これはマジで正気の沙汰じゃねぇ(笑)
作品紹介
月村了衛による『機忍兵零牙』は2010年に出版された作品である。
文庫版(改訂新装版)は350ページ程度とほどよい長さの中に、著者が最も好きな作家として挙げられている山田風太郎の忍法帖フォーマットをベースに、これでもかというほど中二病成分を満載しまくったとんでもない作品となっている。
山風忍法帖の基本フォーマットである多人数のチームプレイを現代版にアップデートして、SFファンタジーの世界観で語っているのだから、好きな人が読んだら興奮し過ぎて悶死してしまう可能性さえある。(ホントです)
具体的には北斗の拳や男塾はもちろんのこと、ジョジョやHUNTER×HUNTERが好きな方であればたまらないだろう。
そんな超絶激アツな本作を気合を入れて紹介したい。
以下、あらすじの引用
凡そこの世に非ず、別の世界より来たる者を忍びと云う―数多の次元世界を制する支配者集団“無限王朝”に抗い続ける伝説の忍び“光牙”。その一人、零牙に与えられた任務は亡国の姫と幼君の護衛であった。亡命の旅路を急ぐ一行の行手に、無限王朝麾下の骸魔忍群が立ち塞がる。激突する機忍法、生き残るは光牙か骸魔か。幻惑的傑作アクションが新たなる世に徹底加筆の“新装版”で甦り、絶望に塗り込められた夜を裂く!
※あらすじからしてヤバいでしょ(笑)
魅力を語るため支障のない範囲でネタバレいたす。
『機忍兵零牙』はもはやエンタメ純文学である(笑)
したがって多少....というかたとえ全部ネタバレされたとしても、セリフや文章そのものが味わい深く面白いので、作品の魅力が軽減されることはないのである。
というか、「絶対こう来るよなぁ.....ほら、やっぱり!来たァー!」的なシーンの寄せ集めの物語なので、ネタバレなどそもそも無効なのだ。
そこで伏せておくべきこと以外は、好き放題書かせていただき申す。
山田風太郎リスペクトがヤバし
本作を読まれる方はおそらく月村氏の代表作『機龍警察シリーズ』を読んでファンになり、”機”の文字が共通している本書を手に取ったパターンが多いかと思われる。そのパターンの場合、人によっては肩透かしを喰ってしまう可能性があるのはご愛嬌。
しかし山田風太郎マニア(や少女革命ウテナの脚本家と知っている方)が読んだら発狂するほど魅力的な作品である。
「お召しにより、零牙参上」
「......光牙者か」(=甲賀者か)
「如何にも」
拙者は山田風太郎マニアの男塾生なので、上記のやり取りを見ただけで様々な脳内麻薬が爆裂してしまった。
どうだろうか。SFファンタジー的な異世界でこのやり取りである。これで「はおッ」となった方は、この記事の続きを読むことなく今すぐに『機忍兵零牙』を読むべきだろう。
ネーミングセンスが神(アホ)
固有名詞や人物名がホントにヤバいんDEATH!!
以下に挙げてみるが、書いてて恥じらうほどである。
- 正義のヒーロー的な味方側の忍者=光牙(甲賀じゃんww)
- 悪役側の忍者軍団=骸魔(ウヒャーーwww)
- 数多の次元世界を制する支配者集団=無限王朝(ぶおッ)
- 骸魔筆頭の忍=骸魔六機忍(もうダメ.....)
- 骸魔六機忍の頭領”骸魔死皇丸”(ドーン........)
この時点ですでに私の自我は崩壊していたのだが、山田風太郎の忍法帖の如き骸魔六機忍の登場シーンで完全に逝ってしまった。一人ずつ名乗ってイク。
これはさすがにもう耐えられません.....しかもキャラによっては名前が使用する忍法のネタバレになっているというオチ。
忍法が中二過ぎる
まずは普通に忍びはビームを発射します(笑)....ちなみに”機”を冠しているが、別にサイボーグというわけではなく、生身の人間である。
で、使う忍法を適当に挙げてみると以下の通りである。
- 亜空間を操る能力=ジョジョならヴァニラ・アイスが近いか
- 刀に雷を落とし帯電させて斬る!
- 触れると死ぬ謎の光の玉。しかも追尾する。
- 超加速=ジョジョでいうならザ・ワールド
- 次元を無視して弓で射る!
- 触れると蒸発する極熱光のオーロラ
- 鏡の世界から攻撃する=ジョジョでいうJ・ガイルやイルーゾォ
- ビームを反射させて狙撃!=ジョジョでいうホルホース+ミスタ
- 召喚獣+加速
他にもあるけどなんかもうこれ以上はよく分からん(笑)
まぁこれで中二病能力のバーゲンセールということは分かっていただけるであろうが、月村了衛氏はこのような能力を用いて、男塾的激アツな戦闘を築き上げている。
もう読んでてニヤニヤが止まらず、電車で読んでしまったのなら、泣ける小説やエロ小説よりも大変なことになるだろう。
無駄に百合
私的にはさほど感じなかったが、早川書房は本作を百合SF作品として紹介している。百合とは女と女である。
たしかに言われてみればそんなシーンも結構あるし、そこそこ気合を入れて書かれたのかもしれない。
私自身が(大好きだけど)あまり百合作品に詳しくないので何とも評価しがたいが、確かになかなか百合ってるようには思える。なので百合好きにもおすすめできると言っておこう。
期待を裏切らない
もはや読んでる時に書きたいと思っていたことはそこそこ書いたので(まったく内容に触れてないww)、一つだけ言っておくとしよう。
月村了衛と『機忍兵零牙』は読者を決して裏切らないということだ。何というか”お約束”という不文律を見事に繰り返しまくっているのである。
様々なシーンにおいて「こんな感じになったらマジで泣いちゃう」といった内容が、狙いすましたかのように「こんな感じ」なってしまうのである。
鳥肌が立つほどの名言/名シーン(迷言/迷シーン)を心行くまで堪能してほしい。
これを超える中二はない
ちょっと言い過ぎかもしれないが、これほど強烈な中二病に罹患している物語を私は知らない。ラノベやアニメには中二病要素満点な話はいくらでもあるのかもしれないが、そういったものは所詮アマチュアである。
『機忍兵零牙』の中二病は完全に天井を突き破って異次元に到達しているので、異能バトルもののSFやファンタジーが好きな方は必ず読もう。やたら美しい文章に感激すること間違いなしであろう。
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