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『最後にして最初のアイドル』草野原々|ブッ飛びまくった超スケールSF

こんなSFは読んだことがないほどの狂いっぷり

 

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究極の装丁イラスト詐欺

 

作品紹介

草野原々による『最後にして最初のアイドル』は2018年に早川書房から発表された短編集である。表題作と書き下ろし作品を含めた3編が収録されており、それぞれ100ページ前後で読みやすい分量である(ただし文字びっしり)。

収録作品は「最後にして最初のアイドル」は2016年、「エヴォリューションがーるず」は2017年に電子書籍で発表されており、「暗黒声優」が書き下ろし作品となっている。

いずれの作品も想像を絶する超展開があり、ミステリーにバカミスというジャンルがあるように、本作はバカSFと呼べる作品なのかもしれない。そのブッ飛び加減はいずれの作品も宇宙をも超越スケールであり、「どうしてこうなった....」の三連撃である。そんな凄い作品について感想を書いていく。

 

 以下、あらすじの引用

“バイバイ、地球―ここでアイドル活動できて楽しかったよ。”SFコンテスト史上初の特別賞&42年ぶりにデビュー作で星雲賞を受賞した実存主義ワイドスクリーン百合バロックプロレタリアートアイドルハードSFの表題作をはじめ、ガチャが得意なフレンズたちが宇宙創世の真理へ驀進する「エヴォリューションがーるず」、書き下ろしの声優スペースオペラ「暗黒声優」の3篇を収録する、驚天動地の草野原々1st作品集!

 

 

 

最後にして最初のアイドル

私はアイドルに詳しくないので、おそらく本作がこだわっていると思われる要素の5割以上は理解できていないかもしれない。しかしそうだとしてもこの話がヤバさは120%理解可能なので、アイドルに興味がなくても問題なしである。

物語ははっきり言ってブッ飛びまくり。これまでに読んだあらゆる本の中でも最強クラスの超展開を誇っている。多少内容に触れたところで問題ないので序盤の展開をネタバレしつつ書く。全体で80ページの内、最初の30数ページはアイドルを目指す少女の青春と挫折の物語である。ここまでは普通の話なのだが、ここから先はすべてが超展開である。

アイドルを目指す少女は挫折の末、自殺するのだが.....そんな彼女を推していた女友達が少女の遺体を回収して脳を外科手術により取り出す!(このシーンの描写はかなり気合が入ったグロである)。そしてマッドサイエンティストと化して彼女を復活させようとするのである。

そしてかくかくしかじかで地球は大変なことになり、時を経てアイドルが化け物となって復活してから真の物語が幕を開けるのだ!!.....すでにこの時点でヤバすぎMAXなのだが、この後盛大なグロ殺戮シーンなどを経て、話は全宇宙規模にいたり、著者独自の超理論を展開していくのである。

後半は難解で著者がバカなのか天才なのかさっぱりになるので、もの凄く読者を選ぶだろうが私は超好き。大好物である。冒頭にも書いたが装丁イラストは完全に詐欺である。ポップな印象は皆無で、殺伐とした文体にグロ全開が続くので、イラストに惹かれて読んだ人はドン引き間違いなし。おすすめである。

なお個人的には最凶鬱ゲームと称される『ブレスオブファイア』を思い出し、トラウマとともに蘇った少年時代の記憶に浸っていた。

 

エヴォリューションがーるず

表題作を褒めちぎった後だが、「エヴォリューションがーるず」の方が私好みだったりする。ソシャゲ廃人の話なのだが、もちろんこちらも最強にブッ飛んでいてトンデモ超展開が待っている。

こちらも少々内容に触れるが、序盤は絶滅した古代生物を擬人化したソシャゲ通称「エヴォがる」にハマって、重課金した結果人生が滅茶苦茶になっていく新社会人の女性の様子がやたらリアルに描かれる。しまいには歩きスマホをした結果、トラックにはねられて命を落とすのだが......もちろんここからが本番。

転生したら「エヴォリューションがーるず」だった的な話になり、ここからはソシャゲとRPGを合わせたような話になっていき、敵を捕食しながら進化を繰り返し、仲間ができてあれやこれやとするうちに.....宇宙へ!!からの著者の超理論が語られていくのである。

後半は相変わらずバカなのか天才なのか判別不能な難解ワードの連発。何をどうしたらこんな話を考えられるのかさっぱりで著者がどんな人なのか気になる次第である。こちらも超おすすめ。

 

暗黒声優

これもヤバい。前2作とはノリがやや異なり、超展開っぷりは控えめなのだが、SF度の高さは本作が一番で、設定のブッ飛び加減も相変わらずである。

”声優”の話なのだが、もちろんただの声優ではない。発達した発声管が体外に露出しており(キモい)、その発声管を振動させることでエーテルを振動させてビームを発射したり、宇宙船の原動力にしたりとトンデモ存在なのである。

そして本作のヒロインはとある目的で、優秀な声優を殺害して発声管を奪い、自身の体に移植することで最強の声優を目指しているのである....(笑)

そしてもこれも色々あって物語は宇宙に広がっていき、かくかくしかじかでヒロインを狙うものの目的が判明して、毎度おなじみ著者の超理論が展開されるのである。話のインパクトもかなりのものだが、今回導き出される理論は「へぇ....そうなんだぁ.....」とうっかり鵜呑みにしてしまいそうなものなのが凄い。

 

トンデモ本が読みたいならマスト

どれも話のスケールがデカ過ぎるのと、超展開の連続のせいでイマイチ紹介しきれていない感を感じているが、トンデモ本を求めている人であれば絶対に満足できる内容であることを保証する。

私はトンデモ本を愛する傾向があり、本ブログでも純粋に面白かった本や万人が優れていると評価する作品よりも尖った本を中心に紹介している。そんなブログだが、本作は他の記事で紹介している作品と比べても最強クラスと断言できるからである。

 

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