神本を求めて

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『〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件』早坂吝|本格推理小説に新たな伝説(笑)

これぞメフィスト賞...本を燃やすも愛するも読者次第。

 

 

作品紹介

 早坂吝氏による『〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件』は講談社から2014年に出版された作品である。文庫版のページ数は解説込みで326ページとちょうど良いボリュームで読みやすい。

孤島のクローズドサークルという正統派な犯人当ての本格推理小説だが、本作がいかにもメフィスト賞受賞作品らしいところは、いきなり読者への挑戦状で始まり、しかもその内容が”タイトルを当ててみろ”というふざけたものであることだろう。

キャラやラノベのような軽い文体は人を選びまくるだろうが、好きな人はとことん好きになるキャラクターと作風で、当然私は大好きだ。愛している。

 

 以下、あらすじの引用

アウトドアが趣味の公務員・沖らは、仮面の男・黒沼が所有する孤島での、夏休み恒例のオフ会へ。赤毛の女子高生が初参加するなか、孤島に着いた翌日、メンバーの二人が失踪、続いて殺人事件が。さらには意図不明の密室が連続し……。果たして犯人は? そしてこの作品のタイトルとは? 「タイトル当て」でミステリランキングを席巻したネタバレ厳禁の第50回メフィスト賞受賞作

 

○○○○○○○○殺人事件 (講談社文庫)

○○○○○○○○殺人事件 (講談社文庫)

  • 作者:早坂 吝
  • 発売日: 2017/04/14
  • メディア: 文庫
 

 

ずっと前から気になっていた

 学校や職場でずっと気になるあの子というのは必ず一人はいるものだ。そう、本作は私の中でそんなポジションに長いこといた作品である。

少しでもその人の情報を得たいのに、下手に嗅ぎ回ってしまうといろいろな人に噂されてしまう。そんなリスクを背負いながらも、危険を承知でひたすら探偵のごとく情報収集をする。(注:私はストーカーではないです。)

上記は例えなのだが、『〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件』とはそのような戦いが続いた。つまりネタバレを回避しつつも、少しでも多くの情報を得るべくネットサーフィンするという、勘を頼りに地雷原を突き進むような荒業を余儀なくされたのだ。

なにせこのタイトルでメフィスト賞受賞作ですぜ.....駄作の予感がそこはかとなく漂っているではありませんか。

...と、まぁ本作とのなれそめから書いてみたのだが、少しでも好奇心を刺激された方は絶対に読むべきである。良い意味でThe メフィスト賞作品!!と叫びたくなるようなメフィスト史に新たな伝説を刻んだ作品なのだ。

 

空前絶後のお下劣無双

 良い子は見ちゃダメな描写が好きかどうかで本作の評価は決まる。私は意味のないエロやグロは好きではないのだが(いや、本当は好きかも)、この稀代の怪作のエロにはちゃんとした意味がある。

それもちょっとした意味ではなく、極めて重要な意味があるのだから敬意を払いたくなってしまう。私はこれほどまでにち〇こや包〇、さらにはフェ〇〇オやア〇ル責め、ま〇この中に意味を持たせた小説を他には知らない。いや、小説どころかAVでも映画でも局部をここまで有効活用することは不可能だろう。

早坂吝は股間の神様だ!!(笑)

 このブログはまとめ記事を中心にして、個別記事は余程のことが無い限り書かない方針で考えていたのだが、もはやこれだけは書かずにはいられなかった。大人になれたと思っていたが、残念ながら中身はクレヨンしんちゃんのままだったのである。

 

実はガチなフーダニット

 本作はキワモノである。例えるなら裏ビデオといったところだろうか。

しかし裏ビデオとはいえ、昨今ではノーマルビデオと同等かそれ以上.....否、もはや裏世界の女優たちの戦闘力はAKB48などのアイドルを軽く凌駕してしまっているのである。

くだらない例えをしてしまったが、何が言いたいかというと『〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件』は正真正銘の本格推理小説である。それも孤島というクローズドサークルにおけるこてこてのフーダニット(犯人当て)であり、そのクオリティはすでに推理小説の世界で名の知れた作品群と比較しても遜色ないレベルなのだ。

私はあまりにもこの本を気に入ってしまったため、読了後すぐに最初から読み始めたのだが、要となる重要な仕掛けについてかなりフェアにヒントが提示されていた。 しかも2週目を読むと股間のふくらみとともに笑いまでも巻き起こされるのだからたまったものではない。

 また作中に頻繁に放たれるミステリーマニアの主人公のセリフが異常に面白い。あの京大推理小説研究会に所属されていた方だけに、古今東西推理小説ネタが随所にばらまかれていて、様々な推理小説あるあるを堪能することができた。

 

三つ子の魂百まで by 麻耶雄嵩

 『〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件』の解説は新本格の代表作家の中でも、問題作を世に放ち続けることで有名な麻耶雄嵩氏が書かれている。分かる人であれば講談社が解説を麻耶雄嵩に頼んだという時点でこの本がどれほどの作品なのか分かるのではないだろうか。

ちなみにこの解説はかなり面白いので絶対に読むべきなのだが、電子書籍版では端折られているので、紙の本を購入することをおすすめしたい。

それともう一点。世の中には後書きや解説を先に読むというタイプの人間がいることと思う。私もその一人である。ただし本作におけるその行動は極めて危険だということをお伝えしておこう。後書きの直前に『〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件』のタイトルが書かれているので、事故って見てしまう可能性が高い。無論私はタイトルを先に見てしまった。(泣)

これもまた三つ子の魂百までなのだろう。嵌められた。

 

そして伝説へ

 私はまだメフィスト賞受賞作をそれほど多くは読んでいないのだが、『〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件』がこの賞の作品群の中で長く語られていくであろうことはまず間違いない。

メフィスト賞受賞作には『六枚のとんかつ』という蘇部健一による伝説のバカミスが存在するが、本作は新たなる伝説を生んだのである。

さあ、未読の方は今すぐに読まれるがよい!!

 

○○○○○○○○殺人事件 (講談社文庫)

○○○○○○○○殺人事件 (講談社文庫)

  • 作者:早坂 吝
  • 発売日: 2017/04/14
  • メディア: 文庫