SF御三家の巨匠、ご乱心
作品紹介
筒井康隆による『ビアンカ・オーバースタディ』は2012年に星海社FICTIONSより出版された200ページ弱の長編である。本書が出版された際の筒井御大の年齢は77歳、見習うべきチャレンジ精神だ。
文豪である筒井康隆がラノベ??となること請け合いだが、角川文庫から再販された谷川流の『涼宮ハルヒの憂鬱』の解説にて筒井本人の解説によると、ずばり涼宮ハルヒシリーズが売れまくっていることに着目して書いてしまったということだ(ちょっと適当だけどだいたいそんなことを言っていた。)
涼宮ハルヒ自体がSFで『時をかける少女』の影響を少なからず受けているものと思われるが、『ビアンカ・オーバースタディ』は『時をかける少女』に涼宮ハルヒを足して.....圧倒的にエロくした小説である(笑)
本書は内容、読みやすさ、ページ数、エロさと人にすすめたく要素を完備しており、また著者自身がおっしゃっている通りメタラノベでもあるので、ラノベを読みなれた方であればより一層楽しめるかと思う。
どれほどクッソエロいのかをメインに紹介したい。
以下、あらすじの引用
あらゆる男子生徒から熱視線を浴びまくる超絶美少女・ビアンカ北町は、生物研究部員としての生殖の研究が大好き。ウニを使ったいつもの実験に飽き飽きしていたところで、ついに閃いてしまう。毎日凄まじい愛の波動を送ってくる可愛い後輩・塩崎哲也に、研究に協力してもらおう!そんな中、部活の先輩・千原信忠が実は未来人だったと判明して!?まさかまさかの美少女ライトノベル、まだ見ぬ筒井康隆の新世界、開幕!
読んだきっかけ
角川文庫版『涼宮ハルヒの憂鬱』の筒井康隆による解説を読んだことがきっかけである。その解説では涼宮ハルヒシリーズについて素晴らしい解説をするだけでなく、あろうことか自身の著書『ビアンカ・オーバースタディ』を宣伝するという大物限定の裏技を披露しており、見事にその宣伝に釣られてしまったのだ。
また70歳を過ぎた大御所が書くラノベというのがどんなものなのか好奇心をそそられたのも大きな要因だ。ただのラノベにならないことは想像していたが、ページを開いてみて早速「えっ.....!?」となり、読み終えてみると「やっぱり只者ではないなぁ」と思い知らされた。
偶然出逢えたことを神に感謝したい。
スペルマ??
ページを開いて章のタイトルを見てみると「哀しみのスペルマ」「喜びのスペルマ」「怒りのスペルマ」「愉しきスペルマ」「戦闘のスペルマ」と確認できる。
「ん?.....スペルマって精液って意味じゃなかったっけ、他にも意味はあったのかしらん」と疑問に思ったのだが、ググるのが面倒くさくて第一章を読んでみてびっくり。
狙ったとしか思えない直球のエロ、ビアンカ様の手コキ射精である。意表を突いた展開にページをめくる手が進む....のではなくちんこをしごきながら読むことになってしまった。この時初めて電子書籍の最大のメリットに気付く....そう電子書籍であれば左手で端末を持ち、右手でシコれるという事実である。
また第一章を読んだことでもう一つ大切なことを認識した。
「オナニーはせつない」のである。もちろんそれは射精を伴うオナニーであり、女であればいくらでもやりまくるのが良かろう。おっとっと。
これ以上はネタバレになるので止めておくが、以降の章でも喜びや怒りなどの文言に見合った圧倒的なエロ描写が続く。倫理的にもアウトである。
こんなエロくて抜ける小説を書いてくださったお爺さんには感謝するしかない。
エロ過ぎる実験
『ビアンカ・オーバースタディ』は何から何までエロい。手コキによる搾精シーンの連発も感動ものだが、搾取した精液は生物研究部員としての生殖の研究のために利用するのである。
精液を利用してどんな実験をするのかは読んでみてのお楽しみだが、筒井康隆と言えば日本SF御三家の内の一人。膨大な知識の中からひねり出されたであろうリアリティを伴ったSF的実験は「おいおいマジかよ」と唸らずにはいられない。しかも実験自体がめちゃくちゃエロく、実験シーンでも気が付けばちんこを握っているという事態に....。
この本を読んだことで猛烈に電子顕微鏡が欲しくなってしまった。
完全無欠な萌え
この本を読んで感じたのは、筒井大先生はライトノベルというジャンルと萌えについて知り尽くされているということである。
天性の才能なのか研究に研究を重ねた結果なのかは分からないが、登場人物やセリフ、シチュエーションなどどこをとってもラノベ的であり、なおかつ萌え要素を完璧に押さえている。
私はアニメオタクではないため、本当の萌えを理解できていないのかもしれないが、そんな私が最高の萌え作家だと感じている作家に横溝正史がいる。そんな大横溝が描く萌えキャラが天性のセンスや性癖によって生み出された妖精だとすれば、筒井御大の萌えは計算され尽くして生み出された怪物である。(おらいったい何言ってるんだろう)
『ビアンカ・オーバースタディ』に登場する三名の女性は誰もが萌えている。しかもいい具合にラノベオタクやアニメオタクに微妙な感情を呼び起こさせることだろう。童貞の感情を逆撫でするといったところだろうか。まぁとにかく文豪の描く萌えを読んでみてほしい。
精巣の夢
本書のエロは素人からベテラン、アマチュアからプロまであらゆる層に対応しているのも魅力的なセールスポイントである。
この世には異常な性癖を持つ人間(俺)がいるものであり、そういった一族は普通のエロだけではすでに満足ができなき唸ってきているのである。そんな変態キチガイでもこの本は感涙するほど素晴らしいシーンがあるのだ。
どうしてここまで分かっているのだろう.....夢が叶い申した。変態の方々には自信を持っておすすめしたいものである。
そしてガチSF展開
終盤に至るころにはもうシコり過ぎてしまったせいか、脳がボーっとしてしまっていたのだが、最後の章で一気にSFになるとともに著者のペダンティックな文章が炸裂して目を覚ますこととなった。だっていきなりハイデガーやカール・マルクスの名が出てきたり、資本主義の行く末が語られたりするんですもの。ちなみにSF戦闘シーンはセンスが良すぎてめっちゃ笑える。
アニメやラノベの二次元女に萌えてなよってしまった最近の若者に対する著者の主張が垣間見えたようで、昭和最後の民である私なんかは「ふむふむ、そうだよな」と妙に納得してしまうのだ。
ちなみに私は妻子ある身だが、我が弟(アラサー独身警察官)の部屋には萌えフィギュアとエロ漫画、萌え抱き枕(×2)があることを鑑みると、やはり人類は滅亡するのではないかと思ってしまう次第である。
ちなみに拙者はポニーテール涼宮ハルヒに一票。
全男必読の書
冗談抜きで『ビアンカ・オーバースタディ』は我が生涯最高の本のうちの一冊に仲間入りした。様々な思惑が込められているように思われるし、エロくて読みやすくて面白い。なんなら義務教育の国語の教科書にでも入れてほしいものである。
筒井御大の小説は何冊が読んでいるが、私は『時をかける少女』よりも断然『ビアンカ・オーバースタディ』を推す。
あの世に旅立つときは棺に入れてほしいものである。超おすすめ。