神本を求めて

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『[映]アムリタシリーズ』野﨑まど|究極の創作

予想不可能な超展開の連続

 次元の違う超天才作家・野﨑まど。そんな異才による内容の想像すら不可能な超絶傑作小説群が『[映]アムリタ』に始まり『2』に終わる一連のシリーズである。(といいつつシリーズであるっぽいことが判明するのは5作目の『パーフェクトフレンズ』の最後の最後なのだが)
私は野﨑まどをSF小説も書くラノベ作家というイメージが先行しており、ラノベが不得意という事情から野﨑まどとのファーストコンタクトが遅れてしまい、特にこのシリーズは後回しにしてしまっていたのだが、本当に後悔するぐらいのとてつもない超絶傑作である。
著者が野﨑まどである、ということ自体がネタバレになりかねないほどネタバレしない方が良いシリーズなのだが、本シリーズの魅力を伝えるためにできるだけ内容に触れることは避けつつも、必要な範囲で内容をご紹介していきたい。

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新装版のイラストが萌えてMAX

作品一覧

 

作品紹介

前述の通りシリーズ作品である(っぽい)ことが判明するのは5作目の最終版であり、『2』を読むことで初めてこれまでの5作品が『2』を読むための伏線であることが判明するという仕様である。したがって1作目から4作目は完全に独立した作品なので読む順番は気にする必要はない。また5作目の『パーフェクトフレンド』も1作目の『[映]アムリタ』とわずかに繋がりがあるだけなので、こちらも順不同でも問題ない。

最終作の『2』だけは絶対に他の全作品を読んでから読まなければならない。特に1作目は絶対に必須で、そもそも読んでいなければ話がよく分からなくなるだろう。また2作目から5作目も読んでおかないと『2』の魅力が1作読まないごとに1割以上減少してしまうので読まないのは非常にもったいない。

だが2作目から5作目も非常に面白く、『2』を読むための使命感で読む必要などまったくないので安心である。

 

①  [映]アムリタ(2009年)

 

芸大の映画サークルに所属する二見遭一は、天才とうわさ名高い新入生・最原最早がメガホンを取る自主制作映画に参加する。だが「それ」は“ただの映画”では、なかった―。TVアニメ『正解するカド』、『バビロン』や、劇場アニメ『HELLO WORLD』などを手掛ける鬼才・野崎まどの作家デビュー作にして、電撃小説大賞にて“メディアワークス文庫賞”を初受賞した伝説の作品が新装版で登場!貴方の読書体験の、新たな「まど」が開かれる1冊!

 

とりあえず読んで」としか言いようがない作品である。

学園もののラノベ的展開が続くので、ただの青春恋愛映画製作小説だと認識して読み進めていると恐るべき.....これ以上はネタバレになるので言えない、という感じ。

おそらく事前情報ゼロ(たとえばリアルタイムで読んだ人)であればブッ飛ぶこと間違いなしである。もちろんある程度の情報が入っていても驚愕するのでご安心を。サイコホラーやSFとも受け取れる超天才が超天才だと理解させられる超絶作品。

 

 

②  舞面真面とお面の女(2010年)

 

第二次大戦以前、一代で巨万の富を築いた男・舞面彼面。戦後の財閥解体により、その富は露と消えたかに見えたが、彼はある遺言を残していた。“箱を解き石を解き面を解け よきものが待っている―”時を経て、叔父からその「遺言」の解読を依頼された彼面の曾孫に当たる青年・舞面真面。手がかりを求め、調査を始めた彼の前に、不意に謎の「面」をつけた少女が現われて―?鬼才・野崎まど第2作となる伝記ミステリ、新装版!

 

超読みやすくて超面白い伝奇ミステリである。“箱を解き石を解き面を解け よきものが待っている”という暗号を解読していく過程で謎の”お面の少女”と出逢い、謎が謎を呼ぶ魅力的な内容になっている。そして野﨑まどお馴染みの超展開も待っている。

1作目が凄すぎたので、本作はどうなんだろうなぁ....という不安を木端微塵に吹き飛ばすほどの楽しく、謎が気になりまくるので一気読み必至である。

また本作の主人公・舞面真面は『2』の主要キャラクターになるという点でも強くおすすめしたい。

 

 

③  死なない生徒殺人事件~識別組子とさまよえる不死~(2010年)

 

「この学校には、永遠の命を持つ生徒がいる」女子校「私立藤凰学院」に勤めることとなった生物教師・伊藤は、同僚の教師や、教え子からそんな噂を聞く。人として、生き物としてありえない荒唐無稽な話。だがある日、伊藤はその「死なない生徒」に話しかけられた。“自称不死”の少女・識別組子。だが、彼女はほどなく何者かによって殺害され、遺体となって発見される―!“生命”と“教育”の限界に迫る鬼才・野崎まど新装版シリーズ第3弾!

 

不老不死の女が殺されていくという、設定自体がブッ飛んだ作品である。

タイトルに”殺人事件”とついているが、本格ミステリというよりは本格SFといった方がふさわしい内容になっている。超天才野﨑まどが考案した学園での”不老不死システム”がどんなものなのかぜひとも確かめてみてほしい。こんなことを思いつくところが鬼才などと称される所以なのだと思う。SFのセンスオブワンダーが溢れている。

もちろん言うまでもなく野﨑まど的超展開もあるので本作も一気読み確定だろう。それと新装版の表紙の女性が萌えてますね(まさかあんなキャラだとは....)

 

 

④  小説家の作り方(2011年)

 

駆け出しの小説家・物実の元に舞い込んだ初めてのファンレター。そこには、ある興味深い言葉が記されていた。「この世で一番面白い小説」。あまねく作家が目指し、手の届かないその作品のアイディアを、手紙の主は思いついたというのだ。送り主の名は、紫と名乗る女性。物実は彼女に乞われるがまま、小説の書き方を教えていくのだが―。鬼才・野崎まど新装版シリーズ第4弾。「小説家を育てる小説家」が遭遇する非日常を描く、ノベル・ミステリー。

 

ジャンルを明かすことすらためらわれる超絶作品である。

あらすじの通りの内容なのだが、まずは何といっても「この世で一番面白い小説」のアイデアを思いついたが、それを書くすべを持たないので教えてほしいという”依代”のキャラクターが超最高なのです。そしてそんな彼女の持つ”秘密”の凄まじさと言ったら....もう1作目と同様「とりあえず読んで」としか言いようがないのでとにかく読んで!!青春恋愛(っぽい)小説(?)としても楽しめます。

ちなみに超美人な表紙の女性が”依代”です。この人間とは思えないような無表情な感じは本書を読めば納得なのである。

私個人の好みだと、単体の作品では本作がナンバー2である。

 

 

⑤  パーフェクトフレンド(2011年)

 

少女たちの“トモダチ大作戦”。みんなよりちょっとだけ頭がよい小学四年生の少女・理桜は、担任の先生のお願いで、不登校の少女・さなかの家を訪れる。しかしさなかは既に大学院を卒業し、数学者の肩書きを持つ超・天才少女!手玉に取られくやしい理桜は、マウントを取るべく不用意に叫ぶ。「あんた、友達居ないでしょ!」かくして変な天才少女に振り回される『友達探求』の日々が始まるのだった…。野崎まど新装版シリーズ、「友情」の極意をお届けする第5弾!

 

単体の作品としては個人的にナンバー1の超絶傑作である。

もうとにかく凄すぎてヤバいのだけど、その数学SF的なすさまじさがギャグに結びついているというところに著者の圧倒的な才能を思い知らされたのだ。理系的な思考を突き詰めたような”友達方程式”は爆笑とともに畏敬の念を覚えた。

  1. 友達とは何か
  2. なぜ友達が必要か
  3. 友達は作れるか

上記の問いを論理的に解明し、それを数式化するというハードSFに片足を突っ込んだような感じなので、SF的センスオブワンダーも全開である。

しかし本作の素晴らしさは論理が崩壊した先に待っている。超展開からの超展開に著者が人間を超越した者だと思えたほどである。5作目であり1作目と関連しているが、個人的には本作を一番最初に読むのがベストではないかと思っている

 

 

⑥  2(2012年)

 

創作することの極地。それが『2』。日本一の劇団『パンドラ』の入団試験を乗り越えた青年・数多一人。しかし、夢見たその劇団は、ある一人の女性によって“壊滅”した。彼女は言った。「映画に出ませんか?」と。言われるがまま数多は、二人きりでの映画制作をスタートする。彼女が創る映画とは。そして彼女が、その先に見出そうとするものとは…。『創作』の限界と「その先」に迫る野崎まど新装版シリーズ・最終章!!『2』が、全てを司る。

 

究極の創作としか言えない作品。それが『2』である。

1作目から5作目こそが『1』であり、すべては『2』の伏線となっている。『1』を読むことが『2』の素晴らしさを堪能しきる前提となるため、ぜひ順番通りに読んでほしいものである。

『2』単体では「???」になる部分が多いのだが、1作目から5作目を読むことにより圧倒的なミステリーに姿を変える。これまでのすべてを伏線とするような超展開の乱れ打ちには、文字通り脳に何らかの影響を及ぼすかもしれない。野﨑まどの超天才っぷりが400%発揮された人知を超えた作品である。

 

 

神に等しい作家

他の作品読んだり、脚本を担当されたアニメ『正解するカド』を観れば世界観が広がることは間違いなしだ。