神本を求めて

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最強ホラー小説おすすめランキング20|最恐のホラーを求めて

最恐とはいったい...

 

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小学生の頃から本当に多くのホラー小説を読んできた...

 

怖いって何?最恐とは一体?

この記事は昔から書こう書こうと思いつつも、どうしても書けなかった記事である。もちろん書こうとすると霊障があって書きたくても書けないなどという理由ではない。

ではなぜか?小説を読んでも怖くないのである。そこで恐怖とは何かを真剣に考えてみた。その結果、恐怖とは平穏な日常への悪影響であるという判断に至った。例として、有名な映画『呪怨』を挙げる。

呪怨はシャワーで髪を洗っていたら髪を洗う手が、自分ではない別の手に触れる(ヒッ)、安全地帯であるはずのベッドに潜り込んだら布団の中にヤバいのがいる...といった具合に日常に亀裂を入れている。これを見てしまったら、以後シャワーを浴びるのも、ベッドで眠りに就くのも怖くなる。つまりそれが恐怖であると考えたのだ。

私は男であり、妻子+猫と暮らしているので、仮に怖い話を読んだり、怖い映画を見ても、もはや怖いと感じるシチュエーションに陥ることがないため、怖いと感じないのである。

そこで本記事ではタイトル詐欺になりそうだが、一応恐怖を日常に対する悪影響と定義したうえで、でもそんな本ほとんどないじゃん...というノリで純粋に私の好きなホラー小説ランキングにすることにした。

残念ながら怖いと感じない本のオンパレードになったが、一応いずれの作品も世間的にはホラーと分類されているので、悪く思わないでください(笑)

 

二十位  ぼぎわんが、来る / 澤村伊智(2015年)

 

幸せな新婚生活を営んでいた田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。取り次いだ後輩の伝言に戦慄する。それは生誕を目前にした娘・知紗の名前であった。正体不明の噛み傷を負った後輩は、入院先で憔悴してゆく。その後も秀樹の周囲に不審な電話やメールが届く。一連の怪異は、亡き祖父が恐れていた“ぼぎわん”という化け物の仕業なのだろうか? 愛する家族を守るため秀樹は伝手をたどり、比嘉真琴という女性霊媒師に出会う。真琴は田原家に通いはじめるが、迫り来る存在が極めて凶暴なものだと知る。はたして“ぼぎわん"の魔の手から、逃れることはできるのか……。怪談・都市伝説・民俗学――さまざまな要素を孕んだ空前絶後のノンストップ・ホラー!!

 

属性:オカルト/妖怪/ゴーストバスターズ(笑)

面白さ:★★★★★★★★☆☆

恐怖度:★★★★★☆☆☆☆☆

影響度:★★★★☆☆☆☆☆☆

 

非常に良くできた作品であり、日本ホラー小説大賞の大賞受賞は納得できるのだが、何か違うんだよなぁ...と感じる作品。本当に完成度が高く、章ごとに視点が変わるなど魅力的な要素が溢れているし、妖怪は凶悪だし、キャラも立っているのだが、キャラが立っていることが逆効果なのかな...?

1章や2章のような心理描写メインのまま終わらせていれば相当な傑作として後世に名を残した気がするのだが、比嘉姉妹を売りにしてシリーズ化してしまったことが本作の評価を間接的に落とす要因になってしまったような印象。

 

 

十九位  Wi-Fi幽霊 / 乙一/山白朝子(2025年)

 

乙一&山白朝子の初期~現在までの怖い作品ばかりを厳選収録した怪奇ホラーコクション企画。「夏と花火と私の死体」でデビューした乙一は、デビューから「死」を描いてきた。山白朝子は、怪談雑誌「幽」 の創刊時、デビューした怪談作家。今回は、ホラーを描き続ける作家二人の初のホラー文庫企画。ホラー文庫創刊30周年のフィナーレを飾る記念企画。作品のセレクトはホラー評論家&ミステリ評論家の千街晶之さん。本書刊行にあたり表題作となる中編「Wi-Fi幽霊」を書き下ろし。

 

属性:せつない/エグい

面白さ:★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★☆☆☆☆☆☆☆

影響度:★★★☆☆☆☆☆☆☆

 

本作を紹介するのは反則かもしれないが、乙一の最高傑作の一つである「SEVEN ROOMS」が収録されているし、他の作品も全体的に秀逸なのでランクインさせた。

乙一は割と作風の幅が広いため、ホラー作家という印象はあまりないのだが、冷静に考えると結構ホラー作品が多い。そして本書は傑作選というわけである。正直ベストなチョイスだとは思えないが、神傑作「SEVEN ROOMS」や「呵々の夜」「首なし鶏、夜をゆく」は非常に良いと思うのでおすすめ。

 

 

乙一は本当に傑作が多いので、以下の記事もご参考いただきたい。若い頃の作品の方が知名度が高い気がするが、完成度では現在の方が上回っていると感じる。

kodokusyo.hatenablog.com

 

十八位  人体模型の夜 / 中島らも(1991年)

 

一人の少年が「首屋敷」と呼ばれる薄気味悪い空屋に忍び込み、地下室で見つけた人体模型。その胸元に耳を押し当てて聞いた、幻妖と畏怖の12の物語。18回も引っ越して、盗聴を続ける男が、壁越しに聞いた優しい女の声の正体は(耳飢え)。人面瘡評論家の私に男が怯えながら見せてくれた肉体の秘密(膝)。眼、鼻、腕、脚、胃、乳房、性器。愛しい身体が恐怖の器官に変わりはじめる、ホラー・オムニバス。

 

属性:人体/グロ/イヤミス

面白さ:★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★★☆☆☆☆☆☆

影響度:★★★★★☆☆☆☆☆

 

著者の中島らもは天才でありながらアル中(酔って階段から落ちて亡くなった)で、知的でありながらセンスで書いたような作品が多い。

本作はセンスの良い短編が多い中島らも作品の中でも、ホラー寄りで人体にまつわる短編をまとめた連作短編集である。連作と言っても個々の作品は独立した高品質短編で、プロローグとエピローグで連作としてくっつけて一撃をかますような構成となっている。

とにかくバラエティ豊かで、純粋なホラーから今でいうイヤミスのような作品、ブラックユーモアが効いた作品まで一作一作が本当によくできていると思う。とりあえず読むべき一冊。酒を飲みながら読むのがおすすめである。

 

 

どちらかというと小説家というよりエッセイストとして有名かもしれない中島らもだが、『ガダラの豚』を始め、超傑作が多々存在する。以下の記事もおすすめしたい。

kodokusyo.hatenablog.com

 

十七位  夜市 / 恒川光太郎(2005年)

 

妖怪たちが様々な品物を売る不思議な市場「夜市」。ここでは望むものが何でも手に入る。小学生の時に夜市に迷い込んだ裕司は、自分の弟と引き換えに「野球の才能」を買った。野球部のヒーローとして成長した裕司だったが、弟を売ったことに罪悪感を抱き続けてきた。そして今夜、弟を買い戻すため、裕司は再び夜市を訪れた―。奇跡的な美しさに満ちた感動のエンディング!魂を揺さぶる、日本ホラー小説大賞受賞作。

 

属性:ダークファンタジー/和風ファンタジー

面白さ:★★★★★★★★★★★★

恐怖度:★★☆☆☆☆☆☆☆☆

影響度:★★★☆☆☆☆☆☆☆

 

私が最も崇拝する作家の一人、恒川光太郎のデビュー作にして日本ホラー小説大賞の大賞作品。大賞受賞は必然としか言いようのない超傑作。ただしまったく怖くない。ファンタジーである。そもそも恒川光太郎はたまに怖い要素も入れてくるファンタジー作家と認識している。

まず読んだことのない人は絶対に読んでくだされ。ホラーとしては肩透かしかもしれないが、とにかく異世界に行ってしまったかのような臨場感に浸れること間違いなしである。

さて、本作は短めの中編「夜市」と中編「風の古道」で構成されている。表題作であり有名なのは前者だが、大半の方が「風の古道」をより高く評価しているように思われる。もちろん私も「風の古道」の方が100倍くらい好きであり、むしろ「夜市」だけならそこまで好きになっていなかったかもしれない。

恒川光太郎は布教しまくりたいので、夜市を読んで他の著書も読みたいと思われたのなら、以下の記事もぜひ参考していただきたい。

 

kodokusyo.hatenablog.com

 

十六位  アンダー・ユア・ベッド / 大石圭(2001年)

 

三井は、10年前たった一度だけ会話を交わしたことのある、憧れの的だった千尋のことを、ある日突然鮮明に思い出す。彼女の自宅を調べ、近所に引っ越し、双眼鏡で千尋の生活を覗き見するようになるが……。

 

属性:ストーカー/童貞純愛/ヒーロー

面白さ:★★★★★★★★★★★★

恐怖度:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆

影響度:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

私が火葬される時、棺に一緒に入れてほしい愛すべき一冊(人間椅子も入れてほしい)。

全童貞必読の作品である。陰キャでモテなくても愛する人ができたのなら、とにかくストーカーしよう。愛する人のベッドの下に潜り込もう。キモいのにそこはかとない暖かさと優しさに包まれる至高の読書体験となるだろう(笑)

大石圭は筆致がキモいのに温かみがあって、キモさを感じさせないんですよね。キモカワっていうのかな?これは江戸川乱歩にしかできない芸当だと思っていたが、彼もまたちょっとヤバ目な変態童貞を頼りがいのあるヒーローに書く異能の持ち主ということ。恐怖要素はほぼないが、フツーにめちゃクソ面白いので絶対に読んだ方がいい。

 

 

十五位  Another / 綾辻行人(2009年)

 

夜見山北中学三年三組に転校してきた榊原恒一は、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に違和感を覚える。同級生で不思議な存在感を放つ美少女ミサキ・メイに惹かれ、接触を試みる恒一だが、謎はいっそう深まるばかり。そんな中、クラス委員長の桜木が凄惨な死を遂げた!この“世界”ではいったい何が起きているのか!?いまだかつてない恐怖と謎が読者を魅了する。名手・綾辻行人の新たな代表作となった長編本格ホラー。

 

属性:怪異/学園/ミステリ

面白さ:★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★☆☆☆☆☆☆☆

影響度:★★★☆☆☆☆☆☆☆

 

極めて完成度の高いホラー×ミステリで、著者お得意のあの技法が『十角館の殺人』に勝るとも劣らない衝撃となって炸裂する。

本格ミステリ界の筆頭であると同時にホラー作家としても優秀な著者の作品群にあって、本作はホラー作品の位置づけだが、随所にミステリ要素が散りばめられているため、著者の持ち味がフルには活かされている傑作と言える。

もともとラノベの境界線のような作品なので、やや軽めの印象もあるが、仕掛けが完璧という点で個人的には『十角館の殺人』よりも断然おすすめである。

余談だが、私はもともとホラーやSFが好きなため、当初綾辻行人には興味を持っておらず、名前だけ知っている状況だった。そんな中『Another』のアニメを綾辻作品と知らずに視聴して著者に興味を持った経緯がある。つまり非ミステリファンであったも楽しめると言いたいのです。

 

 

十四位  屍鬼 / 小野不由美(1998年)

 

人口わずか千三百、三方を尾根に囲まれ、未だ古い因習と同衾する外場村。猛暑に襲われた夏、悲劇は唐突に幕を開けた。山深い集落で発見された三体の腐乱死体。周りには無数の肉片が、まるで獣が蹂躪したかのように散乱していた―。闇夜をついて越して来た謎の家族は、連続する不審死とどう関わっているのか。殺人か、未知の疫病か、それとも…。超弩級の恐怖が夜の帳を侵食し始めた。

 

属性:ダークファンタジー

面白さ:★★★☆☆☆☆☆☆☆(ただし後半は限界突破)

恐怖度:★★★☆☆☆☆☆☆☆

影響度:★★★☆☆☆☆☆☆☆

 

文庫版で5分冊、トータル2500ページ級の超大作。このボリュームゆえに実はあまり読んだことがない人が多いのではないかと推測する。

雰囲気は最高だがはっきり言ってまったく怖くはない。ひたすら淡々と暗くて不穏な描写が続き、とにかく退屈で最高に眠れる小説今か今かと盛り上がるのを待ち続けながら、雰囲気に浸っていく小説である。詳しくは個別記事を参照されたいが、言うなれば本書はオナ禁である。または射精しそうになったらしごくのを止めるのを永遠に続けるといったところだろうか。その分ラストスパートは超強烈であり、しかも全体が長いのでラストスパート自体が400ページを超えるという無限絶頂を体感することになる。

微妙にDISった感じに書いてしまったが、トータルで見ればまず間違いない神本なので、死ぬほど暇になった時に読破してみてほしい。

ちなみにアニメ化もコミック化もされていて、原作とは違う内容になっているのでこちらもおすすめ。どちらも共通して絵に癖があるが、特にアニメ版はリョナラーの栄養分になるシーンが多く目を離せない。

 

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

十三位  パラサイト・イブ / 瀬名秀明(1995年)

 

事故で亡くなった愛妻の肝細胞を密かに培養する生化学者・利明。Eve 1と名付けられたその細胞は、恐るべき未知の生命体へと変貌し、利明を求めて暴走をはじめる―。空前絶後の着想と圧倒的迫力に満ちた描写で、読書界を席巻したバイオ・ホラー小説の傑作。新装版刊行に際して、発表時に研究者でもあった著者から、科学者あるいは小説家を志す人達に贈る、熱いロングメッセージを収録。

 

属性:バイオSF

面白さ:★★★★★★★★★★

恐怖度:★★☆☆☆☆☆☆☆☆

影響度:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

他の記事に書いたかもしれないが、私が生まれて初めて自分のお金で本屋で買った思い出深い作品である。

また、記念すべき日本ホラー小説大賞の初大賞受賞作であり、バイオ・ホラー屈指の超傑作である。映画化されたりゲーム化されたりと本当に素晴らしい作品で、当時小学生だった私はどっぷり浸かっていた。

本作ははっきり言ってまったく怖くない。比較的近い属性の作品である、リングの続編『らせん』や貴志祐介屈指の傑作『天使の囀り』の方が恐怖描写は格段に上だ。しかも著者は研究者であるにもかかわらず、ツッコミどころはかなり多い。ただ何が素晴らしいかって、ミトコンドリアEve1の精液くれくれ騎乗位シーンがたまらんのです(笑)...と言うのは置いておくとして、ハードSFとしては通用しなそうではあるが、何と言ってもアイデアが良いのですよ。実際にありえるのかな...と知的好奇心を熱くさせることが本書の醍醐味なのです。

 

 

十二位  墓地を見おろす家 / 小池真理子(1993年)

 

新築・格安、都心に位置するという抜群の条件の瀟洒なマンションに移り住んだ哲平一家。問題は何一つないはずだった。ただ一つ、そこが広大な墓地に囲まれていたことを除けば…。やがて、次々と不吉な出来事に襲われ始めた一家がついにむかえた、最悪の事態とは…。復刊が長く待ち望まれた、衝撃と戦慄の名作モダン・ホラー

 

属性:心霊/ポルターガイスト/オラオラ(笑)

面白さ:★★★★★★★★★☆

恐怖度:★★★★★★★☆☆☆

影響度:★★★★★★★☆☆☆

 

割と評価が分かれる作品で個人的には超好きな一冊。

基本的にはイイ感じの心霊(ポルターガイスト)作品で、序盤から中盤にかけては非常に良くできたホラーなのだが.....後半はお祭りです(笑)

属性にオラオラと書きましたが、ネタバレにならない範囲で書くと、とにかく心霊がアグレッシブなんDEATH。こういうのって静かに静かに追い込まれていくようなのがセオリーだと思われるが、なぜがゴリゴリに攻めまくってくるのはなんか違う...けど面白いからまぁいいかという感じである。気になったらぜひ。とりあえず読み物として面白いのは保証できる。

 

 

十一位  六番目の小夜子 / 恩田陸(1992年)

 

津村沙世子――とある地方の高校にやってきた、美しく謎めいた転校生。高校には十数年間にわたり、奇妙なゲームが受け継がれていた。三年に一度、サヨコと呼ばれる生徒が、見えざる手によって選ばれるのだ。そして今年は、「六番目のサヨコ」が誕生する年だった。学園生活、友情、恋愛。やがては失われる青春の輝きを美しい水晶に封じ込め、漆黒の恐怖で包みこんだ、伝説のデビュー作。

 

属性:学園モノ/青春/恋愛/怪異

面白さ:★★★★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★★★★★★☆☆

影響度:★★★☆☆☆☆☆☆☆

 

傑作を量産するが完成度の点でいろいろあれな作家こと恩田陸のデビュー作。デビュー作の時点で、すでにフワッとした感じの結末は完成している(笑)

冗談はさておき、ホラー以外の要素が多いので純粋なホラーとしてはこのあたりにランキングしているが、恐ろしいほどに高い筆力から描かれる本作屈指の恐怖描写の某シーンは、まさに文字が質量を持って襲ってくるような猛烈な臨場感を味わうことができる。文字でここまで描写できるのは凄いとしか言いようがない。

万人が楽しめるような内容なので、読んでない人がいたらぜひ読んでみてほしい。読書そのものを楽しむことができるはず。

 

 

十位  殺人鬼 / 綾辻行人(1990年)

 

伝説の傑作『殺人鬼』、降臨!!’90年代のある夏。双葉山に集った“TCメンバーズ”の一行は、突如出現したそれの手によって次々と惨殺されてゆく。血しぶきが夜を濡らし、引き裂かれた肉の華が咲き乱れる…いつ果てるとも知れぬ地獄の饗宴。だが、この恐怖に幻惑されてはいけない。作家の仕掛けた空前絶後の罠が、惨劇の裏側で読者を待ち受けているのだ。―グルーヴ感に満ちた文体で描かれる最恐・最驚のホラー&ミステリ。

 

属性:スプラッタホラー/ミステリ/グロ

面白さ:★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★★★★★☆☆☆

影響度:★★★☆☆☆☆☆☆☆

 

この作品がなければ綾辻行人を好きになることはなかった....私が初めて読んだ著者の本であり、言うまでもなく綾辻行人作品で最も好きな本である。

ミステリ要素はオマケに過ぎず、スプラッタとグロさに全力投球したある意味綾辻行人作品の中では異例の作品なのかもしれない。セックス中のカップルを二人同時に貫くシーンなど、綾辻作品をほぼすべて読んだ今からするとちょっと信じられないくらいである。

1作目の時点でかなりエグいスプラッタ描写のオンパレードだが、2作目は悪ノリしたかのようにさらに悲惨なことになっており、この著者頭大丈夫かなと思ったくらいだ。繰り返すが『十角館の殺人』と同じ著者が書いているとは信じがたいような内容である。

現在はKADOKAWAから覚醒篇と逆襲篇が出ていて、それぞれ大幅な改訂を加えた決定版となっている。入手もしやすいので、館シリーズばかり読んでいて他の作品は未読のような推理小説マニアもぜひ一度読んでみてほしい。

 

 

九位  粘膜兄弟 / 飴村行(2010年)

 

ある地方の町外れに住む双子の兄弟、須川磨太吉と矢太吉。戦時下の不穏な空気が漂う中、二人は自力で生計を立てていた。二人には同じ好きな女がいた。駅前のカフェーで働くゆず子である。美人で愛嬌があり、言い寄る男も多かった。二人もふられ続けだったが、ある日、なぜかゆず子は食事を申し出てきた。二人は狂喜してそれを受け入れた。だが、この出来事は凄惨な運命の幕開けだった…。待望の「粘膜」シリーズ第3弾。

 

属性:グロ/戦争/ファンタジー/冒険

面白さ:★★★★★★★★★★★★★★★

恐怖度:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆

影響度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

我が最愛シリーズである粘膜作品3作目。世界観を共有するものの特に1作目、2作目を読んでいなくても独立した作品として楽しめる。(4作目のみ順番通りに読む必要あり)

怪奇幻想の戦争もの(?)であり、独自の世界観が作り上げられており、本作は特にエンタメ要素に特化した超絶面白作品である。ギャグセンスも素晴らしく、読み始めたら確実に一気読み確定な徹夜小説でもある。

エググロ要素が多いのも本作のポイントだが、特に金玉拷問や、かくかくしかじかで腸がはみ出て死を待つ美女ビッチに死姦ならぬ死にかけ強姦をするシーンは最高にたまらないのだ!(笑)

 

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八位  臓物大展覧会 / 小林泰三(2009年)

 

男が旅の途中、街で見つけた「臓物大展覧会」という奇妙な看板。中に入ってみると様々な臓物が展示してある。居合わせた謎の人物から「臓物の呟きを聞きたいか」と問われ、男は異様な体験をすることに……。

 

属性:グロ/SF

面白さ:★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★★★★★☆☆☆

影響度:★★☆☆☆☆☆☆☆☆

 

タイトルの時点ですでに優勝だが、内容的に小林泰三のホラー短編集の中では最高傑作だと考えている愛してやまない一冊である。好き。LOVE。

タイトルの臓物大展覧会というのはやや釣りな印象だが、プロローグ→短編9作品→エピローグの構成となっており、プロローグとエピローグが臓物祭りである(おえっ笑)

SF寄りの作品が複数ある作品群に、ヤスミンらしいエググロ度の高い作品も紛れ込んでおり、特に1作目の「透明女」は全小林泰三作品の中でも筆頭クラスのエグさMAX作品で、冒頭からかっ飛ばしまくっている。他にも「攫われて」、「悪魔の不在証明」などSF要素がない作品はとにかく気合が入っていて、とにかくおすすめです。

角川ホラー文庫小林泰三作品を複数復刊してくれましたが、頼むからこれも復刊してくれ!!現状は電子書籍でなくては入手困難です。。

 

 

七位  首無の如き祟るもの / 三津田信三(2007年)

 

奥多摩の山村、媛首村。淡首様や首無の化物など、古くから怪異の伝承が色濃き地である。三つに分かれた旧家、秘守一族、その一守家の双児の十三夜参りの日から惨劇は始まった。戦中戦後に跨る首無し殺人の謎。驚愕のどんでん返し。本格ミステリとホラーの魅力が鮮やかに迫る。「刀城言耶」シリーズ傑作長編。

 

属性:ミステリ/怪異

面白さ:★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★★★★★★★★

影響度:★★★★★★★★☆☆

 

ホラー長編、特に『リング』以降の作品は怪異の謎解きのようなミステリ要素を持つ作品が多いと考えている。

本作『首無の如き祟るもの』は非常に完成度の高い本格ミステリでありながら、結果的にはホラー小説としても最高峰に到達した、私が把握しているミステリー×ホラーの最高傑作である。何というかミステリとしての完成度とホラーとしての完成度が連動して、共に高め合っているような印象。

最終盤の描写を見て、恐怖というよりよくもこんなのが書けたよなぁ...という意味で鳥肌が立った。

 

 

六位  オフシーズン / J.ケッチャム(1980年)

 

避暑客が去り冷たい秋風が吹き始めた九月のメイン州の避暑地。ニューヨークから六人の男女が休暇をとって当地にやって来る。最初に到着したのは書箱編集者のカーラ。すこし遅れて、彼女の現在のボーイフレンドのジム、彼女の妹のマージーとそのボーイフレンドのダン、そしてカーラのかつてのボーイフレンドのニックとそのガールフレンドのローラが到着した。六人全員が到着した晩に事件は勃発した。当地に住む“食人族"が六人に襲い掛かったのだ。“食人族"対“都 会族"の凄惨な死闘が開始する。

 

属性:スプラッタホラー/グロ/食人族

面白さ:★★★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★★★☆☆☆☆☆

影響度:★★★☆☆☆☆☆☆☆

 

 絵に描いたようなB級スプラッタホラーの超傑作。

エロもグロも突き抜けて凄まじいことになっており、怒涛の勢いで阿鼻叫喚の地獄絵図が展開される様は、この手の話が好きなら恋人に嫌われようが必読である。

 世の中にはあからさまなエロやグロを追求した作品が溢れかえっていて、正直興醒めしてしまうのだが、『オフシーズン』は強烈でありながらも狙った感は皆無であり、結末の容赦の無さも実に教訓的で自然である。

正直、この記事を書きたいモチベーションにもなった私の超お気に入り作品である。涙が出るほど好きなシーンが二つあり、一つは逆さ吊りにした美女のクリトリスにナイフを当て、そこから腹に向かって一気に切り裂くシーン(もちろん食べます)、もう一つは....内緒(玉ひゅん)

 

モダンホラーの帝王S.キング曰く

全米一怖い作家は誰だ?きっとジャック・ケッチャムさ。

『オフシーズン』の無修正版を感謝祭の日に読んだら、

きっとクリスマスの日まで眠れなくなること請け合いだ。

ティーブおじさんが警告しなかったなんて言うなよ、

はっはっはっ……(by スティーブン・キング)

 

 

五位  花嫁の家 / 郷内心瞳(2014年)

 

その家に嫁いだ花嫁は、必ず死ぬ。「嫁いだ花嫁が3年以内にかならず死ぬ」――。忌まわしき伝承のある東北の旧家・海上家では、過去十数代にわたり花嫁が皆若くして死に絶えていた。この家に嫁いだ女性から相談を受けた拝み屋・郷内は、一家に伝わるおぞましい慣習と殺意に満ちた怪奇現象の数々を目の当たりにする……。記録されることを幾度も拒んできた戦慄の体験談「母様の家」と「花嫁の家」。多くの読者を恐怖の底へ突き落とした怪談実話がついによみがえる。

 

属性:悪霊/ミステリ/人間も怖い(笑)

面白さ:★★★★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★★★★★★★★

影響度:★★★★★★★★☆☆

 

知る人ぞ知る最恐ホラー小説。

しかし『花嫁の家』の特筆すべき点はその怖さだけでなく、練りに練った物語の構成と優れたサスペンスであるということだ。とにかく話が面白く、めちゃくちゃ怖いのにゴリゴリ読み進めてしまうのだ。様々な伏線が恐怖で恐怖で結びついた時の鳥肌の立ち方は尋常ではない。

なぜか長らく文庫が絶版しており、前作が角川ホラー文庫から再販されているにも関わらず、本作がなかなか復刊されないのが禍々しかったが、漸く2022年に復刊されたので超おすすめである。 ちなみに前作は読んでいなくても問題ないが、前作読了後に読むと恐怖が2割増しになる。

 

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

 

四位  霧が晴れた時 自選恐怖小説集 / 小松左京(1993年)

 

太平洋戦争末期、少年が屋敷で見た恐怖の真相とは!? 名作中の名作「くだんのはは」をはじめ、日本恐怖小説界に今なお絶大なる影響を与えつづける、ホラー短編の金字塔。

 

属性:SF/怪異/和風/戦争

面白さ:★★★★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★★★★★★★★★★

影響度:★★★★★★★★☆☆

 

個人的好きな小説ランキングトップ30には入るホラー神傑作選。

純粋なホラーだけでなく、SF要素の高い作品が多い本書において、やはり日本を代表するホラーである「くだんのはは」がホラーとしてはずば抜けた傑作である。和風×戦争×不気味を兼ね備えており、こけおどしではない本気の恐怖がここにある。(よくある意味不明なひらがなを並べたりするのはくだらない)

また傑作選だけあり、他の収録作も強者揃いである。というか本当に読んだ方が良い作品が勢揃いなので、マジで読んでください!

以下の記事で私が特に気に入った作品を紹介しています。

 

〇個別紹介記事

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三位  リング / 鈴木光司(1998年)

 

ジャパニーズ・ホラー最高の傑作!一本のビデオテープを観た四人の少年少女が、同日同時刻に死亡した。この忌まわしいビデオの中には、一体どんなメッセージが……恐怖とともに、未知なる世界へと導くオカルト・ホラーの金字塔。

 

属性:心霊/呪い/ミステリ

面白さ:★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★★★★☆☆☆☆

影響度:★★★★★☆☆☆☆☆

 

もはや説明不要のJホラーの筆頭。

貞子たんが爆誕した伝説の作品でしゅ。映画化され続編が出まくり、国民的アイドルと化した貞子たん♥️。

原作では貞子は女性ではなく、両性具有として書かれているのですぞ。ちんこついてます。あとテレビから出てきません(笑)

ホラー×ミステリの超傑作で、続編も神、特に3作目の『ループ』は究極傑作なので、絶対に読んでくだされ。

 

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二位  天使の囀り / 貴志祐介(1998年)

 

北島早苗は、終末期医療に携わる精神科医。恋人の高梨は、病的な死恐怖症(タナトフォビア)だったが、新聞社主催のアマゾン調査隊に参加してからは、人格が異様な変容を見せ、あれほど怖れていた『死』に魅せられたように自殺してしまう。さらに、調査隊の他のメンバーも、次々と異常な方法で自殺を遂げていることがわかる。アマゾンでいったい何が起きたのか? 高梨が死の直前に残した「天使の囀りが聞こえる」という言葉は、何を意味するのか? 前人未踏の恐怖が、あなたを襲う。

 

属性:グロ/寄生虫/ミステリ/SF

面白さ:★★★★★★★★★★★★★

恐怖度:★★★★★☆☆☆☆☆

影響度:★★☆☆☆☆☆☆☆☆

 

貴志ホラーとして、またグロ系ホラーとしてマスターピース級の超傑作。

ミステリー的な要素と終始漂う不穏な空気、人々の恐ろしい死に様、気持ち悪い描写の数々に完全にやられてしまった。おぞましい作品だが、エンタメ作品として素晴らしい作品でもあるため、グロを覚悟してでも読んでおくべき作品である。

終盤に待つ地獄の描写は、阿鼻叫喚という言葉すら生温い恐るべき映像を想起させる。

 

 

一位  残穢 / 小野不由美(2012年)

 

 この家は、どこか可怪しい。転居したばかりの部屋で、何かが畳を擦る音が聞こえ、背後には気配が…。だから、人が居着かないのか。何の変哲もないマンションで起きる怪異現象を調べるうち、ある因縁が浮かび上がる。かつて、ここでむかえた最期とは。怨みを伴う死は「穢れ」となり、感染は拡大するというのだが―山本周五郎賞受賞、戦慄の傑作ドキュメンタリー・ホラー長編!

 

属性:心霊/ミステリ/ドキュメンタリー

面白さ:★★★★★★★☆☆☆

恐怖度:★★★★★★★★★★

影響度:★★★★★★★★★★★★★★★

 

最恐ホラー小説と称されることも多いJホラーの究極完全体。一人暮らしの人は絶対に読んではいけない。『リング』や『呪怨』は一人暮らしでもギリギリ耐えられそうだが『残穢』は無理である。

 ホラーにもいろいろなタイプがあるが、怪異系は日本的な恐怖の代表ではないだろうか。本作はその怪異系の中でも群を抜いた完成度を誇っている。

残穢』は主人公の作家(モデルは明らかに小野不由美ご本人)によるドキュメンタリー形式で語られており、語り手の”私”がマンションの一室で起きる怪異を過去に過去に遡って調査いくという流れのため、ミステリーの要素も併せ持っている。

 怪異全般に関する蘊蓄も豊富に書かれていることや、"私"の夫が綾辻行人氏としか思えなかったり、ホラー界の重鎮、平山夢明氏は実名で登場したりとノンフィクションっぽいところが恐怖を助長する。ヤバいホラーを求める方は必読である。

なお本作は『鬼談百景』の百話目に相当する話であるため、先にそちらから読んでおくと盛り上がってから読むとなお良い。

1話あたり2~4ページ程度のホラーショートショートがジワジワと効いてくる危険な本だが、様々なタイプの話があり、ガチで怖めなのはさほど多くはない。ショートショートが癖になり、気が付けば読了しているタイプの作品だ。

 

ちなみに私は小野不由美の大ファンである。この記事を書く際にリストをまとめてみたら、『魔性の子』や『ゴーストハントシリーズ』、『東亰異聞』、『営繕かるかや怪異譚シリーズ』などふゆみ作品で埋め尽くしそうだったのであえて自粛している。

以下の記事でも紹介しているので、ぜひ参照していただきたい。

kodokusyo.hatenablog.com

 

書いてみた結果

首無を入れるのなら、京極夏彦も入れて良かったのでは、とか何なら横溝正史もありじゃん...っていうか乱歩も全然OKではなかろうか...といろいろ考えが爆発したのだが、キリがないので素直に20選に留めて筆をおくことにしたい。

私は本当に怖い本を読みたいし、この記事に辿り着いた方ももちろん怖いのを読みたいはずなので、これはマジでヤバいという本を知っていたらコメントをいただけると大変有意義だと考えています。ぜひ。