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貴志祐介|作品一覧とおすすめランキング17選

万能の神作家

寡作ではあるものの、あらゆる作品が大傑作という稀代のエンタメ作家・貴志祐介

ホラー作家としてデビューし異なるタイプの大傑作ホラーを連発しつつも、『青の炎』や『硝子のハンマー』といったミステリー作品、さらにはSFの『新世界より』やサスペンスの『悪の教典』などジャンルを選ばずひたすら傑作のみを書き続けている。

いったいどうしたらこんな傑作を書き続けられるのか....きっと神様だからなのだろうと畏敬の念を抱かずにはいられない。そんな神作家・貴志祐介の作品について、畏れながらも布教すべく作品をランキングで紹介したい。

 

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こんな傑作ばかり書いてたらドヤ顔もしたくなるもんでしょう

 

作品一覧

傑作ばかりなので文句は言えないが、いくら何でも寡作過ぎるだろ!とツッコミを入れたくなるほどである。

とはいえ読者としては微妙な作品連発する多作な作家よりは、寡作だが超傑作のみという作家の方がいいのではなかろうか。寡作でやっていけている事実こそ、貴志祐介の実力の証明だろう。

 

小説

エッセー

  • 極悪鳥になる夢を見る(2013年)

その他

  • エンタテインメントの作り方(2015年)
    この本は非常におすすめの1冊。
    貴志作品の裏話がてんこ盛りで、作家志望でなくても楽しめる。
     

 

作品ランキング

貴志作品は様々なジャンルがあるため、人によって評価はまったく異なったものにだろう。『黒い家』が好きな人と『青の炎』が好きな人では、同じ貴志祐介を崇拝する一神教なのにキリスト教徒とイスラム教徒くらい気が合わないと思われる。

そのため先にことわっておくと、私はSFや広義のミステリー、ホラーが好みのタイプである。そんな嗜好を持った人間の評価だと考えていただきたい。

 

17位  狐火の家(2008年)

 

長野県の旧家で、中学3年の長女が殺害されるという事件が発生。突き飛ばされて柱に頭をぶつけ、脳内出血を起こしたのが死因と思われた。現場は、築100年は経つ古い日本家屋。玄関は内側から鍵がかけられ、完全な密室状態。第一発見者の父が容疑者となるが…(「狐火の家」)。表題作ほか計4編を収録。防犯コンサルタント(本職は泥棒?)榎本と、美人弁護士・純子のコンビが究極の密室トリックに挑む、防犯探偵シリーズ、第2弾。

 

防犯探偵シリーズ第2弾で『硝子のハンマー』と違い短編集になっている。

寡作な貴志祐介が長年温めてきたであろうネタを放出しているので、個々の作品のクオリティは非常に高い。表題作は悲惨さにあきれてしまうし、個人的にトリックが一番好きな『黒い牙』など読みどころが多い。4話目はユーモア全開でこちらも著者らしい。

神傑作を連発する著者だけにこの順位にしているが、プロの推理作家が束になっても敵わないくらいの品質である。

 

 

16位  鍵のかかった部屋(2011年)

 

元・空き巣狙いの会田は、甥が練炭自殺をしたらしい瞬間に偶然居合わせる。ドアにはサムターン錠がかかったうえ目張りまでされ、完全な密室状態。だが防犯コンサルタント(本職は泥棒!?)の榎本と弁護士の純子は、これは計画的な殺人ではないかと疑う(「鍵のかかった部屋」)。ほか、欠陥住宅の密室、舞台本番中の密室など、驚天動地の密室トリック4連発。あなたはこの密室を解き明かせるか!?防犯探偵・榎本シリーズ、第3弾。

 

相変わらず手堅い完成度の密室事件を扱った本格推理短編集。

好みの問題かと思えなくもないが、『狐火の家』の方が全体的にトリックは良いかなぁと思いつつも、個人的にはおふざけMAXな「密室劇場」が収録されたこちらを推す(笑)

表題作は密室事件を扱った本格推理小説の中でもかなり完成度の高い作品と言われているらしく、新本格系とは一味違った極めてリアリティのあるトリックで実践できてしまうのではないかと思ってしまうほどである。

 

 

15位  秋雨物語(2022年)

 

失踪した作家・青山黎明が遺した原稿。それは彼を長年悩ませる謎の転移現象の記録だった。転移に抵抗する青山だったが、更なる悪夢に引きずり込まれていく(「フーグ」)。ある呪いを背負った青年の生き地獄、この世のものとは思えないある絶唱の記録など、至高のホラー4編による絶望の連作集。『黒い家』『天使の囀り』『悪の教典』……いくつもの傑作を生み出した鬼才・貴志祐介が10年以上にわたり描き続けた新シリーズが遂にベールを脱ぐ。

 

ホラーやSF寄りの作品が4作品収録されており、オカルト要素も多い。

さすがは神作家だけあって4作品ともに非常にクオリティは高く、特に「フーグ」は超能力オカルト話なので、そっち系が好きな方は楽しめるだろう。結末も強烈。

やはり貴志祐介は凄いなぁ...としみじみ思いながらも、短編であるが故の物足りなさを感じてしまったのが難点か。

 

 

14位  雀蜂(2013年)

 

11月下旬の八ヶ岳。山荘で目醒めた小説家の安斎が見たものは、次々と襲ってくるスズメバチの大群だった。昔ハチに刺された安斎は、もう一度刺されると命の保証はない。逃げようにも外は吹雪。通信機器も使えず、一緒にいた妻は忽然と姿を消していた。これは妻が自分を殺すために仕組んだ罠なのか。安斎とハチとの壮絶な死闘が始まった―。最後明らかになる驚愕の真実。ラスト25ページのどんでん返しは、まさに予測不能!

 

角川ホラー文庫から出ているがホラー要素はほとんどなく、ユーモラスかつスリリングなサスペンスミステリーといった作風である。

重厚な長編が魅力的な貴志作品においてやや物足りなさはあるものの、最後まで読んでから思わず振り返りたくなるおもしろ要素があり私は”思い出し笑い”ならぬ”思い返し笑い”をしてしまった。

本作を駄作という意見が目立つがエンタメ小説として抜群におもしろく、貴志作品に共通する圧倒的なリーダビリティの高さとページ数が少ないこともあり、とても読みやすいので読書慣れしていない人にもおすすめだ。

 

 

13位  我々は、みな孤独である(2020年)

 

探偵・茶畑徹朗の許にもたらされた、奇妙な依頼。「前世で自分を殺した犯人を捜してほしい」と言う依頼人・正木栄之介は八十歳に近いが、一代で企業を築き上げた傑物らしく未だ矍鑠としている。前世など存在しないと考える茶畑と助手の毬子は適当に話を合わせて報酬を得ようとするが、調査を進めるにつれ、次第に自分たちも前世の記憶としか思えない鮮明な夢を見るようになり──。鬼才が今描く死生観とは⁉ 未体験、未曾有のエンターテインメント! (巻末 著者インタビュー)

 

エンタメとして面白いことは確かだが、かなり人を選ぶ作風である。

過去最高レベルの暴力描写もさることながら、内容が一筋縄ではいかないことが賛否両論となる原因だろう。 貴志祐介の思想がまずありきで、その思想を伝えるべく物語を用意した感もあるくらい言いたいことを言っている。もう哲学書と言っても過言ではない。

やたら早く文庫化されたので、やはり一般受けしなくて早急に広めたかったのかなぁ...なんて思いつつ、文庫版オマケの巻末インタビューを読んでみるととても良かったので、文庫版がおすすめ。

 

 

12位  ミステリークロック(2020年)

 

犯人を白日のもとにさらすために――防犯探偵・榎本と犯人たちとの頭脳戦。様々な種類の時計が時を刻む晩餐会。主催者の女流作家の怪死は、「完璧な事故」で終わるはずだった。そう、居あわせた榎本径が、異議をとなえなければ……。表題作ほか、斜め上を行くトリックに彩られた4つの事件。

 

防犯探偵シリーズの4作目。文庫版ではタイトルを変えて『ミステリークロック』と『コロッサスの鉤爪』で二分冊されている。

貴志作品だけあって短編でも相変わらず作品のクオリティは高く、「ミステリークロック」にいたっては、コアなミステリファンではない私にとっては凄過ぎてよく分からんというレベルであった(ちなみにミステリファンでもよく分からなかったそうな)

個人的にはユーモラスな「ゆるやかな自殺」が分かりやすくて面白く、分冊版の表題作になった「コロッサスの鉤爪」も気合が入っていてとても好印象だった。防犯探偵シリーズの短編集の中では、今のところ一番完成度の高いと思う。

 

 

11位  罪人の選択(2020年)

 

「夜の記憶」――『十三番目の人格‐ISOLA‐』『黒い家』で本格デビュー前に書かれた貴重な一編。水生生物の「彼」は、暗黒の海の中で目覚め、「町」を目指す。一方三島暁と織女の夫婦は、南の島のバカンスで太陽系脱出前の最後の時を過ごす。二つの物語が交錯するとき、貴志祐介ワールドの原風景が立ち上がる。


「呪文」――『新世界より』刊行直後の発表。文化調査で派遣された金城は、植民惑星『まほろば』に降り立った。目的は、この惑星で存在が疑われる諸悪根源神信仰を調べるためだ。これは、集団自殺や大事故などを引き起こす危険な信仰で、もしその存在が認められたら、住民は抹殺される。金城は『まほろば』の住民を救おうとするが……。


「罪人の選択」――1946年8月21日、磯部武雄は佐久間茂に殺されようとしていた。佐久間が戦争に行っている間に、磯部が佐久間の妻を寝取ったからだ。磯部の前に出されたのは一升瓶と缶詰。一方には猛毒が入っている。もしどちらかを口にして生き延びられたら磯部は許されるという。果たして正解は?


「赤い雨」――新参生物、チミドロによって地球は赤く蹂躙された。チミドロの胞子を含む赤い雨が世界各地に降り注ぎ、生物は絶滅の危機にあった。選ばれた人間だけが入れるドームに、成績優秀のためスラムから這い上がった橘瑞樹は、不可能と言われた未知の病気RAINの治療法を探る。

 

表題作のみ本格推理小説よりのミステリーで残りはすべてSF作品という短編集。

デビュー前に書かれたという「夜の記憶」はわけわかめ(笑)だが、それ以外の作品は3作ともとても完成度が高い。特に「呪文」と「赤い雨」は短編で終わらせるにはずいぶん贅沢な設定である。

貴志といったら長編だと考えているが、『罪人の選択』は読みごたえがあるため、短編とは思えない読後感に浸れるだろう。(....であるが故に「赤い雨」あたりは長編に話を広げてほしかったという想いがある)

 

 

10位  梅雨物語(2023年)

 

貴志祐介が描くホラーミステリの極北 。あなたの罪が、あなたを殺す。
・命を絶った青年が残したという一冊の句集。元教師の俳人・作田慮男は教え子の依頼で一つ一つの句を解釈していくのだが、やがて、そこに隠された恐るべき秘密が浮かび上がっていく。(「皐月闇」)
・巨大な遊廓で、奇妙な花魁たちと遊ぶ夢を見る男、木下美武。高名な修験者によれば、その夢に隠された謎を解かなければ命が危ないという。そして、夢の中の遊廓の様子もだんだんとおどろおどろしくなっていき……。(「ぼくとう奇譚」)
・朝、起床した杉平進也が目にしたのは、広い庭を埋め尽くす色とりどりの見知らぬキノコだった。輪を描き群生するキノコは、刈り取っても次の日には再生し、杉平家を埋め尽くしていく。キノコの生え方にある規則性を見いだした杉平は、この事態に何者かの意図を感じ取るのだが……。(「くさびら」)
想像を絶する恐怖と緻密な謎解きが読者を圧倒する三編を収録した、貴志祐介真骨頂の中編集。

 

ホラー、サスペンス、ミステリにオカルト要素が入った短編集。

収録作品はいずれも洗練された完成度を誇っており、長編で読みたかった....とは思うこともなく、読めば貴志作品の魅力が凝縮されまくっていることに気付くだろう。

とにかくクオリティが高い本作品集にあって「くさびら」は貴志作品にはめずらしく、涙腺にダメージを与えるタイプの話であり、オカルト要素、ミステリ要素と相まって個人的には貴志史上最強クラスの短編だと思う。

 

 

9位  黒い家(1997年)

 

若槻慎二は、生命保険会社の京都支社で保険金の支払い査定に忙殺されていた。ある日、顧客の家に呼び出され、期せずして子供の首吊り死体の第一発見者になってしまう。ほどなく死亡保険金が請求されるが、顧客の不審な態度から他殺を確信していた若槻は、独自調査に乗り出す。信じられない悪夢が待ち受けていることも知らずに……。恐怖の連続、桁外れのサスペンス。読者を未だ曾てない戦慄の境地へと導く衝撃のノンストップ長編。第4回日本ホラー小説大賞受賞作。

 

1番怖いホラー小説だと言う人も多い角川ホラー小説大賞受賞作。

生命保険会社の社員である主人公が、ヤバイ人に関わったことで執拗に命を狙われるという話だが、著者自身が生命保険会社で働いていたということもあり、臨場感満載の描写となっている。

サイコパスについて相当な調査をされたと思われるほど菰田夫妻の人格が深く描かれており、サイコパスについての知識が深まることも間違いない。

世の中関わってはいけない人は大勢いるが(関わりたくない人もいるけど.....)、菰田夫妻は実際に近くにいたらおしまい級の危険人物だ。

 

 

8位  十三番目の人格 ISOLA(1996年)

 

賀茂由香里は、人の強い感情を読みとることができるエンパスだった。その能力を活かして阪神大震災後、ボランティアで被災者の心のケアをしていた彼女は、西宮の病院に長期入院中の森谷千尋という少女に会う。由香里は、千尋の中に複数の人格が同居しているのを目のあたりにする。このあどけない少女が多重人格障害であることに胸を痛めつつ、しだいにうちとけて幾つかの人格と言葉を交わす由香里。だがやがて、十三番目の人格〈ISOLA〉の出現に、彼女は身も凍る思いがした。

 

貴志先生のデビュー作で、角川ホラー小説大賞佳作受賞作。

デビュー作には著者のすべてが入っていると言われるが、本作では著者の心理学やオカルトへの博識さがひしひしと伝わってくる。

人の心が聞こえてくるエンパスという能力を持った主人公が阪神大震災の被災地にボランティア活動をしている時に多重人格の少女に出会い、十三番目の人格 ISOLAの驚愕の正体を知ることになるという話。

作品のテーマやISOLAの正体など、オカルトの類が好きな方であればまず間違いなく好きになる作品である。

 

 

7位  硝子のハンマー(2004年)

 

日曜日の昼下がり、株式上場を間近に控えた介護サービス会社で、社長の撲殺死体が発見された。エレベーターには暗証番号、廊下には監視カメラ、窓には強化ガラス。オフィスは厳重なセキュリティを誇っていた。監視カメラには誰も映っておらず、続き扉の向こう側で仮眠をとっていた専務が逮捕されて……。弁護士・青砥純子と防犯コンサルタント・榎本径のコンビが、難攻不落の密室の謎に挑む。日本推理作家協会賞受賞作。

 

防犯探偵シリーズの1作目で、シリーズ唯一の長編作品である。

その年の最も優れたミステリー小説に与えられる、日本推理作家協会賞を受賞した作品だけあって非常に優れた密室殺人モノの推理小説である。

だが本作の本当に凄いところはその構成にある。

構成について触れること自体がネタバレになりかねないので書かないが、この本が長いことには意味がある。貴志のストーリーテラーとしての才能を堪能しよう。

推理小説に興味がない人でも100%楽しめることを保証する。

 

 

6位  青の炎(1999年)

 

櫛森秀一は湘南の高校に通う17歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹との3人暮らし。その平和な家庭に、母が10年前に別れた男、曾根が現れた。曾根は秀一の家に居座って傍若無人に振る舞い、母の体のみならず妹にまで手を出そうとする。警察も法律も家族の幸せを取り返してはくれないことを知った秀一は決意した。自らの手で曾根を葬り去ることを……。完全犯罪に挑む少年の孤独な戦い。その哀切な心象風景を精妙な筆致で描き上げた、日本ミステリー史に残る感動の名作。

 

優れた倒叙ミステリー(犯人目線で描かれるミステリー)であると同時に、せつなさが溢れる青春小説の大傑作でもある。

本作を貴志作品のベストに挙げる方も多いと思われる万人向けの作品だ。

青春小説としても非常に素晴らしい完成度を誇り、これまでホラー作品を上梓し続けてきた作家とは到底思えないほどである。

脳内に再生される湘南の情景が美しくそして儚い。

 

 

5位  悪の教典(2010年)

 

晨光学院町田高校の英語教師、蓮実聖司はルックスの良さと爽やかな弁舌で、生徒はもちろん、同僚やPTAから信頼され彼らを虜にしていた。そんな〝どこから見ても良い教師〟は、実は邪魔者は躊躇いなく排除する共感性欠如の殺人鬼だった。少年期、両親から始まり、周囲の人間をたいした理由もなく次々と殺害してきたサイコパス。美形の女生徒をひそかに情婦とし、同僚の弱みを握って脅迫し、〝モリタート〟の口笛を吹きながら、放火に殺人にと犯行を重ねてゆく。社会から隔絶され、性善説に基づくシステムである学校に、サイコパスが紛れこんだとき――。

 

黒い家のサイコキラーよりも遥かに戦闘能力の高い化け物、高校の英語教師ハスミンによる恐怖のサイコパスストーリー。

文庫本で上下巻に別れる大長編だが、上巻はブラックユーモアを匂わせつつハスミンが邪魔者をひっそりと抹殺していく傑作サスペンス、下巻は自分の利益のために生徒全員を皆殺しにするという阿鼻叫喚の地獄絵図が展開される。

流麗な筆致は数ある貴志作品の中でも最高峰のリーダビリティを誇り、徹夜を覚悟しなければならない。

ハスミンは最悪の外道だが、目的のためには手段を選ばない高い問題解決力は学ぶことも多い.....のかもしれない。

 

 

4位  天使の囀り(1998年)

 

北島早苗は、終末期医療に携わる精神科医。恋人の高梨は、病的な死恐怖症(タナトフォビア)だったが、新聞社主催のアマゾン調査隊に参加してからは、人格が異様な変容を見せ、あれほど怖れていた『死』に魅せられたように自殺してしまう。さらに、調査隊の他のメンバーも、次々と異常な方法で自殺を遂げていることがわかる。アマゾンでいったい何が起きたのか? 高梨が死の直前に残した「天使の囀りが聞こえる」という言葉は、何を意味するのか? 前人未踏の恐怖が、あなたを襲う。

 

グロホラーの超傑作。私は本作を読んで貴志祐介のファンになるとともに、小説でしか楽しめない映像化不可能な要素が存在することを知った。

作品の圧倒的なクオリティーとこれは映像化したら大変なことになるな.....と思わざるをえない最悪のグロ表現にド肝を抜かれたものだ。

作中常に漂う不穏な雰囲気、おぞましい人の死に様の数々、ヤバ過ぎて何も言えない地獄の浴場。かなり人を選ぶ作品だが怖いものが見たい方にはおすすめしたい。

 

 

3位  ダークゾーン(2011年)

 

暗闇の中、赤い怪物として目覚めたプロ棋士を目指す塚田は、「青の軍勢」と戦えと突然命じられる。周囲には、やはり怪物と化した恋人や友人たちが、塚田が将となった「赤の軍勢」の駒として転生していた。将棋のようなルールのもと、特殊能力を駆使し、知恵と駆け引きで敵の王将を狙う「赤VS青」、異形同士の七番勝負が始まった。異次元空間で繰り広げられる壮絶な“対局”の行方は?衝撃のバトルエンターテインメント開戦。

 

SF色濃厚な謎の異世界で行われるデスゲーム作品。

将棋をベースとした知略の限りを尽くした戦闘は極めて秀逸であり、戦闘と戦闘の合間に描かれる現実世界の青春ストーリーも心理描写がしっかとしていいてリアリティがある。また謎に包まれた異世界の正体などミステリー作品としても優れている。

軍艦島を舞台とした世界観から放たれる儚い雰囲気と物語の秘密によるせつなさは、貴志作品でも最高峰である。

また将棋を含めシミュレーションゲーム好きは絶対に読むべき1冊。

 

 

2位  クリムゾンの迷宮(1999年)

 

藤木芳彦は、この世のものとは思えない異様な光景のなかで目覚めた。視界一面を、深紅色に濡れ光る奇岩の連なりが覆っている。ここはどこなんだ? 傍らに置かれた携帯用ゲーム機が、メッセージを映し出す。「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された……」それは、血で血を洗う凄惨なゼロサム・ゲームの始まりだった。『黒い家』で圧倒的な評価を得た著者が、綿密な取材と斬新な着想で、日本ホラー界の新たな地平を切り拓く、傑作長編。

 

デスゲームの超絶傑作。
読み始めたら読み終わるまで何も手につかなくなってしまうのは確実だろう。

目が覚めるとそこは地球とは思えないような正体不明の地。
そこで理由も分からず、同じく謎の地に連れてこられた人間とデスゲームを繰り広げることになる。

正体不明の地の謎、未知の環境でのサバイバル、デスゲームに現れる恐怖の化物.....どこをとってもエンタメの最高峰だと断言したい。

グロいシーンもあるが万人に読んでほしい作品だ。

 

〇個別紹介記事

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1位  新世界より(2008年)

 

1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖(かみす)66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄(しめなわ)で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力(念動力)」を得るに至った人類が手にした平和。念動力(サイコキネシス)の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた……隠された先史文明の一端を知るまでは。

 

圧倒的に面白い小説しか書かない貴志神の中でもダントツの一位に君臨するのが、日本SF大賞受賞作の『新世界より』である。

超長編ゆえ読むのを躊躇する人もいるかと思うが、そんな不安は杞憂に過ぎない。

SFでありファンタジーであり、高品質なホラーでもあり学園、青春、バトル......そしてエロと多数の要素を持ちながらもそのすべてがパーフェクト。

貴志作品は心理学や脳科学に関連のテーマが多いが(多重人格、サイコパスetc...)、本書はそのテーマを内包する作品としても最高傑作だ。

数えきれないほどの本を読んできたが『新世界より』は間違いなく生涯最高の作品である。

 

〇個別紹介記事

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新刊が全然出ないんですけど...

何はともあれ幅広い作風ゆえに、作品によっては好き嫌いが分かれるだろうが、この記事が何から読めば良いか悩んでいる人の参考になれば幸いである。

 

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