神本を求めて

小説を読みまくって面白い本を見つけたら紹介するブログ

島田荘司|代表作品一覧とおすすめランキング21選

 ゴッドオブミステリー

代表作品一覧

詳細は別の記事に作中年表と合わせて、島田御大への畏敬の念込めて気合を入れてまとめたので以下のURLをご参照いただきたい。本記事では御手洗シリーズと吉敷シリーズの一覧のみに留める。

 

御手洗シリーズ

  1. 占星術殺人事件(1981年)
  2. 斜め屋敷の犯罪(1982年)
  3. 御手洗潔の挨拶|短編集(1987年)
  4. 異邦の騎士(1988年)
  5. 御手洗潔のダンス|短編集(1990年)
  6. 暗闇坂の人喰いの木(1990年)
  7. 水晶のピラミッド(1991年)
  8. 眩暈(1992年)
  9. アトポス(1993年)
  10. 龍臥亭事件(1996年)
  11. 御手洗潔のメロディ|短編集(1998年)
  12. Pの密室|中編集(1999年)
  13. 最後のディナー|短編集(1999年)
  14. ハリウッド・サーティフィケイト(2001年)
  15. ロシア幽霊軍艦事件(2001年)
  16. 魔神の遊戯(2002年)
  17. セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴(2002年)
  18. 上高地切り裂きジャック|中編集(2003年)
  19. ネジ式ザゼツキー(2003年)
  20. 龍臥亭幻想(2004年)
  21. 摩天楼の怪人(2005年)
  22. 溺れる人魚|短編集(2006年)
  23. UFO大通り|中編集(2006年)
  24. 犬坊里美の冒険(2006年)
  25. 最後の一球(2006年)
  26. リベルタスの寓話|中編集(2007年)
  27. 進々堂世界一周 追憶のカシュガル|短編集(2011年)
    【改題】御手洗潔進々堂珈琲
  28. 星籠の海(2013年)
  29. 屋上の道化たち(2016年)
    【改題】屋上
  30. 御手洗潔の追憶|短編集(2016年)
  31. 鳥居の密室 世界にただひとりのサンタクロース(2018年)

吉敷シリーズ

  1. 寝台特急はやぶさ」1/60秒の壁(1984
  2. 出雲伝説7/8の殺人(1984
  3. 北の夕鶴2/3の殺人(1985)
  4. 消える「水晶特急」(1985)
  5. 確率2/2の死(1985)
  6. Yの構図(1986)
  7. 灰の迷宮(1987)
  8. 夜は千の鈴を鳴らす(1988)
  9. 幽体離脱殺人事件(1989)
  10. 奇想、天を動かす(1989)
  11. 羽衣伝説の記憶(1990)
  12. ら抜き言葉殺人事件(1991)
  13. 飛鳥のガラスの靴(1991)
  14. 涙流れるままに(1999)
  15. 吉敷竹史の肖像|短編集(2002)
    【改題】光る鶴
  16. 盲剣楼奇譚(2019)

御手洗&吉敷関連作品

  1. 展望塔の殺人|短編集(1987年)
  2. 毒を売る女|短編集(1988)
  3. 切り裂きジャック百年の孤独(1988)
  4. 踊る手なが猿|短編集(1990)

 

⇩作中の年表と詳細な作品一覧

kodokusyo.hatenablog.com

 

 

作品ランキング

 多作なうえに超傑作のオンパレードなため10選では到底選別できず20選にしたのだが、それでも絞るのは困難を極めた.....というかほぼ無理ゲー。

 ランキング下位の作品ですら、他のミステリー作家を木っ端微塵に粉砕するほどの強烈な作品が集結しているので、もう全部おすすめである。

 

21位  出雲伝説 7/8の殺人(1984年)

 

山陰地方を走る6つのローカル線と大阪駅に、流れ着いた女性のバラバラ死体!なぜか首はついに発見されなかった。捜査の結果、殺された女は死亡推定時刻に「出雲1号」に乗車していたらしい。休暇で故郷に帰っていた捜査一課の吉敷竹史は、偶然にもこの狂気の犯罪の渦中に…。本格トラベル・ミステリーの力作。

 

吉敷シリーズの2作目にして御手洗シリーズに勝るとも劣らない猟奇殺人である。

はっきり言ってこの作品を本当に20位にしてしまってよいものかと悩みまくったくらいの傑作で、単なる推理小説を超越して歴史や神話にまで話が及び、明らかに島荘本人の解釈と思われる説も披露される。

当時は”バラバラの島田”と”人攫いの岡嶋”と称されていただけあって、バラバラ殺人のトラベルミステリーである本作はやはり尋常ではない完成度である。出雲伝説や八岐大蛇、女の怨念など純度100%の島荘でもある。

 

 

20位  夏、19歳の肖像(1985年)

 

バイク事故で入院中の青年が、病室の窓から目撃した「谷間の家」の恐るべき光景!ひそかに想いをよせる憧れの女性は、父親を刺殺し工事現場に埋めたのか?退院後、青年はある行動を開始する―。青春の苦い彷徨、その果てに待ち受ける衝撃の結末!青春ミステリー不朽の名作。

 

青春ミステリーの傑作であり短いページ数のノンシリーズ作品なので、島田荘司の本を読みたいけど『占星術殺人事件』は冒頭が難しそうだし、ページ数が多いし、グロそうだし....と感じる方には最適の作品。

もちろん純粋に青春小説としてもミステリとしても優れた作品なので、盗んだバイクで走りだしてしまいたくなること必至である。

 

 

 

19位  毒を売る女(1988年)

 

娘は名門幼稚園に入り、家も手に入れた。医者である夫の仕事も順調で、全てがうまくいっているはずだった。あの女があんな告白をするまでは―。人間が持つ根源的な狂気を描いた圧巻の表題作をはじめ、御手洗潔シリーズの傑作「糸ノコとジクザグ」からショートショートまで、著者の様々な魅力が凝縮した大充実の傑作短篇集!

 

あらすじの通りバラエティーに富んだ作品集であり、幻想的でマニアックな作品もあるが、島田作品のエッセンスの大半が詰まっている。

センスに満ち溢れた隠れ御手洗シリーズの「糸ノコとジクザグ」も素晴らしいが、なんと言っても表題作が強烈。邪悪な女性心理を書かせたら、女性作家ですれ凌ぐのではないかと思われる島田御大の悪質なイヤミスが堪能できる。

 

 

 

18位  御手洗潔のメロディ(1998年)

 

何度も壊されるレストランの便器と、高名な声楽家が捜し求める美女。無関係としか思えない2つの出来事の間に御手洗潔が存在するとき、見えない線が光り始める。御手洗の奇人ぶり天才ぶりが際だつ「IgE」のほか大学時代の危険な事件「ボストン幽霊絵画事件」などバラエティ豊かな4つの傑作短編を収録。

 

タイトルに御手洗を冠した短編集には、本作の他に『御手洗潔の挨拶』と『御手洗潔のダンス』の2作があり、いずれも優れた傑作だが、個人的には『御手洗潔のメロディ』を推薦したい。

「IgE」は御手洗シリーズの中でも御手洗がかなりブッ飛んでいて爆笑必至であり、なおかつ島荘ならでは訳の分からない謎が楽しめる。
事件の起きない「SIVAD SELIM」は御手洗シリーズの中でも素晴らしい作品である。

ちなみにアーノルド・シュワルツェネッガーが登場します(笑)

 

 

 

17位  ロシア幽霊軍艦事件(2001年)

 

 箱根、富士屋ホテルに飾られていた一枚の写真。そこには1919年夏に突如芦ノ湖に現れた帝政ロシアの軍艦が写っていた。四方を山に囲まれた軍艦はしかし、一夜にして姿を消す。巨大軍艦はいかにして“密室”から脱したのか。その消失の裏にはロマノフ王朝最後の皇女・アナスタシアと日本を巡る壮大な謎が隠されていた―。御手洗潔が解き明かす、時空を超えた世紀のミステリー。

 

海と繋がっていない芦ノ湖に巨大軍艦が突如現れて消えたという、壮大な謎を解き明かすスケールがデカすぎる物語。

ロマノフ王朝の秘密について島田御大の考えが反映されていて、これこそが本当のミステリーだ!と叫びたくなる内容になっている。 はっきり言ってこんなとてつもない作品が書けるのは島田御大以外にはまずありえないと思われる。もはやこれはSFだよ。口が裂けても言えないけど『天空の城ラピュタ』が頭に浮かんだりととにかく凄い作品なのである。

 

 

 

16位  透明人間の納屋(2003年)

 

 昭和52年夏、密室状態のホテルの部屋から一人の女性が消え失せ、海岸で死体となって発見された。孤独な少年・ヨウイチの隣人で、女性の知人でもあった男は「透明人間は存在する」と囁き、納屋にある機械で透明人間になる薬を作っていると告白する。混乱するヨウイチ。心優しき隣人は犯人なのか? やがて男は外国へ旅立ち、26年後、一通の手紙がヨウイチのもとへ届いた。そこには驚愕の真相が記されていた! 

 

 講談社の児童向け企画のレーベルであるミステリーランドから発表された作品だが、謎は極めて怪奇的なものであり大人が読んでも引き込まれることは必至である。

ノンシリーズであり、短めな物語の中に島田作品の魅力が凝縮されているため、初めて島田作品に触れる方にも特におすすめな1冊。

 また児童向けの企画だというのに一切の手加減がない島田御大の人柄にも憧れる。

 

 

 

15位  斜め屋敷の犯罪(1982年)

 

北海道の最北端・宗谷岬に傾いて建つ館――通称「斜め屋敷」。雪降る聖夜にこの奇妙な館でパーティが開かれたが、翌日、密室状態の部屋で招待客の死体が発見された。人々が恐慌を来す中、さらに続く惨劇。御手洗潔は謎をどう解くのか!? 日本ミステリー界を変えた傑作が、大幅加筆の改訂完全版となって登場! 

 

言わずと知れた究極の密室殺人を扱った話であり、密室の完成度は完璧でどう考えても不可能犯罪である。不気味な人形が登場するなど怪奇現象としか言いようのない事件は見ものであり、あいかわらず島田荘司の謎の魅せ方はデビュー当時からとても素晴らしく完成されているのが分かる。

そして歴史に名を残すであろう伝説のトリックを存分に味わってみてほしい。はっきり言ってバカミス......超凄いです。

この作品の隠れたポイントは登場人物の描写であり、全面的にユーモアが聞きまくっていて、特に女同士の見苦しい喧嘩はあまりにも悲惨で面白すぎる。

 

 

 

14位  北の夕鶴2/3の殺人(1985年)

 

 北の大地で壮大なトリックが展開される傑作ミステリー。
占星術殺人事件』『奇想、天を動かす』などと並び称される名作!離婚した妻・通子から掛かってきた一本の電話。ただ、「声が聞きたかった」と言うだけの電話を不審に思った吉敷は、通子を追って上野駅へ向かう。発車した〈ゆうづる九号〉に通子の姿を認めた吉敷だが、翌日、車内から通子と思われる死体が発見された。通子の足跡をたどる吉敷は、彼女が釧路で殺人事件の容疑者となり、姿を消していたことを知る。次々と降りかかる難事に身も心も傷だらけになりながら、別れた妻の無実を証明するため盛岡、そして釧路へと吉敷の捜査行は続く。ハードボイルドと超絶トリックを融合させた驚異の傑作ミステリー!

 

島田御大のすべての要素が詰まったと言っても過言ではない大傑作。『異邦の騎士』に迫るものがあるほどの力作である。

オカルトとしか言いようがない尋常ではない事件と、島田流のラブストーリーが合わさった熱い物語である。 本作のトリックはもともとは御手洗シリーズで使う予定だったというだけあって、バカミスすれすれのアルティメットな離れ業が爆裂する。

 

 

13位  奇想、天を動かす(1989年)

 

 浅草で浮浪者風の老人が、消費税12円を請求されたことに腹を立て、店の主婦をナイフで刺殺した。だが老人は氏名すら名乗らず完全黙秘を続けている。この裏には何かがある。警視庁捜査一課の吉敷竹史は、懸命な捜査の結果、ついに過去数十年に及ぶ巨大な犯罪の構図を突き止めた。―壮大なトリックを駆使し、本格推理と社会派推理とを見事に融合させた傑作。

 

島田御大が提示する謎の中でも最強レベルにブッ飛んだ謎を扱った作品であり、本格ミステリと社会派ミステリが融合された超傑作である。

とにかく謎が謎過ぎてヤバいのが特徴のため、ミステリー好きは絶対に読まなければならないだろう。 死んだピエロが消えたり、電車が爆発したり、灰色の巨人が現れたりとありえないことこの上ない。この作品を発表して以降、島田御大はミステリーの限界を突破した作品を連発するようになる。

 

 

 

12位  切り裂きジャック百年の孤独(1988年)

 

1988年、西ベルリンで起きた謎の連続殺人。5人の娼婦たちは頚動脈を掻き切られ、腹部を裂かれ、内臓を引き出されて惨殺された。19世紀末のロンドンを恐怖の底に陥れた“切り裂きジャック”が、100年後のベルリンに甦ったのか? 世界犯罪史上最大の謎「切り裂きジャック事件」を完全に解き明かした、本格ミステリー不朽の傑作。

 

伝説の怪事件、切り裂きジャックについて島田御大の回答が示された1冊であり、現代のドイツで起きた怪事件と100年前の切り裂きジャック事件を、”クリーン・ミステリ”なる謎の男が同時に解決するというすごい力作である。

グロ描写が凄まじいが、実際の事件がそうだったのだからしょうがないとして、島田御大の考える切り裂きジャック事件の真相に驚愕させられる。

また隠れ御手洗潔作品でもある。

 

 

11位  龍臥亭幻想(2004年)

 

石岡和己、犬坊里美、そして加納通子―。雪に閉ざされた龍臥亭に、八年前のあの事件の関係者が、再び集まった。雪中から発見された行き倒れの死体と、衆人環視の神社から、神隠しのように消えた巫女の謎!貝繁村に伝わる「森孝魔王」の伝説との不思議な符合は、何を意味するのか?幻想の「龍臥亭事件」が、いま、その幕を開ける。

 

『龍臥亭事件』に続く2作目で御手洗潔と吉敷竹史が集結するというボーナスステージのような内容になっている。

『龍臥亭事件』とノリが全然違って、のほほんとした印象を受けたりもするが、扱われる事件の怪奇幻想っぷりは史上最強クラスであり、ある程度御手洗シリーズを読んだ方であれば絶対に読んでいただきたい内容である。だって鎧が勝手に動いて罪人を始末するのですぜ....(笑)

まさに龍臥亭の幻想という感じで、こんなとてつもない話を思いついて書くことのできる作家は島田荘司だけだろうと確信する。

 

 

10位  ハリウッド・サーティフィケイト(2001年)

 

知らぬまに子宮を盗まれた女‘ アメリ黒社会を描く衝撃本格ミステリー!異常者によって、女優のパトリシアの「子宮」が盗まれた事件は、全米中を震撼させていた。そしてLAPDに犯人から郵送された2本目の殺人テープ。テープハリウッドで起こる連続殺人事件は何か?本格ミステリー大長編!

 

まさにハリウッド映画を見ているような作品である。

レオナ・マツザキが主役であり、御手洗は電話でしか登場せず科学的な話しかしないため、御手洗シリーズを読んでる感じはまったくしない。  ポルノがテーマの一つになっており、レオナは完全に変態女に暗黒進化しておりエロさ極まりない。

極悪非道な殺人事件に、『ケルトの伝説』のエピソード、SF的グロテスク描写やハリウッド級のアクションと強烈極まりない作品である。真相にも「マジかよ!!」と猛烈に驚かされるだろう。

 

 

 

9位  屋上(2016年)

 

自殺する理由がない男女が、次々と飛び降りる屋上がある。足元には植木鉢の森、周囲には目撃者の窓、頭上には朽ち果てた電飾看板。そしてどんなトリックもない。死んだ盆栽作家と悲劇の大女優の祟りか?霊界への入口に名探偵・御手洗潔は向かう。人智を超えた謎には「読者への挑戦状」が仕掛けられている!

 

最強のバカミスであるため賛否両論を呼んでいるが、個人的には超最高な作品である。

これでもかというほど自殺するはずがない人が次々と屋上から飛び降り自殺するという怪事件が、アホみたく面白おかしく描かれる。島田御大も明らかに面白可笑しく書いているように思われ、登場人物の滅茶苦茶なセリフの掛け合いなど、とにかくエンタメ要素がマシマシというのがポイント。ツボに入ると腹筋崩壊だろう。

 

 

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

8位  龍臥亭事件(1996年)

 

御手洗潔が日本を去って1年半。彼の友人で推理作家の石岡は、突然訪ねてきた二宮という女性の頼みで、岡山県まで悪霊祓いに出かけた。2人は霊の導くままに、寂しい駅に降り立ち、山中分け入り、龍臥亭という奇怪な旅館に辿り着く。そこで石岡は、世にもおぞましい、大量連続殺人事件に遭遇した。推理界の奇才が、渾身の筆致で描く本格ミステリー超大作。

 

横溝正史の『八つ墓村』のモチーフにもなった、戦前最大にして伝説の事件である”津山三十人殺し”に島田御大の解釈を入れて構築した凄まじい事件である。

主役が石岡君で御手洗は電報と手紙わずかに登場するだけにもかかわらず1000ページを超える大長編なのだが、一気読みしてしまう魔力を秘めている。津山三十人殺しの犯人である都井睦雄が主役の作中作があるのだが、これがまた凄まじい臨場感を持った超傑作である。

なお事件のトリックはかなりやらかした感があり、賛否両論のスーパーバカミスとなっていて、実現可能性ゼロ(笑)のトリックに有り得ない偶然があり得ちゃったりと、本格推理小説としてはかなりアウトだが私は大好きだ。

 

 

7位  ネジ式ザゼツキー(2003年)

 

記憶に障害を持つ男エゴン・マッカートが書いた物語。そこには、蜜柑の樹の上の国、ネジ式の関節を持つ妖精、人工筋肉で羽ばたく飛行機などが描かれていた。御手洗潔がそのファンタジーを読んだ時、エゴンの過去と物語に隠された驚愕の真実が浮かびあがる!圧倒的スケールと複合的な謎の傑作長編ミステリー。

 

シリーズ8作目の怪作『眩暈』をさらに幻想的にしたような超怪作である。

記憶喪失の男が記した、謎に包まれた 「タンジール蜜柑王国」を御手洗が論理的に実在を解明していく前半と、その王国にまつわる圧倒的な猟奇殺人事件の謎を解くという奇想が炸裂した内容だ。しかしネジ式で動く妖精だったり、人工筋肉で羽ばたく飛行機、鼻を削がれた老人。そして浮かび上がるスペースコロニーなどやり過ぎMAXである。

 

 

6位  異邦の騎士(1988年)

 

 失われた過去の記憶が浮かびあがり男は戦慄する。自分は本当に愛する妻子を殺したのか。やっと手にした幸せな生活にしのび寄る新たな魔の手。名探偵御手洗潔の最初の事件を描いた傑作ミステリ『異邦の騎士』に著者が精魂こめて全面加筆修整した改訂完全版。幾多の歳月を越え、いま異邦の扉が再び開かれる。

 

島田御大の事実上の処女作であり、御手洗&石岡君最初の事件である。

ミステリーとしても優秀なのはもちろんのこと、島田御大のストーリーテラーとしての才能が溢れる至高のラブストーリーである。記憶を無くした"俺"の正体と良子の謎に迫る物語は涙無しでは語れず、ラストはそこはかとないせつなさが残る。

『異邦の騎士』を読むと100%御手洗シリーズを好きになるが、この作品までは必ず順番通りに読まなければならない。

 

 

5位  アルカトラズ幻想(2012年)

 

 一九三九年十一月二日、ワシントンDCのジョージタウン大学脇にあるグローバーアーチボルド・パークの森の中で、娼婦の死体が発見された。被害者は両手をブナの木の枝から吊るされ、性器の周辺がえぐられたため股間から膣と子宮が垂れ下がっていた。時をおかず第二の殺人事件も発生し、被害者には最初の殺人と同様の暴虐が加えられていた。凄惨な猟奇殺人に世間も騒然とする中、恐竜の謎について独自の理論を展開される「重力論文」を執筆したジョージタウン大学の大学院生が逮捕され、あのアル・カポネも送られたサンフランシスコ沖に浮かぶ孤島の刑務所、アルカトラズに収監される。やがて、ある事件をきっかけに犯人は刑務所を脱獄し、島の地下にある奇妙な場所で暮らし始めるが……。先端科学の知見と作家の奔放な想像力で、現代ミステリーの最前線を走る著者の渾身の一作がついにベールを脱ぐ!

 

ゴッドオブミステリー・島田御大の到達点。

起承転結だったり序破急といった物語のお約束をガン無視した展開のため、小説の体を成していないトンデモ本だが、ミステリーの求道者は死んでも読むべき1冊である。

女性器を抉るという猟奇的殺人に恐竜絶滅の謎、アルカトラズ刑務所や地球空洞説、さらにはパンプキン王国???4章+エピローグという構成だが、2章がほぼ丸々『重力論文』という宇宙規模の論文が展開されるのも島田御大の気合いが感じられる。

開いた口が塞がらない伝説の作品であり、島田荘司の裏最高傑作と言えるかもしれない。

 

 

4位  占星術殺人事件(1981年)

 

密室で殺された画家が遺した手記には、六人の処女の肉体から完璧な女=アゾートを創る計画が書かれていた。その後、彼の六人の娘たちが行方不明となり、一部を切り取られた惨殺遺体となって発見された。事件から四十数年、迷宮入りした猟奇殺人のトリックとは!?名探偵御手洗潔を生んだ衝撃作!

 

島田御大の伝説のデビュー作である。

東西ミステリベスト100の2012版で3位、英国の有力新聞『ガーディアン』で世界の密室ミステリーベスト10の2位という世界でも高い評価をされる究極の事件である。

占星術殺人事件』を超えるトリックは永遠に現れないのではないかと思ってしまうくらいの、衝撃的な事件とトリックは未来永劫に語り継がれるだろう。広義のミステリーとしての謎の魅せ方もデビュー作にしてすでに完成している。アゾートよ永遠に。

 

 

3位  水晶のピラミッド(1991年)

 

 エジプト・ギザの大ピラミッドを原寸大で再現したピラミッドで起こる怪事。冥府の使者アヌビスが5000年の時空を超えて突然甦り、空中30メートルの密室で男が「溺死」を遂げる! アメリカのビッチ・ポイントに出現した現代のピラミッドの謎に挑む名探偵・御手洗潔。壮大なテーマに挑んだ本格ミステリーの大作。

 

事件に関係があるのか無いのか読んでいる時点ではさっぱりな「タイタニック号の沈没事故」と「古代エジプト」の物語が描かれる。

この作品をもって島田流の限界突破ミステリーが完成形に近づいてきており、謎に挿入されるエピソードが事件を混迷させる。 ピラミッドの謎に迫ったり、異形の怪物が登場したりとミステリー作品として超一級品だろう。そしてアメリカ、エジプトを巡る冒険小説としても素晴らしい。

 

 

 

2位  暗闇坂の人喰いの木(1990年)

 

さらし首の名所・暗闇坂にそそり立つ樹齢2000年の大楠。この巨木が次々に人間を呑み込んだ? 近寄る人間たちを狂気に駆り立てる大楠の謎とは何か? 信じられぬ怪事件の数々に名探偵・御手洗潔が挑戦する。だが真相に迫る御手洗も恐怖にふるえるほど、事件は凄惨を極めた。本格ミステリーの騎手が全力投球する傑作。

 

 オカルト全開ミステリーホラーの最終兵器である。(本気のホラーなので注意)

偶然が大いに作用しているため、本格推理マニアからは賛否両論だが、そもそも人喰いの木という怪物が関与しているため、偶然は偶然ではなく木がもたらす怪異なのだ。

スコットランドに旅立って、猟奇事件の謎に迫ったりと話のスケールもデカい。

私は『暗闇坂の人喰いの木』以前の御手洗シリーズで既に島田御大の信者になっていたが、これを読んで狂信者へと進化してしまった。

 

〇個別紹介記事

kodokusyo.hatenablog.com

 

1位  アトポス(1993年)

 

虚栄の都・ハリウッドに血でただれた顔の「怪物」が出没する。ホラー作家が首を切断され、嬰児が次々と誘拐される事件の真相は何か。女優・松崎レオナの主演映画『サロメ』の撮影が行われる死海の「塩の宮殿」でも惨劇は繰り返された。甦る吸血鬼の恐怖に御手洗潔が立ち向かう。渾身のミステリー巨編が新たな地平を開く。

 

1000ページ近い超大作だが、一気読み確定なド級のハイパーエンタメ作品である。

プロローグに次ぐ章のタイトルはその名も「長い前奏」。200ページに及ぶエリザベート・バートリーをテーマにした作中作が圧倒的に面白く、その後に続くB級ホラーのような展開も熱い。そして再度プロローグを挟み舞台はイスラエル死海へ....。

『奇想、天を動かす』『暗闇坂の人喰いの木』『水晶のピラミッド』『目眩』で著してきた島田流ミステリーの1つの到達点となっている。

サイコでおぞましい連続殺人事件に、事件の全貌を曖昧にする挿話、白馬に乗った王子様にやり過ぎなトリック。完璧である。

 

 

島田信者を増やす布教活動は終わらない