神本を求めて

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最強推理小説おすすめランキング50|最高の本格ミステリを求めて

究極の謎を求めて

世の中には2通りのミステリ好きがいると考えられる。

  1. 本気で推理して犯人当てをする人
    ⇒読者への挑戦状があるようならベスト
  2. 推理せずに謎がある物語として楽しむ人
    ⇒面白ければフェアかアンフェアなどは気にしない

前者を推理マニアとするのなら、後者は純粋なエンタメ好きと言えるのだろう。

私は典型的な後者の者である。推理なんて一切しない。

したがって徹底的にロジカルに構築された話よりは、犯罪の不可能性や超絶トリックといった要素にこだわっている。

この記事では「魅力的な謎やブッ飛んだトリックがあれば後はどうでもいいや」という考えの私が好きな作品の中から、本格ミステリマニアからも本格推理作品として認識されている作品に限定して紹介していく。

なお本ランキングは、この作品はどう考えても推理小説ではないだろうという作品は除外している。またキリがなくなってしまうため、短編(連作短編はあり)を除く国内作品に限定する。

 

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究極のミステリはいずこに....

 

50位  ラバー・ソウル / 井上夢人(2012年)

 

幼い頃から友だちがいたことはなかった。両親からも顔をそむけられていた。36年間女性にも無縁だった。何度も自殺を試みた―そんな鈴木誠と社会の唯一の繋がりは、洋楽専門誌でのマニアをも唸らせるビートルズ評論だった。その撮影で、鈴木は美しきモデル、美縞絵里と出会う。心が震える、衝撃のサスペンス。

 

驚きの真相があるタイプのミステリ。

かなりの長尺の中で、ひたすらストーカー描写が続くので人によってはかなり気持ち悪くなって、読むのがつらくなるかもしれないが、その気持ち悪さの分だけ、真相が判明した後の衝撃が大きくなるので必ず最後まで読むべきである。

なお表題はビートルズの名盤から取られていて、確証もそのアルバムの曲にちなんだものとなっているので、ビートルズ好きが読んだら歓喜すると思われる。

 

 

49位  この光と闇 / 服部まゆみ(1999年)

 

森の奥に囚われた盲目の王女・レイアは、父王の愛と美しいドレスや花、物語に囲まれて育てられた…はずだった。ある日そのすべてが奪われ、混乱の中で明らかになったのは恐るべき事実で―。今まで信じていた世界そのものが、すべて虚構だったのか?随所に張りめぐらされた緻密な伏線と、予測不可能な本当の真相。幻想と現実が混ざり合い、迎えた衝撃の結末とは!?至上の美を誇るゴシックミステリ!

 

ダークファンタジーと見せかけたミステリ作品。

耽美な作風的に結構人を選ぶと思われ、私自身はあまり好きな作品ではないのだが、世界が一転する系のミステリを読みなれていない方が読んだら、確実に頭が爆発するだろう。真相が何となく読めた人でも、かなり凝った内容になっているので完全に看破するのは不可能だと思われる。なるべくミステリ慣れする前に読むべき作品。

 

 

48位  奇想、天を動かす / 島田荘司(1999年)

 

浅草で浮浪者風の老人が、消費税12円を請求されたことに腹を立て、店の主婦をナイフで刺殺した。だが老人は氏名すら名乗らず完全黙秘を続けている。この裏には何かがある。警視庁捜査一課の吉敷竹史は、懸命な捜査の結果、ついに過去数十年に及ぶ巨大な犯罪の構図を突き止めた。―壮大なトリックを駆使し、本格推理と社会派推理とを見事に融合させた傑作。

 

奇想が天を動かしちゃったTheゴッドオブミステリー。

あまりにもはっちゃけまくっているため、推理小説としての完成度は判定不能だが、島田御大はこの作品以降神へと昇華されたという記念碑的な傑作でもある。

あたえられた材料から真相を導き出せるかというと、120%無理だろうから本格ミステリとしては何とも言えないのだが、提示される謎がとにかく魅力的なので、島田作品を読んだことがあって、本作が未読というのなら絶対に読むべきである。

 

 

47位  塔の断章 / 乾くるみ(1999年)

 

お腹の子の父親はあなたよ―別荘の尖塔から転落死した美貌の社長令嬢・香織。悲劇が起きたのは、ある小説のゲーム化を企画するメンバー8人が別荘に集まった夜だった。父親は誰か。彼女の本当の死の理由は。激しい恋が迷い込んだ先の暗黒を描いた、乾マジックが冴え渡る“謎解き恋愛ミステリー”の決定版。

 

特殊な構成を持つミステリ。

断章の名の通り、さまざまなシチュエーションが何の脈絡もなく展開されていくので、微妙に読みずらいうえに、何を読んでいるのか分からなくなってくるが、最後まで読むことにより驚愕の真相が判明する仕様である。

よくこんなの思いつくなぁと思えるタイプのミステリなので、気になった方は手に取ってみてほしい。

 

 

46位  慟哭 / 貫井徳郎(1993年)

 

連続する幼女誘拐事件の捜査は行きづまり、捜査一課長は世論と警察内部の批判をうけて懊悩する。異例の昇進をした若手キャリアの課長をめぐり、警察内に不協和音が漂う一方、マスコミは彼の私生活に関心をよせる。こうした緊張下で事態は新しい方向へ!幼女殺人や怪しげな宗教の生態、現代の家族を題材に、人間の内奥の痛切な叫びを、鮮やかな構成と筆力で描破した本格長編。

 

あのトリックでそこそこ有名な作品。

しかし本作の良さはミステリ部分にはなく、文字通り慟哭する物語であることがポイントだろう。あのトリックと主人公の心情が結びついて真相が明らかになった時、読者も慟哭してしまうかもしれない。

それと何と言っても宗教がらみのオカルトな描写に相当な気合が入っているのも個人的にはたまらない。この本を書いた当時の著者がまだ20代前半というのが最大のミステリーだろう。50代のおっさんが書いたといった方が自然なくらい文章や内容が熟れている。

 

 

45位  黒祠の島 / 小野不由美(2001年)

 

「そう―ここは黒祠なのですよ」近代国家が存在を許さなかった“邪教”が伝わる、夜叉島。式部剛は失踪した作家・葛木志保の姿を追い求め、その地に足を踏み入れた。だが余所者を忌み嫌う住民は口を閉ざし、調査を妨害するのだった。惨事の名残を留める廃屋。神域で磔にされていた女。島は、死の匂いに満ちていた。闇を統べるのは何者なのか?式部が最後に辿り着いた真実とは。

 

丸っきり横溝ワールドのヤバめなミステリ。

八つ墓村』と『獄門島』を掛け合わせたような導入部分から、邪教と不気味な因習が島になだれ込み事件が発生する。ホラー要素もそれなりにある。

屍鬼』を描いて、それが最恐ホラー”サイレン”生んだという経緯があるという謎の蘊蓄を私が持っていたせいで、何となくサイレンっぽさも感じて雰囲気は最高だった。あまり本格ミステリのおすすめで見かけないが、かなり優れた作品である。

 

 

44位  龍臥亭事件 / 島田荘司(1996年)

 

御手洗潔が日本を去って1年半。彼の友人で推理作家の石岡は、突然訪ねてきた二宮という女性の頼みで、岡山県まで悪霊祓いに出かけた。2人は霊の導くままに、寂しい駅に降り立ち、山中分け入り、龍臥亭という奇怪な旅館に辿り着く。そこで石岡は、世にもおぞましい、大量連続殺人事件に遭遇した。推理界の奇才が、渾身の筆致で描く本格ミステリー超大作。

 

ゴッドオブミステリーによる横溝的本格ミステリ

ただ本格ミステリと言っても島田荘司式本格のため内容は気合が入りまくりで、正統派ミステリとは一線を画している。暗闇坂以降の島田作品は推理小説を超越しているので、このランキングに挙げるかどうか迷ったが、『龍臥亭事件』はギリギリ本格推理小説といって差し支えない範囲だと判断した。ド本格な雰囲気と剛腕トリック、そして何と言っても『八つ墓村』のモチーフとなった”津山三十人殺し”が作中作として本気で挿入されるのが最高だ。

 

 

43位  蛍 / 麻耶雄嵩(2004年)

 

オカルトスポット探険サークルの学生六人は京都山間部の黒いレンガ屋敷ファイアフライ館に肝試しに来た。ここは十年前、作曲家の加賀螢司が演奏家六人を殺した場所だ。そして半年前、一人の女子メンバーが未逮捕の殺人鬼ジョージに惨殺されている。そんな中での四日間の合宿。ふざけ合う仲間たち。嵐の山荘での第一の殺人は、すぐに起こった。

 

麻耶作品の中ではかなりまともだが、やはり凄い仕掛けがある作品。

基本的にはこれでもかというくらいのド本格ミステリとして丁寧に物語は進んでいく。この手の推理小説に慣れた方であれば「見破ったり!ドヤァ」となるはずだが、そうなったら最後だということをお伝えしておく。麻耶雄嵩の作品の真相を見破ることなど絶対に不可能なのだ。

 

 

42位  孤島の鬼 / 江戸川乱歩(1930年)

 

密室状態での恋人の死に始まり、その調査を依頼した素人探偵まで、衆人環視のもとで殺された蓑浦は、彼に不思議な友情を捧げる親友諸戸とともに、事件の真相を追って南紀の孤島へ向かうことになった。だが、そこで2人を待っていたのは、言語に絶する地獄図の世界であった…!『パノラマ島奇談』や『陰獣』と並ぶ、江戸川乱歩の長編代表作。

 

言わずと知れた乱歩長編最高傑作。

物語の面白さが圧倒的で、推理小説云々ではなくとにかく話に夢中になる悪魔的超傑作である。ただし推理小説としてはこのあたりが妥当だと思う。『孤島の鬼』は大雑把に分けると推理小説の前半、怪奇幻想の中盤、冒険小説の後半に分かれていて、本領発揮するのは中盤以降だからである。

推理小説パートには二つの事件があり、密室殺人と衆人環境の殺人事件で、どちらも書かれた時代を考えるとなかなか面白い。まぁ本作の最大のポイントは日本初(?)のBL作品であることだろう。

 

 

41位  誰も僕を裁けない / 早坂吝(2016年)

 

援交少女にして名探偵・上木らいちの元に、「メイドとして雇いたい」という手紙が。しかし、そこは異形の館で、一家を襲う連続殺人が発生。一方、高校生の戸田公平は、深夜招かれた資産家令嬢宅で、ある理由から逮捕されてしまう。らいちは犯人を、戸田は無実を明らかにできるのか?エロミス×社会派の大傑作!

 

はっきり言ってアホな作品なのだが、なかなか凝っているし、なによりエロミスと社会派ミステリの融合に性交しているので高く評価したい(笑)

〇×8殺人事件に比べるとエロ要素が取って付けた感が否めないが、とは言えちゃんとエロが事件に結びついているのはさすが。タイトルの意味が分かった時、これが社会派なのか....と普段社会派ミステリを読まない方は納得することになるだろう(笑)

 

 

40位  嫉妬事件 / 乾くるみ(2011年)

 

城林大ミステリ研究会で、年末恒例の犯人当てイベントが開催され、サークル一の美人・赤江静流が、長身の彼氏を部室へ連れてきた当日、部室の本の上には、あるものが置かれていた。突如現れたシットを巡る尾篭系ミステリの驚愕の結末とは!?「読者への挑戦」形式の書き下ろし短編、「三つの質疑」も特別収録。

 

とりあえず読みなされ(笑)な作品。

バカミスでクソミスでマニア向けエロミスでもあるという変態的な傑作。『イニシエーション・ラブ』が有名な作家だが、イニシエは本格マニアよりも一般読者向けなライトな作風なので、本記事では『嫉妬事件』を猛烈に推す。

まぁとりあえず読みなされ(笑)。

 

 

39位  密室殺人ゲーム 王手飛車取り / 歌野晶午(2007年)

 

“頭狂人”“044APD”“aXe(アクス)”“ザンギャ君”“伴道全教授”。奇妙なニックネームの5人が、ネット上で殺人推理ゲームの出題をしあう。ただし、ここで語られる殺人はすべて、出題者の手で実行ずみの現実に起きた殺人なのである…。リアル殺人ゲームの行き着く先は!?歌野本格の粋を心して堪能せよ。

 

個人的にはイマイチ好きになれない作家で、代表作の『葉桜の季節に君を想うということ』なんて嫌いにもほどがあるのだが、『密室殺人ゲーム 王手飛車取り』は素直にすごいと言わざるを得ない。

不謹慎な内容で現実味もないので、読んでる最中は何ともイヤな気分になるのだが、ラストはとにかくすごい。著者が読者を騙すためだけに話を書くというのはなんか違う気がするが、ここまで本気でやってくれるとむしろ清々しいのである。

 

 

38位  翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 / 麻耶雄嵩(1991年)

 

首なし死体、密室、蘇る死者、見立て殺人……。京都近郊に建つヨーロッパ中世の古城と見粉うばかりの館・蒼鴉城を「私」が訪れた時、惨劇はすでに始まっていた。2人の名探偵の火花散る対決の行方は。そして迎える壮絶な結末島田荘司綾辻行人法月綸太郎、三氏の圧倒的賛辞を受けた著者のデビュー作。

 

推理作家の中でも頭のデキが良すぎて、常人には理解不能な問題作を連発する麻耶雄嵩だが、デビュー作の時点ですでに出来上がっている。

著者が21歳で書いたというのに三大奇書黒死館殺人事件』のオマージュという時点でヤバい匂いがプンプンするのだが、予想を遥かに超えるトンデモ本となっている。

タイトルも含め終始意表を突きまくりで、作中最大の謎と言える強固な密室殺人のトリックはもはやバカミスを超越した変態プレイである。

ヤバいのが読みたい人にはこれ以上ないほどおすすめ。

 

 

37位  GOTH / 乙一(2002年)

 

 連続殺人犯の日記帳を拾った森野夜は、未発見の死体を見物に行こうと「僕」を誘う……人間の残酷な面を覗きたがる者〈GOTH〉を描き本格ミステリ大賞に輝いた乙一出世作

世界に殺す者と殺される者がいるとしたら、自分は殺す側だと自覚する少年「僕」。もっとも孤独な存在だった彼は、森野夜に出会い、変化していく。彼は夜をどこに連れて行くのか? 「僕」に焦点をあてた3篇を収録。

 

”と””のキャラが最高すぎる、ラノベ寄りの傑作連作短篇集。

とにかくえまくっているのと、凶悪極まりないサイコパスが6つある話のほとんどに登場するのでサイコ好きにはたまらないだろう。

また周到に張られた伏線から導かれる””と””の正体が判明する話は乙一のミステリ作家としての力量を証明している。

というか””のキャラと正体ヤバすぎ。

 

 

36位  倒錯のロンド / 折原一(1989年)

 

”原作者”と”盗作者”の緊迫する駆け引きに息を呑む。受賞間違いなし、と自信を持って推理小説新人賞に応募しようとした作品が、何者かに盗まれてしまった! そして同タイトルの作品が受賞作に。時代の寵児になったのは、白鳥翔。山本安雄がいくら盗作を主張しても誰も信じてくれない。原作者は執念で盗作者を追いつめる。巧緻極まる仕掛けが全編に張り巡らされ、その謎が解き明かされていく衝撃、そして連続する衝撃! 叙述トリックの名手・折原一の”原点”に位置づけられる名作、32年越しの改訂が加わった新装完成版。

 

本格ミステリだけで評価するのならちょっとした問題作になるのかもしれないが、叙述トリックの名手である著者が仕掛ける罠は、叙述トリックが使われていることを知りつつも、回避不可能だろう。

ところで本作が問題作とかアンフェアだとかそんなことはどうでも良い。

『倒錯のロンド』は問答無用に物語が面白いのである。猛烈に勢いのある筆致に、なんとなくブラックユーモアめいたセリフ、そしてS・キングの『シャイニング』を全力でパロっていたりととことん面白さを追求している。

完成版は著者の自虐プレイも強化されており、さらに面白くなっている。

 

 

35位  異邦の騎士(1988年)

 

 失われた過去の記憶が浮かびあがり男は戦慄する。自分は本当に愛する妻子を殺したのか。やっと手にした幸せな生活にしのび寄る新たな魔の手。名探偵御手洗潔の最初の事件を描いた傑作ミステリ『異邦の騎士』に著者が精魂こめて全面加筆修整した改訂完全版。幾多の歳月を越え、いま異邦の扉が再び開かれる。

 

 島田御大の事実上の処女作で、御手洗&石岡君最初の事件である。

ミステリーとしても優秀なのはもちろんのこと、島田御大のストーリーテラーとしての才能が溢れる至高のラブストーリーである。

記憶を無くした"俺"の正体と良子の謎に迫る物語は涙無しでは語れず、ラストはそこはかとないせつなさが残る。

最初にこの本を読むと素晴らしさが95%くらい減少するので、他の御手洗&石岡君が活躍する作品を読まなければいけない。

 

 

34位  神様ゲーム / 麻耶雄嵩(2005年)

 

自分を「神様」と名乗り、猫殺し事件の犯人を告げる謎の転校生の正体とは? 神降市に勃発した連続猫殺し事件。芳雄憧れの同級生ミチルの愛猫も殺された。町が騒然とするなか謎の転校生・鈴木太郎が事件の犯人を瞬時に言い当てる。鈴木は自称「神様」で、世の中のことは全てお見通しだというのだ。そして、鈴木の予言通り起こる殺人事件。芳雄は転校生を信じるべきか、疑うべきか?

 

変態of変態作品である。
児童向けのレーベルから出ているにもかかわらず内容は不謹慎そのもので、サラッと読める短めな話の中にありったけの毒を封入したかのようである。

全知全能の神が犯人をスパッと言い当てるのが本作のポイントだが、本当にすごいのは変態極まるラストにある。「えぇー.........」とドン引きしてしまうだろう。

 

 

33位  東亰異聞 / 小野不由美(1994年)

 

帝都・東亰、その誕生から二十九年。夜が人のものであった時代は終わった。人を突き落とし全身火だるまで姿を消す火炎魔人。夜道で辻斬りの所業をはたらく闇御前。さらには人魂売りやら首遣いだの魑魅魍魎が跋扈する街・東亰。新聞記者の平河は、その奇怪な事件を追ううちに、鷹司公爵家のお家騒動に行き当たる…。人の心に巣くう闇を妖しく濃密に描いて、官能美漂わせる伝奇ミステリ。

 

個人的には1位にしてしまってもいいんじゃないかと思うほど凄い伝奇ミステリだが、本格ミステリとしての評価でこの順位にしている。

京極夏彦百鬼夜行シリーズのような、人間ではなく魑魅魍魎の仕業としか思えない怪異のような事件を探偵役が解決するという本格ミステリだが、『東亰異聞』のすさまじさは事件が解決した後に待っている。

何もかもをひっくり返す衝撃を超えた衝撃をぜひとも味わってほしい!

ちなみにホラー作品というわけではないものの、妖しく美しい明治の世界観が異様に怖い。

 

 

32位  殺戮にいたる病 / 我孫子武丸(1992年)

 

永遠の愛をつかみたいと男は願った―。東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。叙述ミステリの極致!

 

リョナラー必読、猟奇エロ本の最高峰である

殺人が起こるたびに射精することになるので、読んだ後は金玉すっからかんなのだ。

犯人と被害者、そして読者が三位一体となってイクことができる神聖なハーモニーが奏でられる。イッて、逝って、イク

その他、おっぱいや携帯おま〇こなどドラえもんですら思いつかないスーパーアイテムの数々.....お母さんはゴミ箱漁るし...んもう!

ちなみにこの本、ただのエロ本ではなくあのトリックが完璧にキマった作品でもあるので変態だけでなく、ミステリ好きにもおすすめ。

 

 

31位 46番目の密室 / 有栖川有栖(1992年)

 

日本のディクスン・カーと称され、45に及ぶ密室トリックを発表してきた推理小説の大家、真壁聖一。クリスマス、北軽井沢にある彼の別荘に招待された客たちは、作家の無残な姿を目の当たりにする。彼は自らの46番目のトリックで殺されたのか―。有栖川作品の中核を成す傑作「火村シリーズ」第一作を新装化。

 

非常に丁寧に作られた推理小説の中の推理小説

こんなこと書くと怒られそうだが、有栖川作品は新本格に慣れた読者からすると地味に感じてしまうに違いない。ただ職人気質を感じる堅実な作りが推理小説マニアに高く評価されるのは大いに頷ける。そして肝心な本作だがやはり地味だ...(笑)でもとてもしっかりしていて、犯人、トリック、動機のどこをとっても過不足なしで、お手本のような作品となっている。

 

 

30位 八つ墓村 / 横溝正史(1950年)

 

戦国の頃、三千両の黄金を携えた八人の武者がこの村に落ちのびた。だが、欲に目の眩んだ村人たちは八人を惨殺。その後、不祥の怪異があい次ぎ、以来この村は“八つ墓村"と呼ばれるようになったという――。大正×年、落人襲撃の首謀者田治見庄左衛門の子孫、要蔵が突然発狂、三十二人の村人を虐殺し、行方不明となる。そして二十数年、謎の連続殺人事件が再びこの村を襲った……。現代ホラー小説の原点ともいうべき、シリーズ最高傑作! !

 

犬神家と並んで最高峰の知名度を誇る『八つ墓村

ホラー的なイメージが先行しているように思われるが、実際はエンタメの限りを尽くした超絶娯楽小説である。推理云々ではなくめっちゃ面白い!

しかも八つ墓村金田一耕助は登場するものの、ただの脇役なのでこの本を最初に読んでも何の支障もないのが良い。

まぁ読めば分かるのだが、ひたすらに面白いしやたら萌えているので、萌えたい人は必ず読もう。本格ミステリとしても優れているが、八つ墓村はミステリではなくミステリーなのだ。

 

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

29位  解決まではあと6人 / 岡嶋二人(1985年)

 

次々と興信所を訪れては、およそ事件とは思われない奇妙な依頼をしていく謎の女・平林貴子。いったい、彼女の本当の目的は何なのか。やがて、それぞれの調査報告が、ひとつの輪のように繋がって隠された大事件の全容が明らかになっていく。斬新なスタイルで、読者に挑戦する華麗なるメドレー・ミステリー。

 

伝説の推理作家ユニット岡嶋二人

デビュー前の東野圭吾に「岡嶋二人には勝てない」と言わしめただけに高品質かつ読みやすいミステリを多数残しているが、本格ミステリとしてのデキの良さでは本作が頭一つ抜けているように思う。

連作短編のような形式で、謎の女が別々の興信所に奇妙な依頼をしていき、話が進むごとに事件の輪郭が見えてくるというオリジナリティ溢れる内容である。

 

 

28位  ハサミ男 / 殊能将之(1999年)

 

美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。三番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作。

 

あのトリックが使われた作品の中でも特に完成度が高い傑作である。

ただしフェア過ぎるため、ミステリ慣れした読者であればおそらくすぐに見破ってしまうかもしれない。なので読むタイミングがとても重要。

ミステリ慣れしていない人が読めば、あるシーンで「?????」 となるのは間違いない。頭がおかしくなるほど感じてしまうだろう。

ただ事実に気づいたとしても物語がかなり楽しいので、最後まで楽しめるので安心だ。

ちなみにマニア御用達のエロ本でもある(ただし人口の99.999%はエロ本であることに気づかない)

 

 

27位  太陽黒点 / 山田風太郎(1963年)

 

昭和30年代後半の東京。才気に満ちた美貌の苦学生・鏑木明は、アルバイト先の屋敷で社長令嬢・多賀恵美子と出会い、偶然にも特権階級への足掛かりを手にする。献身的だが平凡な恋人・容子を捨て、明は金持ち連中への復讐を企て始める。それが全ての悲劇の序章だとは知らず…。“誰カガ罰セラレネバナラヌ”―静かに育まれた狂気が花聞く時、未曾有の結末が訪れる。戦争を経験した著者だからこそ書けた、奇跡のミステリ長編。

 

物語の後半まではミステリとは思えないような青春恋愛小説といった展開だが、裏では驚愕の仕掛けが施されており、誰もが予想不可能な結末が待っている。

ネタバレ厳禁なので深くは書かないが、すごいことは保証するので『イニシエーション・ラブ』を読むような軽~い気持ちで読んでみよう。きっと読み終えるとどんよりすることだろう.....。

 

 

26位  奇面館の殺人 / 綾辻行人(2012年)

 

奇面館主人・影山逸史が主催する奇妙な集い。招待された客人たちは全員、館に伝わる“鍵の掛かる仮面”で顔を隠さねばならないのだ。季節外れの大雪で館が孤立する中、“奇面の間”で勃発する血みどろの惨劇。発見された死体からは何故か、頭部と両手の指が消えていた!大人気「館」シリーズ、待望の最新作。

 

綾辻作品の中でもトップクラスにトリッキーな作品。

ページを開くや登場人物一覧が無いなど、推理小説マニアであれば冒頭から疑りまくること間違いなしだろう。そして肝心な館は皆が面を被らされるという、館の名の通りのシチュエーション、ずばり奇抜 OF 奇抜な展開が待っている。

かなり凝りまくっているだけでなく、少々特殊設定な要素がありつつも、ド本格といえる内容なのでとても完成度は高いと思う。

 

 

25位  仮面山荘殺人事件 / 東野圭吾(1990年)

 

八人の男女が集まる山荘に、逃亡中の銀行強盗が侵入した。外部との連絡を断たれた八人は脱出を試みるが、ことごとく失敗に終わる。恐怖と緊張が高まる中、ついに一人が殺される。だが状況から考えて、犯人は強盗たちではありえなかった。七人の男女は互いに疑心暗鬼にかられ、パニックに陥っていった…。

 

東野圭吾は万能過ぎて本格ミステリ作家としての影がイマイチな気がするのだが、はっきり言って新本格の作家たちが束になっても敵わないくらい強力な推理小説も書いている。その代表が『仮面山荘殺人事件』だろう。

売れっ子日本一だけあって、物語自体の面白さは折り紙付きでミステリ部分も「なにィ....!」→「うほッ」→「うおーーーー!!」と何度も衝撃を与えてくれる神仕様である。

何となく東野圭吾を読んでいないミステリ好きはまずこれだろう。

 

 

24位  時計館の殺人 / 綾辻行人(1991年)

 

鎌倉の外れに建つ謎の館、時計館。角島・十角館の惨劇を知る江南孝明は、オカルト雑誌の“取材班”の一員としてこの館を訪れる。館に棲むという少女の亡霊と接触した交霊会の夜、忽然と姿を消す美貌の霊能者。閉ざされた館内ではそして、恐るべき殺人劇の幕が上がる!第45回日本推理作家協会賞に輝く不朽の名作、満を持しての新装改訂版。

 

本格ミステリとしての完成度は綾辻作品中1、2位を争うThe 推理小説

オカルト雑誌の取材というのが名目なので、そっち系のネタが豊富なのが個人的にツボなのだが、ツッコミどころ満載なのでこの順位とした。

時計館の殺人』のアリバイトリックは十角館に勝るとも劣らない完成度で、トリックの美しさについてはこちらの方が上回っていると思う。しかしこんな簡単に殺されるかよ!という至極当然なツッコミが止まらず、全体的には何となく印象が薄い。

綾辻作品に”本格”を求めるなら本作で決まり。

 

 

23位  妖異金瓶梅 / 山田風太郎(1954年)

 

性欲絶倫の豪商・西門慶は絶世の美女、潘金蓮を始めとする8人の妻妾を侍らせ、酒池肉林の日々を送っていた。彼の寵をめぐって女たちの激しい嫉妬が渦巻く中、第七夫人と第八夫人が両足を切断された無惨な屍体で発見される。混乱の中、西門慶の悪友でたいこもちの応伯爵だけは事件の真相を見抜くが、なぜか真犯人を告発せず…?美姫たちが織り成す凄惨淫靡な怪事件。中国四大奇書の一つを大胆に解釈した伝奇ミステリ。

 

山田風太郎の天才っぷりが発揮されまくった連絡短編集。

江戸川乱歩が賞賛したという「赤い靴」という話で幕を開けて、次々と事件が続いていくのだが、最初の「赤い靴」のみフーダニットの推理小説で、それ以降の事件は犯人と動機が最初から判明していて、どうやってやったかのハウダニット作品になっている。

そのため今回は〇〇は何をやらかすのだろうかと、飽きることなく楽しむことができる。終盤になると物語は進行して伝奇小説の側面が強くなるのだが、そこでも相変わらず超絶ミステリが続く。どうしてこんなのが書けるのか甚だ不思議な作品。

 

 

22位  殺しの双曲線 / 西村京太郎(1979年)

 

差出人不祥の、東北の山荘への招待状が、六名の男女に届けられた。しかし、深い雪に囲まれた山荘は、彼らの到着後、交通も連絡手段も途絶した陸の孤島と化す。そして、そこで巻き起こる連続殺人。クリスティの『そして誰もいなくなった』に挑戦した、本格ミステリー。西村京太郎初期作品中、屈指の名作。

 

まさに使い回し不可な一回限りのトリック。

アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』オマージュとして有名だが、そんなことよりも、冒頭で明かされる双子がトリックという宣言と、二つの事件がどのように交わるのかが気になりまくって、一気読み不可避な展開が凄いと思う。

推理マニアからはそれなりに叩かれているのがちょっと意外だったが、古典的な傑作と言って間違いない。それとラストが凄い好き。

 

 

21位  硝子のハンマー / 貴志祐介(2004年)

 

日曜日の昼下がり、株式上場を間近に控えた介護サービス会社で、社長の撲殺死体が発見された。エレベーターには暗証番号、廊下には監視カメラ、窓には強化ガラス。オフィスは厳重なセキュリティを誇っていた。監視カメラには誰も映っておらず、続き扉の向こう側で仮眠をとっていた専務が逮捕されて……。弁護士・青砥純子と防犯コンサルタント・榎本径のコンビが、難攻不落の密室の謎に挑む。

 

推理小説以外の作品がすごすぎる貴志祐介だが、何気に密室事件の達人でもある。

タイトルで盛大にネタを明かしてしまっているにもかかわらず、犯人もトリックも極めて分かりずらいという、練りに練られたすんごい密室殺人である。殺しの手段は前代未聞で超能力としか思えない必殺技が炸裂する。

しかし何といっても、最強エンタメ作家である貴志祐介本格ミステリとしての完成度だけでなく、巧みな構成から生み出されるストーリー性の高さも他の推理作家にはマネできないものがある。

 

 

20位 さよなら神様 / 麻耶雄嵩(2014年)

 

「犯人は〇〇だよ」。クラスメイトの鈴木太郎の情報は絶対に正しい。やつは神様なのだから。神様の残酷なご託宣を覆すべく、久遠小探偵団は事件の操作に乗り出すが・・・・・・。衝撃的な展開と後味の悪さでミステリ界を震撼させ、本格ミステリ大賞に輝いた超話題作。他の追随を許さぬ超絶推理の頂点がここに!

 

6作の短編からなる連作短編集である。

いずれの話も鈴木太郎という””が犯人を指摘するところから始まる。犯人が分かったうえで事件の真相を暴くという一種の特殊ミステリだが、最初の3作は麻耶雄嵩にしてはマトモで拍子抜け.....と思わせるのは当然トラップで、4話目から一気に変態プレイが全開になる。とにかく後半の異常っぷりが半端ではないため、驚きまくりたい方は読まないわけにはいかないのだ。残念でした♥ さよなら、神様

 

 

19位 絡新婦の理 / 京極夏彦(1996年)

 

当然、僕の動きも読み込まれているのだろうな――2つの事件は京極堂をしてかく言わしめた。
房総の富豪、織作(おりさく)家創設の女学校に拠(よ)る美貌の堕天使と、血塗られた鑿(のみ)をふるう目潰し魔。連続殺人は八方に張り巡らせた蜘蛛の巣となって刑事・木場らを眩惑し、搦め捕る。中心に陣取るのは誰か?シリーズ第5弾。

 

1400ページ越えという製本の限界に挑戦したミステリ.....というのはさておき、とにかく読んだだけで勃起するような妖艶な女が大勢登場する素晴らしい作品である。

長いだけでなく尋常ではない複雑な事件なので、事件の全貌がまるで見えてこないのだが、タイトルの通り恐るべき下手人が女郎蜘蛛のごとく罠を張り、みなが絡め取られていくという超絶ミステリ。この手の作品では最も完成度が高いと思われる。

最初と最後の美しさは言葉にはできない。

 

 

18位  犬神家の一族 / 横溝正史(1951年)

 

信州財界一の巨頭、犬神財閥の創始者犬神佐兵衛は、血で血を洗う葛藤を予期したかのような遺言状を残して永眠した。佐兵衛は生涯正室を持たず、女ばかり三人の子があったが、それぞれ生母を異にしていた。一族の不吉な争いを予期し、金田一耕助に協力を要請していた顧問弁護士事務所の若林がやがて何者かに殺害される。だが、これは次々と起こる連続殺人事件の発端にすぎなかった! 血の系譜をめぐる悲劇、日本の推理小説史上の不朽の名作!!

 

日本国民であれば誰もが知ってるミステリ。しかし原作を読んだことがある人はあまりいないのではないかと思う。

古い作品だが古臭さはほとんど感じられず抜群のエンターテイメント作品となっている。本格ミステリとしてはややご都合主義な部分もあるかもしれないが、練りに練られた展開ときれいに締められる幕引きは完璧である。

さあ、犬神家を読んで非国民を脱しよう!

 

 

17位  陰獣 / 江戸川乱歩(1928年)

 

探偵小説作家の「私」は、愛読者である美貌の人妻・小山田静子から奇妙な相談を受ける。文壇を騒がす謎の探偵小説作家・大江春泥の正体が静子の元恋人・平田一郎であり、かつて静子に恋破れた彼が復讐のため小山田家の周囲を徘徊しているというのだ・・・その真相をさぐる主人公の前に展開していった驚嘆すべき真相とは?

 

膨大な著作の江戸川乱歩だが、本格ミステリの完成度ならば『陰獣』が筆頭だろう。

ミステリを抜きにしても変態童貞を書かせたらならぶ者のいない大乱歩の描く、ストーカー小説としてもかなり面白い。そして肝心な推理部分は一筋縄ではいかず、初読→再読→再々読することで見えてくる結末が変わってくるというメタ仕様。

乱歩の描く変態男と優れたミステリが両立した大傑作(あとタイトルがかっこいい)

 

 

16位  北の夕鶴2/3の殺人(1985年)

 

 北の大地で壮大なトリックが展開される傑作ミステリー。『占星術殺人事件』『奇想、天を動かす』などと並び称される名作!離婚した妻・通子から掛かってきた一本の電話。ただ、「声が聞きたかった」と言うだけの電話を不審に思った吉敷は、通子を追って上野駅へ向かう。発車した〈ゆうづる九号〉に通子の姿を認めた吉敷だが、翌日、車内から通子と思われる死体が発見された。通子の足跡をたどる吉敷は、彼女が釧路で殺人事件の容疑者となり、姿を消していたことを知る。次々と降りかかる難事に身も心も傷だらけになりながら、別れた妻の無実を証明するため盛岡、そして釧路へと吉敷の捜査行は続く。ハードボイルドと超絶トリックを融合させた驚異の傑作ミステリー!

 

怪奇現象としか思えない圧倒的な事件に、島田御大の十八番であるアクロバティックな超大技トリック、そして元妻を助けるためにズタボロになる漢。

まさに島田荘司の魅力を凝縮したような物語である。ミステリという枠を超えて物語そのものがとても素晴らしい。

もともと御手洗シリーズで使うために考案したトリックなので、本作のトリックは『斜め屋敷の犯罪』と双璧を成すほど凄まじいものとなっている。

吉敷シリーズ3作目だが、この本を最初に読んでもさほど問題がないので、気になった方は読んでみるべし。

 

 

15位  迷路館の殺人 / 綾辻行人(1988年)

 

奇妙奇天烈な地下の館、迷路館。招かれた4人の作家たちは莫大な“賞金”をかけて、この館を舞台にした推理小説の競作を始めるが、それは恐るべき連続殺人劇の開幕でもあった!
周到な企みと徹底的な遊び心でミステリファンを驚喜させたシリーズ第3作、待望の新装改訂版。初期「新本格」を象徴する傑作!

 

読者を騙すという点において、ここまで徹底的にやりまくった小説は滅多にないであろう超トリッキーな傑作である。

作中作という構成からしてやたらトリッキーだが、ラストには驚きに次ぐ驚きという小説でしか体感できない楽しみが全開である。著者の叙述トリックで読者をハメる技術は驚嘆すべきものがある。

なお本作は館シリーズ3作目だが、迷路館までは必ず順番通りに読まなければならない。十角館を読んで時計館にワープしたら必ず後悔するので注意

 

 

 

14位  明治断頭台 / 山田風太郎(1979年)

 

明治の王政復古とともに復活した役所、弾正台。水干姿の優美な青年・香月経四郎と、同僚の川路利良は、その大巡察として役人の不正を糺す任に就いていた。とあるきっかけから、二人は弾正台に持ち込まれる謎めいた事件の解決を競うことに。いずれ劣らぬ難事件解決の鍵になるのは巫女姿のフランス人美女、エスメラルダが口寄せで呼ぶ死者の証言で…!?明治ものにして本格推理小説。驚天動地のラストが待ち受ける異色作。

 

最強衝撃小説の筆頭である。

本格ミステリも100冊200冊と読む冊数が増えていくと、いくら衝撃の結末!!とか謳われていようが、悲しいことにあまり驚かなくなってしまうという宿命が待っている。

しかし『明治断頭台』については心配無用である。推理作家としても高い評価を得ている山田風太郎が、本作を最も自信があると言っていることからもその完成度は保証されたも同然だが、実際最後の衝撃の展開に到達するや「ぐおッ.....!?」となること必定である。

連絡短編となっており、個々の事件をとっても完成度が高いのでミステリ慣れした人にこそおすすめしたい。

 

 

13位  〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件 / 早坂吝(2014年)

 

アウトドアが趣味の公務員・沖らは、仮面の男・黒沼が所有する孤島での、夏休み恒例のオフ会へ。赤毛の女子高生が初参加するなか、孤島に着いた翌日、メンバーの二人が失踪、続いて殺人事件が。さらには意図不明の密室が連続し……。果たして犯人は? そしてこの作品のタイトルとは? 「タイトル当て」でミステリランキングを席巻したネタバレ厳禁の第50回メフィスト賞受賞作

 

一読して射精、再読して勃起しながらガマン汁を垂れ流すという伝説のエロミスである。これだからメフィスト賞は信頼しちゃう。
ネタバレ厳禁なので詳しくは書けないが、エロバカな割に極めてロジカルな仕上がりとなっていて、しかもあらゆるエロがトリックに密接に結びつくという変態仕様なのだ。

アナルに指を突っ込みながらフェラしてごっくんしちゃう探偵”上木らいち”の活躍をぜひ味わってほしい!!

 

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

12位  容疑者Xの献身 / 東野圭吾(2005年)

 

天才数学者でありながら不遇な日日を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、二人を救うため完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる。

 

まずは東野圭吾作品なので、本格ミステリ云々ではなく物語自体が非常に素晴らしい。これだけでも十分に読む価値があるだろう。

しかし超有名な本作の本当にすごいところは、犯人視点の倒叙ミステリであるにもかかわらず衝撃の事実があることだろう。衝撃の事実が明らかになるシーンでは思わず「してもうたか.......」と静かに震えたものである。

ミステリオタクは何となく東野圭吾を忌避する傾向があるように思われるが、これは読まないとダメなやつです。必読。

 

 

11位  メルカトルかく語りき / 麻耶雄嵩(2011年)

 

傲岸不遜で超人的推理力の探偵・メルカトル鮎。教師殺人の容疑者はメフィスト学園の一年生、二十人。全員にアリバイあり、でも犯人はいる―のか?相棒の作家、美袋三条は常識破りの解決を立て続けに提示する探偵に“怒り”すら抱く。ミステリのトリックを嘲笑い自分は完璧とのたまう“銘”探偵の推理が際立つ五篇!

 

収録された5編すべてが本格ミステリを破壊する!!

と言いたくなるようなトンデモ作品のオンパレードで、メルカトル鮎が活躍する作品の中では最高傑作と言っても過言ではない。

一発目の「死体を起こす」からしてすでに異次元級のトンデモ作品だが、二発目以降も強烈無比。三発目の「収束」で「あいかわらずメルカトルはひでぇや(笑)」となる。そこでとどめの「答えのない絵本」。これは数多くの考察を生んでいるようだが、結果的には「メルが悪人」で落ち着くようでいて腑に落ちない気分になる。そして真のトドメ「密室荘」。もはやアンチ・ミステリーの極北としか言いようがない。

とりあえず興味本位で読んでみてほしい1冊。

 

 

10位  十角館の殺人 / 綾辻行人(1987年)

 

十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の7人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける! 
すべてはここから。清冽なる新本格の源流!大学ミステリ研究会の七人が訪れた十角形の奇妙な館の建つ孤島・角島。メンバーが一人、また一人、殺されていく。「十角館」の刊行から二十年。あの衝撃を再び!

 

おそらく世間一般的には最も人気のある作品だと思う。

ただし個人的にはトリックのインパクトが少々弱かったのでこの順位になっているが、直球の本格ミステリ的展開と完璧に構築されたロジックの美しさ、そしてミステリ界屈指の”衝撃の1行”は天下一品である。

個人的には事件の素晴らしさもさることながら、古典的海外ミステリ作家の名を冠した魅力的な登場人物による数々の会話がとても面白いと感じる。

そして誰もいなくなった』のオマージュ作品であるだけにみんないなくなってしまうのだが......(泣)

 

 

9位  すべてがFになる / 森博嗣(1996年)

 

孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。新しい形の本格ミステリィ登場。

 

理系ミステリィとされる超傑作。

理系というよりはITの知識が必要とされる内容なので、ITのことがさっぱりな人には理解不能な可能性があることと、いかにも理系の男性が書いたキャラクターに拒絶反応を起こす人が多数報告されているため、それなりに人を選ぶと思われる。

しかし本作の密室殺人は最強クラスの鬼密室となっていて、そのトリックは極めて秀逸(タイトルが神)なので、このランキングが妥当だろう。どちらかというとミステリィとしてよりも、超天才である著者の思想が覗けることに価値があるのかも。

 

 

8位  夏と冬の奏鳴曲 / 麻耶雄嵩(1993年)

 

二十年前に死んだ美少女を偲び、孤島「和音(かずね)島」に集う男女を襲う惨劇。今も彼女の影が支配する島で、雪が降りつもった夏の朝に、首なし死体が発見される。雪密室を皮切りに島の均衡は崩れ、暴走が始まる。ラストの大破局(カタストロフ)、メルカトル鮎(あゆ)のとどめの一言。発表当時から話題騒然の超問題作が新装改訂版で登場!

 

奇書と称されるほどの超絶アンチ・ミステリー。

麻耶雄嵩といったら毎回盛大にやらかしまくる問題作ばかり書くので、正統派推理好きからはゴミカスのように扱われ、また一部の推理マニアからは神として崇められる作家だが、『夏と冬の奏鳴曲』そんな麻耶作品の中でも抜きん出てやらかしている作品である。途中までは”孤島”と”首無し死体”、そして”雪密室”と本格ミステリのガジェットをとことん使いながら、これぞ本格ミステリ的な展開で物語は進んでいくのだが、終盤の映画上映が始まってからは様相が一変し始めて、何が何やらさっぱりとなり、「そんなわけあるか!!(笑)」→「えッ!?..この流れでチェンジ???」→「おいおい!勝手に幕を下ろすな」→僅か数ページのエピローグにてメルカトルが余計な一言「( ゚д゚)」である。

しかしこんな超傑作が長年絶版していたことと、本作を書いた時の著者が22~23歳くらいであったことこそが本当の謎だと思ったり。

 

 

7位  本陣殺人事件 / 横溝正史(1946年)

 

江戸時代からの宿場本陣の旧家、一柳家。その婚礼の夜に響き渡った、ただならぬ人の悲鳴と琴の音。離れ座敷では新郎新婦が血まみれになって、惨殺されていた。枕元には、家宝の名琴と三本指の血痕のついた金屏風が残され、一面に降り積もった雪は、離れ座敷を完全な密室にしていた……。アメリカから帰国した金田一耕助の、初登場の作品。

 

大横溝が生み出した探偵、金田一耕助のデビュー作であり犯人、トリック、動機すべてがテヘペロな感じのとんだバカミスである(笑)....しかも戦後間もない作品なのにめっちゃ萌えてる

さて、上記の内容は誇張でも何でもなく、天才の無駄使いとしか言いようのない残念な犯人と超かっこいいトリック、そして涙が出るほど共感できる動機(?)はこの世に生きるすべての童貞を滂沱の涙に誘うだろう。

この時代にすでにこんなとんでもないトリックがあるんだから、後世のミステリ作家は気の毒である。

 

 

6位  斜め屋敷の犯罪 / 島田荘司(1982年)

 

 北海道の最北端・宗谷岬に傾いて建つ館――通称「斜め屋敷」。雪降る聖夜にこの奇妙な館でパーティが開かれたが、翌日、密室状態の部屋で招待客の死体が発見された。人々が恐慌を来す中、さらに続く惨劇。御手洗潔は謎をどう解くのか!? 日本ミステリー界を変えた傑作が、大幅加筆の改訂完全版となって登場! 

 

不可能犯罪としか思えないほどの超絶密室殺人事件である。実現可能性を度外視した超ド級の物理トリックは歴史に名を残す残すこと間違いなしである(バカミスって言っちゃダメ笑)

そして『斜め屋敷の犯罪』のやたら面白いところは何といってもユーモア溢れる登場人物の会話と、女同士の醜さ極まる罵詈雑言の罵りあいだろう(笑)

島田御大は本格推理作家としてだけでなく、稀代のストーリーテラーでもあるということを実感できる作品だ。

 

 

5位  姑獲鳥の夏 / 京極夏彦(1995年)

 

この世には不思議なことなど何もないのだよ――古本屋にして陰陽師(おんみょうじ)が憑物を落とし事件を解きほぐす人気シリーズ第1弾。東京・雑司ヶ谷(ぞうしがや)の医院に奇怪な噂が流れる。娘は20箇月も身籠ったままで、その夫は密室から失踪したという。文士・関口や探偵・榎木津らの推理を超え噂は意外な結末へ。

 

 "20ヶ月も妊娠している女"と"完全な密室で消失した男"という極めて不可解な謎が魅力的であり、特に後者の密室トリックは空前絶後の反則技である。

後世にメフィスト賞を生み出すことになった作品だけに、そのトリックはいかにもバカミスなのだが、京極堂認知科学的な解説という伏線によりバカミス呼ばわりすることが不可能な状況ができあがってしまっているのだ。

こんなのもありなのか....」と本格ミステリに限界がないことを知らされる作品だ。

 

 

4位  首無の如き祟るもの / 三津田信三(2007年)

 

奥多摩の山村、媛首村。淡首様や首無の化物など、古くから怪異の伝承が色濃き地である。三つに分かれた旧家、秘守一族、その一守家の双児の十三夜参りの日から惨劇は始まった。戦中戦後に跨る首無し殺人の謎。驚愕のどんでん返し。本格ミステリとホラーの魅力が鮮やかに迫る。「刀城言耶」シリーズ傑作長編。

 

これはマジな作品。

気になる有名どころの推理小説を読み尽くしてしまって、もう本格ミステリは飽きてしまったぜ!となっている時に、ホラー要素があれば楽しめるだろうと思い読んでみたら、「うわー...これは本気でやべぇーよ」唸らせられた作品である。本格ミステリと完成度が飛び抜けて高いだけでなく、ホラーとの融合も完璧に成功している。

こんなことを言うと呪い殺されそうだが、一作目の『厭魅の如き憑くもの』があまりにもつまらなくて、途中で投げてしまったため、首無はずいぶん長いこと積んでしまったのだが、本作はシリーズ作品ではありつつも、完全に独立した話となっているため、三津田信三が気になっている方は、問答無用に本作から読むことをおすすめする。

ちなみにホラーを求めて三津田作品に手を伸ばす方は『のぞきめ』→『首無』といった順が良いかも。

 

 

3位  隻眼の少女 / 麻耶雄嵩(2010年)

 

山深き寒村で、大学生の種田静馬は、少女の首切り事件に巻き込まれる。犯人と疑われた静馬を見事な推理で救ったのは、隻眼の少女探偵・御陵みかげ。静馬はみかげとともに連続殺人事件を解決するが、18年後に再び惨劇が…。日本推理作家協会賞本格ミステリ大賞をダブル受賞した、超絶ミステリの決定版。

 

常に問題作を発表し続ける異能の変態作家、麻耶雄嵩

そんな著者が横溝的なド本格ミステリの世界観の中で、これでもかというほど衝撃的な変態鬼畜プレイをやらかしたのが『隻眼の少女』である。

日本推理作家協会賞本格ミステリ大賞をダブル受賞しているにも関わらず、アホみたいに賛否両論なことが愛おしい。

犯人が忍者でも超能力者でも宇宙人でも面白ければどうでも良いのです。犯人なんて分からなくてもいい。探偵の御陵みかげ萌えまくっているのも最高なのだ。犯人、トリック、動機すべてがブッ飛びMAXな超絶傑作。

 

 

2位  魍魎の匣 / 京極夏彦(1995年)

 

箱を祀る奇妙な霊能者。箱詰めにされた少女達の四肢。そして巨大な箱型の建物――箱を巡る虚妄が美少女転落事件とバラバラ殺人を結ぶ。探偵・榎木津、文士・関口、刑事・木場らがみな事件に関わり京極堂の元へ。果たして憑物(つきもの)は落とせるのか!?日本推理作家協会賞に輝いた超絶ミステリ。

 

"生きてゐる人形"や"重体で医療機器に繋がれた少女が衆人環境で瞬時に消失"といった怪奇幻想に満ち溢れた謎を筆頭に、連続バラバラ殺人事件など多くの事件が輻輳する途轍もない超絶ミステリである。
1000ページを超える大長編でありながら、京極堂の憑物落しより事件が解決してみれば、無駄なページなど1ページたりとてなかったことが分かり震えてしまう。”みっしり”なのだ。

SF的要素もある猟奇極まる恐るべき殺人事件。ページ数に恐れをなしている方は安心して読み進めよう。物語もキャラも魅力的で読むのをやめられなくなるだろう。

 

 

1位  占星術殺人事件 / 島田荘司(1981年)

 

 密室で殺された画家が遺した手記には、六人の処女の肉体から完璧な女=アゾートを創る計画が書かれていた。その後、彼の六人の娘たちが行方不明となり、一部を切り取られた惨殺遺体となって発見された。事件から四十数年、迷宮入りした猟奇殺人のトリックとは!?名探偵御手洗潔を生んだ衝撃作!

 

人類がホモ=サピエンスから進化しない限り『占星術殺人事件』を超える本格ミステリを生み出すことはもう不可能だろう。そう断言できる完全無欠の超傑作である。

三つに分かれた事件のいずれも出し惜しみない完成度であり、特に最後のアゾート殺人はオカルト性も相まって本格ミステリを超えた真のミステリーと言える。(ちなみにおらは二つ目の事件が大好き♡これで島荘のファンになり申した)

島田御大は21世紀本格というミステリの新たな地平を提唱し、その圧倒的な作品群によりゴッドオブミステリーの地位を確固たるものとしたが、本格推理小説としては本作が永遠のマスターピースなのだ。

 

 

謎の探究に終わりはない

エドガー・アラン・ポーが『モルグ街の殺人』とともに、この世に探偵小説を生み出した時点ですでに究極の謎は提示されてしまったのかもしれない。

しかしながら後世の推理作家も限界を超えた作品を稀に生み出すので、今後もミステリを読みまくって、脳内麻薬が爆発するほどの謎を探求していきたい。

 

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