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『イクサガミ』今村翔吾|燃え盛る熱き読む少年漫画

本気なのか悪ノリなのか...

 

言いたいことは山ほどある

作品紹介

今村翔吾による『イクサガミ』は2022年から講談社より出版され、天→地→人→神と4部構成で2025年に完結したエンタメ時代小説で、文庫本で約330+450+520+470ページで全体では1800ページ弱の作品である。

「明治時代に謎の冒険デスゲームやっちゃいました」な本作は、漫画化されNetflixでドラマ化されるのも当然と言わんばかりに完全にエンターテイメントに特化した作品であるため、少年ジャンプをめっちゃ読んでいるけど、漫画だけじゃなくて小説も読んでみたいなぁ...な意識高さに目覚めつつある人にはうってつけの傑作だ。

本作の素晴らしいところ、微妙なところも含めて忖度なしに語っていくが、本編にもある程度触れなければならないため、ネタバレゼロで読みたい方はこの記事はスルーしてまずは1冊目の「天」から読み始めてほしい。面白いことは保証できる。

 

 以下、あらすじの引用

金か、命か、誇りか。刀を握る理由は、何だ。明治11年。深夜の京都、天龍寺。「武技ニ優レタル者」に「金十万円ヲ得ル機会」を与えるとの怪文書によって、腕に覚えがある292人が集められた。告げられたのは、〈こどく〉という名の「遊び」の開始と、七つの奇妙な掟。点数を集めながら、東海道を辿って東京を目指せという。各自に配られた木札は、1枚につき1点を意味する。点数を稼ぐ手段は、ただ一つ――。「奪い合うのです! その手段は問いません!」剣客・嵯峨愁二郎は、命懸けの戦いに巻き込まれた12歳の少女・双葉を守りながら道を進むも、強敵たちが立ちはだかる――。

 

 

文字で読む少年漫画

この本は面白い。ただし良くも悪くも少年漫画的なノリであり、時代と関連した謎要素がある「天」「地」はいいとして、それ以降はほぼ完全にバトル漫画となる。そのため読書慣れしている人が読んだら段々「あれれ?」となるかもしれない。

私が読んだ感想は以下のように変化していった。
①天「おもしれー!いったい蟲毒の目的って何なんだよ!続きが気になる!」

②地「ほほう...こう来ましたか。でも目的は何なんだろう...ってか続きどうなるの?」

③人「面白いけどちょっと少年漫画過ぎじゃないかぁ....ん?これ三部作完結じゃないの...おいおいちゃんと締めようよ」

④神「神って(笑) もはや完全にバトル漫画じゃん。でも面白かったしまぁいいか」

つまり猛烈に面白かった第一部の魅力をデスゲーム×時代小説×サスペンスだとしたら、第二部も同様だが少年漫画要素が出てきて、第三部はほぼ少年漫画、第四部はもう完全にインフレしたバトル漫画なのである。

繰り返しになるがこの本は面白く、最初から最後までずっとテンションの高さを維持しているのだが、前半と後半で対象年齢が変わってしまっている気がするのだ。本作の紹介で貴志祐介が「風太忍法帖×現代のデスゲーム」といったが、何となく「ジョジョ7部 スティールボールラン」とか「るろうに剣心」が近いような気がした。

 

どんな話なのか

明治時代に謎の新聞がばら撒かれて、「殺しあいながら(点数を奪いながら)京都から東京まで来たらめっちゃ金あげますぞ」と書かれていた。集まったスタンド使いや念能力者、忍者、魔法使い達はお金やらなんやらを求めて東京に向かうのだった...である。

主人公は謎の超能力を操る流派の剣士で、過去にその流派でいろいろな因縁があった訳ありなお金ほしいおじさん。過去の因縁やらなんやらでいろいろがんばっちゃう。

なのでなぜこんなデスゲームが開催されたかがこの物語の肝なのだが、この謎は割と早い段階で黒幕が判明し、これといった意外性もなくその目的も判明する。つまりひたすらバトルを楽しむだけである。

時代背景や剣士が多いことをを考慮すると前述のとおり「るろうに剣心」だが、インフレしていくたびに「NARUTO」になっていく。仲間と協力しながらチート技を持つ怪人や狂人を倒す物語なのだ。

 

どんな技があるのか

「視野が広がって一瞬先の動きを読む」「めっちゃ耳が良くなって足音も消せる」「武器破壊」「超絶防御力アップ」「自動攻撃(笑)」「呼吸法で一時的に超人化」「剣の軌道があり得ない位置に変わる」「鼻がめっちゃよくなる」「年を取らない」「体が軟体生物になる」「敵が一度使った技を使えるようになる」「毒幻術」などなどまさに少年ジャンプである。しかも能力名を言ったり、地の文でも能力名や技名が登場しまくるのである。

こういった能力を見て面白そうと思ったら読むべきだし、興醒めしたのなら読む必要はないだろう。

 

時代小説としてどうか

私は山田風太郎の大ファンなので、時代小説としてはかなり物足りなく感じてしまう。いうまでもなく本作のデスゲーム開催には理由があるのだが、いまいち深堀ができていないように思えてしまうし、「いやいや...やらんでしょ」みたいな感じになってしまうのである。

しかし再三繰り返すが、この本は面白い。ただのバトル漫画の小説版として読めば最高の作品であるので、この作品を機に時代小説に興味を持ったのなら山田風太郎の「忍法帖シリーズ」や「明治モノ」を読んでみてほしい。

 

お約束展開マシマシ

少年漫画ってヒーローと悪役がいたり、最初は敵だけど味方になったり、その逆で敵になったり、悪役が最後いい奴になったり、仲間が死んでしまうといったお約束があるものだが、本作はドストレートにだいたいの要素は網羅している。

感動させようとするし泣かせようとするし、ヒーローが自己犠牲で弱いものを守ろうとするし...などなど盛りだくさん過ぎて食傷気味になるくらいである。こういうのが好きな方にはたまらないだろうね。ただアラサーを過ぎてワンピースにうざいと感じるようになった人には厳しいかもしれない。

 

何も書けなかった....

何度でも言うのだが、この本は本当に面白かった。しかし内容的に普段から小説を読むような読者向けではないように思えるので、書こうと思っても全然かけないのである。だって竈門炭治郎と鬼の戦いが文字で書かれたものを、文字で紹介しようと思っても書けなくないかな?という感じで雑に締めくくります(笑)

まぁ私自身会社でそれなりのポジションになってしまい、読書時間をなかなか確保できない中、本作は第一部から完結編まで発売日に買って一日で読み切るような徹夜本だったのは紛れもない事実なので、駄文になってしまい恐縮だがぜひ読んでみてほしい。

私は漫画版は読んでいないが、漫画だとかなりよみやすくおもしろいかもしれない。また実写映えする内容なので、Netflix版も超楽しみである。

 

 

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