日本最強の売れっ子作家
作品一覧
おそらく『容疑者Xの献身』(2005年)を発表する頃には一生遊べるくらいのお金を稼いでいたと思われるが、それでも作品を発表し続ける東野圭吾さんのストイックさには驚かされる。
100冊近い東野作品の完全制覇はかなり大変だと思うが、傑作だらけなので少しずつ読んでいればいつも間にかコンプリートできてしまうかもしれない。
加賀恭一郎シリーズ
- 卒業―雪月花殺人ゲーム(1986年)
- 眠りの森(1989年)
- どちらかが彼女を殺した(1996年)
- 悪意(1996年)
- 私が彼を殺した(1999年)
- 嘘をもうひとつだけ(2000年)
- 赤い指(2006年)
- 新参者(2009年)
- 麒麟の翼(2011年)
- 祈りの幕が下りる時(2013年)
ガリレオシリーズ
- 探偵ガリレオ(1998年)
- 予知夢(2000年)
- 容疑者Xの献身(2005年)
- ガリレオの苦悩(2008年)
- 聖女の救済(2008年)
- 真夏の方程式(2011年)
- 虚像の道化師(2012年)
- 禁断の魔術(2012年)
- 沈黙のパレード(2018年)
天下一大五郎シリーズ
- 名探偵の掟(1996年)
- 名探偵の呪縛(1996年)
浪花少年探偵団シリーズ
○笑小説シリーズ
- 怪笑小説(1995年)
- 毒笑小説(1996年)
- 黒笑小説(2005年)
- 歪笑小説(2012年)
マスカレードシリーズ
- マスカレード・ホテル(2011年)
- マスカレード・イブ(2014年)
- マスカレード・ナイト(2017年)
スキー場シリーズ
- 白銀ジャック(2010年)
- 疾風ロンド(2013年)
- 恋のゴンドラ(2016年)
- 雪煙チェイス(2016年)
ラプラスの魔女シリーズ
- ラプラスの魔女(2015年)
- 魔力の胎動(2018年)
ノンシリーズ長編作品
- 放課後(1985年)
- 白馬山荘殺人事件(1986年)
- 学生街の殺人(1987年)
- 11文字の殺人(1987年)
- 魔球(1988年)
- 香子の夢-コンパニオン殺人事件(1988年)
【改題】ウインクで乾杯 - 十字屋敷のピエロ(1989年)
- 鳥人計画(1989年)
- 殺人現場は雲の上(1989年)
- ブルータスの心臓(1989年)
【改題】ブルータスの心 - 宿命(1990年)
- 仮面山荘殺人事件(1990年)
- 変身(1991年)
- 回廊亭の殺人(1991年)
【改題】回廊亭殺人事件 - ある閉ざされた雪の山荘で(1992年)
- 美しき凶器(1992年)
- 同級生(1993年)
- 分身(1993年)
- むかし僕が死んだ家(1994年)
- 虹を操る少年(1994年)
- パラレルワールド・ラブストーリー(1995年)
- 天空の蜂(1995年)
- 秘密 (1998年)
- 白夜行(1999年)
- 片想い(2001年)
- レイクサイド(2002年)
- トキオ(2002年)
- ゲームの名は誘拐(2002年)
- 手紙(2003年)
- おれは非情勤(2003年)
- 殺人の門(2003年)
- 幻夜(2004年)
- さまよう刃(2004年)
- 使命と魂のリミット(2006年)
- 夜明けの街で(2007年)
- ダイイング・アイ(2007年)
- 流星の絆(2008年)
- パラドックス13(2009年)
- カッコウの卵は誰のもの(2010年)
- プラチナデータ(2010年)
- ナミヤ雑貨店の奇蹟(2012年)
- 夢幻花(2013年)
- 虚ろな十字架(2014年)
- 人魚の眠る家(2015年)
- 危険なビーナス(2016年)
- 希望の糸(2019年)
- クスノキの番人(2020年)
ノンシリーズ短編作品
- 依頼人の娘(1990年)
【改題】探偵倶楽部 - 犯人のいない殺人の夜(1990年)
- 交通警察の夜(1991年)
【改題】天使の耳(1995年) - 怪しい人びと(1994年)
- 超・殺人事件 推理作家の苦悩(2001年)
- あの頃の誰か(2011年)
- 素敵な日本人(2017年)
エッセイ
- あの頃僕らはアホでした(1995年)
- ちゃれんじ?(2004年)
- さいえんす?(2005年)
- 夢はトリノをかけめぐる(2006年)
- たぶん最後の御挨拶(2007年)
作品ランキング
まだまだ未読の本は多いが、評判のいい本や個人的に気になる本からチョイスしていただけあって、現状の読了本はどれも異様にレベルが高い。
なのでミステリー好きであればどれを読んでも楽しめると思われるのだが、格付け依存症の私があくまでも好みでトップ10を決めてみたい。
今後も東野作品はコンスタントに読み続けるだろうが、おそらくあまり順位に変更はないのではないかと思われる。そんな格付けとなった。
10位 むかし僕が死んだ家(1994年)
「あたしは幼い頃の思い出が全然ないの」。7年前に別れた恋人・沙也加の記憶を取り戻すため、私は彼女と「幻の家」を訪れた。それは、めったに人が来ることのない山の中にひっそりと立つ異国調の白い小さな家だった。そこで二人を待ちうける恐るべき真実とは……。超絶人気作家が放つ最新文庫長編ミステリ。
東野圭吾の多才さに驚かされた作品で、ジャンルはミステリーというよりは怪奇幻想ホラーと言った方が正確かもしれない。推理小説のような驚きを楽しむものではなく、なんとも不気味な真相を味わうようなものかと思う。
短いうえに登場人物も少なくてとても読みやというのも優れた点。
9位 名探偵の掟(1996年)
完全密室、時刻表トリック、バラバラ死体に童謡殺人。フーダニットからハウダニットまで、12の難事件に挑む名探偵・天下一大五郎。すべてのトリックを鮮やかに解き明かした名探偵が辿り着いた、恐るべき「ミステリ界の謎」とは?本格推理の様々な“お約束”を破った、業界騒然・話題満載の痛快傑作ミステリ。
本格推理小説マニアが読んだら怒るかもしれないが、推理小説好き程度の人が読めば爆笑必至の言語同断ミステリー(笑)
「あんたはエスパーか」と思わず唸るほどに"えせ推理小説好き"の心理を見透かしており、密室などの推理小説おなじみのキーワードをくそぼろにこき下ろすのは笑ってします。
本格推理マニアにはぜひとも読んでもらいたい怪作。
8位 ある閉ざされた雪の山荘で(1992年)
1度限りの大トリック!
たった1度の大トリック!劇中の殺人は真実か?
俳優志願の男女7人、殺人劇の恐怖の結末。
いかにも本格推理小説なタイトルからして一発かましてやる感がぷんぷん漂っている。そしてやはり一発かましてくるのが著者のすごいところだろう。
ありがちな吹雪の山荘モノのクローズドサークルで東野圭吾が何を仕掛けるのかは、読んでみてのお楽しみである。
『ある閉ざされた雪の山荘で』というタイトルからしていかにも”吹雪の山荘”型のクローズドサークルなのは、東野圭吾ならではの皮肉なのかもしれない。
7位 天使の耳(1991年)
天使の耳をもつ美少女が兄の死亡事故を解明。
深夜の交差点で衝突事故が発生。信号を無視したのはどちらの車か!?死んだドライバーの妹が同乗していたが、少女は目が不自由だった。しかし、彼女は交通警察官も経験したことがないような驚くべく方法で兄の正当性を証明した。日常起こりうる交通事故がもたらす人々の運命の急転を活写した連作ミステリー。
交通事故にまつわる事件を扱った短編集で、一見地味な印象を持つかと思われるが、それぞれの作品がミステリーとしてやたらレベルが高いだけでなく、人間のダークな心理まで描かれている。
信号無視、飛び出し、煽り運転など日常で起こりうる身近なテーマであるだけにとても臨場感があるのも高ポイント。
1話あたり50ページくらいの短編作品だというのに、作品どの作品もずっしりとした読みごたえがあり驚かされる。
6位 仮面山荘殺人事件(1990年)
8人の男女が集まる山荘に、逃亡中の銀行強盗が侵入した。外部との連絡を断たれた8人は脱出を試みるが、ことごとく失敗に終わる。恐怖と緊張が高まる中、ついに1人が殺される。だが状況から考えて、犯人は強盗たちではありえなかった。7人の男女は互いに疑心暗鬼にかられ、パニックに陥っていった……。
私が初めて読んだ東野作品の長編であり、華やかな新本格ムーブメントとは一味も二味も違った魅力を味わうことができた。
短めな尺の中でどんでん返しを連発させるだけでなく、気が付けばヒューマンドラマとしても楽しめているというすごい仕様である。
某世界で最も有名なミステリー小説のトリックが流用されているが、どんでん返しに次ぐどんでん返しラッシュは本家を知っている方でも、「うおぉーーー!!」と唸らされることは必至である。
5位 超・殺人事件 推理作家の苦悩(2001年)
新刊小説の書評に悩む書評家のもとに届けられた、奇妙な機械「ショヒョックス」。どんな小説に対してもたちどころに書評を作成するこの機械が、推理小説界を一変させる――。発表時、現実の出版界を震撼させた「超読書機械殺人事件」をはじめ、推理小説誕生の舞台裏をブラックに描いた危ない小説8連発。意表を衝くトリック、冴え渡るギャグ、そして怖すぎる結末。激辛クール作品集。
ギャグ小説かと思いきや、思った通りのただのギャグ小説なのだが(笑)扱っているネタがあまりにも強烈で、出版業界にとっては自虐テロのようなものであろう。
当然のごとく評価が分かれている作品のようだが、ネタとして純粋に楽しむ分には最高の一品であり、推理小説だけでなく小説そのものが好きな方であればブラックユーモアに噴き出すこと間違いなしである。
またふざけた作品であることは間違いないはずだが、おそらく東野圭吾は本作を書くのにかなりの労力を費やしたと思わざるを得ないような、出版業界の裏話的な蘊蓄がもりもりである。
4位 容疑者Xの献身(2005年)
天才数学者でありながら不遇な日々を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、2人を救うため完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる。ガリレオシリーズ初の長篇、直木賞受賞作。
数々のミステリーの賞を受賞した上に直木賞まで受賞してしまった化け物級の作品だ。
犯人が初めから分かっている倒叙ミステリーなのだが、基本的にはヒューマンドラマとして楽しむべき作品だと思.......いきや「なにぃィーーーー!?」という推理小説ならではの驚きが待っているという非の打ち所がない作品である。
万人向け且つ推理小説マニアにも響くというのがすごい。
これほど売れまくって当然な本は早々お目にかかれないのだが、結末は結構なツッコミどころがあるように思うのだが、こんな感じが一番世の人々の心に響くのだろう。
3位 悪意(1996年)
人はなぜ人を殺すのか。
東野文学の最高峰。
人気作家が仕事場で殺された。第一発見者は、その妻と昔からの友人だった。
逮捕された犯人が決して語らない「動機」とはなんなのか。
超一級のホワイダニット。
ホワイダニットに特化した希少な推理小説なのだが、その完成度が尋常ではなく、いったいこの東野圭吾という男は何者なんだという疑問が湧きまくった作品である。
本格推理小説にはあまり動機に焦点を置いた作品は多くないと思われるので、興味本位で読んでみてもまず後悔することはない。
ちなみに犯人がもちいたトリックも地味に気合が入っているので、ハウダニットとしてもちゃんと楽しめるのもミステリー作家としての力量だろう。
2位 秘密(1998年)
運命は、愛する人を二度奪っていく。
自動車部品メーカーで働く39歳の杉田平介は妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美と暮らしていた。長野の実家に行く妻と娘を乗せたスキーバスが崖から転落してしまう。 妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。 その日から杉田家の切なく奇妙な“秘密"の生活が始まった。 外見は小学生ながら今までどおり家事をこなす妻は、やがて藻奈美の代わりに 新しい人生を送りたいと決意し、私立中学を受験、その後は医学部を目指して共学の高校を受験する。年頃になった彼女の周囲には男性の影がちらつき、 平介は妻であって娘でもある彼女への関係に苦しむようになる。
読んだ動機は日本推理作家協会賞の受賞作であること。
しかしはっきり言ってミステリーとして読むような本ではなく、ヒューマンドラマとして楽しむべき作品だろう。また設定上SFやファンタジー要素もある。
よくよく考えると「ん...?」となってしまうのだが、この辺は読者の性別によって感じ方も異なってくるように思う。
ミステリー好きとして東野圭吾を読むような人には、最初に読む一冊としてはちょっとミーハー(死後)かもしれないが、そうでない人ならこれを最初に読むのがいいかもしれない。
1位 白夜行(1999年)
1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々と浮かぶが、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と「容疑者」の娘・西本雪穂――暗い目をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別の道を歩んでいく。二人の周囲に見え隠れする、いくつもの恐るべき犯罪。だが、証拠は何もない。そして19年……。伏線が幾重にも張り巡らされた緻密なストーリー。壮大なスケールで描かれた、ミステリー史に燦然と輝く大人気作家の記念碑的傑作。
ジャンルはノワール。好きな作家に東野圭吾を掲げることに抵抗が無くなった作品である。なぜならこんな小説は神に選ばれし者にしか書けないからだ。
非常に長い小説であるものの、この本に関して言えば長さは気にならないというか、むしろ無限に読んでいたいと思えるレベルである。
全体の構成といい、主役二人が一度も主観にならない書き方といい超絶技巧としか言いようがない。ここに理系の本気が表れているようにも思う。
これを読まずに生きていくなんて人生の損失だと言っても過言ではない。
番外編 怪笑小説(1995年)
年金暮らしの老女が芸能人の“おっかけ”にハマリ、乏しい財産を使いはたす「おっかけバアさん」をはじめ、ちょっとブラックで、怖くて、何ともおかしい人間たち!多彩な味つけの9編。
冒頭にも書かせていただいたが、私は京極夏彦氏が本作に収録されている「超たぬき理論」というおバカオカルト小説で東野作品デビューをして、この作品のあまりの面白さに腹筋崩壊した経緯がある。もちろん一発でファンになった。
個人的には伝説となった「超たぬき理論」の他、「鬱積電車」「しかばね台分譲住宅」という話がめちゃくちゃ面白かった。
ブラックユーモアが過ぎる感じもするが、全体的に笑える。というかこの本を書いたのが『悪意』や『白夜行』の著者と同じということが一番笑えるというユーモア。
小説界の怪物は支配者として君臨し続ける