十二国の創造主にしてホラー×ミステリーの大御所
作品一覧
シリーズものとそれ以外の作品を分けて刊行順に記載する。
なおティーン向けに発表されて、その後他の文庫などに移行されていない作品については割愛させていただく。(30過ぎた男が読むような内容ではなさそうなので...)
悪霊シリーズ → ゴーストハント
小野不由美女史の代表シリーズの一つでアニメ化もされている。講談社X文庫ティーンズハートから少女向けに発表されていたものが、後に全面的に改稿されてゴーストハントと改題されている。
- 悪霊がいっぱい!?(1989年)
→ ゴーストハント1 旧校舎怪談 - 悪霊がホントにいっぱい!(1989年)
→ ゴーストハント2 人形の檻 - 悪霊がいっぱいで眠れない(1990年)
→ ゴーストハント3 乙女ノ祈リ - 悪霊はひとりぼっち(1990年)
→ ゴーストハント4 死霊遊戯 - 悪霊になりたくない!(1991年)
→ ゴーストハント5 鮮血の迷宮 - 悪霊とよばないで(1991年)
→ ゴーストハント6 海からくるもの - 悪霊だってヘイキ!(1992)
→ ゴーストハント7 扉を開けて
十二国記
日本を代表するファンタジーの傑作である。1作目の『魔性の子』のみ十二国記は登場せず、純粋なホラー作品となっている。
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魔性の子(1991年)
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月の影 影の海(1992年)※上下巻
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風の海 迷宮の岸(1993年)
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東の海神 西の滄海(1994年)
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風の万里 黎明の空(1994年)※上下巻
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図南の翼(1996年)
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黄昏の岸 暁の天(2001年)
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華胥の幽夢(2001年)
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丕緒の鳥(2013年)
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白銀の墟 玄の月(2019年)※全四巻
〇十二国記の紹介記事
ノンシリーズ
ホラー×ミステリー作品が多い。『営繕かるかや怪異譚』は続編が出たのでシリーズとなったが、こちらに記載する。
- 東亰異聞(1994年)
- 屍鬼(1998年)※単行本は上下巻、文庫版は全五巻
- 黒祠の島(2001年)
- くらのかみ(2003年)
- 鬼談百景(2012年)
- 残穢(2012年)
- 営繕かるかや怪異譚(2014年)
- 営繕かるかや怪異譚 その弐(2019年)
作品ランキング
『十二国記』や『ゴーストハント』はシリーズ作品のためシリーズ全体の評価として格付けする。また『魔性の子』は十二国記とは独立した作品としても楽しめるため個別に格付けする。なおゴーストハントシリーズは文庫化された巻までしか読んでいないため、格付けが変わる可能性がある。
八位 黒祠の島(2001年)
「そう―ここは黒祠なのですよ」近代国家が存在を許さなかった“邪教”が伝わる、夜叉島。式部剛は失踪した作家・葛木志保の姿を追い求め、その地に足を踏み入れた。だが余所者を忌み嫌う住民は口を閉ざし、調査を妨害するのだった。惨事の名残を留める廃屋。神域で磔にされていた女。島は、死の匂いに満ちていた。闇を統べるのは何者なのか?式部が最後に辿り着いた真実とは。
雰囲気はまさしく横溝正史ワールド。しかし異常な残虐性も伴って妖しさやおどろおどろしさは本作の方が1枚上手である。
小野不由美女史の田舎的な閉塞感の描写は本当に巧い。変な風習があったり、急に島民全体の態度がコロッと変わったりと、実際に自分がこの島を訪れたらと考えると、勘弁してくれよ...となること間違いなしだ。
ホラー要素はあまりなくミステリーホラーの名手である主上の作品の中では、もっとも探偵小説の側面が強い。尺の割に登場人物が多いので少々こんがらがるが、小野不由美作品にミステリーを求めるならおすすめな1冊。
最初がとても勢いがあって面白く、中盤少々かったるいと思ったらラストが怒涛の展開というジェットコースターである。
七位 営繕かるかや怪異譚(2014年)
叔母から受け継いだ町屋に一人暮らす祥子。まったく使わない奥座敷の襖が、何度閉めても開いている(「奥庭より)」。古色蒼然とした武家屋敷。同居する母親は言った。「屋根裏に誰かいるのよ」(「屋根裏に」)。ある雨の日、鈴の音とともに袋小路に佇んでいたのは、黒い和服の女。あれも、いない人?(「雨の鈴」)。人気絶頂の著者が存分に腕をふるった、じわじわくる恐怖、極上のエンタテインメント小説。
タイトルや本の装丁から優しい感じのイメージを持たれるかもしれないが、恋愛や生温いヒューマンドラマを書かないのが小野不由美である。
したがって本作は生温いと見せかけてかなりのガチホラーなので、十二国記を読んで小野作品にハマったという人が読むと思わぬトラウマになるかもしれない。
しかし全体的にやや読みづらい作品が多い小野作品の中、連作短編の形式のためとても読みやすいのと、読後感がなんとも言えない良い気分になれるので、安心しておすすめできる作品だ。シリーズ化されているが、連作短編のため読む順番はどちらが先でもさほど問題がなく、また其の弐からは営繕屋のさりげなさがアップして、より洗練された内容になっている。
六位 残穢(2012年)
この家は、どこか可怪しい。転居したばかりの部屋で、何かが畳を擦る音が聞こえ、背後には気配が…。だから、人が居着かないのか。何の変哲もないマンションで起きる怪異現象を調べるうち、ある因縁が浮かび上がる。かつて、ここでむかえた最期とは。怨みを伴う死は「穢れ」となり、感染は拡大するというのだが―山本周五郎賞受賞、戦慄の傑作ドキュメンタリー・ホラー長編!
最恐ホラー小説と称されることも多いJホラーの究極完全体。
一人暮らしの人は絶対に読んではいけない。『リング』や『呪怨』は一人暮らしでもギリギリ耐えられそうだが『残穢』は無理である。
ホラーにもいろいろなタイプがあるが、怪異系は日本的な恐怖の代表ではないだろうか。本作はその怪異系の中でも群を抜いた完成度を誇っている。
『残穢』は主人公の作家(モデルは明らかに小野不由美ご本人)によるドキュメンタリー形式で語られており、語り手の”私”がマンションの一室で起きる怪異を過去に過去に遡って調査いくという流れのため、ミステリーの要素も併せ持っている。
怪異全般に関する蘊蓄も豊富に書かれていることや、"私"の夫が綾辻行人氏としか思えなかったり、ホラー界の重鎮、平山夢明氏は実名で登場したりとノンフィクションっぽいところが恐怖を助長する。ヤバいホラーを求める方は必読である。
なお本作は『鬼談百景』の百話目に相当する話であるため、先にそちらから読んでおくと盛り上がってから読むとなお良い。
1話あたり2~4ページ程度のホラーショートショートがジワジワと効いてくる危険な本だが、様々なタイプの話があり、ガチで怖めなのはさほど多くはない。ショートショートが癖になり、気が付けば読了しているタイプの作品だ。
五位 東亰異聞(1994年)
帝都・東亰、その誕生から二十九年。夜が人のものであった時代は終わった。人を突き落とし全身火だるまで姿を消す火炎魔人。夜道で辻斬りの所業をはたらく闇御前。さらには人魂売りやら首遣いだの魑魅魍魎が跋扈する街・東亰。新聞記者の平河は、その奇怪な事件を追ううちに、鷹司公爵家のお家騒動に行き当たる……。人の心に巣くう闇を妖しく濃密に描いて、官能美漂わせる伝奇ミステリ。
怖めなダークファンタジー系の世界観で描かれる、小野作品の中でも本格推理小説の度合いが高い作品である。
魑魅魍魎が跋扈する架空の都、帝都東亰。時は江戸の名残を残す明治時代である。怖いことを書かなくてもその異様な妖しさから何とも言い難い恐怖を感じる。
本作は"闇御膳"や"火炎魔人"という闇に跋扈する者(まさしく中二病)による、怪異級の殺人事件と鷹司家のお家騒動を記者が追うという内容である。
はっきり言ってこの本は超すごい。どれくらいすごいかというと、夫である綾辻行人氏の大傑作ミステリー『十角館の殺人』の驚きを超えてしまっている。
驚愕することは天地神明に誓って私が保証するので、可能な限り事前情報無しで読んで欲しい。ただし登場人物が多く読みづらいので、時間をかけて丁寧に読み進めるか、Wikipediaなどで登場人物を整理しながら読むことをおすすめしたい。
あぁ...記憶を失ってもう一度読みたい!!
四位 ゴーストハントシリーズ
学校の旧校舎には取り壊そうとすると祟りがあるという怪奇な噂が絶えない。心霊現象の調査事務所である渋谷サイキックリサーチ(SPR)は、校長からの依頼で旧校舎の怪異現象の調査に来ていた。高等部に通う麻衣はひょんなことから、SPRの仕事を手伝うことに。なんとその所長は、とんでもなく偉そうな自信家の17歳になる美少年、渋谷一也(通称ナル)。調査に加わるのは個性的な霊能者たち。ミステリ&ホラーシリーズ。
このシリーズは小野不由美作品の中でも唯一避けていた作品である。なぜかというと作品の印象からとても硬派な印象を小野主上のイメージが崩れ、きゃぴきゃぴしたフユミーになってしまいそうだったからである。
いざ読み始めると、確かに新潮社やKADOKAWAなどからすでに文庫化された作品群に比べると乙女チックなのは否めないのだが、個性的なキャラが繰り広げる超高品質なホラー×ミステリーであり、これまで読まなかったことを後悔したくらいである。
ホラーとミステリーは紙一重であるということを教えてくれる作品で、人為的なものなのか、本当の怪異なのかを検証していくのは本当に面白い。
小野作品の中でも最も読みやすく、それでいて著者の魅力の大半が詰まった作品なので初読みにもおすすめだ。
ちなみに5作目が一番怖いと思われ、6話目が一番気合いが入っていて、7話目が最も感動することになると思う。
〇紹介記事
三位 魔性の子(1991年)
どこにも、僕のいる場所はない──教育実習のため母校に戻った広瀬は、高里という生徒が気に掛かる。周囲に馴染まぬ姿が過ぎし日の自分に重なった。彼を虐(いじ)めた者が不慮の事故に遭うため、「高里は祟(たた)る」と恐れられていたが、彼を取り巻く謎は、“神隠し”を体験したことに関わっているのか。広瀬が庇おうとするなか、更なる惨劇が……。心に潜む暗部が繙(ひもと)かれる、「十二国記」戦慄の序章。
十二国記のエピソードゼロということになっているが、元々は十二国記というシリーズが出る前に新潮社からでたファンタジーホラー小説で、十二国記は本作に登場する向こう側の世界の話である。
したがって十二国記として極めて重要なポジションに位置する作品ではあるものの、十二国記と切り離して独立したホラー小説として楽しむことができる。
本作はファンタジー要素のあるホラーとして非常に完成度が高いだけでなく、ミステリーとして読むこともできるため、極めて優れたエンターテイメント作品となっている。
ホラー好きなら十二国記がどうしたなどと細かいことは気にせず絶対に読むことをおすすめしたい。単体の作品として素晴らしいだけでなく、『魔性の子』を読むことによって、めでたく十二国の世界に旅立つことになるだろう。
二位 十二国記(1991年~)
「お捜し申し上げました」──女子高生の陽子の許に、ケイキと名乗る男が現れ、跪く。そして海を潜り抜け、地図にない異界へと連れ去った。男とはぐれ一人彷徨(さまよ)う陽子は、出会う者に裏切られ、異形(いぎょう)の獣には襲われる。なぜ異邦(ここ)へ来たのか、戦わねばならないのか。怒濤(どとう)のごとく押し寄せる苦難を前に、故国へ帰還を誓う少女の「生」への執着が迸(ほとばし)る。
普通の女子高生が突然化け物たちと現れた妖しいイケメンに「許すとおっしゃい」と言われ、こき使うようになる.....訳ではなくツンデレな謎の主従関係が成立し有無を言わさず異世界へ。
かと思いきや異世界でいきなりイケメンとはぐれて迷子になり、地獄のような旅をするという血も涙もないベリーハードな旅路を描いた物語から壮大な物語は幕を開ける。
ファンタジー小説として最高峰の知名度と売上を誇るシリーズだが、意外にも世界観以外の部分のファンタジー要素は控えめで、かなり硬派な内容である。
人名や地名を始めとして難読漢字が多いため、お世辞にも読みやすいとは言い難いのだが、近年アニメや漫画で跋扈する有象無象の異世界ものとは一線を画した内容だ。
〇十二国記の紹介記事
一位 屍鬼(1998年)
死が村を蹂躙し幾重にも悲劇をもたらすだろう―人口千三百余、三方を山に囲まれ樅を育てて生きてきた外場村。猛暑に見舞われたある夏、村人たちが謎の死をとげていく。増え続ける死者は、未知の疫病によるものなのか、それとも、ある一家が越してきたからなのか。
尋常でないなにかが起こっている。忍び寄る死者の群。息を潜め、闇を窺う村人たち。恐怖と疑心が頂点に達した時、血と炎に染められた凄惨な夜の幕が開く…。
文庫本で2500ページに渡る超大作ダークファンタジー。『屍鬼』は長すぎるだけでなく、前半(特に文庫版1巻)の展開がダラダラしており、登場人物も人物もアホみたいに多いため、読書慣れしていない人にとってはこれ以上ない壁になる。しかも話が進むに連れてジワジワ勢いが上がっていくかと思いきや一向にグダグダ展開で、バタバタ人が死んでいく。
そんな本がなぜ1位なのか。
それは2000ページ以上に渡り蓄積されてきた、溜まりに溜まったフラストレーションがラストでスーパーノヴァの如く怒涛の大爆発をするためである。
こんな体験ができるのは本作だけだ。
〇紹介記事
まとめ
推理小説好きなら
- 黒祠の島
- 東亰異聞
ホラー小説好きなら
ファンタジー小説好きなら
いざ小野不由美ワールドへ!!