神本を求めて

小説を読みまくって面白い本を見つけたら紹介するブログ

初心者おすすめSF小説10選+地獄の地雷10選|最高に読みやすくて面白いSF

最高のおすすめSFと地獄の地雷10選

一番書きたかった記事

私が一番好きなジャンルはSFである。様々なジャンルの本を読むがルーツはあくまでもSFなのだ(ホラーもだけど)

幼少期に『エイリアン』『ブレードランナー』『スターウォーズ』『ターミネーター』『プレデター』『マッドマックス』『ウォータワールド』『未来少年コナン』『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』などを観て、SFキチガイ少年の原型はすでに出来上がっていたと思われる中、思春期に『パラサイト・イヴ』や『らせん』を映画で鑑賞して、原作を読んだことによってほぼSFマニアの土台は完成した。トドメに高校時代の70%を『ファンタシースターオンライン』に捧げ、『クトゥルフ神話』を読み漁ったことによって私は完全なるSF信者になった。

したがってこのブログはSF小説好きを一人でも多く増やすというのが目的の一つなのだが、これまでにSF特化記事を書けていなかったので、満を持してSF小説記事を書くことにした。

SF小説はマニアだけが崇拝する作品と、一般人でも楽しめる作品があると私は認識している。しかし”SF小説 おすすめ”でググると、あからさまに初心者がSFアレルギーを起こすようなマニア向け作品が紹介されていている。そこに危機感を感じ、この記事では回避すべきマニアックな地雷作品10選を紹介した後に、厳選に厳選した超読みやすく面白いSF小説をおすすめしたい。これからSF小説を読む方の参考になれば幸いである。

 

地雷作品滅ぶべし!!

さて、まずは地雷作品を10作品紹介したい。

実際は10作品どころではないのだが、おすすめされがちな「これぞSF」な作品にもかかわらず初心者が読んだら爆死する小説を10作品紹介しよう。ここで挙げる地雷作品を読んでSF食わず嫌いになってしまった方は、安心してSF界に戻っていただきたい。読みやすいSF小説などいくらでもある。

なお念のため注釈しておくが、地雷作品=駄作では当然ない。あくまでも初心者にとっての地雷であることを先にお伝えしておく。

 

10位 ハーモニー / 伊藤計劃(2008年)

 

21世紀後半、“大災禍”と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した―それから13年。死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰に、ただひとり死んだはずの少女の影を見る―『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。

 

最初にして最強候補の地雷SFである。

国産かつラノベっぽい装丁についつい騙されてしまうが、内容は非SFマニアには理解不能な領域に達している。だが安心してほしい。『ハーモニー』が理解不能で心が折れたとしても、それはあなたの理解力が低いからではない。

そもそもこの本は最低でも”HTML”を理解し、自らコーディングしたことがあるような人でなければ理解しようがない。無論、これらの専門用語が分からない人はお呼びではない。

私も初読時は「ぶっちゃけつまらん....ていうかネーミングセンスwww」という感じだったが、それなりにSF小説を読んでから再読すると良さが分かってくる。すぐれたSFというのは一読しただけでは理解不能なパターンが多いというのを知っていただきたい。

 

 

9位  ハローサマー、グッドバイ / マイクル・コーニィ(1975年)

 

夏休暇をすごすため、政府高官の息子ドローヴは港町パラークシを訪れ、宿屋の少女ブラウンアイズと念願の再会をはたす。粘流が到来し、戦争の影がしだいに町を覆いゆくなか、愛を深める少年と少女。だが壮大な機密計画がふたりを分かつ…少年の忘れえぬひと夏を描いた、SF史上屈指の青春恋愛小説、待望の完全新訳版。

 

続いてはこいつだ。いかにも読みやすそうでいてなかなか厳しい。

装丁やあらすじから判断すると非常に読みやすそうな印象を受けそうだが、実際には独自の世界観を持つSF×ファンタジーで、SF慣れしていれば大丈夫かも知れないが、初心者からすれば装丁イラストからは想像もつきにくいほど読みずらい。

さらに言うと、可愛いと噂のブラウンアイズがそんなに可愛くない!日本とイギリスの日英同盟が崩れたのは萌えに対する認識の相違だと推測する(笑)

しかも音に聞く衝撃のラストはあくまでもSFマニア向けの衝撃なので、マニア以外が読んだら「ふーん」で終わることだろう。騙されてはならない。

 

 

8位  地球の長い午後 / ブライアン・W・オールディス(1962年)

 

大地をおおいつくす巨木の世界は、永遠に太陽に片面を向けてめぐる、植物の王国と化した地球の姿だった! 人類はかつての威勢を失い支配者たる植物のかげで細々と生きのびる存在に成り果てていた……。イギリスSF界を代表する巨匠が、悠久の時の果てにSF的想像力の精髄を展開する名作

 

個人的には超好きな、人類が衰退し植物が地球を支配する遠未来SFである。

本作の読みづらさは遠未来という設定のため、現代の地球の常識は完全にブッ飛んでおり、SFというよりもファンタジーに近い世界観なので、とにかく景色を想像しにくいことにある。初心者はイラストなどをググって世界観を脳内補完しなければ、「さっぱり分からん(泣)」で終わる可能性が非常に高い危険な作品である。『風の谷のナウシカ』の元ネタの一つとも称され、素晴らしい作品だが、SFとファンタジーそれぞれにある程度の慣れがなければ読んではならない。

 

 

7位 ニューロマンサー / ウィリアム・ギブスン(年)

 

ハイテクと汚濁の都、千葉シティの空の下、コンピュータ・ネットワークの織りなす電脳空間を飛翔できた頃に思いを馳せ、ケイスは空虚な日々を送っていた。今のケイスはコンピュータ・カウボーイ能力を奪われた飢えた狼。だがその能力再生を代償に、ヤバい仕事の話が舞いこんできた。依頼を受けたケイスは、電脳未来の暗黒面へと引きこまれていくが……新鋭が華麗かつ電撃的文体を駆使して放つ衝撃のサイバーパンクSF!

 

最古クラスのサイバーパンクSF小説

サイバーパンクと聞いてピンと来ない方はあきらめてください。否、ピンと来ても無理ゲーかもしれない(笑)

当方『攻殻機動隊』や『マトリックス』は大好きにもかかわらず、本書を最後まで読み切るのは死ぬほど苦労した割に、理解度は低く、しかも再読する勇気がないため、恥ずかしながらいまだに「よく分からん(´;ω;`)」状態である。

 

 

6位 全作品 / グレッグ・イーガン(nnnn年)

 

全部ですってばwww

 

当代最高のハードSF作家ことグレッグ・イーガン

私は最初に『祈りの海』を読んで撃沈しつつも、ちょこちょこ他の作品も読み進めたのだが、結論から言うとさっぱりである。凄いことは分かる。しかし文系出身インフラSEと、それなりにそっち系の知識を持つ私でも残念ながら理解が及ばぬようだ。短編なら比較的読みやすいものもあるが、初心者が読んだら宇宙の塵になるだろう。

 

⇩いっそのこと初戦から『ディアスポラ』を読んで玉砕するのはいかがだろうか(笑) たしか『バーナード嬢』でも紹介されていたはず。あと『プランクダイブ』...これも死ぬ(笑)

 

5位 ソラリス  / スタニスワム・レム(1961年)

 

惑星ソラリス―この静謐なる星は意思を持った海に表面を覆われていた。惑星の謎の解明のため、ステーションに派遣された心理学者ケルヴィンは変わり果てた研究員たちを目にする。彼らにいったい何が?ケルヴィンもまたソラリスの海がもたらす現象に囚われていく…。人間以外の理性との接触は可能か?―知の巨人が世界に問いかけたSF史上に残る名作。レム研究の第一人者によるポーランド語原典からの完全翻訳版。

 

オールタイムベストSF筆頭の作品。

ネームバリューに釣られて読むとこれがなかなかキツイ。純文学が娯楽を追求していないのと同様、本書もエンターテイメント追及したような作品ではなく、とにかく説明が詳細でクッソ眠くなるという睡眠小説である。ソラリスがあればドリエル(睡眠薬)は不要と言える(笑)

後世に名を残す作品というのは読めば納得だが、初心者が手を出すべき作品ではないことは確かである。

 

 

4位  幼年期の終わり / アーサー・C・クラーク(1953年)

 

地球上空に、突如として現れた巨大な宇宙船。オーヴァーロード(最高君主)と呼ばれる異星人は姿を見せることなく人類を統治し、平和で理想的な社会をもたらした。彼らの真の目的とはなにか?異星人との遭遇によって新たな道を歩み始める人類の姿を哲学的に描いた傑作SF。

 

おそらく万人が認める人類最高のSF小説である。

したがって他の追随を許さぬ圧倒的な完成度を誇る作品だが、大きく分けて三章に分かれる本作の中で、面白いと言えるのは一章のみだと言えるだろう。(二章もちょっとは面白いかも) 哲学的な内容に移行していく中盤以降は思弁系SFとしては比類なき内容だが、娯楽小説としては正直つまらない。『新世紀エヴァンゲリオン』の人類補完計画など後世に与えた影響を鑑みると必読の作品だが、初心者には荷が重いだろう。後回しを推奨する。

ちなみに本作は早川書房東京創元社、光文社からそれぞれ出版されていて、私は前二者版を読んだのだが、噂では光文社版が読みやすいらしい。もし意地でも読みたいのなら光文社版を選ぶのが良いのかもしれない。

 

 

3位 1984年 / ジョージ・オーウェル(1949年)

 

“ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…。二十世紀世界文学の最高傑作が新訳版で登場。

 

ディストピアの超傑作にしてネームバリューも最高峰の作品。

しかしお世辞にも読みやすいとは言えず、SFというよりは海外文学をそれなりに読んだうえで、ディストピアSF系の作品もそれなりに読んでから挑むべき作品だと思う。出版された時代を考えると凄まじい先見性を持ち、後世に圧倒的な影響を与えた作品だと思う。(難しいけどね)

意識高い系(笑)がかっこつけて読みがちな作品だが(勝手な想像)、そういった痛い人の心を折る小説兵器としては素晴らしい。

 

 

2位 華氏451度 / レイ・ブラッドベリ(1953年)

 

華氏451度―この温度で書物の紙は引火し、そして燃える。451と刻印されたヘルメットをかぶり、昇火器の炎で隠匿されていた書物を焼き尽くす男たち。モンターグも自らの仕事に誇りを持つ、そうした昇火士のひとりだった。だがある晩、風変わりな少女とであってから、彼の人生は劇的に変わってゆく…。本が忌むべき禁制品となった未来を舞台に、SF界きっての抒情詩人が現代文明を鋭く風刺した不朽の名作、新訳で登場!

 

こちらも意識高い系(笑)に読まれがち(であろう)超傑作ディストピアSF。

しかしまぁ読みずらい。SF度はそこまで高くないのでSF入門者にはおすすめしがたく、ディストピア小説を読みたい方にも、敷居が高いかもしれない。主張は分かりやすいし、プロットもシンプルなのだが読めばわかる読みづらさ....。意識高い系の人が読んでかっこつけているとしても、90%くらい知ったかなので笑ってあげよう。

 

 

1位 アンドロイドは電気羊の夢を見るか / フィリップ・K・ディック(1968年)

 

長く続いた戦争のため、放射能灰に汚染され廃墟と化した地球。生き残ったものの中には異星に安住の地を求めるものも多い。そのため異星での植民計画が重要視されるが、過酷で危険を伴う労働は、もっぱらアンドロイドを用いて行われている。また、多くの生物が絶滅し稀少なため、生物を所有することが一種のステータスとなっている。そんななか、火星で植民奴隷として使われていた8人のアンドロイドが逃亡し、地球に逃げ込むという事件が発生。人工の電気羊しかえず、本物の動物を手に入れたいと願っているリックは、多額の懸賞金のため「アンドロイド狩り」の仕事を引き受けるのだが…。

 

栄えある一位は文句なしに本作である。レベルが違い過ぎる。

そもそも私は映画『ブレードランナー』の大ファンなのだが、原作である本作を読んだ印象は「は?」である。映画は50回は観たし、ヴァンゲリスによるサウンドトラックも購入したくらいには愛しているにも関わらず....。くれぐれもネームバリューとお洒落な邦題に釣られて読んではならない。爆死必至である。

ちなみにPKD作品は全体的に読みづらいので、気合を入れて集中して読むか、酒を飲んで泥酔中に読むのが良いだろう。

 

 

楽しくなくては意味がない!

さて、上記の作品はいかがであっただろうか。他にも地雷は大量にあるのだが、キリがないのでとりあえず代表的な作品に抑えてみた。

ここからは①読みやすさ面白さ本格SF度のバランスが良い作品を超厳選して10作品挙げてみたい。読みやすくて面白くても肝心なSF度が低ければSF作品として紹介する意味がなくなるので、上記を十分に考慮したうえで紹介していく。

 

10位 星を継ぐもの / ジェイムズ・P・ホーガン(1977年)

 

月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見された……。ハードSFの新星が一世を風靡した出世作

 

私を読書沼に沈めた思い入れのある作品.....ということは考慮せずともオールタイムベストSFでトップクラスの神傑作である。

ではなぜ10位なのか。それは初心者にはやや敷居が高いということと、創元SF文庫の活字が小さくフォントが微妙に読みづらいこと、また三部作であるため最後まで読まなければ、本作品の魅力を最大限に味わうことができないからである。

やや敷居が高いという点を除けば古今東西SF最強の作品なので、ぜひとも読んでみてほしい。というかこれを読んで合わなければSFは読まなくても良いとすら言える。

ちなみに私はkindleを購入後に初めて買ってみたのが、本作なのだが創元SF文庫の破滅的に読みにくい活字で慣れていたこともあり、あまりの読みやすさに涙を流した。紙の本でムリゲーだと思った方には電子書籍を推奨したい。

 

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

9位 夢みる葦笛 / 上田早夕里(2016年)

 

ある日、街に現れたイソギンチャクのような頭を持つ奇妙な生物。不思議な曲を奏でるそれは、みるみる増殖していく。その美しい歌声は人々を魅了するが、一方で人間から大切な何かを奪い去ろうとしていた。(表題作)人と人あらざるもの、呪術と科学、過去と未来。様々な境界上を自在に飛翔し、「人間とは何か」を問う。収録作すべてが並々ならぬ傑作!奇跡の短篇集。

 

本格的なSFであり様々なジャンルを扱いながらも、読みやすさと優れた娯楽性を兼ね備えた恐るべきクオリティの神短編集。

10作品収録のためそれぞれの作品はとても読みやすいボリュームにまとまっているのだが、本当に短編かよ...と思うほど深い読後感に浸ることができる凄まじい傑作が揃っている。しかも各作品が非常にバラエティ豊富なので、もし肌に合わない作品があったとしても、SFに興味があるような人であれば何かしら好きになる作品があるはずである。国産ということもあり最も推奨したい作品の一つだ。

 

 〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

8位 われはロボット / アイザック・アシモフ(1950年)

 

ロボットは人間に危害を加えてはならない。人間の命令に服従しなければならない…これらロボット工学三原則には、すべてのロボットがかならず従うはずだった。この三原則の第一条を改変した事件にロボット心理学者キャルヴィンが挑む「迷子のロボット」をはじめ、少女グローリアの最愛の友である子守り用ロボットのロビイ、ひとの心を読むロボットのハービイなど、ロボット工学三原則を創案した巨匠が描くロボット開発史。

 

ロボット工学三原則を提唱した最重要SF小説の一つである。

SFとして圧倒的なクオリティを誇るだけでなく、連作短編集で比較的読みやすく、しかも著者お得意の本格ミステリとの融合作品でもあるので、娯楽要素も非常に高い。こんなのが戦後すぐに書かれてしまったら、後進の心を折りまくってしまった罪深き作品なのかもしれない。起源にして頂点といったところだろうか。

 

 

7位 涼宮ハルヒの消失 / 谷川流(2004年)

 

涼宮ハルヒ?誰のこと?」珍しく俺の真後ろの席が空席だった12月18日の昼休み。颯爽と現れてその席に座ったのはハルヒではなく、長門との戦いに敗れて消滅したはずの委員長・朝倉涼子だった。困惑する俺に追い打ちをかけるように、名簿からもクラスメイトの記憶からもハルヒは消失していた。昨日まで普通だった世界を改変したのは、ハルヒなのか。俺は一縷の望みをかけて文芸部部室を訪れるが―。

 

アニメ好きなら知らぬ者はいない作品。

ラノベということもあり私自身、長年忌避してしまったのだが、角川文庫版収録の日本SF御三家こと筒井康隆氏の熱い解説を信じて読んでみたら、4作目の本作で「ウオォーーーーーーー!」となってしまったのである。読みやすさ、面白さ、本格SF度を高水準で満たしており、なおかつ”ツインテール萌え”という必殺兵器を備えた本作を読まないわけにはいかないだろう。

一作目から読まなければならないという敷居の高さを差し引いても絶対的におすすめの作品。(というか一作目もかなりの傑作なので安心されたし)

 

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

6位 円 / 劉慈欣(2021年)

 

円周率の中に不老不死の秘密がある――10万桁まで円周率を求めよという秦の始皇帝の命を受け、荊軻(けいか)は300万の兵を借りて前代未聞の人列計算機を起動した! 第50回星雲賞に輝く「円」。麻薬密輸のために驚愕の秘密兵器を投入するデビュー短篇「鯨歌」。貧しい村で子どもたちの教育に人生を捧げてきた教師の“最後の授業"が信じられない結果をもたらす「郷村教師」。漢詩に魅せられた超高度な異星種属が、李白を超えるべく、あまりにも壮大なプロジェクトを立ち上げる「詩雲」。その他、もうひとつの五輪を描く「栄光と夢」、少女の夢が世界を変える「円円のシャボン玉」など、全13篇。中国SF界の至宝・劉慈欣の精髄を集める、日本初の短篇集。

 

本当は人類最高傑作『三体』を挙げておきたいところだが、三部作で圧倒的なボリュームがあるため、初心者向けに短編集である『円』をおすすめする。

読めば分かるが、アジア人史上初めて”ヒューゴー賞”を受賞された中国SFの至宝・劉慈欣の力は本物で、短編集である本作も個々の作品が途轍もないクオリティを備えている。いわゆる”三体ロス”に陥って虚無空間を彷徨っていた私は本作に救われた。

中国の貧しい村から太陽系を遠く離れた宇宙まで話のスケールの幅が広く、内容もバラエティ豊富でSFの魅力を200%教えてくれるので、大長編『三体』に恐れをなしているのならまずは本作から読んでみてほしい。

 

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

5位 滅びの園 / 恒川光太郎(2018年)

 

わたしの絶望は、誰かの希望。
ある日、上空に現れた異次元の存在、<未知なるもの>。それに呼応して、白く有害な不定形生物<プーニー>が出現、無尽蔵に増殖して地球を呑み込もうとする。
少女、相川聖子は、着実に滅亡へと近づく世界を見つめながら、特異体質を活かして人命救助を続けていた。だが、最大規模の危機に直面し、人々を救うため、最後の賭けに出ることを決意する。世界の終わりを巡り、いくつもの思いが交錯する。壮大で美しい幻想群像劇。

 

我が激推し異世界作家・恒川光太郎によるSF寄りの作品である。

ファンタジー寄りでもあるためこの順位にしているが、読みやすさと面白さでは他の追随を許さない非の打ち所の無い超絶エンターテイメント作品である。ページを開くや否や即効で異世界に飛ばされてしまい、そのまま面白すぎて確実に一気読みしてしまうだろう。ホントにどうしたらこんな物語が描けるのか不思議でならない。

 

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

4位 ループ / 鈴木光司(1998年)

 

科学者の父親と穏和な母親に育てられた医学生の馨にとって家族は何ものにも替えがたいものだった。しかし父親が新種のガンウィルスに侵され発病、馨の恋人も蔓延するウィルスに感染し今や世界は存亡の危機に立たされた。ウィルスはいったいどこからやって来たのか?あるプロジェクトとの関連を知った馨は一人アメリカの砂漠を疾走するが…。そこに手がかりとして残されたタカヤマとは?「リング」「らせん」で提示された謎と世界の仕組み、人間の存在に深く迫り、圧倒的共感を呼ぶシリーズ完結編。否応もなく魂を揺さぶられる鈴木文学の最高傑作。

 

国民的ジャパニーズホラーの金字塔『リングシリーズ』3作目。

ホラー要素はまったく無くジャンルはずばりハードSFである。しかも相当ガチなSFなのだから意表を突かれること間違い無しである。2作目の『らせん』もSF的要素を備えた傑作だが、『ループ』は完全なる別物となっていて、リアルタイムで読んだ方や映画から原作を追った人それぞれの度肝を抜いたことだろう。

愛する者のために全存在をかけた熱い男の物語でもあり、まさかの大号泣である。”貞子”は知っているが原作は読んでいないSF好きがいれば絶対に読むべきである。

 

〇シリーズ紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

3位  新世界より / 貴志祐介(2008年)

 

ここは病的に美しい日本(ユートピア)。
子どもたちは思考の自由を奪われ、家畜のように管理されていた。
手を触れず、意のままにものを動かせる夢のような力。その力があまりにも強力だったため、人間はある枷を嵌められた。社会を統べる装置として。
1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖(かみす)66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄(しめなわ)で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力(念動力)」を得るに至った人類が手にした平和。念動力(サイコキネシス)の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた……隠された先史文明の一端を知るまでは。

 

もはや説明不要の神傑作。神の中の神本である。

一位最有力候補だが、SFだけではなく様々なジャンルが複合された作品であることと、文庫版三分冊で1500ページ級のボリュームを考慮して3位としている。貴志祐介特有の優れたリーダビリティは本作でも全開なので、スラスラ読めてしまうことも強力なセールスポイントだ。

SFに興味があるがページ数に躊躇して『新世界より』を読もうか検討されている方は恐れることなくただちに読み進めるべし。究極の傑作である。

 

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

2位 タイタン / 野﨑まど(2019年)

 

至高のAI『タイタン』により、社会が平和に保たれた未来。人類は“仕事”から解放され、自由を謳歌していた。しかし、心理学を趣味とする内匠成果のもとを訪れた、世界でほんの一握りの“就労者”ナレインが彼女に告げる。「貴方に“仕事”を頼みたい」彼女に託された“仕事”は、突如として機能不全に陥ったタイタンのカウンセリングだった―。

 

超天才・野﨑まどによる未来お仕事小説。

読みやすさと面白さを完璧に備えているのは当たり前として、びっくり仰天な超スケールかつ超展開が待っていて、私はあまりのテンションの高まりに血管が破裂するかと思ってしまった。

仕事とは何か?”という問いに対して、AIとのカウンセリングを通じて、著者の思想とも言える解答を示す作品として超優秀である。野﨑まどは本作に限らずいずれの作品もSF初心者におすすめしたい。

 

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

1位 プロジェクト・ヘイル・メアリー / アンディ・ウィアー(2021年)

 

グレースは、真っ白い奇妙な部屋で、たった一人で目を覚ました。ロボットアームに看護されながらずいぶん長く寝ていたようで、自分の名前も思い出せなかったが、推測するに、どうやらここは地球ではないらしい……。断片的によみがえる記憶と科学知識から、彼は少しずつ真実を導き出す。ここは宇宙船〈ヘイル・メアリー〉号――。ペトロヴァ問題と呼ばれる災禍によって、太陽エネルギーが指数関数的に減少、存亡の危機に瀕した人類は「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を発動。遠く宇宙に向けて最後の希望となる恒星間宇宙船を放った……。

 

SF小説のおすすめはどれかと聞かれたら本作の名を上げることを神に誓っている。

少々長めなボリュームを考慮しても、SF入門者から玄人まで自信を持っておすすめできる、SF界に名を刻むであろう新たなマスターピースである。

ミステリー要素があり、事前情報は極力ない方が楽しめるので、気になったのであればただちに読むことを推奨する。21世紀になってなお、アホみたいな戦争を繰り返してしまう人類には必読書とすべき内容だ。人類同士で争っている場合ではない世界がここにある。

 

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

SF好きが一人でも増えることを祈って

本記事で紹介した作品は本当に本の一部である。最高のSFが読みたいのであれば問答無用に『三体』を読めば良いと思いつつも、やはり敷居が高いと思われるので、本当に読みやすい小説と危険な地雷SFをお伝えした。

本記事に興味を持たれたようであれば、SF好きの私が紹介する100選などの記事も以下にリンクを貼るので参照していただければ幸いである。

 

おすすめ記事

kodokusyo.hatenablog.com

kodokusyo.hatenablog.com

kodokusyo.hatenablog.com