 私の好きな要素なんて1つもないはずなのにとにかく感動してしまった。

ただ夜歩くだけなのになんでこんなに面白いのだろうか。静かな夜に青春時代を思い出しながら酒を飲んで読みたい作品。(もちろん学生は現在進行形で楽しめるだろう)

投げっぱなしジャーマンが得意で伏線を回収せずに強制終了することの多い恩田作品において、奇跡的にしっかり締められている。

夜のピクニック (新潮文庫)

夜のピクニック (新潮文庫)

  • 作者:陸, 恩田
  • 発売日: 2006/09/07
  • メディア: 文庫
 

 

30. 屍鬼 / 小野不由美(1998年)

 

死が村を蹂躙し幾重にも悲劇をもたらすだろう―人口千三百余、三方を山に囲まれ樅を育てて生きてきた外場村。猛暑に見舞われたある夏、村人たちが謎の死をとげていく。増え続ける死者は、未知の疫病によるものなのか、それとも、ある一家が越してきたからなのか。

 

長い...退屈...暗い...そして登場人物多過ぎ。
相当読書慣れしてない人はまず読もうとは思えないだろうが、覚悟を決めて読んだら間違いなく心に残る1冊になるだろう。

 

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

屍鬼〈上〉

屍鬼〈上〉

 
屍鬼〈下〉

屍鬼〈下〉

 

 

31. Another / 綾辻行人(2009年)

 

夜見山北中学三年三組に転校してきた榊原恒一は、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に違和感を覚える。同級生で不思議な存在感を放つ美少女ミサキ・メイに惹かれ、接触を試みる恒一だが、謎はいっそう深まるばかり。そんな中、クラス委員長の桜木が凄惨な死を遂げた! この”世界”ではいったい何が起きているのか!?

 

萌え系学園ホラーミステリー

文体からしてかなりラノベ寄りの作品だが、ホラーとしてもミステリーとしても非常によくできた作品である。

私は小説でしかできないあのトリックを妻に思い知らせたくて、本作のアニメ版を無理やり見せたら無事に「えッ!?」と言わせることに成功した。

Another

Another

  • 作者:綾辻 行人
  • 発売日: 2009/10/30
  • メディア: 単行本
 

 

32. GOTH / 乙一(2002年)

 

 連続殺人犯の日記帳を拾った森野夜は、未発見の死体を見物に行こうと「僕」を誘う……人間の残酷な面を覗きたがる者〈GOTH〉を描き本格ミステリ大賞に輝いた乙一出世作

世界に殺す者と殺される者がいるとしたら、自分は殺す側だと自覚する少年「僕」。もっとも孤独な存在だった彼は、森野夜に出会い、変化していく。彼は夜をどこに連れて行くのか? 「僕」に焦点をあてた3篇を収録。

 

「僕」と「夜」のキャラが最高すぎる、ラノベ寄りの傑作連作短篇集。

私はこの二人の会話が好きで好きでたまらない。きっとみんなも好きになることだろう。本格ミステリ大賞に選ばれただけあって推理小説としての完成度は非常に高い。

乙一の最高傑作といってもいいかもしれない。

ちなみに夜の章が先だというのを忘れてはならない。私は順番を間違えて泣いた。

続編である番外編もとても素晴らしいので絶対に読もう。

GOTH―リストカット事件

GOTH―リストカット事件

  • 作者:乙一
  • メディア: 単行本
 

 

33. メドゥサ、鏡をごらん / 井上夢人(2000年)

 

作家・藤井陽造は、コンクリートを満たした木枠の中に全身を塗り固めて絶命していた。傍らには自筆で〈メドゥサを見た〉と記したメモが遺されており、娘とその婚約者は、異様な死の謎を解くため、藤井が死ぬ直前に書いていた原稿を探し始める。だが、何かがおかしい。次第に高まる恐怖。そして連鎖する怪死! 身の毛もよだつ、恐怖の連鎖が始まる

 

謎が謎を呼ぶ最強一気読み小説。

ミステリーでありホラーであり、SFっぽくもある本作だが、読んでいる最中の面白さは最強と呼ぶにふさわしい。気が付けば徹夜していることだろう。

最も井上夢人らしい作品だとも思っており、岡嶋二人時代の超名作『クラインの壺』的な感覚を彷彿とさせられる。

メドゥサ、鏡をごらん (講談社文庫)

メドゥサ、鏡をごらん (講談社文庫)

 

 

34. 殺戮にいたる病 / 我孫子武丸(1992年)

 

永遠の愛をつかみたいと男は願った―。東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。叙述ミステリの極致!

 

 あのトリックを使ったミステリーの中でも最高峰の完成度を誇る大傑作だが、そんなことはどうでも良い。至高のエログロこそが本作の核だ。

恐るべきエロさとやたらリアリティのあるなまなましいグロさが襲い掛かってくる。

口が裂けても女性や子どもにはおすすめできない作品だが、小説の楽しさを教えるという意味でいつかは我が息子におすすめしたい1冊である。

新装版 殺戮にいたる病 (講談社文庫)

新装版 殺戮にいたる病 (講談社文庫)

 

 

35. 容疑者Xの献身 / 東野圭吾(2005年)

 

天才数学者でありながら不遇な日々を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、2人を救うため完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる。ガリレオシリーズ初の長篇、直木賞受賞作。 

 

数々のミステリーの賞を受賞した上に直木賞まで受賞してしまった化け物級の作品だ。

ヒューマンドラマとしても推理小説としても高品質な1冊で、正直大ベストセラーだからと言って舐めてかかっていた私も、トリックが明らかになった時には思わず「何ィーー!?」と唸ることになった。

東野圭吾は悔しいが(?)、日本最高の作家だと認めざるを得ない。

容疑者Xの献身 (文春文庫)

容疑者Xの献身 (文春文庫)

  • 作者:東野 圭吾
  • 発売日: 2008/08/05
  • メディア: 文庫
 

 

36. ダークゾーン / 貴志祐介(2011年)

 

「戦え。戦い続けろ」プロ将棋棋士の卵・塚田は、赤い異形の戦士と化して、闇の中で目覚めた。突如、謎の廃墟で開始される青い軍団との闘い。敵として生き返る「駒」、戦果に応じた強力化など、奇妙なルールの下で続く七番勝負。頭脳戦、心理戦、そして奇襲戦。“軍艦島”で繰り広げられる地獄のバトル。圧巻の世界観で鬼才が贈る最強エンターテインメント!

 

謎に包まれた空間ダークゾーンにて訳も分からず繰り広げられる"人間将棋デスゲーム"。そこはかとなく漂うせつなさと虚無感がたまらない。

ダークゾーンとは一体何なのか?現実世界では何があったのか?戦いの先に待つものとは?謎が謎を呼びグイグイ物語に引き込まれることになるだろう。

貴志作品の中でも最もエンターテイメントに特化した作品である。

ダークゾーン

ダークゾーン

  • 作者:貴志 祐介
  • 発売日: 2011/02/11
  • メディア: 単行本
 

 

37. ハサミ男 / 殊能将之(1999年)

 

美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。3番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作!

 

例のトリックを駆使した小説では必ず名が挙がる小説であり、実際に極めてよくできた作品である。推理小説を読んでここまで驚愕したのは正真正銘初めてだ。
混乱し過ぎて頭が変になったくらいだ。
あのトリックについては極めてフェアだが、ハサミ男の正体については結構アンフェアな作品である。

まぁハサミ男の正体に気付こうが気付くまいが本作が面白いことは変わらない。

ハサミ男 (講談社文庫)

ハサミ男 (講談社文庫)

  • 作者:殊能 将之
  • 発売日: 2002/08/09
  • メディア: 文庫
 

 

38. アトポス / 島田荘司(1993年)

 

虚栄の都・ハリウッドに血でただれた顔の「怪物」が出没する。ホラー作家が首を切断され、嬰児が次々と誘拐される事件の真相は何か。女優・松崎レオナの主演映画『サロメ』の撮影が行われる死海の「塩の宮殿」でも惨劇は繰り返された。甦る吸血鬼の恐怖に御手洗潔が立ち向かう。渾身のミステリー巨編が新たな地平を開く。

 

 1000ページ近い大作にも関わらずまったくと言っていいほど長さを感じることが無い奇跡的な作品である。

作中作ではギネス級の大量殺人鬼エリザベート・バートリーの挿話が200ページ以上続くのだが、この挿話が尋常ではない面白さでありページ数的にも1冊の超傑作歴史ホラー小説として十分に成り立っている。

戦時中の魔都上海やサロメのエピソードもあり何から何まで謎まみれであり、島田式本格ミステリーが完成した作品といっても過言ではないと思う。

御手洗はまさに白馬の王子様である。嗚呼レオナよ.....。

アトポス (講談社文庫)

アトポス (講談社文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 1996/10/14
  • メディア: 文庫
 

 

39. 告白 / 湊かなえ(2008年)

 

「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして、第6回本屋大賞受賞のベストセラー。

 

 イヤミスというジャンルは正直あまり好きになりたくないジャンルなのだが、本作は正真正銘の傑作である。それもただの傑作ではなく稀にみる超傑作なのだ。

私は元来女という生き物には警戒心を持って接してきたが、本作を読んだことでその警戒レベルが1段階も2段階も上昇してしまった。女には気をつけたいものよ。

きっと湊かなえは最悪に性格が悪いのだと思う。

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

  • 作者:湊 かなえ
  • 発売日: 2010/04/08
  • メディア: 文庫
 

 

40. 旅のラゴス / 筒井康隆(1986年)

 

北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か? 異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。

 

 この世には人生を変える本というものが存在するらしいが、本作こそまさにそんな1冊なのだと思う。

人生を台無しにする可能性を秘めた諸刃の剣であり、私はこの本を読んで家族も放ったらかしにしてひたすら読書をするようになってしまった。

男であれば必読の作品である。(もちろん女性が読んでもいいと思う。)

旅のラゴス (新潮文庫)

旅のラゴス (新潮文庫)

 

 

41. アルケミスト / パウロ・コエーリョ(1988年)

 

半飼いの少年サンチャゴは、その夜もまた同じ夢を見た。一週間前にも見た、ピラミッドに宝物が隠されているという夢――。少年は夢を信じ、飼っていた羊たちを売り、ひとりエジプトに向かって旅にでる。
アンダルシアの平原を出て、砂漠を越え、不思議な老人や錬金術師の導きと、さまざまな出会いと別れをとおし、少年は人生の知恵を学んでいく。
「前兆に従うこと」「心の声を聞くこと」「何かを強く望めば宇宙のすべてが協力して実現するように助けてくれること」――。
長い旅のあと、ようやくたどり着いたピラミッドで、少年を待ち受けていたものとは――。人生の本当に大切なものを教えてくれる愛と勇気の物語。

 

世界的なベストセラーなのでもはや説明不要かもしれない。

私は浪人中に駿台予備校の名物英語講師に勧められて読んだのだが、ずばり人生を変える1冊となった。

さて、思い出話は置いといて本作の素晴らしいところは自己啓発書的な物語でありつつも、優れた冒険小説でありエンタメ要素が高いという点であろう。

どんなに良い本でも面白くなければ読みたくはならない。本作は素晴らしいエンターテイメント作品なのである。

アルケミスト 夢を旅した少年 (角川文庫)
 

 

42. 塗仏の宴 / 京極夏彦(1998年)

 

「知りたいですか」。郷土史家を名乗る男は囁く。「知り――たいです」。答えた男女は己を失い、昏(くら)き界(さかい)へと連れ去られた。非常時下、大量殺戮の果てに伊豆山中の集落が消えたとの奇怪な噂。敗戦後、簇出(そうしゅつ)した東洋風の胡乱(うろん)な集団6つ。15年を経て宴の支度は整い、京極堂を誘い出す計は成る。シリーズ第6弾。

「愉しかったでしょう。こんなに長い間、楽しませてあげたんですからねえ」。その男はそう言った。蓮台寺温泉裸女殺害犯の嫌疑で逮捕された関口巽と、伊豆韮山の山深く分け入らんとする宗教集団。接点は果たしてあるのか? ようやく乗り出した京極堂が、怒りと哀しみをもって開示する「宴(ゲーム)」の驚愕の真相。

 

 絡新婦の理で「こんな複雑な事件がこの世にあったとは.....」と思ったが、塗仏はさらにスケールアップしていて驚愕してしまった。

洗脳、催眠、気功等などそっち系の要素がフルコースで提供されるため、オカルトマニアは何が何でも読むべき1冊である。

 レンガ本オンリーの『百鬼夜行シリーズ』でも最長のページ数を誇っているが、シリーズの中でも最もエンタメ要素が高く、前半の支度は連作短編の形式で描かれているため、あまり長さを感じることはなく読みやすい。


文庫版 塗仏の宴 宴の支度 (講談社文庫)

文庫版 塗仏の宴 宴の支度 (講談社文庫)

  • 作者:京極 夏彦
  • 発売日: 2003/09/12
  • メディア: 文庫
 
文庫版 塗仏の宴 宴の始末 (講談社文庫)

文庫版 塗仏の宴 宴の始末 (講談社文庫)

  • 作者:京極 夏彦
  • 発売日: 2003/10/15
  • メディア: 文庫
 

 

43. 月の裏側 / 恩田陸(2002年)

 

九州の水郷都市・箭納倉。ここで三件の失踪事件が相次いだ。消えたのはいずれも掘割に面した日本家屋に住む老女だったが、不思議なことに、じきにひょっこり戻ってきたのだ、記憶を喪失したまま。まさか宇宙人による誘拐か、新興宗教による洗脳か、それとも? 事件に興味を持った元大学教授・協一郎らは〈人間もどき〉の存在に気づく……。

 

不気味な雰囲気が溢れたSFホラー的な傑作。

私はこのような世界観が大好きなため、猛烈な勢いで一気読みしてしまった。

読んでいる最中は紛れもなく最強の傑作なのだが、そこは恩田陸
予想通りというか恩田流投げっぱなしジャーマンが本領発揮する(笑)。

月の裏側 (幻冬舎文庫)

月の裏側 (幻冬舎文庫)

  • 作者:恩田 陸
  • 発売日: 2002/08/01
  • メディア: 文庫
 

 

44. マリアビートル / 伊坂幸太郎(2010年)

 

酒浸りの元殺し屋「木村」。狡猾な中学生「王子」。腕利きの二人組「蜜柑」「檸檬」。運の悪い殺し屋「七尾」。物騒な奴らを乗せた東北新幹線は疾走する! 『グラスホッパー』に続く、殺し屋たちの狂想曲。

 

完全無欠のハイパーエンタメ小説。

およそ600ページの大作だが、まるで無駄がなく最初から最後までハイテンション! 

伊坂幸太郎という男はまさにエンタメ小説を書くために生まれてきたのではないかというレベルで面白過ぎる作品である。

レビューなどを見ると前作『グラスホッパー』を読んでなくても楽しめるといった意見を見かけるがそれは完全に嘘である。前作も『マリアビートル』ほどではないにせよ、かなり面白いので必ず順番通りに読むようにしよう。

マリアビートル (角川文庫)

マリアビートル (角川文庫)

 

 

45. アルカトラズ幻想 / 島田荘司(2012年)

 

一九三九年十一月二日、ワシントンDCのジョージタウン大学脇にあるグローバーアーチボルド・パークの森の中で、娼婦の死体が発見された。被害者は両手をブナの木の枝から吊るされ、性器の周辺がえぐられたため股間から膣と子宮が垂れ下がっていた。時をおかず第二の殺人事件も発生し、被害者には最初の殺人と同様の暴虐が加えられていた。凄惨な猟奇殺人に世間も騒然とする中、恐竜の謎について独自の理論を展開される「重力論文」を執筆したジョージタウン大学の大学院生が逮捕され、あのアル・カポネも送られたサンフランシスコ沖に浮かぶ孤島の刑務所、アルカトラズに収監される。やがて、ある事件をきっかけに犯人は刑務所を脱獄し、島の地下にある奇妙な場所で暮らし始めるが……。先端科学の知見と作家の奔放な想像力で、現代ミステリーの最前線を走る著者の渾身の一作がついにベールを脱ぐ!

 

 島田御大の到達点というところだろうか。まさにゴッドオブミステリーである。

はっきり言って小説の体を成していないハチャメチャ作品なのかもしれないが、ミステリーの求道者は死んでも読むべき1冊である。

猟奇的殺人、恐竜絶滅の謎、アルカトラズ刑務所、地球空洞説、パンプキン王国???

開いた口が塞がらない伝説の作品である。

アルカトラズ幻想 上 (文春文庫)

アルカトラズ幻想 上 (文春文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 2015/03/10
  • メディア: 文庫
 
アルカトラズ幻想 下 (文春文庫)

アルカトラズ幻想 下 (文春文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 2015/03/10
  • メディア: 文庫
 

 

46. ZOO / 乙一(2003年)

 

何なんだこれは! 天才・乙一のジャンル分け不能の傑作短編集「1」、「2」を合本版で。「1」は双子の姉妹なのになぜか姉のヨーコだけが母から虐待され――(「カザリとヨーコ」)。謎の犯人に拉致監禁された姉と弟がとった脱出のための手段とは?――(「SEVEN ROOMS」)など5編をセレクト。「2」は、目が覚めたら、何者かに刺されて血まみれだった資産家の悲喜劇(「血液を探せ!」)、ハイジャックされた機内で安楽死の薬を買うべきか否か?(「落ちる飛行機の中で」)など驚天動地の粒ぞろい5編に加え、幻のショートショート「むかし夕日の公園で」を特別収録。

 

 ややクオリティにばらつきはあるが、バラエティ豊富で乙一の天才的なセンスが散りばめられた傑作短編集である。

『陽だまりの詩』『SEVEN ROOMS』は問答無用の超傑作であり、特に後者についてはあまりの臨場感に気分が悪くなってしまったほどである。

また『落ちる飛行機の中で』は『GOTH』のような変な二人の掛け合いは最高だ。

乙一寄りの作品だが、白要素もあるため初乙一の方にもおすすめできる。

ZOO(集英社文庫) 全2冊セット

ZOO(集英社文庫) 全2冊セット

  • メディア: セット買い
 

 

47. 粘膜蜥蜴 / 飴村行(2009年)

 

国民学校初等科に通う堀川真樹夫と中沢大吉は、ある時同級生の月ノ森雪麻呂から自宅に招待された。父は町で唯一の病院、月ノ森総合病院の院長であり、権勢を誇る月ノ森家に、2人は畏怖を抱いていた。〈ヘルビノ〉と呼ばれる頭部が蜥蜴の爬虫人に出迎えられた2人は、自宅に併設された病院地下の死体安置所に連れて行かれた。だがそこでは、権力を笠に着た雪麻呂の傍若無人な振る舞いと、凄惨な事件が待ち受けていた……。

 

 これは内緒なのだが、私は『粘膜シリーズ』を上梓した飴村行氏のおかげで読書沼に落とされたと言っても過言ではない。

本作は一部の変態にカルト的な人気な人気を誇る『粘膜シリーズ』の二作目であり、まさかの推理作家協会賞を受賞した作品である。

本作の特徴はとにかく面白いということだ。飴村行と言ったらデビュー作の『粘膜人間』の名前が挙がるのが普通だと思うが、はっきり言って本作はホラー小説界ではカルト的な人気を誇る『粘膜人間』よりも遥かに上をいく傑作である。

推理小説としても冒険小説としても最高な『粘膜蜥蜴』をぜひみんなに読んでいただきたい!!「怨敵、粉砕撃滅!!」

粘膜蜥蜴 (角川ホラー文庫)

粘膜蜥蜴 (角川ホラー文庫)

  • 作者:飴村 行
  • 発売日: 2009/08/22
  • メディア: 文庫
 

 

48. 粘膜兄弟 / 飴村行(2010年)

 

ある地方の町外れに住む双子の兄弟。戦時下の不穏な空気が漂う中、二人は一人の女をめぐり凄惨な運命に身を委ねていく……『ドグラ・マグラ』『家畜人ヤプー』と比される現代の奇書、シリーズ第3弾!

 

『粘膜シリーズ』に共通する軍国主義の独特な世界観はそのままに、圧倒的にパワーアップしたセンスの良いギャグが火を噴く圧倒的なエンタメ傑作。個人的にはシリーズ最高傑作である。

さほど知名度が高い作品でないことは承知している。でもお願いします、読んで。

こんなに面白い本には滅多に出会うことはできないのだから。

 

粘膜兄弟 (角川ホラー文庫)

粘膜兄弟 (角川ホラー文庫)

  • 作者:飴村 行
  • 発売日: 2010/05/22
  • メディア: 文庫
 

 

〇飴村行元帥のまとめ記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

49. ジェノサイド / 高野和明(2011年)

 

創薬化学を専攻する大学院生・研人のもとに死んだ父からのメールが届く。傭兵・イエーガーは難病を患う息子のために、コンゴ潜入の任務を引き受ける。2人の人生が交錯するとき、驚愕の真実が明らかに――。

 

 絶対に読むべき1冊である。はっきり言ってあまり万人受けする作品ではないと思うのだが、それでもベストセラーになったのはまだまだ日本人も捨てたもんじゃないな...などと調子に乗ったことを思ってしまった。

私の感想は本作はエンタメに振り切った作品ではなく、著者の政治的な思想が色濃く出ている社会派ミステリーであるため、エンタメに振り切らなかったという点で少々惜しいのだが、その点を差し引いても、これを読まずして何を読むのかというレベルの作品である。

小説を通じて何かを学びたいという方にはうってつけの素晴らしい内容である。

ジェノサイド

ジェノサイド

  • 作者:高野 和明
  • 発売日: 2011/03/30
  • メディア: 単行本
 

 

50. 月光ゲーム / 有栖川有栖(1989年)

 

夏合宿のために矢吹山のキャンプ場へやってきた英都大学推理小説研究会の面々を、予想だにしない事態が待ち構えていた。山が噴火し、偶然一緒になった三グループの学生たちは、陸の孤島と化したキャンプ場に閉じ込められてしまったのだ。その極限状況の中、まるで月の魔力に誘われたように出没する殺人鬼! 

 

 本格推理小説の代表作家として必ず名前が挙がる有栖川有栖のデビュー作であり、火山という極限状態でのクローズドサークルものである。

読者への挑戦状があるなど、いかにも本格推理な作品だが本作の素晴らしいところは、ミステリーだけでなく青春小説や恋愛小説としてもとても完成度が高いところだ。

月光ゲーム―Yの悲劇'88 (創元推理文庫)

月光ゲーム―Yの悲劇'88 (創元推理文庫)

 

 

51. 〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件 / 早坂吝(2014年)

 

アウトドアが趣味の公務員・沖らは、仮面の男・黒沼が所有する孤島での、夏休み恒例のオフ会へ。赤毛の女子高生が初参加するなか、孤島に着いた翌日、メンバーの二人が失踪、続いて殺人事件が。さらには意図不明の密室が連続し……。果たして犯人は? そしてこの作品のタイトルとは? 「タイトル当て」でミステリランキングを席巻したネタバレ厳禁の第50回メフィスト賞受賞作

 

 こんなこと書いたらミステリーマニアとして村八分にされそうだが、本格推理小説としては5本の指に入るほどの傑作だと感じてしまったし、なによりキャラがとても良くて、意味のあるエロが満載なところがたまらない。

愛しすぎてネタバレ無しの個別作品記事も書いてしまったので、ぜひとも参考していただきたい!!

kodokusyo.hatenablog.com

 

○○○○○○○○殺人事件 (講談社文庫)

○○○○○○○○殺人事件 (講談社文庫)

  • 作者:早坂 吝
  • 発売日: 2017/04/14
  • メディア: 文庫
 

 

52. 神様ゲーム / 麻耶雄嵩(2005年)

 

自分を「神様」と名乗り、猫殺し事件の犯人を告げる謎の転校生の正体とは? 神降市に勃発した連続猫殺し事件。芳雄憧れの同級生ミチルの愛猫も殺された。町が騒然とするなか謎の転校生・鈴木太郎が事件の犯人を瞬時に言い当てる。鈴木は自称「神様」で、世の中のことは全てお見通しだというのだ。そして、鈴木の予言通り起こる殺人事件。芳雄は転校生を信じるべきか、疑うべきか?

 

 講談社ミステリーランドという児童向けのレーベルから刊行された作品にも関わらず、冗談のように邪悪で不謹慎な内容である。問題作ばかり発表し、神だの変態だのと称される麻耶雄嵩の本領発揮だ。全知全能の神が犯人を推理することもなく告げるという特殊な推理小説なので、もちろん犯人当ての要素はないのだが、だれも予想できない狂った真相が待ち受ける。

神様ゲーム (講談社文庫)

神様ゲーム (講談社文庫)

  • 作者:麻耶 雄嵩
  • 発売日: 2015/07/15
  • メディア: 文庫
 

 

53. さよなら神様 / 麻耶雄嵩(2014年)

 

1行目から真犯人の名前をズバリ公開!?
極北を行く麻耶ミステリーの最高傑作

「犯人は〇〇だよ」。
クラスメイトの鈴木太郎の情報は絶対に正しい。

 

 変態傑作『神様ゲーム』の続編の連作短編で、前作とはまた異なるタイプの変態的な仕掛けが秘められている。推理小説は数多くの作品を読んでくると、あまり驚きを得ることができなくなっていく宿命にあるのだが、本作は初心者から玄人まで人を選ぶことなく驚愕を与えるだろう。

全知全能たる神様の設定が非常に巧みに活用されているのもすごい。

さよなら神様 (文春文庫)

さよなら神様 (文春文庫)

 

 

54. 悪意 / 東野圭吾(1996年)

 

人はなぜ人を殺すのか。
東野文学の最高峰。
人気作家が仕事場で殺された。第一発見者は、その妻と昔からの友人だった。
逮捕された犯人が決して語らない「動機」とはなんなのか。
超一級のホワイダニット

 

 世にもめずらしい 動機に焦点を置いているホワイダニット推理小説である。

完成度は尋常ではなく、『名探偵の掟』などで散々自虐していた"推理小説あるある"に全身全霊を込めて答えを提示したかのようである。

 動機が不明な事件って何だよ.....という興味が湧いた方はぜひ読んでみてほしい。

悪意 (講談社文庫)

悪意 (講談社文庫)

  • 作者:東野 圭吾
  • 発売日: 2001/01/17
  • メディア: 文庫
 

 

55. 精霊の守り人 / 上橋菜穂子(1996年)

 

精霊の卵を宿す皇子チャグムを託され、命をかけて皇子を守る女用心棒バルサの活躍を描く物語。著者は2014年国際アンデルセン賞作家賞受賞。

老練な女用心棒バルサは、新ヨゴ皇国の二ノ妃から皇子チャグムを託される。精霊の卵を宿した息子を疎み、父帝が差し向けてくる刺客や、異界の魔物から幼いチャグムを守るため、バルサは身体を張って戦い続ける。建国神話の秘密、先住民の伝承など文化人類学者らしい緻密な世界構築が評判を呼び、数多くの受賞歴を誇るロングセラーがついに文庫化。痛快で新しい冒険シリーズが今始まる。

 

 日本を代表するファンタジー小説守り人シリーズ』はシリーズのどの作品も圧倒的に面白いため、本当は全作品を本記事に挙げたいところだが、1作目の『精霊の守り人』のみに留めておく。(詳細は下記URLのシリーズ紹介記事をご参照ください。)

 完成された世界観、物語のスピーディな展開や臨場感のある戦闘シーン、魅力的なキャラクター、そしてハイレベルなリーダビリティ。エンタメ作品として完璧である。

 このシリーズのすごいところは、1作目が最高傑作かと思いきや先に進めば進むほどさらに面白くなっていくことにある。

 

〇シリーズ紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

精霊の守り人 (新潮文庫)

精霊の守り人 (新潮文庫)

 

 

56. 超・殺人事件 推理作家の苦悩 / 東野圭吾(2001年)

 

 新刊小説の書評に悩む書評家のもとに届けられた、奇妙な機械「ショヒョックス」。どんな小説に対してもたちどころに書評を作成するこの機械が、推理小説界を一変させる――。発表時、現実の出版界を震撼させた「超読書機械殺人事件」をはじめ、推理小説誕生の舞台裏をブラックに描いた危ない小説8連発。意表を衝くトリック、冴え渡るギャグ、そして怖すぎる結末。激辛クール作品集。

 

 まさに自虐テロといった感じの危険な内容である(笑)

ただのギャグ小説なのに手加減無用なところがとても好ましい。特定の作家をディスっているようにも思われる、強烈なブラックユーモアに噴き出すこと間違いなしである。出版業界がこんなになったらいやだ....

超・殺人事件―推理作家の苦悩 (新潮文庫)

超・殺人事件―推理作家の苦悩 (新潮文庫)

 

 

57. 密室殺人ゲーム 王手飛車取り / 歌野晶午(2007年)

 

“頭狂人”“044APD”“aXe(アクス)”“ザンギャ君”“伴道全教授”。奇妙なニックネームの5人が、ネット上で殺人推理ゲームの出題をしあう。ただし、ここで語られる殺人はすべて、出題者の手で実行ずみの現実に起きた殺人なのである…。リアル殺人ゲームの行き着く先は!? 歌野本格の粋を心して堪能せよ。

 

 歌野晶午と言ったらまずは『葉桜の季節に君を想うということ』がまずは頭に浮かぶだろうが、私は葉桜は好きになれなかった。

 そして本作も葉桜とは違った意味で好きにはなれなかったのだが、面白さだけは認めない訳にはいかない。なんと言っても500ページ越えの小説にも関わらず一晩で読んでしまったという強力な徹夜本だからである。

 連作短編集と言っていい作品だが、最後には”これぞ歌野晶午”と言わんばかりの驚きが仕掛けられていて、「おッ!」となること間違いなしである。 

密室殺人ゲーム王手飛車取り (講談社文庫)

密室殺人ゲーム王手飛車取り (講談社文庫)

  • 作者:歌野 晶午
  • 発売日: 2010/01/15
  • メディア: 文庫
 

 

58. ネジ式ザゼツキー / 島田荘司(2003年)

 

記憶に障害を持つ男エゴン・マッカートが書いた物語。そこには、蜜柑の樹の上の国、ネジ式の関節を持つ妖精、人工筋肉で羽ばたく飛行機などが描かれていた。御手洗潔がそのファンタジーを読んだ時、エゴンの過去と物語に隠された驚愕の真実が浮かびあがる!圧倒的スケールと複合的な謎の傑作長編ミステリー。

 

 島田荘司という男の頭の中は一体どうなっているのだろうか.....。

途方もない奇想から、数々の不可解極まりない幻想的なミステリーを提示された島田御大だが、『ネジ式ザゼツキー 』はトップクラスの怪作である。

ネタは明かせないが島田御大の愛する”アレ”が幻想世界のベースになっているだけに、かなりの力を注がれた力作だと分かる。

ネジ式ザゼツキー (講談社文庫)

ネジ式ザゼツキー (講談社文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 2006/10/14
  • メディア: 文庫
 

 

59. 黒い家 / 貴志祐介(1997年)

 

若槻慎二は、生命保険会社の京都支社で保険金の支払い査定に忙殺されていた。ある日、顧客の家に呼び出され、期せずして子供の首吊り死体の第一発見者になってしまう。ほどなく死亡保険金が請求されるが、顧客の不審な態度から他殺を確信していた若槻は、独自調査に乗り出す。信じられない悪夢が待ち受けていることも知らずに……。恐怖の連続、桁外れのサスペンス。読者を未だ曾てない戦慄の境地へと導く衝撃のノンストップ長編。第4回日本ホラー小説大賞受賞作。

 

 最恐レベルのホラーサスペンスであり、サイコパスを書かせたら貴志祐介に並ぶ者はいないのではないかと思われるほど、狂った人の描写にリアリティがある。

 一番怖い小説に『黒い家』を挙げる人が多いのも納得であり、”人間が怖い系”の作品の中でも飛び抜けた完成度である。

 なお著者自身のサラリーマン時代の経験が主人公に活かされており、とにかく臨場感が半端ではないのも『黒い家』の恐ろしいところである。

黒い家 (角川ホラー文庫)

黒い家 (角川ホラー文庫)

  • 作者:貴志 祐介
  • 発売日: 1998/12/10
  • メディア: 文庫
 

 

60. リカ / 五十嵐貴久(2002年)

 

妻子を愛する42歳の平凡な会社員、本間は、出来心で始めた「出会い系」で「リカ」と名乗る女性と知り合う。しかし彼女は、恐るべき“怪物”だった。長い黒髪を振り乱し、常軌を逸した手段でストーキングをするリカ。その狂気に追いつめられた本間は、意を決し怪物と対決する。単行本未発表の衝撃のエピローグがついた完全版。第2回ホラーサスペンス大賞受賞。

 

 おっさんが出会い系に手を出したらとんでもない化け物にストーカーされちゃった!という、THEホラーサスペンスな作品である。

貴志祐介の傑作ホラー『黒い家』にノリが近いのだが、『リカ』はリアリティよりも純粋なホラーとしての要素が強く、リカが人間離れし過ぎているのがポイント。

 お世辞にも面白いとは言えない続編が何作も出ているが、著者のデビュー作でありシリーズ1作目となる『リカ』は文句なしに面白い。
 

リカ (幻冬舎文庫)

リカ (幻冬舎文庫)

 

 

61. 陽だまりの彼女 / 越谷オサム(2008年)

 

 幼馴染みと十年ぶりに再会した俺。かつて「学年有数のバカ」と呼ばれ冴えないイジメられっ子だった彼女は、モテ系の出来る女へと驚異の大変身を遂げていた。でも彼女、俺には計り知れない過去を抱えているようで―その秘密を知ったとき、恋は前代未聞のハッピーエンドへと走りはじめる!誰かを好きになる素敵な瞬間と、同じくらいの切なさもすべてつまった完全無欠の恋愛小説。


 ありがちな恋愛小説っぽくて話自体も王道恋愛小説といった具合に進行するのだが、彼女の正体というミステリー要素が読者をグイグイ引っ込み一気読み確定な作品となっている。

話が進むとファンタジー要素も入ってきてますます読む手は加速していき、ラストは読者によってだいぶ感想が異なってくると思う。

 特に男女でハッピーエンドと見るかバッドエンドと見るか変わってくると思う。
ちなみに私はバッドだと思う(泣)

 

陽だまりの彼女 (新潮文庫)

陽だまりの彼女 (新潮文庫)

 

 

62. 火車 / 宮部みゆき(1992年)

 

休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して――なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか? いったい彼女は何者なのか? 謎を解く鍵は、カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。

 
 東西ミステリベスト100の国内部門で5位という本気ですごい作品であり、このランキングのトップ5は存命中の作家だと島田荘司だけである。

言うまでもなく尋常ではない完成度の社会派ミステリであると同時に、エンターテイメント作品としてもとても優れており、大ボリュームな作品なのに一気読みさせられることになるだろう。
 クレジットカードや自己破産がテーマになっているためミステリ云々ではなく、読み物として万人におすすめしたい。

火車 (新潮文庫)

火車 (新潮文庫)

 

 

63. ダイナー / 平山夢明(2009年)

 

ひょんなことから、プロの殺し屋が集う会員制ダイナーでウェイトレスをする羽目になったオオバカナコ。
そこを訪れる客は、みな心に深いトラウマを抱えていた。一筋縄ではいかない凶悪な客ばかりを相手に、
カナコは生き延びることができるのか? 次々と現れる奇妙な殺し屋たち、命がけの恋──。

人の「狂気」「恐怖」を描いて当代随一の平山夢明が放つ、長編ノワール小説。

 

 凶悪でエグくてグロい小説ばかり書いている平山夢明作品の中では、強烈な暴力描写はあるものの、エンタメ要素がかなり強いため、比較的読みやすい部類に入る。映画化もされたのでおすすめしても問題ないだろう。

 一癖も二癖もあるヤバい殺し屋がいっぱい登場して、主役であるオオバカナコ(大バカな子)がピンチになりまくり続けるという流れ。

 ほんのちょっと映画『レオン』のような要素があるのがポイントで、とにかく面白ければ良いという人にはたまらないだろう。

ダイナー (ポプラ文庫)

ダイナー (ポプラ文庫)

  • 作者:平山 夢明
  • 発売日: 2012/10/05
  • メディア: 文庫
 

 

64. 夜市 / 恒川光太郎(2009年)

 

妖怪たちが様々な品物を売る不思議な市場「夜市」。ここでは望むものが何でも手に入る。小学生の時に夜市に迷い込んだ裕司は、自分の弟と引き換えに「野球の才能」を買った。野球部のヒーローとして成長した裕司だったが、弟を売ったことに罪悪感を抱き続けてきた。そして今夜、弟を買い戻すため、裕司は再び夜市を訪れた―。奇跡的な美しさに満ちた感動のエンディング!魂を揺さぶる、日本ホラー小説大賞受賞作。


  日本ホラー小説大賞受賞作した『夜市』と表題作以上に素晴らしい『風の古道』を収録した中編集である。

 どちらの作品もホラー要素はあまり強くなく、美しく儚い幻想的な世界観のダークファンタジーで、表題作はジブリの『千と千尋の神隠し』のような印象もある。
圧巻は『風の古道』であり、映像化など絶対にできない圧倒的な異世界に読者を導いてくれるだろう。

日常に疲れて現実逃避したい時にはこれ以上のものはないだろう。

 

夜市 (角川ホラー文庫)

夜市 (角川ホラー文庫)

 

 

65. イニシエーション・ラブ / 乾くるみ(2004年)

 

僕がマユに出会ったのは、代打で呼ばれた合コンの席。やがて僕らは恋に落ちて…。甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説―と思いきや、最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。「必ず二回読みたくなる」と絶賛された傑作ミステリー。

 

 普段は本を読まない人に小説の魅力を伝えるのに最適な一冊である。

数々の娯楽が溢れかえった今の世の中では、小説に魅力を見出すのが難しいのかもしれないが、そんな中でも小説でしか味わえないものというのがある。

 その一つに小説ならではの仕掛けというのがあるのだが、『イニシエーション・ラブ』は青春恋愛小説でありながらその小説の秘儀を高いレベルで成功させている。

 ミステリー慣れしていない人やこれから読書にハマりたいような人には超おすすめ。

ちなみに映像化不可能な本作はなんと映画化されている。そちらも見ものである。

 

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

 

 

66. 孤島の鬼 / 江戸川乱歩(1930年)

 

私(蓑浦金之助)は会社の同僚木崎初代と熱烈な恋に陥った。彼女は捨てられた子で,先祖の系譜帳を持っていたが,先祖がどこの誰ともわからない。ある夜,初代は完全に戸締まりをした自宅で,何者かに心臓を刺されて殺された。その時,犯人は彼女の手提げ袋とチョコレートの缶とを持ち去った。恋人を奪われた私は,探偵趣味の友人,深山木幸吉に調査を依頼するが,何かをつかみかけたところで,深山木は衆人環視の中で刺し殺されてしまう……!

 

前半は密室と衆人環境での殺人という二つの殺人事件の謎を追う推理小説、中盤は江戸川乱歩の変態趣味が炸裂する怪奇幻想小説、そして後半は冒険小説と進む。

物語自体が尋常ではない面白さであるため、古い作品だからと言う理由で読まないのはもったいなすぎる。

BLの超傑作でもあるので、腐女子は死んでも読まなければならない。

孤島の鬼 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
 

 

67. ゴーストハント / 小野不由美(1930年)

 

 学校の旧校舎には取り壊そうとすると祟りがあるという怪奇な噂が絶えない。心霊現象の調査事務所である渋谷サイキックリサーチ(SPR)は、校長からの依頼で旧校舎の怪異現象の調査に来ていた。高等部に通う麻衣はひょんなことから、SPRの仕事を手伝うことに。なんとその所長は、とんでもなく偉そうな自信家の17歳になる美少年、渋谷一也(通称ナル)。調査に加わるのは個性的な霊能者たち。ミステリ&ホラーシリーズ。

 

 小野不由美と言ったらホラー×ミステリーの名手だが、結構読みずらい本が多いので、手に取る本を誤ると挫折する可能性もあるかもしれない。

代表作である『十二国記』ですらけっこう読みずらいのである。
そんな中この『ゴーストハント』はとても読みやすく、魅力的なキャラクターたちによって繰り広げられる、超高品質なホラー×ミステリーである。

 もともとはティーン向けの作品だったが、怪奇現象を例の仕業なのか人間の仕業なのか論理的に追及する流れは大人が読んでも楽しむことができる。

 

ゴーストハント1 旧校舎怪談 (角川文庫)

ゴーストハント1 旧校舎怪談 (角川文庫)

 

 

68. モンスター / 百田尚樹(1999年)

 

田舎町で瀟洒なレストランを経営する絶世の美女・未帆。彼女の顔はかつて畸形的なまでに醜かった。周囲からバケモノ扱いされる悲惨な日々。思い悩んだ末にある事件を起こし、町を追われた 未帆は、整形手術に目覚め、莫大な金額をかけ完璧な美人に変身を遂げる。そのとき亡霊のように甦ってきたのは、ひとりの男への、狂おしいまでの情念だった——。


 話は実にシンプルで、非常に醜い容姿だった女が整形を繰り返しまくって絶世の美女になり、かつて好きだった男に〇〇するという物語である。

『モンスター』のすごいところは、これぞエンターテイメントと言えるくらい話が面白いだけではない。
美容整形に関する蘊蓄の量が尋常ではなく、いったい著者は(ハゲなのに)どれだけ研究したんだよとツッコミを入れたくなるレベルなのだ。

 美容整形について学べる本としても万人が読んでおくべきなのかもしれない。

 

モンスター (幻冬舎文庫)

モンスター (幻冬舎文庫)

  • 作者:百田 尚樹
  • 発売日: 2012/04/12
  • メディア: 文庫
 

 

69. 倒錯のロンド / 折原一(1989年)

 

精魂こめて執筆し、受賞まちがいなしと自負した推理小説新人賞応募作が盗まれた。―その“原作者”と“盗作者”の、緊迫の駆け引き。巧妙極まりない仕掛けとリフレインする謎が解き明かされたときの衝撃の真相。鬼才島田荘司氏が「驚嘆すべき傑作」と賞替する、

 

 最強に面白い本格ミステリの最有力候補である。

折原一といったら叙述トリックなので、もはや隠す必要はないだろうから書いてしまうと、『倒錯のロンド』は非常にレベルの高い叙述トリックものである。

 だがそんなことはどうでもいいほど物語が面白いのである。
猛烈に勢いのある筆致に、なんとなくブラックユーモアめいたセリフ、そしてS・キングの『シャイニング』を全力でパロっていたりととことん面白さを追求している。

 

倒錯のロンド (講談社文庫)

倒錯のロンド (講談社文庫)

  • 作者:折原 一
  • 発売日: 1992/08/03
  • メディア: 文庫
 

 

70. 青の炎 / 貴志祐介(1999年)

 

櫛森秀一は湘南の高校に通う17歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹との3人暮らし。その平和な家庭に、母が10年前に別れた男、曾根が現れた。曾根は秀一の家に居座って傍若無人に振る舞い、母の体のみならず妹にまで手を出そうとする。警察も法律も家族の幸せを取り返してはくれないことを知った秀一は決意した。自らの手で曾根を葬り去ることを……。完全犯罪に挑む少年の孤独な戦い。その哀切な心象風景を精妙な筆致で描き上げた、日本ミステリー史に残る感動の名作。

 

 人によっては貴志祐介の最高傑作に挙げる人もいるであろう青春小説の大傑作である。

 犯人目線で描かれる倒叙ミステリという形のミステリであり、母と妹を外道から守ろうとする主人公の心理描写が貴志作品ならではの強い臨場感で描かれている。

 映画化もされているが、この繊細な心理は役者を通じてでは決して伝わらないであろう。

 しかもこんなシリアスな作品でもちゃっかりエロシーンを入れて、しかもそれが作品のせつなさを跳ね上げているのが貴志クオリティである。

 

青の炎 (角川文庫)

青の炎 (角川文庫)

  • 作者:貴志 祐介
  • 発売日: 2002/10/23
  • メディア: 文庫
  

 

71. the TEAM / 井上夢人(2006年)

 

悩みを解決していたのは、霊視ではなく…!?
人気〈霊導師〉の能城あや子。実は、スタッフが収集する情報で、霊視しているかのように装っているのだ。彼女の正体を暴こうと、週刊誌の記者が調査に乗り出すが…。痛快連作集!


 流麗な筆致による読みやすさと計算された面白さ、ミステリーとしての完成度を兼ね備えたとてもよくできた作品である。
井上夢人先生と言ったら、機械やIT技術とオカルト系の造形がかなり深いのだが、『the TEAM』では著者の得意分野が満遍なく発揮されていて、連作短編形式で読みやすいということもあり、井上作品初読みの方にもおすすめである。
岡嶋二人ファンには一番違和感のない作品だと思う。

 

the TEAM ザ・チーム (集英社文庫)

the TEAM ザ・チーム (集英社文庫)

  • 作者:井上 夢人
  • 発売日: 2009/01/20
  • メディア: 文庫
 

 

72. そして扉が閉ざされた / 岡嶋二人(1987年)

 

富豪の若き1人娘が不審な事故で死亡して3カ月、彼女の遊び仲間だった男女4人が、遺族の手で地下シェルターに閉じ込められた!なぜ?
そもそもあの事故の真相は何だったのか?4人が死にものぐるいで脱出を試みながら推理した意外極まる結末は?極限状況の密室で謎を解明する異色傑作推理長編。


 すらすら短い時間で読めて、本格推理小説としても物語としても良くできている傑作。

男女4人が核シェルターに閉じ込められて事件の真相を推理をさせられるというシチュエーションからしてやたら面白く、事件の謎解きや核シェルターからの脱出など強力な娯楽作品に仕上がっている。

 青春小説の側面もあり、様々な層の読者におすすめできる。

そして扉が閉ざされた (講談社文庫)

そして扉が閉ざされた (講談社文庫)

  • 作者:岡嶋 二人
  • 発売日: 1990/12/04
  • メディア: 文庫
 

 

73. こどもの一生 / 中島らも(2003年)

 

異才・中島らものB級ホラーの頂点!
瀬戸内海の小島に、サイコセラピーのために集まった5人の男女。薬の投与と催眠術を使った治療で、彼らの意識は10歳のこどもへと戻ってゆく。抱腹絶倒、やがて恐怖が襲う超B級ホラー。


 とにかく徹底的に娯楽を追求したような作品であり、中島らものお笑いのセンスが火を噴く、爆笑必至の中盤までの展開は催眠術の豊富な蘊蓄による絶妙なリアリティがある。

 そして突如様子が変わってホラー化する終盤の流れは、中島らも自身がよくできたと評されている通り、笑えるのに笑えない本気のホラーとなっている。

 小説に面白さだけを追求するなら最良の選択肢になるだろう。

 

こどもの一生 (集英社文庫)

こどもの一生 (集英社文庫)

  • 作者:中島 らも
  • 発売日: 2006/07/20
  • メディア: 文庫
 

 

74. みんな邪魔 / 真梨幸子(2010年)

 

少女漫画『青い瞳のジャンヌ』をこよなく愛する“青い六人会”。噂話と妄想を楽しむ中年女性たちだったが、あるメンバーの失踪を機に正体を露にし始める。飛び交う嘘、姑息な罠、そして起こった惨殺事件―。辛い現実から目を背け、ヒロインを夢見る彼女たち。その熱狂が加速する時、新たな犠牲者が…。殺人鬼より怖い平凡な女たちの暴走ミステリ。

 

 最強のイヤミス候補である。
イヤさ加減は”イヤミスの女王”と呼ばれる真梨幸子の著書の中にあってなお、目も当てられぬ程酷いものであり、なおかつミステリとしても高水準でしっかり驚けるという激ヤバな作品である。

 おばさんの暴走を書かせたらこの人に勝る者はいないのではなかろうか。

みんな邪魔 (幻冬舎文庫)

みんな邪魔 (幻冬舎文庫)

  • 作者:真梨 幸子
  • 発売日: 2011/12/06
  • メディア: 文庫
 

 

75. 湘南人肉医 / 大石圭(2003年)

 

湘南で整形外科医として働く小鳥田優児は、神の手と噂されるほどの名医だった。数々の難手術を成功させ、多くの女性を見違えるほどの美人に変貌させていた。しかし、彼は小さな頃から人肉に対して憧れを持っていた。そして、ある日、手術で吸引した女性の臀部の脂肪を自宅に持ち帰り、食べてしまう。それは麻酔が施されていたため、苦く、おいしいものではなかったが、人の肉を食べるという禁を破ったことに対して、優児は強いエクスタシーを感じた…。

 

 完全にOUTな物語なのだが、読み始めてしまうや一気読みさせられる変態本である。

終始起伏も緊張感もなくまったり進む展開や、語りかけるような優しい筆致に謎に癒されてしまうかもしれない。

 変態的な性癖を持つそこのあなた....必読ですぞ。

 

湘南人肉医 (角川ホラー文庫)

湘南人肉医 (角川ホラー文庫)

 

 

76. オフシーズン / J.ケッチャム(1980年)

 

避暑客が去り冷たい秋風が吹き始めた九月のメイン州の避暑地。ニューヨークから六人の男女が休暇をとって当地にや
って来る。最初に到着したのは書箱編集者のカーラ。すこし遅れて、彼女の現在のボーイフレンドのジム、彼女の妹の
マー ジーとそのボーイフレンドのダン、そしてカーラのかつてのボーイフレンドのニックとそのガールフレンドのロー
ラが到着した。六人全員が到着した晩に事件は勃発した。当地に住む“食人族"が六人に襲い掛かったのだ。“食人族
"対“都 会族"の凄惨な死闘が開始する。

 

 絵に描いたようなB級スプラッタホラーの超傑作。

エロもグロも突き抜けて凄まじいことになっており、怒涛の勢いで阿鼻叫喚の地獄絵図が展開される様は、この手の話が好きなら恋人に嫌われようが必読である。

 世の中にはあからさまなエロやグロを追求した作品が溢れかえっていて、正直興醒めしてしまうのだが、『オフシーズン』は強烈でありながらも狙った感は皆無であり、結末の容赦の無さも実に教訓的で自然である。

 

モダンホラーの帝王S.キング曰く

全米一怖い作家は誰だ?きっとジャック・ケッチャムさ。

『オフシーズン』の無修正版を感謝祭の日に読んだら、

きっとクリスマスの日まで眠れなくなること請け合いだ。

ティーブおじさんが警告しなかったなんて言うなよ、

はっはっはっ……(by スティーブン・キング)

 

オフシーズン (海外文庫)

オフシーズン (海外文庫)

 

 

77. puzzle / 恩田陸(2000年)

 

学校の体育館で発見された餓死死体。高層アパートの屋上には、墜落したとしか思えない全身打撲死体。映画館の座席に腰掛けていた感電死体―コンクリートの堤防に囲まれた無機質な廃墟の島で見つかった、奇妙な遺体たち。しかも、死亡時刻も限りなく近い。偶然による事故なのか、殺人か?この謎に挑む二人の検事の、息詰まる攻防を描く驚愕のミステリー。

 

 恩田陸的な投げっぱなし感が強烈な中編幻想ミステリ。

広義のミステリとしてみれば素晴らしいのだが、本格推理小説としてみると途端に壁投げ本と化すというかなり好みが分かれる作品だが、幻想的な雰囲気は恩田陸ならではの美しさがある。

200ページに満たない尺でやりたい放題やらかしてるのが最高。

puzzle (祥伝社文庫)

puzzle (祥伝社文庫)

  • 作者:恩田 陸
  • 発売日: 2000/10/01
  • メディア: 文庫
 

 

78. 屋上 / 島田荘司(2016年)

 

 自殺する理由がない男女が、次々と飛び降りる屋上がある。足元には植木鉢の森、周囲には目撃者の窓、頭上には朽ち果てた電飾看板。そしてどんなトリックもない。死んだ盆栽作家と悲劇の大女優の祟りか?霊界への入口に名探偵・御手洗潔は向かう。人智を超えた謎には「読者への挑戦状」が仕掛けられている!

 

 ゴッドオブミステリーによる最強のバカミスである。

賛否両論を呼んでいるが、本格推理小説として考えずに純粋にエンタメ作品としてみれば稀に見る傑作である。

これでもかというほど自殺するはずがない人が次々と屋上から飛び降り自殺するという怪事件が、アホみたく面白おかしく描かれる。

 島田御大はたまに笑える作品を書かれるのだが、『屋上』はお笑い本としては最高傑作であり、ミステリーとしてもしっかりしているので万人におすすめ。

 

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

屋上 (講談社文庫)

屋上 (講談社文庫)

 

 

79. 葉桜の季節に君を想うということ / 歌野晶午(2003年)

 

 「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼された。そんな折、自殺を図ろうとしているところを救った麻宮さくらと運命の出会いを果たして―。あらゆるミステリーの賞を総なめにした本作は、必ず二度、三度と読みたくなる究極の徹夜本です。


 もう隠す必要すらない叙述トリックものの傑作である。

個人的には『葉桜』で仕掛けられた騙しの叙述トリック自体は好きになれない....というか嫌いなのだが、真相が判明した後に読む2週目がこれ以上ないほどに滑稽で笑えるのが好印象。

 好き嫌いが分かれるのは間違いないが、物語の面白さと仕掛けの巧妙さはさすがである。とりあえず読んでおくべき作品。 

 

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

  • 作者:歌野 晶午
  • 発売日: 2007/05/10
  • メディア: 文庫
 

 

80. 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない / 桜庭一樹(2004年)

 

その日、兄とあたしは、必死に山を登っていた。見つけたくない「あるもの」を見つけてしまうために。あたし=中学生の山田なぎさは、子供という境遇に絶望し、一刻も早く社会に出て、お金という“実弾”を手にするべく、自衛官を志望していた。そんななぎさに、都会からの転校生、海野藻屑は何かと絡んでくる。嘘つきで残酷だが、どこか魅力的な藻屑となぎさは序々に親しくなっていく。だが、藻屑は日夜、父からの暴力に曝されており、ある日―。直木賞作家がおくる、切実な痛みに満ちた青春文学。

 

 最強に面白いという形容詞がふさわしい作品ではないが、魔力と言っても良い不思議な魅力があり、読み始めたら一心不乱に最後まで読み進めることになるだろう。

 私はただちょくちょく名前を見る作品だし、短くて読みやすそうだからという理由で読んだのだが、想定外の素晴らしい読書体験となった。

 

 

81. 羆嵐 / 吉村昭(1977年)

 

北海道天塩山麓の開拓村を突然恐怖の渦に巻込んだ一頭の羆の出現!日本獣害史上最大の惨事は大正4年12月に起った。冬眠の時期を逸した羆が、わずか2日間に6人の男女を殺害したのである。鮮血に染まる雪、羆を潜める闇、人骨を齧る不気味な音…。自然の猛威の前で、なす術のない人間たちと、ただ一人沈着に羆と対決する老練な猟師の姿を浮彫りにする、ドキュメンタリー長編。

 

 まるでその場で惨劇を見ているかのような最強のリアリティ小説である。

描写の臨場感は尋常ではなく、読んでいると羆の息遣いがすぐそこで聞こえてくるようで、相手はクマなので言うまでもなく残虐さも最恐クラスである。

 くまのプーさんが危険なファンタジーであることが分かる強烈な一冊。

羆嵐 (新潮文庫)

羆嵐 (新潮文庫)

  • 作者:昭, 吉村
  • 発売日: 1982/11/29
  • メディア: 文庫
 

 

82. オルファクトグラム / 井上夢人(2000年)

 

姉を殺害した犯人に、事件現場で襲撃された片桐稔は、その後遺症から通常の“匂い”を失い、イヌ並みの嗅覚をもつことに…。まったく違う世界に戸惑いながらも、失踪したバンド仲間を、嗅覚を頼りに捜し求めてゆく。新たな能力を駆使することで、姉の仇を討てるのか?新感覚の大長編異次元ミステリー。

 

 ジャンルにとらわれずに優れた作品を上梓する井上夢人作品の中でも、最も唯一無二な内容で、他の作家にはまず書くことができない”嗅覚”小説である。

 殺人事件の真相を特殊な嗅覚を用いて追うミステリーというよりは、嗅覚が視覚に取って代わった世界を見事に描いたファンタジーのような作品である。

膨大なページ数だが、圧倒的な読みやすさが時間を忘れさせ睡眠時間をゴリゴリ削る徹夜本である。

 

オルファクトグラム(上) (講談社文庫)

オルファクトグラム(上) (講談社文庫)

  • 作者:井上 夢人
  • 発売日: 2005/02/15
  • メディア: 文庫
 
オルファクトグラム(下) (講談社文庫)

オルファクトグラム(下) (講談社文庫)

  • 作者:井上 夢人
  • 発売日: 2005/02/15
  • メディア: 文庫
 

 

83. 悪の教典 / 貴志先生(2010年)

 

晨光(しんこう)学院町田高校の英語教師、蓮実聖司はルックスの良さと爽やかな弁舌で、生徒はもちろん、同僚やPTAをも虜にしていた。しかし彼は、邪魔者は躊躇なく排除する共感性欠如の殺人鬼だった。学校という性善説に基づくシステムにサイコパスが紛れこんだとき──。ピカレスクロマンの輝きを秘めた戦慄のサイコホラー傑作。

 

 貴志祐介黒いお得意のサイコパスを描いた作品であり、イケメン英語教師ハスミンが大暴れするハイパーなサイコ物語である。

前半はブラックユーモアを匂わせつつハスミンが邪魔者をひっそりと抹殺していく傑作サスペンス、下巻は自分の利益のために生徒全員を皆殺しにするという阿鼻叫喚の地獄絵図が展開される。

 貴志本人によると”一気読み”を狙った作品とのことで、大長編にも関わらずとにかく読ませまくる作品だ。

 

悪の教典 上下巻 セット

悪の教典 上下巻 セット

  • メディア: セット買い
 

 

 

84. 迷路館の殺人 / 綾辻行人(1988年)

 

奇妙奇天烈な地下の館、迷路館。招かれた4人の作家たちは莫大な“賞金”をかけて、この館を舞台にした推理小説の競作を始めるが、それは恐るべき連続殺人劇の開幕でもあった!
周到な企みと徹底的な遊び心でミステリファンを驚喜させたシリーズ第3作、待望の新装改訂版。初期「新本格」を象徴する傑作!

 

 誰もが通る道である『十角館の殺人』を正統派なド直球本格推理小説だとすると、『迷路館の殺人』はこれでもかというほどトリッキーな最強の騙し小説である。

 

 絶対に騙されないつもりで慎重に慎重に読み進めてもすべてのトラップを回避することは不可能だろう。

迷路館の殺人<新装改訂版> (講談社文庫)

迷路館の殺人<新装改訂版> (講談社文庫)

  • 作者:綾辻 行人
  • 発売日: 2009/11/13
  • メディア: 文庫
 

 

85. 恋のゴンドラ / 東野圭吾(2016年)

 

都内で働く広太は、合コンで知り合った桃美とスノボ旅行へ。ところがゴンドラに同乗してきた女性グループの一人は、なんと同棲中の婚約者だった。ゴーグルとマスクで顔を隠し、果たして山頂までバレずに済むのか。やがて真冬のゲレンデを舞台に、幾人もの男女を巻き込み、衝撃の愛憎劇へと発展していく。文庫特別編「ニアミス」を収録。

 

 あらすじを読んで楽しそうと思った方ならクリティカルヒット確実な、東野圭吾のブラックユーモアと残念な男性心理が炸裂する悪ノリ本である。

 かなり評価が割れている本だが、読者がリア充であるか非リアであるかによって評価が決まるのだろう。ちなみにミステリーでもなくラブコメ連作短編集なのでその点もミステリー作家としての東野ファンには受け入れられないのかもしれない。

まぁとりあえず面白そうだと感じたら読もう。ラブコメとはいえ百戦錬磨の東野作品だけに、壮絶極まりないラストが待っている。

 

恋のゴンドラ (実業之日本社文庫)

恋のゴンドラ (実業之日本社文庫)

  • 作者:東野 圭吾
  • 発売日: 2019/10/04
  • メディア: 文庫
 

 

86. エムブリヲ奇譚 / 山白朝子(2012年)

 

「わすれたほうがいいことも、この世には、あるのだ」無名の温泉地を求める旅本作家の和泉蝋庵。荷物持ちとして旅に同行する耳彦は、蝋庵の悪癖ともいえる迷い癖のせいで常に災厄に見舞われている。幾度も輪廻を巡る少女や、湯煙のむこうに佇む死に別れた幼馴染み。そして“エムブリヲ”と呼ばれる哀しき胎児。出会いと別れを繰り返し、辿りついた先にあるものは、極楽かこの世の地獄か。哀しくも切ない道中記、ここに開幕。

 

 もはや周知の事実だろうから書かせていただくが、山白朝子とは天才作家・乙一の別名義である。

『エムブリヲ奇譚』は黒乙一ならではの"残酷さ"に白乙一の”せつなさ”をブレンドして、それを独特の世界観を持った時代小説風に描いた連作短編集である。

短編の名手であるだけに個々の作品はかなりのインパクトがあり、サラッと読めるのにかなりヘヴィでせつない読後感が残るすごい作品である。

 乙一のホラーな要素や不思議な話が好きな方なら必読だ。

 

エムブリヲ奇譚 (角川文庫)

エムブリヲ奇譚 (角川文庫)

  • 作者:山白 朝子
  • 発売日: 2016/03/25
  • メディア: 文庫
 

 

87. 私のサイクロプス / 山白朝子(2016年)

 

書物問屋で働く輪は、旅本作家・和泉蝋庵と彼の荷物持ち・耳彦と未踏の温泉地を求める旅に出ては、蝋庵のひどい迷い癖のせいで行く先々で怪異に遭遇していた。ある日山道で2人とはぐれてしまった輪は、足をすべらせて意識をうしなう。眠りからさめると、背丈が輪の3倍以上あるおおきな男が顔をのぞきこんでいた。心優しき異形の巨人と少女の交流を描いた表題作を含む9篇を収録した、かなしくておぞましい傑作怪異譚。

 

 『エムブリヲ奇譚』の続編であり、前作で登場した”輪”という女性が再登場するため、キャラもの作品としては前作を凌駕している。

残酷さとせつなさを凝縮した作品だけに、乙一好きでグロテスクな描写が苦手な方でなければ、小説の世界に魂が持っていかれるくらい惹かれることだと思う。

 

私のサイクロプス (角川文庫)

私のサイクロプス (角川文庫)

  • 作者:山白 朝子
  • 発売日: 2019/02/23
  • メディア: 文庫
 

 

 

神本探しに終わりはない

素晴らしい本に出会ったらその都度更新していく。

 

 

井上夢人|作品一覧とおすすめランキング10選

ジャンルにとらわれない夢物語

 張られた伏線は必ずしもすべて回収されるとは限らないため、独特の夢のような余韻に浸れる作品が多い。
そして何と言っても岡嶋時代からの圧倒的なリーダビリティは健在どころかさらにパワーアップしており、魅力的な謎と読みやすさにより徹夜本が多いという危険な特徴がある。

作品一覧

 井上作品の特徴は寡作だがどの作品もクオリティが高いシリーズ作品がない徹夜本のオンパレードというのがある。したがってどの作品から読んでも問題はない。

 

  1. ダレカガナカニイル…(1992年)
  2. あくむ|短編集(1993年)
    ホワイトノイズ / ブラックライト / ブルーブラッド
    ゴールデンケージ / インビジブルドリーム
  3. プラスティック(1994年)
  4. パワー・オフ(1996年)
  5. もつれっぱなし|短編集(1996年)
    宇宙人の証明 / 四十四年目の証明 / 呪いの証明
    狼男の証明 / 幽霊の証明 / 嘘の証明
  6. メドゥサ、鏡をごらん(1997年)
  7. 風が吹いたら桶屋がもうかる|連作短編集(1997年)
    風が吹いたらほこりが舞って / 目の見えぬ人ばかりふえたなら
    あんま志願が数千人 / 品切れ三味線増産体制
    哀れな猫の大量虐殺 / ふえたネズミは風呂桶かじり
    とどのつまりは桶屋がもうかる
  8. オルファクトグラム(2000年)
  9. クリスマスの4人(2001年)
  10. the TEAM|連作短編集(2006年)
  11. あわせ鏡に飛び込んで|短編集(2008年)
    あなたをはなさない / ノックを待ちながら
    サンセット通りの天使 / 空部屋あります / 千載一遇
    私は死なない / ジェイとアイとJI / あわせ鏡に飛び込んで
    さよならの転送 / 書かれなかった手紙
  12. 魔法使いの弟子たち(2010年)
  13. ラバー・ソウル(2012年)
  14. the SIX|連作短編集(2015年)
    あした絵 / 鬼の声 / 空気剃刀
    虫あそび / 魔王の手 / 聖なる子 

 

 

作品ランキング

 ジャンルを意識させない作風だけに、読者によってかなり好みは異なってくると思われる。本格ミステリ寄りの作品が好きであれば『the TEAM』や『ラバー・ソウル』を推すのだろうが、私はSFやファンタジー、オカルトが好きなIT企業の会社員なのでそういった要素の強い作品を高く評価するようにしたい。

 

10位  the TEAM(2006年)

 

悩みを解決していたのは、霊視ではなく…!?
人気〈霊導師〉の能城あや子。実は、スタッフが収集する情報で、霊視しているかのように装っているのだ。彼女の正体を暴こうと、週刊誌の記者が調査に乗り出すが…。痛快連作集!

 

 本格ミステリ寄りの作品であるため、岡嶋二人ファンであればまず間違いなく高評価するであろう作品。
流麗な筆致による読みやすさと計算された面白さ、ミステリーとしての完成度を兼ね備えたとてもよくできた作品である。
 機械やIT技術とオカルトといった著者の得意分野が存分に発揮されているのと、連作短編形式で読みやすいということもあり、井上作品初読みの方にもおすすめである。

the TEAM ザ・チーム (集英社文庫)

the TEAM ザ・チーム (集英社文庫)

  • 作者:井上 夢人
  • 発売日: 2009/01/20
  • メディア: 文庫
 

 

9位  あわせ鏡に飛び込んで(2008年)

 

 幻の名作「あわせ鏡に飛び込んで」をはじめ、瞬間接着剤で男をつなぎとめようとする女が出てくる「あなたをはなさない」、全篇、悩み相談の手紙だけで構成されたクライムミステリー「書かれなかった手紙」など、選りすぐりの10篇を収録。精緻に仕掛けられた“おとしあな”の恐怖と快感。

 

 異常にクオリティの高いバラエティ豊かな短編集である。
この1冊だけで井上作品の魅力は概ね味わうことができるため、短編から入りたいならとてもおすすめな作品だ。

 全10作と作品数が多いのだが、どの作品もタイプがバラバラでいずれも井上作品独特の読後感を10連発で味わうことができる。

 

あわせ鏡に飛び込んで (講談社文庫)

あわせ鏡に飛び込んで (講談社文庫)

  • 作者:井上 夢人
  • 発売日: 2008/10/15
  • メディア: 文庫
 

 

8位  ラバー・ソウル(2012年)

 

 幼い頃から友だちがいたことはなかった。両親からも顔をそむけられていた。36年間女性にも無縁だった。何度も自殺を試みた―そんな鈴木誠と社会の唯一の繋がりは、洋楽専門誌でのマニアをも唸らせるビートルズ評論だった。その撮影で、鈴木は美しきモデル、美縞絵里と出会う。心が震える、衝撃のサスペンス。

 

 本格ミステリファンであれば最高傑作に挙げるであろう、凝りに凝った仕掛けとビートルズ愛が詰まった傑作。

ひたすらストーカーの気持ち悪い描写が続くのだが、真相が判明した時の驚きは何とも言えないものがある。

完成度の高いミステリー作品は、真相を把握したうえで伏線を回収しながら再読するという楽しみ方があるが、すべてを知ったうえで読む『ラバー・ソウル』は伏線回収など生温い、別次元に生まれ変わった物語と精密な仕掛けの妙技を堪能することができる。

ラバー・ソウル (講談社文庫)

ラバー・ソウル (講談社文庫)

  • 作者:井上 夢人
  • 発売日: 2014/06/13
  • メディア: 文庫
 

 

7位  魔法使いの弟子たち(2010年)

 

 山梨県内で発生した致死率百パーセント近い新興感染症。生還者のウィルスから有効なワクチンが作られ拡大を防ぐが、発生当初の“竜脳炎”感染者で意識が戻ったのは、三名だけだった。その中の一人で、週刊誌記者として取材にきて感染した仲屋京介は、二人の生還者とともに病院内での隔離生活を続ける。やがて彼ら三名は、「後遺症」として不思議な能力を身につけていることに気づき始める。壮大なる井上ワールド、驚愕の終末―。

 

 ジャンルにとらわれない井上作品は、物語がどのように進んでどのように収束するのかがまったく読めずにひたすら振り回されるという楽しみ方があるのだが、『魔法使いの弟子たち』は最もそのパターンが強く表れていて、予測不能な展開を思う存分体感させられることになる。

 超強力なウイルスが登場したと思ったら、生存者に謎の後遺症が現れ.....うん、まったく先が読めません。

 

魔法使いの弟子たち (上) (講談社文庫)

魔法使いの弟子たち (上) (講談社文庫)

  • 作者:井上 夢人
  • 発売日: 2013/04/12
  • メディア: 文庫
 
魔法使いの弟子たち (下) (講談社文庫)

魔法使いの弟子たち (下) (講談社文庫)

  • 作者:井上 夢人
  • 発売日: 2013/04/12
  • メディア: 文庫
 

 

6位  クリスマスの4人(2001年)

 

 1970年、ビートルズが死んだ年の聖夜、物語は始まった。その夜を共に過ごした二十歳を迎える四人の男女。ドライブ中の車の前に突然、飛び出してきたオーバーコートの男。彼らは重大な秘密を共有する羽目になった。その後、十年毎に彼らを脅かす不可解な謎と、不気味に姿を現す男。2000年、時空を超えた結末は、破滅か、奇跡か!?奇想あふれる傑作長編小説。

 

 井上夢人的な要素をこれでもかというくらい凝縮した最強の一気読み小説である。

 リア充全開なイチャイチャから一転、謎の人物を轢き殺してしまい、不可解極まりない謎に巻き込まれていく様は最高に面白い。

10年ごとのクリスマスに4人が再開し、事故の話を語り合うというシチュエーションが妙に味わい深い。

 

クリスマスの4人 (光文社文庫)

クリスマスの4人 (光文社文庫)

  • 作者:井上 夢人
  • 発売日: 2004/12/10
  • メディア: 文庫
 

 

5位  オルファクトグラム(2000年)

 

姉を殺害した犯人に、事件現場で襲撃された片桐稔は、その後遺症から通常の“匂い”を失い、イヌ並みの嗅覚をもつことに…。まったく違う世界に戸惑いながらも、失踪したバンド仲間を、嗅覚を頼りに捜し求めてゆく。新たな能力を駆使することで、姉の仇を討てるのか?新感覚の大長編異次元ミステリー。

 

 井上夢人にしか書けないであろう唯一無二な内容で、他の作家にはまず書くことができない”嗅覚”小説である。

 殺人事件の真相を特殊な嗅覚を用いて追うミステリーというよりは、嗅覚が視覚に取って代わった世界を見事に描いたファンタジーのような作品である。
匂いが見えるという感覚によって描かれる世界感はすごいとしか言いようがない。

膨大なページ数だが、圧倒的な読みやすさが時間を忘れさせ睡眠時間をゴリゴリ削る極めて危険な徹夜本である。

 

オルファクトグラム(上) (講談社文庫)

オルファクトグラム(上) (講談社文庫)

  • 作者:井上 夢人
  • 発売日: 2005/02/15
  • メディア: 文庫
 
オルファクトグラム(下) (講談社文庫)

オルファクトグラム(下) (講談社文庫)

  • 作者:井上 夢人
  • 発売日: 2005/02/15
  • メディア: 文庫
 

 

4位  ダレカガナカニイル…(1992年)

 

 警備員の西岡は、新興宗教団体を過激な反対運動から護る仕事に就いた。だが着任当夜、監視カメラの目の前で道場が出火、教祖が死を遂げる。それ以来、彼の頭で他人の声がしはじめた。“ここはどこ?あなたはだれ?”と訴える声の正体は何なのか?ミステリー、SF、恋愛小説、すべてを融合した奇跡的傑作。

 

 オカルト全開なソロデビュー作品で、様々な要素が混ざり合った内容である。

『ダレカガナカニイル...』のすごいところは、あまり良い話ではないのかもしれないが、当時世間を賑わせたオウム真理教が事件を起こす前に、オウムに酷似した新興宗教が登場することである。

密教やヨガ、催眠術などについてこれ以上ないほど豊富な知識が得られる小説でもある。オカルトマニアや超常現象を前提としたミステリーが好きな方は必読である。

 

ダレカガナカニイル… (講談社文庫)

ダレカガナカニイル… (講談社文庫)

  • 作者:井上 夢人
  • 発売日: 2004/02/13
  • メディア: 文庫
 

 

3位  メドゥサ、鏡をごらん(1997年)

 

 作家・藤井陽造は、コンクリートを満たした木枠の中に全身を塗り固めて絶命していた。傍らには自筆で〈メドゥサを見た〉と記したメモが遺されており、娘とその婚約者は、異様な死の謎を解くため、藤井が死ぬ直前に書いていた原稿を探し始める。だが、何かがおかしい。次第に高まる恐怖。そして連鎖する怪死! 身の毛もよだつ、恐怖の連鎖が始まる。

 

 徹夜本となる要素が詰まりに詰まった、睡眠時間キラー小説である。 

ジャンルを書くこと自体がネタバレにつながるような内容であり、ミステリーなのかホラーなのか分からない展開がひたすら続く。

魅力的で不可解な謎、圧倒的に読みやすい文章、そこそこのボリュームと読み始めたその時から先が気になりまくること必至である。

 

メドゥサ、鏡をごらん (講談社文庫)

メドゥサ、鏡をごらん (講談社文庫)

 

 

2位  パワー・オフ(1996年)

 

 高校の実習の授業中、コンピュータ制御されたドリルの刃が生徒の掌を貫いた。モニター画面には、「おきのどくさま…」というメッセージが表示されていた。次々と事件を起こすこの新型ウィルスをめぐって、プログラマ、人工生命研究者、パソコン通信の事務局スタッフなど、さまざまな人びとが動き始める。進化する人工生命をめぐる「今」を描く。

 

 著者が得意としているIT分野の知識が本領発揮された超傑作SFである。

1996年に書かれた作品ということが信じられないくらい、コンピュータウイルスやネットワーク、セキュリティについて詳細に描かれている。
しかもAI(人口知性)ではなく、生物学や進化論に基づくAL(人工生命)という独自の発想がなされているため、時が経っても廃れない普遍的な作品となっている。

 読者にそれなりのITリテラシーがなければ、いかに『パワー・オフ』がすごいのかを理解できないかもしれないが、仮にITの知識が乏しくても楽しむことができるし、なにより今読んでも勉強になるという全人類必読の1冊である。

 

パワー・オフ (集英社文庫)

パワー・オフ (集英社文庫)

  • 作者:井上 夢人
  • 発売日: 1999/07/16
  • メディア: 文庫
 

 

1位  プラスティック(1994年)

 

 54個の文書ファイルが収められたフロッピイがある。冒頭の文書に記録されていたのは、出張中の夫の帰りを待つ間に奇妙な出来事に遭遇した主婦・向井洵子が書きこんだ日記だった。その日記こそが、アイデンティティーをきしませ崩壊させる導火線となる! 謎が謎を呼ぶ深遠な井上ワールドの傑作ミステリー。

 

 徹夜兵器となりうる井上夢人の最終到達点といえる超絶ミステリー。

不可解な謎がさらなる謎を呼び続ける強烈な展開に夢中になることは確実であり、しかも途中で真相が分かってしまったとしても、『プラスティック』に仕掛けられた真打となる渾身の一撃に驚嘆させられることだろう。

言うまでもなく、読み始めたら最後読み終わるまで何も手につかなくなるほどの凄まじい一気読み作品である。

 

プラスティック (講談社文庫)

プラスティック (講談社文庫)

 

 

番外編  風が吹いたら桶屋がもうかる(1997年)

 

 牛丼屋でアルバイトをするシュンペイにはフリーターのヨーノスケと、パチプロ並の腕を持つイッカクという同居人がいる。ヨーノスケはまだ開発途上だが超能力者である。その噂を聞きつけ、なぜか美女たちが次々と事件解決の相談に訪れる。ミステリ小説ファンのイッカクの論理的な推理をしり目に、ヨーノスケの能力は、鮮やかにしかも意外な真相を導き出す。

 

 ユーモア全開な作品だが、内容的には井上作品の中でも最も本格推理小説に近い内容となっている.....のかどうかは読んでみてのお楽しみ(笑)

 すべてがコントのようなワンパターンというなかなか尖った連作短編で、役に立たないけどすごい超能力と、当たるとは限らないけど極めて論理的な推理が導く論理的帰結は毎回空気が抜けてしまったような笑いをもたらす。

 

風が吹いたら桶屋がもうかる (集英社文庫)

風が吹いたら桶屋がもうかる (集英社文庫)

  • 作者:井上 夢人
  • 発売日: 2000/07/19
  • メディア: 文庫
 

 

 

もっと崇め奉られるべき

子どもにおすすめの小説|子どもを読書好きにする方法

子どもが読書をするメリット

細かいことを考えれば無限にメリットは出てきそうだが、シンプルに挙げるなら以下の通りになると考えている。
 
  1. IQが上がる
    これこそ最大のメリットである。
    IQを挙げるとされる行動の中でも、読書は最も優秀な行動の一つである。
    活字からその世界を創造し、泣いたり笑ったりするのは人間にしかできないことだからだ。

  2. 経済的に助かる
    新刊の単行本を買いまくれば話は別だが、図書館や青空文庫を利用すればただで済むというのは、親からすればありがたい。
 

なぜ読書嫌いになるのか

 この理由は断定できる。面白い本に出会う前につまらない本を読んでしまうことで、”読書=つまらない”という方程式が完成してしまうためである。

 続いてなぜ面白い本に出会わないかということついて説明したい。答えは単純でずばり保護者である親が本を読まないからである。

親は子どもが本を読むことは良いことだと考えているにもかかわらず、親自身が本を読まないせいで何を子どもに勧めればいいのか見当もつかない。

したがってお役所が選んだような推薦図書を勧めてしまうのである。
当然ながらそのような本はお堅くてつまらないので、読書嫌いの子どもがまた量産されるのである。

 

どうすれば読書好きになるのか

 親が読書好きであること以外に方法はない。

子どもがいる方なら言うまでもなく分かっているだろうが、子どもは勘弁してほしいくらい親の真似をする。

どんなに親が「本は良いから読め」といったところで、子どもは絶対に読まないだろう。というか子どもは命令するとますますやらなくなる。

親が面白そうに本を読んでいる姿を子どもの目に焼き付ければいいのである。

何も言う必要はないだろうが、なんなら子どもに「〇〇にはまだ早いかもしれないからゲームでもしてなさい」とでも言ってみよう。

子どもは親に内緒でこっそり本を読むようになるだろう。

 

読書をしない保護者へのおすすめ本

 子どもを本好きにしたいのなら、保護者である親が本好きになるしか方法はない。

しかしこの記事を読んでいただいている方は、どんな本を読めばいいのか分からないこという人もいるのかもしれない。

 そこで私が保護者におすすめな本を紹介したい。
選別する基準は面白いこと読みやすいことだけである。読書を通じて何かを学ぶなどというのは、読書好きが自動的に享受する恩恵であって、学びを目的に読書を試みたところで残念な結果が待っている。

 

1. 秘密 / 東野圭吾(1998年)

 

運命は、愛する人を二度奪っていく。
自動車部品メーカーで働く39歳の杉田平介は妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美と暮らしていた。長野の実家に行く妻と娘を乗せたスキーバスが崖から転落してしまう。 妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。 その日から杉田家の切なく奇妙な“秘密"の生活が始まった。 外見は小学生ながら今までどおり家事をこなす妻は、やがて藻奈美の代わりに 新しい人生を送りたいと決意し、私立中学を受験、その後は医学部を目指して共学の高校を受験する。年頃になった彼女の周囲には男性の影がちらつき、 平介は妻であって娘でもある彼女への関係に苦しむようになる。

 

 日本で一番売れている作家の売れまくっている作品であり、日本推理作家協会賞というその年で一番優れたミステリに贈られる歴史ある賞も受賞したすごい本である。

とりあえずめちゃくちゃ面白いのは保証するとして、子どものいる親にとって心を揺さぶりまくる内容になっている。

 

秘密 (文春文庫)

秘密 (文春文庫)

 

 

2. 夜のピクニック / 恩田陸(2004年)

 

高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて、歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために――。学校生活の思い出や卒業後の夢など語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。

 

 本屋大賞という面白い本であることを保証してくれる素晴らしい賞で大賞を受賞した作品である。もちろん面白いし、なによりすごい読みやすい。

どちらかというと若者向けの内容かと思いきや、大人が読んで学生時代の思い出に浸るという楽しみ方もできる傑作である。

 

夜のピクニック (新潮文庫)

夜のピクニック (新潮文庫)

  • 作者:陸, 恩田
  • 発売日: 2006/09/07
  • メディア: 文庫
 

 

3. イニシエーション・ラブ / 乾くるみ(2004年)

 

僕がマユに出会ったのは、代打で呼ばれた合コンの席。やがて僕らは恋に落ちて…。甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説―と思いきや、最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。「必ず二回読みたくなる」と絶賛された傑作ミステリー。

 

 小説には小説でしか味わえない楽しみというものがある。

その楽しみが読みやすい恋愛小説として体感できるのが『イニシエーション・ラブ』である。

「えッ......!?」という感覚を味わってみてほしい。

 

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

 

 

4. コンビニ人間 / 村田沙耶香(2016年)

 

「普通」とは何か?
現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作
36歳未婚、彼氏なし。コンビニのバイト歴18年目の古倉恵子。
日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、
「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる――。
「いらっしゃいませー!!」
お客様がたてる音に負けじと、今日も声を張り上げる。
ある日、婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて、
そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい、と突きつけられるが……。

 

 芥川賞=つまらない本というのがお約束である。

そんな中『コンビニ人間』だけは純文学でありながら、やたら面白いという特長があり、特にアラサー以降の年代で生きづらさを感じている人には最適である。

ページ数も短いのでサラッと読めるのも高ポイント。

 

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

 

 

5. 暗いところで待ち合わせ / 乙一(2002年)

 

視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。職場の人間関係に悩むアキヒロ。駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。奇妙な同棲生活が始まった――。

 

 天才と呼ばれる作家の最高傑作と言える1冊。

映画化もされている作品だが、繊細な描写は実写ではまず再現不能なものである。

圧倒的な優しさをぜひ体感してほしい。

言うまでもなく文章は平易でページ数も少ないので読みやすい。

 

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

  • 作者:乙一
  • 発売日: 2002/04/01
  • メディア: 文庫
 

 

6. 阪急電車 / 有川浩(2008年)

 

隣に座った女性は、よく行く図書館で見かけるあの人だった…。片道わずか15分のローカル線で起きる小さな奇跡の数々。乗り合わせただけの乗客の人生が少しずつ交差し、やがて希望の物語が紡がれる。恋の始まり、別れの兆し、途中下車―人数分のドラマを乗せた電車はどこまでもは続かない線路を走っていく。ほっこり胸キュンの傑作長篇小説。

 

 超売れまくり作家の人気作品である。

私は恋愛小説は滅多に読まないし、読んだとしても面白かったと思うことが少ない。
しかし『阪急電車』はとても構成がよくできていて、彼と彼氏だけの話ではなく、阪急電車をベースに紡がれる群像劇になっているので、単純な恋愛小説ではなくヒューマンドラマとして楽しむことができるのである。

また連作短編のため、読みやすさは完璧である。

 

阪急電車 (幻冬舎文庫)

阪急電車 (幻冬舎文庫)

  • 作者:有川 浩
  • 発売日: 2010/08/05
  • メディア: 文庫
 

 

7. 死神の制度 / 伊坂幸太郎(2005年)

 

こんな人物が身近に現れたら、彼/彼女は死神かもしれません──(1)CDショップに入りびたり(2)苗字が町や市の名前と同じ(3)会話の受け答えが微妙にずれていて(4)素手で他人に触ろうとしない。1週間の調査の後、死神は対象者の死に「可」「否」の判断を下し、「可」ならば翌8日目に死は実行される。ただし、病死や自殺は除外。まれに死神を感じる人間がいる。──クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う、6つの人生。

 

 連作短編という形式がとられていて、同じキャラクターが毎回登場するが、話自体は1話完結という体裁のためとても読みやすい。

 個々の作品の完成度も高く、伏線回収に定評のある作家だけに最後まで読めば感動が待っている。読後感も最高である。

 

死神の精度 (文春文庫)

死神の精度 (文春文庫)

 

 

8. 精霊の守り人 / 上橋菜穂子(1996年)

 

精霊の卵を宿す皇子チャグムを託され、命をかけて皇子を守る女用心棒バルサの活躍を描く物語。著者は2014年国際アンデルセン賞作家賞受賞。

老練な女用心棒バルサは、新ヨゴ皇国の二ノ妃から皇子チャグムを託される。精霊の卵を宿した息子を疎み、父帝が差し向けてくる刺客や、異界の魔物から幼いチャグムを守るため、バルサは身体を張って戦い続ける。建国神話の秘密、先住民の伝承など文化人類学者らしい緻密な世界構築が評判を呼び、数多くの受賞歴を誇るロングセラーがついに文庫化。痛快で新しい冒険シリーズが今始まる。

 

 子どもにおすすめな本というのは大人が読んでも面白くなければならない。

この本は児童書という扱いのため、もちろん子どもにおすすめな作品なのだが、大人が読んでもものすごく面白いという最高の本である。

そしてシリーズ作品のため続編があるのだが、すべての作品が傑作と言うありがたい作品なのである。

 

〇シリーズ紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

精霊の守り人 (新潮文庫)

精霊の守り人 (新潮文庫)

 

 

9. 青の炎 / 貴志祐介(1999年)

 

櫛森秀一は湘南の高校に通う17歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹との3人暮らし。その平和な家庭に、母が10年前に別れた男、曾根が現れた。曾根は秀一の家に居座って傍若無人に振る舞い、母の体のみならず妹にまで手を出そうとする。警察も法律も家族の幸せを取り返してはくれないことを知った秀一は決意した。自らの手で曾根を葬り去ることを……。完全犯罪に挑む少年の孤独な戦い。その哀切な心象風景を精妙な筆致で描き上げた、日本ミステリー史に残る感動の名作。

 

 大人が読んでも子どもが読んでも素晴らしい作品である。

主人公の男子高校生が母と妹を守るために完全犯罪を計画し、実行するという犯人が主役の倒叙ミステリと呼ばれる形式をとっている。

心理描写は素晴らしく、読後は何とも言えない感情が残るだろう。

 

青の炎 (角川文庫)

青の炎 (角川文庫)

  • 作者:貴志 祐介
  • 発売日: 2002/10/23
  • メディア: 文庫
  

 

10. 告白 / 湊かなえ(2008年)

 

「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして、第6回本屋大賞受賞のベストセラー。

 

 これまでに挙げた作品と異なり、かなりヘヴィで暗黒度の高い作品である。

イヤミスと呼ばれるジャンルの最高峰とされるだけあって、思わず目を背けたくなるほどの描写が続く。

 子どものいる親が読むことで真価を発揮する作品である。

 

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

  • 作者:湊 かなえ
  • 発売日: 2010/04/08
  • メディア: 文庫
 

 

 

子どもにおすすめな本

 工事中。

 まずはごめんなさいと言わせていただこう。

というのもすでに一定数のおすすめ本を考案したうえでこの記事を書き始めたのだが、いざ肝心な本項目を書こうとすると、少々基準に悩んでしまったのである。

どう迷ったかというと性的な描写暴力的な描写をどの程度容認するかを決めかねたのである。

 年齢指定はなぜか小説にはない。だがどう考えても良い子にはおすすめしてはならない本が溢れかえっている。古典的な名著も然りである

 そこでここまででいったんアップさせていただき、反響を確認しつつ考えをまとめたうえで更新することにする。

 

なおさすがにそれでは詐欺なので罪滅ぼしに上記の10選の中から、子どもにもおすすめな本を挙げておく。

 

  1. 夜のピクニック
  2. 暗いところで待ち合わせ
  3. 阪急電車
  4. 精霊の守り人

 

この作品は性的な描写や暴力描写はあまりないので安心しておすすめして良いだろう。

 

バカミスの最終到達点|『屋上』島田荘司(屋上の道化たち改題)

ゴッドオブミステリーの笑撃!!

 

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この表紙はかなりのチャレンジャー

 

作品説明

 島田荘司御大による『屋上』は講談社から2016年に出版された作品である。
文庫版のページ数は解説込みで548ページと常軌を逸したバカミスなのに結構な大ボリュームである。

 新本格の祖と称される伝説のミステリー作家がバカミスに全力投球するとどうなるかが分かるトンデモ本であり、Amazonレビューでは☆5と☆1と両極端な評価がなされている通り、はっきりと評価が分かれる作品である。

 本格推理小説マニアからすれば壁投げ本確定であり、純粋にミステリーやコメディとしてみれば素晴らしい作品ということになる。
伝説のメフィスト賞受賞作である『六枚のとんかつ』的なポジションだろう。

 私個人の意見としてはずばり神本である。
御手洗シリーズの中でも最高峰に魅力的な謎が提示されていて、なおかつトリック(笑)も登場人物も最高で笑いが止まらなかったのである。

 

以下、あらすじの引用。

自殺する理由がない男女が、次々と飛び降りる屋上がある。足元には植木鉢の森、周囲には目撃者の窓、頭上には朽ち果てた電飾看板。そしてどんなトリックもない。死んだ盆栽作家と悲劇の大女優の祟りか?霊界への入口に名探偵・御手洗潔は向かう。人智を超えた謎には「読者への挑戦状」が仕掛けられている!

 

屋上 (講談社文庫)

屋上 (講談社文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 2019/02/15
  • メディア: 文庫
 

 

島田御大ご乱心

 上記の通り、賞賛と批判という両極端なレビューが散見されるため、これはきっとやらかしたなと確信。
そもそも島田御大の作品は『占星術殺人事件』の時点でかなりブッ飛んでいるし、2作目の『斜め屋敷の犯罪』はすでにバカミスと言っても間違えではないようなものだった。つまり何が起きてもおかしくないのだった。

そしてこの『屋上』読み終えた結論から言うと、

 

 おバカ。

 

 バカミスとは聞いていたが、聞きしに勝る"そんなバカなっ!?"なトリック(と言っちゃっていいのかは不明)は賛否両論を巻き起こして当然なしろものだった。

 しかもトリックがおバカなだけではなく、何から何までがアホくさくて、島田荘司御大の遊び心を爆発させたと断言できる内容になっている。
本作を書いてる時の島田御大はきっとニヤニヤしていたに違いない(笑)

『斜め屋敷』の特大トリックに『暗闇坂』の悪魔的偶然をさらに強化して掛け合わせたようなクソバカさ加減に私は盛大な拍手を送りたい!!

そして私は『屋上』に低評価をした者に問うてみたい。

あなた、これが楽しめなくて人生何が楽しいのん?」とね。

 

どうなってるのこのフォント??

 一体なにを意図してやったのかさっぱり分からないのだが、一人称が変わるたびにフォントがおかしくなる。
フォントが変わるだけでこんなに文章の印象がガラッと変わってしまうものなのかと驚かされる....ひょっとして驚かすのが目的だったのだろうか(笑)

 一人称が苦行者の時に使用されるフォントはとにかく読みづらい。
目がチカチカしてしまい申したぞ。しかも何となくキラキラしてるフォントなのに内容はなかなか重いというギャップが痛い。

 

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この文字を読むのが苦行のような.....

 

 一人称がサンタクロースの時に使用されるフォントはまるでギャル文字のようにかわいらしいものである。
にもかかわらず文章は汚くて笑える言葉遣いが多くてこれまたギャップに笑わされてしまうのである。

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どんな話でもこのフォントだと緊張感がなくなりそう

 

 宇宙人ってなんだよ.....というツッコミも入れたくなるし、話のアホ臭さも相まってこのフォントは逆に違和感がなくなっている。

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なんとなく宇宙人感のするフォントだ

 

魅力的な謎、屋上の呪い

 『屋上』の事件はまさしく島田御大の十八番である、怪談としか言いようがない謎の中でもトップレベルの不可解さに仕上がっている。

いわく付きの盆栽がところ狭しと敷き詰められた銀行の屋上。
盆栽に水をやりに行ったある秘密を共有する係長の部下たちが飛び降り自殺をしてしまい、ついには係長までもが飛び降り自殺してしまう。
しかしその人たちはいずれも「絶対に自殺なんかしませーん!!」という人たちだった。

  • トム・クルーズ(に似た人)との結婚を控えてる女性
  • 間もなく子どもが生まれる男性

幸せ絶頂な人たちがなぜ自殺してしまうのか気になりまくりである。

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こんな感じの人たちが数分後には飛び降り自殺


 事件の真相はだいたいこんな感じだろう.....という予測はできたが、想定を超えるアホっ振りに空いた口が塞がらなくなる。
というか島田御大ならではのトラップが仕掛けられているので、そんなふざけた遊び心も本格推理マニアにはイラつくのかもしれない。

 しかしどいつもこいつも俺は死なん的なポジティブシンキングが不幸を招いたともいえるのだろう。
もっと碇シンジ君的なネガティブシンキングで綾波に守ってもらうくらいのヘタレっぷりが一番安全なのだと思う。

 

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あなたは死なないわ 私が守るもの

 

フザけ過ぎ.....そしてみんなバカ過ぎる。

 御手洗シリーズだということで本格推理小説をイメージされる方は多いと思う。
しかし『屋上』は本格推理小説ではなく、本格おバカコメディ小説なのである。

 島田御大は40代くらいまでの頃の著者近影を見ると、どの写真もなかなか怖い顔をしているし、還暦を超えたあたりの近影を見るととても知的なお姿をされているので、作風もさぞかしお堅いものかと思う方もいるかもしれない。
しかし島田御大は間違いなくコッチ側(お笑い界)の人間なのである。

 したがって還暦を過ぎてこのようなお笑い作品を書くのはさぞかし面白かったのだと思う。

 『屋上』においては狂人なはずの御手洗が1番真面目な人に見えてしまうくらい、石岡君含めあらゆる登場人物がおバカに徹している。
主役となる銀行員みんなのギャクがキレッキレ過ぎるせいで、むしろ後半御手洗が登場してからの方が、退屈に感じるほどなのだ。

私は電車の中で本を読むことが多いので、危険なにおいを嗅ぎ取ると笑わないよう細心の注意をはらっていたのだが、2回ほど我慢しきれなくなり電車の中で吹いてしまった。周りの人からはさぞかし恐れられたことだろう、ごめんなさい。

 

 

私が爆笑して死にかけたセリフ

・サンタクロース

こんな銀行ぶっつぶしてやろうか

 

・関西弁と宇宙人

ありがとう、来てもろて

君、大阪の人?

はいそうです。なんで解ったん

 そしたら男(宇宙人)は笑った。

 いやいや....私が笑ってしまったよ.....。

 

アホ過ぎる解答

以下、事件に関わってくる要素である。

  • 呪いの盆栽
  • 大女優の怨念
  • プルコ(グリコ)の看板
  • 痴漢する苦行者
  • 轟く雷鳴
  • 消えたサンタクロース
  • 降臨せし宇宙人
  • 関西弁女、一世一代の攻め
  • ロールス・ロイス
  • ドンペリ飲みまくり....etc


わけの分からない謎がばらまかれ、その一つ一つが導く論理的な帰結とは!?
( ゚д゚ )......。

 こんな絵文字も使いたくなりますよ....。

 

実は島田作品のエッセンスが詰まっている

 批判する意見が多いが、この『屋上』こそは島田御大の魅力と悪い癖を高密度に凝縮して、余計なものを濾過した奇跡の作品なのだ。

 島田荘司と言ったら何と言っても伝説のデビュー作『占星術殺人事件』だろうし、おすすめするとなればほとんどの人は占星術を紹介するだろう。
たしかに『占星術殺人事件』には世界最強クラスのトリックが使われているだけでなく、メインの事件以外の2つの事件もかなり豪華なトリックが使われている。

 ただし冒頭が難解なせいで読みずらい印象を与えたり、グロ描写や性的な描写があるため必ずしも万人に勧められる内容だとは言い難い。

 そこで島田布教に役立つのが『屋上』である。
読みやすくて笑えるし、トリック(笑)はすごいし、登場人物は魅力的な人ばかり....おすすめしない訳にはいかない。

他の超傑作群を差し置いて、最初の1冊にしてもいいくらいだとも思っている。
島田御大のお力添えでデビューした新本格ムーブメントの作家の方々が『屋上』を読んだら果たしてどんな感想を持つのだろうか...(ちなみに解説は乾くるみ)

グダグダと書いてしまったが、本作は面白い。
そしてこの本を楽しめるようであれば、バカミスと呼ばれるようなギャグに等しい作品も楽しめることだろう

 

屋上 (講談社文庫)

屋上 (講談社文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 2019/02/15
  • メディア: 文庫
 

 

 

村田沙耶香|作品一覧&読む順番とおすすめランキング10選

 狂気に歪んだ世界の女神

作品一覧

 村田作品は短編と中編が多く、長編作品もさほど長くないので全体的に読みやすい本が多い。ただ単純に文章が読みずらい作品や思想がブッ飛び過ぎていて常人ではついていけない作品もあるのが特徴だ。

 ごく稀にまともな作品もあるのだが、短編だろうが長編だろうが全体的に危険な村田ワールドが全開である。

 

小説

  1. 授乳|短編集(2005年)
  2. マウス|長編(2008年)
  3. ギンイロノウタ|中編集(2008年)
  4. 星が吸う水|中編集(2010年)
  5. ハコブネ|長編(2011年)
  6. ダイマトビラ|長編(2012年)
  7. しろいろの街の、その骨の体温の|長編(2012年)
  8. 殺人出産|短編集(2014年)
  9. 消滅世界|長編(2015年)
  10. コンビニ人間|長編(2016年)
  11. 地球星人|長編(2018年)
  12. 生命式|短編集(2019年)
  13. 半変身(かわりみ)|中編集(2019年)
  14. 丸の内魔法少女ラクリーナ|短編集(2020年)

 

エッセイ

  1. きれいなシワの作り方〜淑女の思春期病(2015年)
  2. となりの脳世界(2018年)
  3. 私が食べた本(2018年)

 

読む順番

 村田作品は危険な作品が多い。したがって徐々に狂気の村田ワールドに慣れていかなければ、あまりのショックに嫌いになってしまうことだろう。(まぁ好きになったり信者になる人もいるかもしれないが。)

危険な要素は大まかに挙げると以下の通りである。

 

  1. エロい
    女性作家特有のねちっこいいやらしさを、無感情に淡々と記載するパターンが多いため読者の男女を問わず無理な人は無理だろう。
  2. グロい
    『殺人出産』以降の作品ではショッキングなグロ描写が多い。しかもエロさと同様に何の感情もなく無機的な描写なのが恐ろしさに拍車をかける。
  3. 危険思想
    これこそが村田ワールドの真骨頂なのだが、一部の作品ではこの人絶対にキチ〇イだ...と思わざるを得ない危険な思想が描かれている。
  4. 読みずらい
    全体的には読みやすい作品が多いのだが、いくつかの作品は純文学的な要素が強めで物語性が乏しく読みずらい。

 

 上記の内容を受けてより安全に村田作品を楽しみたいのなら、危険度が低い作品でで少しずつ慣れていくのが無難だと思う。要は過激な作品や読みずらい作品を後回しにしている。

①最初に読むべき本

『マウス』
コンビニ人間

どちらの作品も過剰に危険な描写は少なくとてもマイルドである。話も面白い部類に入るため最初に読むには最適だ。

②村田ワールドに慣れてきたら読むべき本

『星が吸う水』
『ハコブネ』
『しろいろの街の、その骨の体温の』
『消滅世界』
『丸の内魔法少女ラクリーナ』

エロい描写や狂った描写が目立ち始めるが、読みやすくて完成度の高い作品が多いのでドン引きはしないと思う。

 ③村田LOVEになったら読むべき本

 

『授乳』
『ギンイロノウタ』
『殺人出産』
『生命式』

授乳やギンイロノウタは純文学度が高めで読みずらい。そして微妙。
殺人出産と生命式はかなりおすすめだが、グロやキチ〇イ度が高いのでいきなり読むと「えっ....この人大丈夫??」となること請け合いである。

④村田信者向け

『タダイマトビラ』
『地球星人』

 タダイマトビラはそこそこまともに見せかけて、最もマニアックな思想が出ているので常人が読んでも理解不能だろう。地球星人はマジキチ本なので取り扱い注意だ。

 

作品ランキング

いかに村田ワールドが発揮されているか”と”話が面白いか”を基準に格付けをした。そのためランキング上位の作品ほど危険な作品が多い傾向になったので、上記の読む順番をご参考いただき、ヤバい本は回避した方が得策かもしれない。
では村田ワールド全開な作品をランキング形式でご紹介していく。

 

10位  星が吸う水(2010年)

 

 恋愛ではない場所で、この飢餓感を冷静に処理することができたらいいのに。「本当のセックス」ができない結真と彼氏と別れられない美紀子。二人は「性行為じゃない肉体関係」を求めていた。誰でもいいから体温を咥えたいって気持ちは、恋じゃない。言葉の意味を、一度だけ崩壊させてみたい。表題作他一篇。

 
 村田作品で"性"を扱うものが多いが、本作はそのテーマ、特にセックスに特化した内容になっていてかなり過激。
表題作と『ガマズミ航海』という2作収録されている中編集だが、どちらもめちゃくちゃエロい.....いや、これはエロ過ぎる。

表題作ではとにかく女が"勃起"だの"抜く"だの独特のエロい表現がさらっと連発されていて大変危ない。タイトルの意味は....酷すぎて笑うしかない。
女は射精ができないのがツライのか?

 もう1編の『ガマズミ後悔』は本当のセックスを探求する話なのだが、「膣で人間の肉片=ペニスをしゃぶる」など表現が超強烈であり、本当のセックス探求シーンがエロマックスである。

星が吸う水 (講談社文庫)

星が吸う水 (講談社文庫)

 

 

9位  マウス(2008年)

 

 私は内気な女子です――無言でそう訴えながら新しい教室へ入っていく。早く同じような風貌の「大人しい」友だちを見つけなくては。小学五年の律(りつ)は目立たないことで居場所を守ってきた。しかしクラス替えで一緒になったのは友人もいず協調性もない「浮いた」存在の塚本瀬里奈。彼女が臆病な律を変えていく。

 
"他人の目が気になりまくる女性"と”他人の目はまったく気にならないが人間が怖い女性”の話。
村田作品の中で唯一ブッ飛んだ表現や性的な描写が無い作品であり、村田ワールドでよく扱われるテーマである、スクールカースト他人の目を気にすることについて的確に書かれている。
 パンチが足りないかもしれないが、物語としてしっかりしているので無難におすすめできる作品である。

マウス (講談社文庫)

マウス (講談社文庫)

 

 

8位  ハコブネ(2011年)

 

十九歳の里帆は男性とのセックスが辛い。自分の性に自信が持てない彼女は、第二次性徴をやり直そうと、男装をして知り合いの少なそうな自習室に通い始める。そこで出会ったのは、女であることに固執する三十一歳の椿と、生身の男性と寝ても実感が持てない知佳子だった。それぞれに悩みを抱える三人は、衝突しあいながらも、自らの性と生き方を模索していく。芥川賞作家が赤裸々に紡いだ話題作。

 
『ハコブネ』は他の村田作品に共通するテーマである""に特化した内容だが、男と女以外の性別やLGBTといった"性別"がテーマになっている。
エロ描写の過激さは『星が吸う水』よりは低いものの、『ハコブネ』もかなりエロい。

『ハコブネ』の思想は強烈である。
生物感覚より物体感覚が勝るという(?)星の欠片女の思考がとにかくすごい。
『般若心経』の色即是空を悟ったような人なのだが、テラ=地球とセックスという途方もない珍プレイを描いている。

 すべての問題をセックスに集約させているようで、人によっては嫌悪感も出る話だと思うが、刺さる人には刺さるであろう傑作だ。

ハコブネ (集英社文庫)

ハコブネ (集英社文庫)

 

 

7位  しろいろの街の、その骨の体温の(2012年)

 

 クラスでは目立たない存在の結佳。習字教室が一緒の伊吹雄太と仲良くなるが、次第に彼を「おもちゃ」にしたいという気持ちが高まり、結佳は伊吹にキスをするのだが―女の子が少女へと変化する時間を丹念に描く、静かな衝撃作。第26回三島由紀夫賞、第1回フラウ文芸大賞受賞作。

 
 扱うテーマは『マウス』とほとんど同じだが、こちらはスクールカーストの要素が強い。またかなり性的な表現が強く、人によってはドン引きすることになるだろう。

スクールカーストの最下層の女とスクールカーストの最上層の男の恋の話だが、そこには存在する様々な葛藤見事に描かれている。
だが、クレイジー沙耶香だけに描写は18禁である。”精通と初潮を見せっこ”や女子中学生による強制フェラチオなどいくら何でもやり過ぎである。

 物語としては最もまとまった完成度の高い作品なので、強烈な描写を気にしなければ大変おすすめである。

しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)

しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)

 

 

6位  タダイマトビラ(2012年)

 

 母性に倦んだ母親のもとで育った少女・恵奈は、「カゾクヨナニー」という密やかな行為で、抑えきれない「家族欲」を解消していた。高校に入り、家を逃れて恋人と同棲を始めたが、お互いを家族欲の対象に貶め合う生活は恵奈にはおぞましい。人が帰る所は本当に家族なのだろうか?「おかえり」の懐かしい声のするドアを求め、人間の想像力の向こう側まで疾走する自分探しの物語。

 

オナニーをしよ、ニナオ
ニナオ。ね、ほら、オナニーだよ
はじめるよ

サイコな母の影響で家庭崩壊した家庭で家族欲を満たすためのオナニー、カゾクヨナニーにふける主人公。

本作は"家族"がテーマになっているかと思いきや、仏教の色即是空を邪悪に解釈したような開いた口が塞がらない、ブッ飛び過ぎた衝撃のラストが待っている。

もう苦しくないよ。カゾクというシステムの外に帰ろう

この作品は説明不可能。かなりの信者向けの作品だが村田思想が最も深淵まで覗くことができる作品である。

タダイマトビラ (新潮文庫)

タダイマトビラ (新潮文庫)

 

 

5位  生命式(2019年)

 

 死んだ人間を食べる新たな葬式を描く表題作のほか、著者自身がセレクトした脳そのものを揺さぶる12篇。文学史上、最も危険な短編集

 

 最高峰に狂った小説である。特に表題作。

コンビニ人間』を発表してからさらに頭のネジがブッ飛んでしまった著者の短編集であり、1作品が平均30ページ前後のため非常に読みやすく、効率よくまた幅広く村田思想を体験できる傑作である。

 ただしマイルドな作品を何作か読んでからではないと村田沙耶香をいきなり嫌いになる可能性が高いので要注意。

 

西加奈子さんが非常にお上手なコメントを書いているので引用する。

自分の体と心を完全に解体することは出来ないけれど、
この作品を読むことは、限りなくそれに近い行為だと思う。
――西加奈子(作家)

 

生命式

生命式

 

 

4位  地球星人(2018年)

 

 私はいつまで生き延びればいいのだろう。いつか、生き延びなくても生きていられるようになるのだろうか。地球では、若い女は恋愛をしてセックスをするべきで、恋ができない人間は、恋に近い行為をやらされるシステムになっている。地球星人が、繁殖するためにこの仕組みを作りあげたのだろう―。常識を破壊する衝撃のラスト。村田沙耶香ワールド炸裂!

 

 まさに狂気の結晶であり、閲覧注意の化身である。
完全に頭のネジがブッ飛んでしまったのか.....『コンビニ人間』を読んでファンになった読者が読んだら卒倒するほどの狂った作品となっている。

著者の作品のテーマとなっている要素をより高い視点でまとめて、極限まで凶悪に書ききったといったところか。

"普通"の人は洗脳されて地球星人になった人であり、主人公たちのように"普通"ではない人は洗脳され損なった人となる。

当然洗脳されていない人は地球では生きづらいのでポハピピンポボピア星人として生きていくのだが.....。

「精通前の小学生セックス」やら「"ごっくんこ"と称した小学生イラマチオ」、さらにはサイコな殺戮、挙げ句の果てには禁断のご法度「○○食い」と完全に限界突破した変態キチガイサイコホラーに仕上がっている。

地球星人

地球星人

 

 

3位  殺人出産(2014年)

 

 今から百年前、殺人は悪だった。10人産んだら、1人殺せる。命を奪う者が命を造る「殺人出産システム」で人口を保つ日本。会社員の育子には十代で「産み人」となった姉がいた。蝉の声が響く夏、姉の10人目の出産が迫る。未来に命を繋ぐのは彼女の殺意。昨日の常識は、ある日、突然変化する。表題作他三篇。

 
 『殺人出産』は頭がおかしい中編である表題作と、それに勝るとも劣らないこれまた危険な3作の短編集である。

 表題作は『消滅世界』とほとんど同じ世界観だが、10人産んだら1人殺せるというキチガイシステムにより恐ろしいほど不気味な印象だ。
ある意味合理的ではあるものの、違和感は強く10人産んだ後の殺戮シーンは狂気の一言。狂っている。

 2作目『トリプル』はいわゆる3Pの話だ。
ただAVなどにありがちなエロいやらせな3Pではなく、3人1組の恋愛形態となっている。
短編ながら猛烈なインパクトである。そして激エロである。

 3作目『清潔な結婚』は性別の無い結婚、恋愛の延長線ではなく、恋愛感情の無い、つまりセックスをしない結婚をした夫婦の話である。

ミズキさんも33歳でしょう?そろそろ、卵子を受精させたほうがいいと思うのだけれど」こんなシュールなセリフが出てくる。

 セックス抜きでも子どもは欲しているため、クリーンブリード(清潔な繁殖)なる変態的な生殖行為をすることになるのだが、とにかくコミカルでエロくてブラックユーモアにしか見えない物語である。

4作目『余命』
医療が発達して「死」が無くなった世界の話。僅か数ページの短編だがキチガイな雰囲気が濃厚に漂う。

殺人出産 (講談社文庫)

殺人出産 (講談社文庫)

 

 

2位  消滅世界(2015年)

 

 セックスではなく人工授精で、子どもを産むことが定着した世界。そこでは、夫婦間の性行為は「近親相姦」とタブー視され、「両親が愛し合った末」に生まれた雨音は、母親に嫌悪を抱いていた。清潔な結婚生活を送り、夫以外のヒトやキャラクターと恋愛を重ねる雨音。だがその“正常”な日々は、夫と移住した実験都市・楽園で一変する…日本の未来を予言する傑作長篇。


 人工授精の発達により生殖行為としてのセックスが無くなり、夫婦間のセックスは近親相姦とされる近未来、本当にあり得そうな世界の話。

 ただ生殖行為としてのセックスが無くなっただけで、かなり非人間的な世界になるものだと思うが、『消滅世界』ではさらに一歩先に進んだ、もはや狂気と化した実験都市が登場する。
 そこではセックスが無くなった世界での家族の在り方を掘り下げたものとなっており、恐るべき世界観はぜひ実際に読んで確かめてみてほしい。

消滅世界 (河出文庫)

消滅世界 (河出文庫)

 

 

1位  コンビニ人間(2016年)

 

 「いらっしゃいませー!」お客様がたてる音に負けじと、私は叫ぶ。古倉恵子、コンビニバイト歴18年。彼氏なしの36歳。日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる。ある日婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて…。現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作。

 

 村田作品の中では表現はかなりマイルドではあるものの、内容は安定のエクストリーム志向なので安心だ。クレイジー沙耶香全開である。

 芥川賞受賞作だけあって、村田ワールドが無駄なくコンパクトに凝縮された大傑作である。

 サイコな36歳独身処女のコンビニバイトと35歳の超絶ダメ男を通して"普通"とは何かという事を考えさせられる素晴らしい内容である。
ほとんどの読者は「普通とは何なのか考えさせられました。」といった"普通"の感想を述べられているが、『コンビニ人間』の本当の面白さは36歳独身処女と35歳童貞ニートの掛け合いである。私はツボにはまって腹筋崩壊寸前になった。

 アラサーを過ぎた世代であれば、男女や既婚未婚を問わず楽しめる要素が多いので最強におすすめである。

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

 

 

クレイジー沙耶香はどこに向かうのか

島田荘司|代表作品一覧とおすすめランキング20選

 ゴッドオブミステリー

代表作品一覧

 詳細は別の記事に作中年表と合わせて、島田御大への畏敬の念込めて気合を入れてまとめたので以下のURLをご参照いただきたい。

本記事では御手洗シリーズと吉敷シリーズの一覧のみに留める。

 

御手洗シリーズ

  1. 占星術殺人事件(1981年)
  2. 斜め屋敷の犯罪(1982年)
  3. 御手洗潔の挨拶|短編集(1987年)
  4. 異邦の騎士(1988年)
  5. 御手洗潔のダンス|短編集(1990年)
  6. 暗闇坂の人喰いの木(1990年)
  7. 水晶のピラミッド(1991年)
  8. 眩暈(1992年)
  9. アトポス(1993年)
  10. 龍臥亭事件(1996年)
  11. 御手洗潔のメロディ|短編集(1998年)
  12. Pの密室|中編集(1999年)
  13. 最後のディナー|短編集(1999年)
  14. ハリウッド・サーティフィケイト(2001年)
  15. ロシア幽霊軍艦事件(2001年)
  16. 魔神の遊戯(2002年)
  17. セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴(2002年)
  18. 上高地切り裂きジャック|中編集(2003年)
  19. ネジ式ザゼツキー(2003年)
  20. 龍臥亭幻想(2004年)
  21. 摩天楼の怪人(2005年)
  22. 溺れる人魚|短編集(2006年)
  23. UFO大通り|中編集(2006年)
  24. 犬坊里美の冒険(2006年)
  25. 最後の一球(2006年)
  26. リベルタスの寓話|中編集(2007年)
  27. 進々堂世界一周 追憶のカシュガル|短編集(2011年)
    【改題】御手洗潔進々堂珈琲
  28. 星籠の海(2013年)
  29. 屋上の道化たち(2016年)
    【改題】屋上
  30. 御手洗潔の追憶|短編集(2016年)
  31. 鳥居の密室 世界にただひとりのサンタクロース(2018年)

 

吉敷シリーズ

  1. 寝台特急はやぶさ」1/60秒の壁(1984
  2. 出雲伝説7/8の殺人(1984
  3. 北の夕鶴2/3の殺人(1985)
  4. 消える「水晶特急」(1985)
  5. 確率2/2の死(1985)
  6. Yの構図(1986)
  7. 灰の迷宮(1987)
  8. 夜は千の鈴を鳴らす(1988)
  9. 幽体離脱殺人事件(1989)
  10. 奇想、天を動かす(1989)
  11. 羽衣伝説の記憶(1990)
  12. ら抜き言葉殺人事件(1991)
  13. 飛鳥のガラスの靴(1991)
  14. 涙流れるままに(1999)
  15. 吉敷竹史の肖像|短編集(2002)
    【改題】光る鶴
  16. 盲剣楼奇譚(2019)

 

御手洗&吉敷関連作品

  1. 展望塔の殺人|短編集(1987年)
  2. 毒を売る女|短編集(1988)
  3. 切り裂きジャック百年の孤独(1988)
  4. 踊る手なが猿|短編集(1990)

 

⇩作中の年表と詳細な作品一覧

kodokusyo.hatenablog.com

 

 

作品ランキング

  多作なうえに超傑作のオンパレードなため10選では到底選別できず20選にしたのだが、それでも絞るのは困難を極めた.....というかほぼ無理ゲー。

 ランキング下位の作品ですら、他のミステリー作家を木っ端微塵に粉砕するほどの強烈な作品が集結しているので、もう全部おすすめである。

 

20位  出雲伝説 7/8の殺人(1984年)

 

 山陰地方を走る6つのローカル線と大阪駅に、流れ着いた女性のバラバラ死体!なぜか首はついに発見されなかった。捜査の結果、殺された女は死亡推定時刻に「出雲1号」に乗車していたらしい。休暇で故郷に帰っていた捜査一課の吉敷竹史は、偶然にもこの狂気の犯罪の渦中に…。本格トラベル・ミステリーの力作。

 

 吉敷シリーズの2作目。

はっきり言ってこの作品を本当に20位にしてしまってよいものかと悩みまくったくらいの傑作である。

当時は”バラバラの島田”と”人攫いの岡嶋”と称されていただけあって、バラバラ殺人のトラベルミステリーである。

出雲伝説や八岐大蛇、女の怨念など純度100%の島荘である。

 

 

19位  夏、19歳の肖像(1985年)

 

 バイク事故で入院中の青年が、病室の窓から目撃した「谷間の家」の恐るべき光景!ひそかに想いをよせる憧れの女性は、父親を刺殺し工事現場に埋めたのか?退院後、青年はある行動を開始する―。青春の苦い彷徨、その果てに待ち受ける衝撃の結末!青春ミステリー不朽の名作。

 

 青春ミステリーの傑作であり、短いページ数のノンシリーズ作品なので、島田荘司の本を読みたいけど、『占星術殺人事件』は冒頭が難しそうだし、ページ数が多いし、グロそうだし....と感じる方には最適の作品。

 さあ、盗んだバイクで走りだそうではありませんか。

 

新装版 夏、19歳の肖像 (文春文庫)

新装版 夏、19歳の肖像 (文春文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 2005/05/10
  • メディア: 文庫
 

 

18位  毒を売る女(1988年)

 

 娘は名門幼稚園に入り、家も手に入れた。医者である夫の仕事も順調で、全てがうまくいっているはずだった。あの女があんな告白をするまでは―。人間が持つ根源的な狂気を描いた圧巻の表題作をはじめ、御手洗潔シリーズの傑作「糸ノコとジクザグ」からショートショートまで、著者の様々な魅力が凝縮した大充実の傑作短篇集!

 

 あらすじの通りバラエティーに富んだ作品集であり、幻想的でマニアックな作品もあるが、島田作品のエッセンスの大半が詰まっている。

 センスに満ち溢れた隠れ御手洗シリーズの「糸ノコとジクザグ」も素晴らしいが、なんと言っても表題作が強烈。

邪悪な女性心理を書かせたら、女性作家ですれ凌ぐのではないかと思われる島田御大の悪質なイヤミスが堪能できる。

 

改訂完全版 毒を売る女 (河出文庫)

改訂完全版 毒を売る女 (河出文庫)

 

 

17位  御手洗潔のメロディ(1998年)

 

 何度も壊されるレストランの便器と、高名な声楽家が捜し求める美女。無関係としか思えない2つの出来事の間に御手洗潔が存在するとき、見えない線が光り始める。御手洗の奇人ぶり天才ぶりが際だつ「IgE」のほか大学時代の危険な事件「ボストン幽霊絵画事件」などバラエティ豊かな4つの傑作短編を収録。

 

 タイトルに御手洗を冠した短編集には、本作の他に『御手洗潔の挨拶』と『御手洗潔のダンス』の2作があり、いずれも優れた傑作だが、個人的には『御手洗潔のメロディ』を推薦したい。

「IgE」は御手洗シリーズの中でも御手洗がかなりブッ飛んでいて爆笑必至であり、なおかつ島荘ならでは訳の分からない謎が楽しめる。
事件の起きない「SIVAD SELIM」は御手洗シリーズの中でも素晴らしい作品である。

ちなみにアーノルド・シュワルツェネッガーが登場します(笑)

 

御手洗潔のメロディ (講談社文庫)

御手洗潔のメロディ (講談社文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 2002/01/16
  • メディア: 文庫
 

 

16位  ロシア幽霊軍艦事件(2001年)

 

 箱根、富士屋ホテルに飾られていた一枚の写真。そこには1919年夏に突如芦ノ湖に現れた帝政ロシアの軍艦が写っていた。四方を山に囲まれた軍艦はしかし、一夜にして姿を消す。巨大軍艦はいかにして“密室”から脱したのか。その消失の裏にはロマノフ王朝最後の皇女・アナスタシアと日本を巡る壮大な謎が隠されていた―。御手洗潔が解き明かす、時空を超えた世紀のミステリー。

 

 海と繋がっていない芦ノ湖に巨大軍艦が突如現れて消えたという、壮大な謎を解き明かすスケールがデカすぎる物語。

ロマノフ王朝の秘密について島田御大の考えが反映されていて、これこそが本当のミステリーだ!と叫びたくなる内容になっている。

 はっきり言ってこんなとてつもない作品が書けるのは島田御大以外にはまずありえないと思われる。もはやこれはSFだよ。

 

 

15位  透明人間の納屋(2003年)

 

 昭和52年夏、密室状態のホテルの部屋から一人の女性が消え失せ、海岸で死体となって発見された。孤独な少年・ヨウイチの隣人で、女性の知人でもあった男は「透明人間は存在する」と囁き、納屋にある機械で透明人間になる薬を作っていると告白する。混乱するヨウイチ。心優しき隣人は犯人なのか? やがて男は外国へ旅立ち、26年後、一通の手紙がヨウイチのもとへ届いた。そこには驚愕の真相が記されていた! 

 

 講談社の児童向け企画のレーベルであるミステリーランドから発表された作品だが、謎は極めて怪奇的なものであり大人が読んでも引き込まれることは必至である。

ノンシリーズであり、短めな物語の中に島田作品の魅力が凝縮されているため、初めて島田作品に触れる方にも特におすすめな1冊。

 また児童向けの企画だというのに一切の手加減がない島田御大の人柄にも憧れる。

 

透明人間の納屋 (講談社文庫)

透明人間の納屋 (講談社文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 2012/08/10
  • メディア: 文庫
 

 

14位  斜め屋敷の犯罪(1982年)

 

 北海道の最北端・宗谷岬に傾いて建つ館――通称「斜め屋敷」。雪降る聖夜にこの奇妙な館でパーティが開かれたが、翌日、密室状態の部屋で招待客の死体が発見された。人々が恐慌を来す中、さらに続く惨劇。御手洗潔は謎をどう解くのか!? 日本ミステリー界を変えた傑作が、大幅加筆の改訂完全版となって登場! 

 

 言わずと知れた究極の密室殺人を扱った話であり、密室の完成度は完璧でどう考えても不可能犯罪である。不気味な人形が登場するなど怪奇現象としか言いようのない事件は見ものである。

そして歴史に名を残すであろう伝説のトリックを存分に味わってみてほしい。

 この作品の隠れたポイントはは登場人物の描写であ。女同士の見苦しい喧嘩はあまりにも面白すぎる。

 

改訂完全版 斜め屋敷の犯罪 (講談社文庫)

改訂完全版 斜め屋敷の犯罪 (講談社文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 2016/01/15
  • メディア: 文庫
 

 

13位  北の夕鶴2/3の殺人(1985年)

 

 北の大地で壮大なトリックが展開される傑作ミステリー。
占星術殺人事件』『奇想、天を動かす』などと並び称される名作!

離婚した妻・通子から掛かってきた一本の電話。
ただ、「声が聞きたかった」と言うだけの電話を不審に思った吉敷は、通子を追って上野駅へ向かう。

発車した〈ゆうづる九号〉に通子の姿を認めた吉敷だが、翌日、車内から通子と思われる死体が発見された。
通子の足跡をたどる吉敷は、彼女が釧路で殺人事件の容疑者となり、姿を消していたことを知る。

次々と降りかかる難事に身も心も傷だらけになりながら、別れた妻の無実を証明するため盛岡、そして釧路へと吉敷の捜査行は続く。

ハードボイルドと超絶トリックを融合させた驚異の傑作ミステリー!

 

 島田御大のすべての要素が詰まったと言っても過言ではない大傑作。

オカルトとしか言いようがない尋常ではない事件と、島田流のラブストーリーが合わさった熱い物語である。

 本作のトリックはもともとは御手洗シリーズで使う予定だったというだけあって、バカミスすれすれのアルティメットな離れ業が爆裂する。

 

北の夕鶴2/3の殺人 (光文社文庫)

北の夕鶴2/3の殺人 (光文社文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 1988/07/01
  • メディア: 文庫
 

 

12位  異邦の騎士(1988年)

 

 失われた過去の記憶が浮かびあがり男は戦慄する。自分は本当に愛する妻子を殺したのか。やっと手にした幸せな生活にしのび寄る新たな魔の手。名探偵御手洗潔の最初の事件を描いた傑作ミステリ『異邦の騎士』に著者が精魂こめて全面加筆修整した改訂完全版。幾多の歳月を越え、いま異邦の扉が再び開かれる。

 

 島田御大の事実上の処女作であり、御手洗&石岡君最初の事件である。

 

ミステリーとしても優秀なのはもちろんのこと、島田御大のストーリーテラーとしての才能が溢れる至高のラブストーリーである。

記憶を無くした"俺"の正体と良子の謎に迫る物語は涙無しでは語れず、ラストはそこはかとないせつなさが残る。

『異邦の騎士』を読むと100%御手洗シリーズを好きになるが、この作品までは必ず順番通りに読まなければならない。

 

異邦の騎士 改訂完全版

異邦の騎士 改訂完全版

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 1998/03/13
  • メディア: 文庫
 

 

11位  奇想、天を動かす(1989年)

 

 浅草で浮浪者風の老人が、消費税12円を請求されたことに腹を立て、店の主婦をナイフで刺殺した。だが老人は氏名すら名乗らず完全黙秘を続けている。この裏には何かがある。警視庁捜査一課の吉敷竹史は、懸命な捜査の結果、ついに過去数十年に及ぶ巨大な犯罪の構図を突き止めた。―壮大なトリックを駆使し、本格推理と社会派推理とを見事に融合させた傑作。

 

 島田御大が提示する謎の中でも最強レベルにブッ飛んだ謎を扱った作品であり、本格ミステリと社会派ミステリが融合された超傑作である。

とにかく謎が謎過ぎてヤバいのが特徴のため、ミステリー好きは絶対に読まなければならないだろう。 死んだピエロが消えたり、電車が爆発したり、灰色の巨人が現れたりとありえないことこの上ない。

 この作品を発表して以降、島田御大はミステリーの限界を突破した作品を連発するようになる。

 

奇想、天を動かす (光文社文庫)

奇想、天を動かす (光文社文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 1993/03/01
  • メディア: 文庫
 

 

10位  切り裂きジャック百年の孤独(1988年)

 

 1988年、西ベルリンで起きた謎の連続殺人。5人の娼婦たちは頚動脈を掻き切られ、腹部を裂かれ、内臓を引き出されて惨殺された。19世紀末のロンドンを恐怖の底に陥れた“切り裂きジャック”が、100年後のベルリンに甦ったのか? 世界犯罪史上最大の謎「切り裂きジャック事件」を完全に解き明かした、本格ミステリー不朽の傑作。

 

 伝説の怪事件、切り裂きジャックについて島田御大の回答が示された1冊であり、現代のドイツで起きた怪事件と100年前の切り裂きジャック事件を、”クリーン・ミステリ”なる謎の男が同時に解決するというすごい力作である。

グロ描写が凄まじいが、実際の事件がそうだったのだからしょうがないとして、島田御大の考える切り裂きジャック事件の真相に驚愕させられる。

また隠れ御手洗潔作品でもある。

 

⇩残念ながら文藝春秋の改定完全版は電子書籍でなくては入手困難である。

切り裂きジャック・百年の孤独

切り裂きジャック・百年の孤独

 

 

9位  ハリウッド・サーティフィケイト(2001年)

 

知らぬまに子宮を盗まれた女‘ アメリ黒社会を描く衝撃本格ミステリー!

異常者によって、女優のパトリシアの「子宮」が盗まれた事件は、全米中を震撼させていた。そしてLAPDに犯人から郵送された2本目の殺人テープ。テープハリウッドで起こる連続殺人事件は何か?本格ミステリー大長編!

 

 まさにハリウッド映画を見ているような作品である。

レオナ・マツザキが主役であり、御手洗は電話でしか登場せず科学的な話しかしないため、御手洗シリーズを読んでる感じはまったくしない。 

 ポルノがテーマの一つになっており、レオナは完全に変態女に暗黒進化しており、エロさ極まりない。

極悪非道な殺人事件に、『ケルトの伝説』のエピソード、SF的グロテスク描写やハリウッド級のアクションと強烈極まりない作品である。

真相にも「マジかよ!!」と猛烈に驚かされるだろう。

 

 ⇩単行本も文庫も新品は手に入りにくく、KIndle化もされていない。

  文庫版は分厚くて読みにくく、解説もないので買うなら単行本がおすすめ。

 

8位  屋上(2016年)

 

 自殺する理由がない男女が、次々と飛び降りる屋上がある。足元には植木鉢の森、周囲には目撃者の窓、頭上には朽ち果てた電飾看板。そしてどんなトリックもない。死んだ盆栽作家と悲劇の大女優の祟りか?霊界への入口に名探偵・御手洗潔は向かう。人智を超えた謎には「読者への挑戦状」が仕掛けられている!

 

 最強のバカミスであるため賛否両論を呼んでいるが、個人的には超最高な作品である。

これでもかというほど自殺するはずがない人が次々と屋上から飛び降り自殺するという怪事件が、アホみたく面白おかしく描かれる。

 島田御大も明らかに面白可笑しく書いているように思われ、とにかく面白いというのがポイント。ツボに入ると腹筋崩壊だろう。

 

屋上 (講談社文庫)

屋上 (講談社文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 2019/02/15
  • メディア: 文庫
 

 

7位  龍臥亭事件(1996年)

 

 御手洗潔が日本を去って1年半。彼の友人で推理作家の石岡は、突然訪ねてきた二宮という女性の頼みで、岡山県まで悪霊祓いに出かけた。2人は霊の導くままに、寂しい駅に降り立ち、山中分け入り、龍臥亭という奇怪な旅館に辿り着く。そこで石岡は、世にもおぞましい、大量連続殺人事件に遭遇した。推理界の奇才が、渾身の筆致で描く本格ミステリー超大作。

 

 横溝正史の『八つ墓村』のモチーフにもなった、戦前最大にして伝説の事件である”津山三十人殺し”に島田御大の解釈を入れて構築した凄まじい事件である。

 主役が石岡君で御手洗は電報と手紙わずかに登場するだけにもかかわらず、1000ページを超える大長編なのだが、一気読みしてしまう魔力を秘めている。

 津山三十人殺しの犯人である都井睦雄が主役の作中作があるのだが、これがまた凄まじい臨場感を持った超傑作である。

 なお事件のトリックはかなりやらかした感があり賛否両論だが、私は大好きだ。

 

龍臥亭事件〈下〉 (光文社文庫)

龍臥亭事件〈下〉 (光文社文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 1999/10/01
  • メディア: 文庫
 

 

6位  ネジ式ザゼツキー(2003年)

 

 記憶に障害を持つ男エゴン・マッカートが書いた物語。そこには、蜜柑の樹の上の国、ネジ式の関節を持つ妖精、人工筋肉で羽ばたく飛行機などが描かれていた。御手洗潔がそのファンタジーを読んだ時、エゴンの過去と物語に隠された驚愕の真実が浮かびあがる!圧倒的スケールと複合的な謎の傑作長編ミステリー。

 

 ランキングには入れなかったが、シリーズ8作目の『眩暈』をさらに幻想的にしたような怪作である。

 記憶喪失の男が記した、謎に包まれた 「タンジール蜜柑王国」を御手洗が論理的に実在を解明していく前半と、その王国にまつわる圧倒的な猟奇殺人事件の謎を解くという奇想が炸裂した内容だ。

 しかしネジ式で動く妖精だったり、人工筋肉で羽ばたく飛行機、鼻を削がれた老人。そして浮かび上がるスペースコロニーなどやり過ぎMAXである。

 

ネジ式ザゼツキー (講談社文庫)

ネジ式ザゼツキー (講談社文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 2006/10/14
  • メディア: 文庫
 

 

5位  アルカトラズ幻想(2012年)

 

 一九三九年十一月二日、ワシントンDCのジョージタウン大学脇にあるグローバーアーチボルド・パークの森の中で、娼婦の死体が発見された。被害者は両手をブナの木の枝から吊るされ、性器の周辺がえぐられたため股間から膣と子宮が垂れ下がっていた。時をおかず第二の殺人事件も発生し、被害者には最初の殺人と同様の暴虐が加えられていた。凄惨な猟奇殺人に世間も騒然とする中、恐竜の謎について独自の理論を展開される「重力論文」を執筆したジョージタウン大学の大学院生が逮捕され、あのアル・カポネも送られたサンフランシスコ沖に浮かぶ孤島の刑務所、アルカトラズに収監される。やがて、ある事件をきっかけに犯人は刑務所を脱獄し、島の地下にある奇妙な場所で暮らし始めるが……。先端科学の知見と作家の奔放な想像力で、現代ミステリーの最前線を走る著者の渾身の一作がついにベールを脱ぐ!

 

 ゴッドオブミステリー・島田御大の到達点。

起承転結だったり序破急といった物語のお約束をガン無視した展開のため、小説の体を成していないトンデモ本だが、ミステリーの求道者は死んでも読むべき1冊である。

 女性器を抉るという猟奇的殺人に恐竜絶滅の謎、アルカトラズ刑務所や地球空洞説、さらにはパンプキン王国???

 4章+エピローグという構成だが、2章がほぼ丸々『重力論文』という宇宙規模の論文が展開されるのも島田御大の気合いが感じられる。

開いた口が塞がらない伝説の作品である。

 

アルカトラズ幻想 上 (文春文庫)

アルカトラズ幻想 上 (文春文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 2015/03/10
  • メディア: 文庫
 
アルカトラズ幻想 下 (文春文庫)

アルカトラズ幻想 下 (文春文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 2015/03/10
  • メディア: 文庫
 

 

4位  占星術殺人事件(1981年)

 

 密室で殺された画家が遺した手記には、六人の処女の肉体から完璧な女=アゾートを創る計画が書かれていた。その後、彼の六人の娘たちが行方不明となり、一部を切り取られた惨殺遺体となって発見された。事件から四十数年、迷宮入りした猟奇殺人のトリックとは!?名探偵御手洗潔を生んだ衝撃作!

 

 島田御大の伝説のデビュー作である。

東西ミステリベスト100の2012版で3位、英国の有力新聞『ガーディアン』で世界の密室ミステリーベスト10の2位という世界でも高い評価をされる究極の事件である。

占星術殺人事件』を超えるトリックは永遠に現れないのではないかと思ってしまうくらいの、衝撃的な事件とトリックは永遠に語り継がれるだろう。
 島田御大の本格推理小説としては最高傑作だろう。

 

占星術殺人事件 改訂完全版 (講談社文庫)

占星術殺人事件 改訂完全版 (講談社文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 2013/08/09
  • メディア: 文庫
 

 

3位  水晶のピラミッド(1991年)

 

 エジプト・ギザの大ピラミッドを原寸大で再現したピラミッドで起こる怪事。冥府の使者アヌビスが5000年の時空を超えて突然甦り、空中30メートルの密室で男が「溺死」を遂げる! アメリカのビッチ・ポイントに出現した現代のピラミッドの謎に挑む名探偵・御手洗潔。壮大なテーマに挑んだ本格ミステリーの大作。

 

 事件に関係があるのか無いのか読んでいる時点ではさっぱりな「タイタニック号の沈没事故」と「古代エジプト」の物語が描かれる。

この作品をもって島田流の限界突破ミステリーが完成形に近づいてきており、謎に挿入されるエピソードが事件を混迷させる。

 ピラミッドの謎に迫ったり、異形の怪物が登場したりとミステリー作品として超一級品だろう。そしてアメリカ、エジプトを巡る冒険小説としても素晴らしい。

 

水晶のピラミッド (講談社文庫)

水晶のピラミッド (講談社文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 1994/12/07
  • メディア: 文庫
 

 

2位  暗闇坂の人喰いの木(1990年)

 

 さらし首の名所・暗闇坂にそそり立つ樹齢2000年の大楠。この巨木が次々に人間を呑み込んだ? 近寄る人間たちを狂気に駆り立てる大楠の謎とは何か? 信じられぬ怪事件の数々に名探偵・御手洗潔が挑戦する。だが真相に迫る御手洗も恐怖にふるえるほど、事件は凄惨を極めた。本格ミステリーの騎手が全力投球する傑作。

 

 オカルト全開ミステリーホラーの最終兵器である。(本気のホラーなので注意)

偶然が大いに作用しているため、本格推理マニアからは賛否両論だが、そもそも人喰いの木という怪物が関与しているため、偶然は偶然ではなく木がもたらす怪異なのだ。

スコットランドに旅立って、猟奇事件の謎に迫ったりと話のスケールもデカい。

私は『暗闇坂の人喰いの木』以前の御手洗シリーズで既に島田御大の信者になっていたが、これを読んで狂信者へと進化してしまった。

 

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

暗闇坂の人喰いの木 (講談社文庫)

暗闇坂の人喰いの木 (講談社文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 1994/06/06
  • メディア: 文庫
 

 

1位  アトポス(1993年)

 

虚栄の都・ハリウッドに血でただれた顔の「怪物」が出没する。ホラー作家が首を切断され、嬰児が次々と誘拐される事件の真相は何か。女優・松崎レオナの主演映画『サロメ』の撮影が行われる死海の「塩の宮殿」でも惨劇は繰り返された。甦る吸血鬼の恐怖に御手洗潔が立ち向かう。渾身のミステリー巨編が新たな地平を開く。

 

 1000ページ近い超大作だが、一気読み確定なド級のハイパーエンタメ作品である。

プロローグに次ぐ章のタイトルはその名も「長い前奏」。

200ページに及ぶエリザベート・バートリーをテーマにした作中作が圧倒的に面白く、その後に続くB級ホラーのような展開も熱い。

そして再度プロローグを挟み舞台はイスラエル死海へ....。

『奇想、天を動かす』『暗闇坂の人喰いの木』『水晶のピラミッド』『目眩』で著してきた島田流ミステリーの1つの到達点となっている。

 サイコでおぞましい連続殺人事件に、事件の全貌を曖昧にする挿話、白馬に乗った王子様にやり過ぎなトリック。

完璧である。

 

アトポス (講談社文庫)

アトポス (講談社文庫)

  • 作者:島田 荘司
  • 発売日: 1996/10/14
  • メディア: 文庫
 

 

 

島田信者を増やす布教活動は終わらない

超絶スリリングデスゲーム|『クリムゾンの迷宮』貴志祐介

最強エンタメ小説候補の筆頭

 

作品紹介

 貴志祐介による『クリムゾンの迷宮』はKADOKAWAから1999年に出版された作品である。文庫版は解説無しで393ページとちょうど良い長さで無駄がなく、怒涛の展開が凝縮されている。

 同年に発表された高見広春の『バトル・ロワイアル』と双璧を成すデスゲームの超傑作であり、至高のリーダビリティとリアルな描写が圧倒的な臨場感を生み出す最高のサバイバル小説である。

 みなさんご存じのことかと思うが貴志作品の魅力の一つに”超ヤバい奴が襲ってきてマジで勘弁”というのがある。

『クリムゾンの迷宮』のヤバい奴はかなりヤバい。どんなヤバい奴なのかはぜひとも作中で味わっていただきたい。

 

 以下、あらすじの引用

藤木芳彦は、この世のものとは思えない異様な光景のなかで目覚めた。視界一面を、深紅色に濡れ光る奇岩の連なりが覆っている。ここはどこなんだ? 傍らに置かれた携帯用ゲーム機が、メッセージを映し出す。「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された……」それは、血で血を洗う凄惨なゼロサム・ゲームの始まりだった。『黒い家』で圧倒的な評価を得た著者が、綿密な取材と斬新な着想で、日本ホラー界の新たな地平を切り拓く、傑作長編。

 

 

クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

  • 作者:貴志 祐介
  • 発売日: 1999/04/09
  • メディア: 文庫
 

 

恐怖の徹夜本、貴志祐介の奥義炸裂

 貴志祐介の作品を一冊でも読んでいれば、小難しい蘊蓄をバシバシ入れてくるにもかかわらず、そのことが読みやすさをまったく損ねていないというのが分かるだろう。

貴志先生は読ませる文章を書く達人なのである。

流麗なリーダビリティとスリリングな作品とは非常に相性が良く、スリリングなデスゲームものである『クリムゾンの迷宮』は、すべての貴志作品の中でも最も読み始めたら止まらない仕様である。

 読みやすいフォントサイズの角川ホラー文庫で400ページ未満という絶妙な物語の長さは夜寝る前に読み始めたら最後、次の日が学校の試験だろうが、会社で大事なプレゼンを控えていようが、問答無用に一気読みさせられるという危険な兵器といって間違いない。

蹴落としたいライバルがいたら、試しに一冊渡してみよう。罠にかかったライバルは次の日睡眠不足に襲われているはずだ。

 

完璧なロケットスタート

 読了後におもしろかったな~と感じる小説は数多くあることだろう。最後まで読まないと面白さがまったく分からないというドMな作品がこの世には数多くする。
しかし1冊読むにもそこそこ時間がかかるというのに最後まで読まないと良さが分からないというのは狂気の沙汰である。

 では数多のエンターテイメントが跋扈する令和の世になってもなお、読書が趣味という読書家という生き物は、希少かつマゾヒスティックな生命体なのだろうか。

答えは”否”である

 小説の中にははぐれメタルに遭遇するくらいのレアな確率で、超絶エンタメ本が存在しており、読書家というのは運よく読書が嫌いになる前にそういった作品に出会っているのである。

言うまでも本作は超絶エンタメ本であり、最初のページを開くや否やクリムゾンの迷宮という異世界(?)に誘われてしまうのである。

 目が覚めると地球とは思えない謎の場所。おまけに直前の記憶を失っている。 

何の前置きもなくいきなり40代のおっさんが、地球とは思えない謎の場所で目覚め、長身の美女と遭遇し、諸事情から行動を共にする.....そして気が付けばラストまで一気読みさせられてしまうのである。

 

 

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このノリは映画『プレデターズ』に受け継がれた。

 

超リアルなサバイバル

 

 9人の男女がサバイバルアイテム、武器、食料、情報を手に入れるために4パーティに別れて各ルートを進む.....フフフ...このシチュエーションがすでに激アツでしょ。

そしてこのあたりからワケの分からない理不尽な状況をノリ切るために、皆が人間ならではのイヤらしい小細工をし始めるのだが、そのいった描写が気色悪いほど”人間あるある”なのだ。

貴志先生が心理学や脳科学に造詣が深いのは、他の作品を見てもまず間違いないだろう。その知識が活かされた、リアリティのある心理描写は貴志作品のお楽しみの1つなのだが、本作のような極限状態では特にそのお楽しみは一層際立つ。

 また貴志作品では相当な取材や調査をされているだけあり、本作の舞台となる地やその地におけるサバイバル技術が極めて詳細に描かれる。

サバイバル関連の蘊蓄はかなり豊富に解説されているのだが、本編の勢いをまったく削ぐことなく、むしろ更に強い臨場感を創り出すことに成功している。

 

 ヤバい奴=怪物の存在

 貴志作品と言ったら多重人格スタンド使いに、包丁を持ったサイコビッチ、暴走したサイコハスミン、悪鬼に業魔とヤバい奴のオンパレードである。

『クリムゾンの迷宮』はデスゲームものである以上、言うまでもなく人間同士の殺し合いが発生する。じゃあ人間同士が争うだけでヤバい奴がいないかというと、もちろんそんなことはない。 

この記事では化け物の正体はもちろん伏せておくが、謎に包まれた超怖い生命体が登場する。そいつの行動はヤケにリアルで不気味であり、生き残ることすら困難な過酷な環境に、猛烈なスリルと絶望感を味合わせてくれるのだ。

化け物と自軍双方のパワーバランスが崩壊していないのも良い。知恵をフル活用した駆け引きが張り詰めた緊張感を維持し続ける。

 

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ここまで力に差が無いのがいい感じ。

 

違和感の無いエロシーン

 貴志先生はかなりのエロジジィである。男性ホルモンが強い男はエロいというのが一般常識だが(?)、貴志先生の頭をみれば彼のテストステロンが強烈であることは一目瞭然だろう。

したがってみなぎる精力を秘めた貴志作品の多くは濡れ場がある。デスゲーム作品である本作ももちろん例外ではない。

 サバイバルデスゲームとセクロスの相性の良さと言ったら....。ものすごいエロい描写というわけではないのに、極限状況というシチュエーションがエロさに拍車をかけているのである。

私はエロシーンがそこまで好きなわけではないのだが、海外のB級スプラッタホラー映画にありがちな王道パターンを取り入れる貴志先生の精神を愛してやまない。

 

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B級ホラーならこの後どうなるかはお約束だが....

 

賛否両論のラスト

 

 ラストが近づくにつれて、「おいおい...残りページ数は大丈夫なのかよ.....!!」という心境になってくるのだが、実際にどうなるのかは読んでみて確かめてほしい。

このラストが賛否両論になるのは大いに納得できるが、私的にはベストな締めくくりだと思っている。

エンタメ小説というものは、読んでいる最中の面白かったパーセンテージが非常に重要なのだ。『クリムゾンの迷宮』は最初から最後まで面白いので楽しい割合はほぼ100%と言ってよいと思う

余計なことを書いて蛇足になるよりは、徹底的に突っ走って後のことは知ったこっちゃねーというスタンスは大好きである。

 本作は稀に見る超傑作であり、普段小説など読まないような人を読者の世界に引きずり込むには最適な一冊である。過激な描写が多いのでそういうのが苦手な人もいるかもしれないが、実際グロが苦手という人はただのいい子ぶりっこに過ぎない。

しずかちゃんにも出木杉君にも胸を張っておすすめしようではありませんか。

 

クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

  • 作者:貴志 祐介
  • 発売日: 1999/04/09
  • メディア: 文庫
 

 

貴志祐介|作品一覧とおすすめランキング12選 

kodokusyo.hatenablog.com

 

綾辻行人|作品一覧とおすすめランキング10選

本格推理小説と怪奇幻想ホラーの二刀流

もう一つの代表作『Another』を発表されているように、綾辻氏は本格推理小説だけではなく、怪奇幻想小説やホラーも得意とされている。
また純粋なホラー作品もあるが、さすがは推理作家だけあってミステリ以外のジャンルの作品にも凝った仕掛けがあり、ミステリーマニアでも楽しむことができる作品が多い。
 そんなミステリーとホラーの名手の作品をランキングで紹介したい。

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おらのふゆみんを返してけろ...(泣)

 

作品一覧

 代表作である『館シリーズ』以外にもシリーズものが多く、シリーズごとにジャンルがはっきりと分かれている。

またノンシリーズ作品は『霧越邸殺人事件』が館の番外編ともいわれる作品のため、実質『館シリーズ』に近く、他は『どんどん橋、落ちた』を除けば怪奇幻想寄りの作品が多いのが特徴である。

 

館シリーズ

  1. 十角館の殺人(1987年)
  2. 水車館の殺人(1988年)
  3. 迷路館の殺人(1988年)
  4. 人形館の殺人(1989年)
  5. 時計館の殺人(1991年)◆上下巻
  6. 黒猫館の殺人(1992年)
  7. 暗黒館の殺人(2004年)◆全4巻
  8. びっくり館の殺人(2006年)
  9. 奇面館の殺人(2012年)◆上下巻

 

〇『館シリーズ』の紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

囁きシリーズ

  1. 緋色の囁き(1988年)
  2. 暗闇の囁き(1989年)
  3. 黄昏の囁き(1993年)

 

殺人方程式シリーズ

  1. 殺人方程式 切断された死体の問題(1989年)
  2. 鳴風荘事件 殺人方程式II(1995年)

 

殺人鬼シリーズ

  1. 殺人鬼(1990年)⇒ 殺人鬼 覚醒篇 【改訂決定版】
  2. 殺人鬼II 逆襲篇(1993)⇒ 殺人鬼 逆襲篇 【改訂決定版】

 

深泥丘シリーズ

  1. 深泥丘奇談(2008年)
    収録作品|顔/丘の向こう/長引く雨/悪霊憑き/サムザムシ/開けるな
    六山の夜/深泥丘魔術団/声
  2. 深泥丘奇談・続(2011年)
    収録作品|鈴/コネコメガニ/狂い桜/心の闇/ホはホラー映画のホ
    深泥丘三地蔵/ソウ/切断/夜蠢く/ラジオ塔
  3. 深泥丘奇談・続々(2016年)
    収録作品|タマミフル/忘却と追憶/減らない謎/死後の夢/カンヅメ奇談
    海鳴り/夜泳ぐ/猫密室/ねこしずめ

 

Anotherシリーズ

  1. Another(2009年)
  2. Another エピソードS(2013年)
  3. Another 2001(2020年)

 

ノンシリーズ

  1. 霧越邸殺人事件(1990年)
  2. 眼球綺譚(1995年)
    収録作品|再生/呼子池の怪魚/特別料理/バースデー・プレゼント
    鉄橋/人形/眼球綺譚
  3. フリークス(1996年)
    収録作品|夢魔の手─三一三号室の患者─/四〇九号室の患者
    フリークス─五六四号室の患者─
  4. どんどん橋、落ちた(1999年)
    収録作品|どんどん橋、落ちた/ぼうぼう森、燃えた/フェラーリは見ていた
    伊園家の崩壊/意外な犯人
  5. 最後の記憶(2002年)
  6. 人間じゃない 綾辻行人未収録作品集(2017年)
    収録作品|赤いマント/崩壊の前日/洗礼/蒼白い女
    人間じゃない─B〇四号室の患者─

 

作品ランキング

  はっきり言って私は本格推理小説にはあまり興味が無い。

ミステリーはアホみたく大量に読んでいるのだが、これぞ推理小説!といった内容の本格モノにはあまり興味を持てないのである。

 したがって、一般的な綾辻ファンとはかなり上位作品が異なるかもしれないが、怪奇幻想やホラー好きには参考になるかと思う。

 

10位  眼球綺譚(1995年)

 

人里離れた山中の別荘で、私は最愛の妻・由伊とふたりで過ごしていた。妖精のように可憐で、愛らしかった由伊。しかし今はもう、私が話しかけても由伊は返事をしない。物云わぬ妻の身体を前にして、私はひたすらに待ちつづけている。由伊の祝福された身体に起こる奇跡―由伊の「再生」を(「再生」)。繊細で美しい七つの物語。怪奇と幻想をこよなく愛する著者が一編一編、魂をこめて綴った珠玉の作品集。

 

やや作品の完成度に差があると思うが、綾辻氏の怪奇幻想作品の中では最高峰だと言える短編集。

最初の作品である「再生」が他を圧倒している。最初のページからブッ飛び方がハンパではない。他の綾辻作品や他作家と比較しても最強クラスの完成度だろう。不気味さ、気持ち悪さ、雰囲気など完璧だ。

他にもなんとも不気味な「呼子池の怪魚」や思った通りグロい「特別料理」は完成度が高く、綾辻氏の怪奇幻想作品を読むならまずは『眼球綺譚』だろう。

 

眼球綺譚 (角川文庫)

眼球綺譚 (角川文庫)

  • 作者:綾辻 行人
  • 発売日: 2009/01/24
  • メディア: 文庫
 

 

9位  フリークス(1996年)

 

「J・Mを殺したのは誰か?」―巨大な才能と劣等感を抱えたマッドサイエンティストは、五人の子供に人体改造術を施し、“怪物”と呼んで責め苛む。ある日、惨殺死体となって発見されたJ・Mは、いったいどの子供に殺されたのか?小説家の「私」と探偵の「彼」が謎に挑めば、そこに異界への扉が開く!本格ミステリとホラー、そして異形への真摯な愛が生みだした、歪み真珠のような三つの物語。

 

精神病患者の話といういずれも突拍子もない話で、ミステリー色が強めの怪奇幻想ホラー短編集。

江戸川乱歩夢野久作といった過去の巨人へのリスペクトが感じられる作品である反面、なんとも嫌な雰囲気なので人は選ぶと思う。

ミステリー要素が強い怪奇幻想というよりは、本格推理小説の怪作のような作品なので、どの層の綾辻ファンにもある程度は受け入れられるとは思う。 

 

フリークス (角川文庫)

フリークス (角川文庫)

  • 作者:綾辻 行人
  • 発売日: 2011/04/23
  • メディア: 文庫
 

 

8位  どんどん橋、落ちた(1999年)

 

ミステリ作家・綾辻行人のもとに持ち込まれる“問題”はひと筋縄ではいかないものばかり。崩落した“どんどん橋”の向こう側で、燃える“ぼうぼう森”の中で、明るく平和だったはずのあの一家で…勃発する難事件の“犯人”は誰か?本格ミステリシーンを騒然とさせた掟破りの傑作集!

 

. トリッキーな本格推理小説である『迷路館の殺人』や『奇面館の殺人』を圧倒するほどの超絶トリッキーな作品が集められた短編集。

どの作品も「なにぃィーーーッ!!」ではなく「ふざけるな!(笑)」となるものばかりで、推理して真相を暴ける者はこの世に存在しないと思われる。

「伊園家の崩壊」は某サ〇エさんをパロったもので笑えるのだが、内容はこれ以上ないほどダークなのがまた失笑ものである。

 

どんどん橋、落ちた〈新装改訂版〉 (講談社文庫)

どんどん橋、落ちた〈新装改訂版〉 (講談社文庫)

  • 作者:綾辻 行人
  • 発売日: 2017/02/15
  • メディア: 文庫
 

 

7位  暗黒館の殺人(2004年)

 

蒼白い霧の峠を越えると、湖上の小島に建つ漆黒の館に辿り着く。忌まわしき影に包まれた浦登(うらど)家の人々が住まう「暗黒館」。当主の息子・玄児に招かれた大学生・中也は、数々の謎めいた出来事に遭遇する。十角塔からの墜落者、座敷牢、美しい異形の双子、そして奇怪な宴……。著者畢生(ひっせい)の巨編、ここに開幕!

 

 文庫版にして2000ページ越えの超大作であり、推理小説としては正直どうかと思うが、綾辻氏の趣味が全て反映されたダークファンタジーである

ある意味一番人を選ぶ作品だと思われるが、『館シリーズ』を順番に読んできた人なら間違いなく驚く仕様になっている。

この本を読んでから他の館を読み返すと、見方が変わってくるのが面白い。

 

 

6位  迷路館の殺人(1988年)

 

奇妙奇天烈な地下の館、迷路館。招かれた4人の作家たちは莫大な“賞金”をかけて、この館を舞台にした推理小説の競作を始めるが、それは恐るべき連続殺人劇の開幕でもあった!
周到な企みと徹底的な遊び心でミステリファンを驚喜させたシリーズ第3作、待望の新装改訂版。初期「新本格」を象徴する傑作!

 

 叙述トリックなど生温い最強の騙し小説である。

構成からしてやたらトリッキーであり、どんなに気を付けて読んだとしても必ずどこかしら騙されるというすごい作品である。

小説でしか味わえない魅力の一つに映像化不可能というキーワードがあると思うが、『迷路館の殺人』は映像化不可能の代名詞だろう。

最初から最後まで仕掛けまみれの超傑作である。

 

迷路館の殺人<新装改訂版> (講談社文庫)

迷路館の殺人<新装改訂版> (講談社文庫)

  • 作者:綾辻 行人
  • 発売日: 2009/11/13
  • メディア: 文庫
 

 

5位  緋色の囁き(1988年)

 

「私は魔女なの」謎の言葉を残したまま一人の女生徒が寮の「開かずの間」で焼死した。その夜から次々と起こる級友たちの惨殺事件に名門女学園は恐怖と狂乱に包まれる。創立者の血をひく転校生冴子は心の奥底から湧き起こってくる“囁き”に自分が殺人鬼ではないかと恐怖におののく。

 

 綾辻ワールド全開のサスペンスである。

綾辻先生はひょっとすると本格推理小説よりもこっち系の作品の方がお得意なのではないかと思うくらいよくできていて、この作風は『Another』に引き継がれていくのだが、『緋色の囁き』の方がホラー要素がない分よりミステリーとして楽しめるようになっている。

しかしお嬢様の描写がテンプレのようでいて、集団心理と絡めてとてもよく書かれているのが良い。(奥さんにいろいろ相談したんだろうなぁと邪推)

 

緋色の囁き (講談社文庫)

緋色の囁き (講談社文庫)

  • 作者:綾辻 行人
  • 発売日: 1997/11/14
  • メディア: 文庫
 

 

4位  十角館の殺人(1987年)

 

十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の7人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける! 
すべてはここから。清冽なる新本格の源流!大学ミステリ研究会の七人が訪れた十角形の奇妙な館の建つ孤島・角島。メンバーが一人、また一人、殺されていく。「十角館」の刊行から二十年。あの衝撃を再び!

 

 優れた本格推理小説は数あれど、コナン君を卒業してこれから推理小説を読んでいきたいような方には”とりあえずビール”感覚でおすすめな作品。

キャラクターも魅力的でページ数の割にはかなり読みやすく、必ず驚くことになるという100年後も残る普遍的な1冊である。

アガサ・クリスティー女史の『そして誰もいなくなった』をオマージュした作品の中で、オマージュ元を超えるという偉業を成し遂げた数少ない奇跡。

 

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

  • 作者:綾辻 行人
  • 発売日: 2007/10/16
  • メディア: 文庫
 

 

3位  殺人鬼 逆襲篇 (1993年)

 

伝説の『殺人鬼』、ふたたび。双葉山の惨劇から三年、最初にそれと遭遇したのは休暇中の一家。正義も勇気も家族愛も、ただ血の海に消えゆくのみ。そしてそれは山を降り、麓の街に侵攻するのだ。病院を、平和な家庭を、凄惨な地獄風景に変えていく。殺す、殺す、殺す…ひたすら殺戮を欲する怪物に独り立ち向かうのは、不思議な“能力”を持った少年・真実哉。絶望的な闘いの果てに待ち受ける、驚愕と戦慄の結末とは!?―。

 

 スプラッターに命を捧げた愛すべき作品。

前作ではかなり注力されていたミステリー要素はオマケ程度になっている代わりに、エグさMAXのグロ描写が極限まで強化されている。

冒頭からパワー全開の18禁モードなので、好きな人には涙が出るほどのご褒美作品になっている。

こんなのを書いてしまった綾辻行人に畏敬の念を抱かずにはいられない。

 

殺人鬼  ‐‐逆襲篇 (角川文庫)

殺人鬼 ‐‐逆襲篇 (角川文庫)

  • 作者:綾辻 行人
  • 発売日: 2012/02/25
  • メディア: 文庫
 

 

2位  Another(2009年)

 

その「呪い」は26年前、ある「善意」から生まれた―。1998年、春。夜見山北中学に転校してきた榊原恒一(15歳)は、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に違和感を覚える。不思議な存在感を放つ美少女ミサキ・メイに惹かれ、接触を試みる恒一だが、いっそう謎は深まるばかり。そんな中、クラス委員長の桜木ゆかりが凄惨な死を遂げた!この“世界”ではいったい、何が起こっているのか?秘密を探るべく動きはじめた恒一を、さらなる謎と恐怖が待ち受ける…。

 

 ラノベのようなホラー×ミステリー作品だが、いくつかの謎解き要素があることに加え、綾辻行人の伝家の宝刀であるあの仕掛けが完璧な仕上がりで読者を驚かせるという素晴らしい傑作。

著者の得意とする本格ミステリやサスペンス、そして怪奇幻想趣味やホラーが高いレベルで発揮されている。

少々長いことと、エグいシーンがあることを除けば、普段本を読まないような人を読書沼に沈める可能性を秘めた必殺兵器である。

 

Another

Another

  • 作者:綾辻 行人
  • 発売日: 2009/10/30
  • メディア: 単行本
 

 

1位  殺人鬼 覚醒篇(1990年)

 

伝説の傑作『殺人鬼』、降臨!!’90年代のある夏。双葉山に集った“TCメンバーズ”の一行は、突如出現したそれの手によって次々と惨殺されてゆく。血しぶきが夜を濡らし、引き裂かれた肉の華が咲き乱れる…いつ果てるとも知れぬ地獄の饗宴。だが、この恐怖に幻惑されてはいけない。作家の仕掛けた空前絶後の罠が、惨劇の裏側で読者を待ち受けているのだ。―グルーヴ感に満ちた文体で描かれる最恐・最驚のホラー&ミステリ。

 

 綾辻行人の最高傑作はどう考えても『殺人鬼』である。異論は認められない。

著者の作品はほぼすべて読み終えたのだが、私が綾辻作品で最初に読んだ本作を超えるものはなかったと断言できる。

セッ〇ス中に串刺しというリョナ御用達の神聖なる名シーンに感銘を受けてからというもの、綾辻神に祈りを捧げる日々を過ごしている。

館シリーズ』の完結を夢見て、『Another』の続編に心を踊らされつつも、私がいつも願っているのは『殺人鬼』の続編である。

あ~ァ.....本当に続編でないかなぁ....。

 

殺人鬼  ‐‐覚醒篇 (角川文庫)

殺人鬼 ‐‐覚醒篇 (角川文庫)

  • 作者:綾辻 行人
  • 発売日: 2011/08/25
  • メディア: 文庫
 

 

 

殺人鬼万歳!!