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『十二国記』小野不由美|読む順番とおすすめ作品ランキング

日本が誇る最高のファンタジー小説

 

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破れた女子高制服に剣。これが十二国記

 

1.どの出版社のものを買えばいいのか?

 十二国記講談社X文庫ホワイトハート講談社文庫、新潮社文庫から出版されている。結論から言うとこれから揃えるなら新潮社のものを購入すべきだ。

全巻揃うのは新潮社のみであり挿絵や解説も入っているためである。

また新潮社版は装丁も素晴らしく、キャラが描かれていても講談社X文庫ホワイトハートのような少女仕様ではない。大人の男が所持していても怪しまれないので安心だ。

本棚に並べると背表紙がきれいになるのもポイントが高い。

 

 

2.作品一覧

 『十二国記』は長く続いているシリーズであり、なんといってもタイトルが覚えにくいという特長がある。混乱しないように作品一覧を挙げておくので頭に入れておいて損はない。

  1. 魔性の子(1991年)

  2. 月の影 影の海(1992年)※上・下巻

  3. 風の海 迷宮の岸(1993年)

  4. 東の海神 西の滄海(1994年)

  5. 風の万里 黎明の空(1994年)※上・下巻

  6. 図南の翼(1996年)

  7. 黄昏の岸 暁の天(2001年)

  8. 華胥の幽夢(2001年)

  9. 丕緒の鳥(2013年)

  10. 白銀の墟 玄の月(2019年)※一、二、三、四巻

 

3.読む順番の考察

 『十二国記』はおおまかに分類すると陽子編と泰麒編、そしてスピンオフ作品とサイドストーリー的な短編に分かれている。

どの作品も傑作なので基本的には刊行順に読み進めていくのが一番無難なのだが、まずはメインストーリーを追いかけていきたい人もいるかもしれない。

そこでおすすめ順と新潮社公式のエピソード順、刊行順についてポイントを挙げつつ紹介したい。

 

◇おすすめ順

 上記の通り『十二国記』は陽子と泰麒が主役級のポジションにいる。

したがって手っ取り早くメインストーリーを楽しむなら以下の順番がいい。

☆は任意のタイミングで読んで問題ない作品だが、なるべく記載した順で読んでいただきたい作品

 

  1. 『月の影 影の海』陽子編
  2. 『風の万里 黎明の空』陽子編
    ☆『図南の翼』恭王スピンオフ作品
    ☆『東の海神 西の滄海』延王スピンオフ作品
  3. 魔性の子』泰麒編
  4. 『風の海 迷宮の岸』泰麒編
    ☆『華胥の幽夢』短編集
  5. 『黄昏の岸 曉の天』陽子&泰麒編
  6. 『白銀の墟 玄の月』泰麒編
    ☆『丕緒の鳥』短編集

 

『東の海神 西の滄海』『図南の翼』『華胥の幽夢』『丕緒の鳥』はスピンオフ作品やサイドストーリーのため本編とは直接関係ない。

そのため任意の順番で読んでもあまり影響はないのだが、『図南の翼』は大傑作なので早めに読んだ方がいいと思う。

また『東の海神 西の滄海』は本編で最も活躍するキャラである延王のスピンオフ作品なのでこちらも早いタイミングで読んでおくに越したことはない。

『華胥の幽夢』はサイドストーリーだが、一部本編に深く関係する話があるため『白銀の墟 玄の月』よりは先に読むのがおすすめ。

丕緒の鳥』は最も本編との関係が薄いのでどのタイミングで読んでも何の問題もない。

 

 ◇新潮社公式のエピソード順

 なんといっても新潮社が公式に掲げている順番だけあって、これからじっくりと全作読もうと思われている方は素直に以下の順番で読むのが良い。

最大の特長は最も十二国記の世界に浸れることだろう。世界観の描写に特化した『丕緒の鳥』を絶妙なタイミングに配置しており、『華胥の夢』が『黄昏の岸 暁の天』よりも先に来ているのも良い。

 

  1. 魔性の子(1991年)
  2. 月の影 影の海(1992年)
  3. 風の海 迷宮の岸(1993年)
  4. 東の海神 西の滄海(1994年)
  5. 風の万里 黎明の空(1994年)
  6. 丕緒の鳥(2013年)
  7. 図南の翼(1996年)
  8. 華胥の夢(2001年)
  9. 黄昏の岸 暁の天(2001年)
  10. 白銀の墟 玄の月(2019年)

 

◇刊行順

新潮社の順番よりは刊行順の方が短篇集が後になっているためテンポが良い.....のだが『白銀の墟 玄の月』が発表された今となっては、テンポの良さというメリットが削がれているためあまりおすすめはできない。

 

4.おすすめ作品ランキング

 『十二国記』はどの作品も素晴らしいがやはりおもしろさに差はあるのでランキング形式で紹介したい。またどの作品がおすすめなのかを知っていただくことで読む順番の参考にもしていただきたい。

 

十位  丕緒の鳥(2013年)

 

「絶望」から「希望」を信じた男がいた。慶国に新王が登極した。即位の礼で行われる「たいしや大射」とは、鳥に見立てた陶製の的を射る儀式。陶工である丕緒(ひしょ)は、国の理想を表す任の重さに苦慮する。希望を託した「鳥」は、果たして大空に羽ばたくのだろうか──表題作「丕緒の鳥」ほか、己の役割を全うすべく、走り煩悶する、名も無き男たちの清廉なる生き様を描く短編4編を収録。

 

本作は十二国記ではあるが、本編に登場するキャラは登場せずなおかつ本編との関連もまったくないため、シリーズとして考えた場合はやや魅力に欠ける。

内容的にも十二国記の世界観を利用した純文学のような側面があり、エンタメ要素がほとんど無い。ただ世界観の描写にはとても特化しており、小野不由美女史の筆致に浸ることができる作品である。

 

 

九位  華胥の夢(2001年)

 

王は夢を叶えてくれると信じた。だが。 才国(さいこく)の宝重である華胥華朶(かしょかだ)を枕辺に眠れば、理想の国を夢に見せてくれるという。しかし、采麟(さいりん)が病に伏すいま、麒麟が斃(たお)れることは国の終焉を意味する国の命運は──「華胥」。雪深い戴国(たいこく)の王が、麒麟の泰麒(たいき)を旅立たせ、見せた世界は──「冬栄」。そして、景王(けいおう)陽子(ようこ)が親友楽俊(らくしゅん)への手紙に認(したた)めた希(ねが)いとは──「書簡」。王たちの理想と葛藤を描く全5編。

 

表題作以外は本編で活躍するキャラのサイドストーリーとなっている。

泰麒が登場する『冬栄』は『黄昏の岸 暁の天』と『白銀の墟 玄の月』に関連するため特に読んでおくべき作品である。

どの作品もそれぞれの魅力があるが、やはり特筆すべきは表題作だろう。著者が得意とされるミステリー風の作品に仕上がっている。

 

 

八位  風の海 迷宮の岸(1993年)

 

幼き麒麟に迫り来る決断の時──神獣である麒麟が王を選び玉座に据える十二国。その一つ戴国(たいこく)麒麟の泰麒(たいき)は、天地を揺るがす〈蝕〉で蓬莱に流され、人の子として育った。十年の時を経て故国へと戻されるも、役割を理解できぬ麒麟の葛藤が始まる。我こそはと名乗りを挙げる者たちを前に、この国の命運を担うべき「王」を選ぶことはできるのだろうか。

 

こんなこと書いたら怒られそうだが、ショタが好きな腐女子にはかなり大ヒットな作品だと思われる(笑)。

冗談はさておき、主役の一人である泰麒が幼い頃の話であり『魔性の子』を先に読んでいるかどうかでずいぶん感想が変わってくると思う。個人的には必ず『魔性の子』を先に読んでおくべきだと考えている。

 

 

七位  黄昏の岸 曉の天(2001年)

 

王と麒麟が還らぬ国。その命運は!? 驍宗(ぎようそう)が玉座に就いて半年、戴国(たいこく)は疾風の勢いで再興に向かった。しかし、文州(ぶんしゆう)の反乱鎮圧に赴(おもむ)いたまま王は戻らず。ようやく届いた悲報に衝撃を受けた泰麒(たいき)もまた忽然(こつぜん)と姿を消した。王と麒麟を失い荒廃する国を案じる女将軍は、援護を求めて慶国を訪れるのだが、王が国境を越えれば天の摂理に触れる世界──景王陽子が希望に導くことはできるのか。

 

複数の国が協力して戴国の危機を救おうとする物語で、本作もまた『魔性の子』を先に読むかどうかで感想は変わってくる。『風の海 迷宮の岸』に書いた通り私としては必ず『魔性の子』を先に読んでおくべきだと考えている。

続編の『白銀の墟 玄の月』は本作と完全に繋がっているので単体では微妙に評価しがたい作品だが、話自体はとても面白く一応の完結はしている。
しかしとてもいいところで終わるのに続編を20年近く発表しなかった小野主上はかなりのSだと思われる。

 

 

六位  東の海神 西の滄海(1994年)

 

国が欲しいか。ならば一国をやる。延王(えんおう)尚隆(しょうりゅう)と延麒(えんき)六太(ろくた)が誓約を交わし、雁国に新王が即位して二十年。先王の圧政で荒廃した国は平穏を取り戻しつつある。そんな折、尚隆の政策に異を唱える者が、六太を拉致し謀反を起こす。望みは国家の平和か玉座の簒奪(さんだつ)か──二人の男の理想は、はたしてどちらが民を安寧(やすらぎ)に導くのか。そして、血の穢(けが)れを忌み嫌う麒麟を巻き込んだ争乱の行方は。

 

 本編にて最も活躍しまくるキャラである延王と延麒の話で、延王が即位して間もない頃の物語なので十二国記の時系列的には最も古いものになる。
またしても怒られそうだが、本作もショタが好きな腐女子にはかなり刺さる内容だと思われる(笑)。ただし本作は非常に熱いストーリーでありより万人向けなので、だれが読んでも楽しめると思う。軽めの話かと思いきや結構エグくて重い内容なので心してかかろう。

五位  月の影 影の海(1992年)

 

「お捜し申し上げました」──女子高生の陽子の許に、ケイキと名乗る男が現れ、跪く。そして海を潜り抜け、地図にない異界へと連れ去った。男とはぐれ一人彷徨(さまよ)う陽子は、出会う者に裏切られ、異形(いぎょう)の獣には襲われる。なぜ異邦(ここ)へ来たのか、戦わねばならないのか。怒濤(どとう)のごとく押し寄せる苦難を前に、故国へ帰還を誓う少女の「生」への執着が迸(ほとばし)る。シリーズ本編となる衝撃の第一作。

 

魔性の子』を除けば第一作目であり、初めて十二国が舞台になる物語である。
そんじょそこらの異世界モノと一線を画すのは、とにかく情け容赦の無い無慈悲な展開で、「異世界で俺TUEEEEE」的なエンタメ要素は皆無である。

あまりにも前半がひどい展開であるだけに楽俊登場時のホッとする感はただ事ではない。陽子が王になるまでのVery Hardな道程は人生の教訓にもなる。

 

 

四位  白銀の墟 玄の月(2019年)

 

戴国に麒麟が還る。王は何処へ―乍驍宗が登極から半年で消息を絶ち、泰麒も姿を消した。王不在から六年の歳月、人々は極寒と貧しさを凌ぎ生きた。案じる将軍李斎は慶国景王、雁国延王の助力を得て、泰麒を連れ戻すことが叶う。今、故国に戻った麒麟は無垢に願う、「王は、御無事」と。―白雉は落ちていない。一縷の望みを携え、無窮の旅が始まる!

 
絶望...そしてまた絶望...果たしてその先に待つものとは。『屍鬼』的なミステリー要素の強い十二国記の終章。

まさに血も涙もない地獄のような物語であり、読んでいると段々暗い気持ちになってくる危険な作品である。希望を求めて読み進めるもさらなる地獄が待っているという鬼畜展開は小野不由美女史の猛烈な焦らしプレイなのかもしれない。

人を選ぶ作品だと思うが好きな人には忘れられない物語になるだろう。

 

 

三位  風の万里 黎明の空(1994年)

 

人は、自分の悲しみのために涙する。陽子は、慶国の玉座に就きながらも役割を果たせず、女王ゆえ信頼を得られぬ己に苦悩していた。祥瓊(しょうけい)は、芳国(ほうこく)国王である父が簒奪者(さんだつしゃ)に殺され、平穏な暮らしを失くし哭(な)いていた。そして鈴は、蓬莱(ほうらい)から辿り着いた才国(さいこく)で、苦行を強いられ泣いていた。それぞれの苦難(くるしみ)を負う少女たちは、葛藤と嫉妬と羨望を抱きながらも幸福(しあわせ)を信じて歩き出すのだが──。

 

日本人がDNAレベルで愛してやまない『暴れん坊将軍』や『水戸黄門』の黄金パターンを踏襲した熱き傑作で、『月の影 影の海』の続編にあたる。

陽子だけでなく祥瓊と鈴という三人の女性の視点で物語は進んでいく。

ラストの熱さは尋常ではなく小野不由美女史が得意とする焦らしに焦らして爆発させるという手法を、比較的短いページ数でありながら最高峰の威力で味わうことができる。

 

 

二位  図南の翼(1996年)

 

この国の王になるのは、あたし! 恭国(きようこく)は先王が斃(たお)れて27年、王不在のまま治安は乱れ、妖魔までも徘徊(はいかい)していた。首都連檣(れんしよう)に住む少女珠晶(しゆしよう)は豪商の父のもと、なに不自由ない暮らしと教育を与えられ、闊達な娘に育つ。だが、混迷深まる国を憂えた珠晶はついに決断する。「大人が行かないのなら、あたしが蓬山(ほうざん)を目指す」と──12歳の少女は、神獣麒麟(きりん)によって、王として選ばれるのか。

 

 単発の物語として評価するなら最高傑作と言っても過言ではない大傑作ロードムービー作品。なんなら十二国というシリーズに捉われることなく読んでいただきたいほどの優れた内容で人生の教訓となりうる要素が溢れている。
本編とは直接関わらないスピンオフ作品であるだけになるべく早い段階で本作を読んでしまうことをおすすめしたい。

十二国記だけでなく小野不由美女史のファンになることだろう。

 

 

一位  魔性の子(1991年)

 

どこにも、僕のいる場所はない──教育実習のため母校に戻った広瀬は、高里という生徒が気に掛かる。周囲に馴染まぬ姿が過ぎし日の自分に重なった。彼を虐(いじ)めた者が不慮の事故に遭うため、「高里は祟(たた)る」と恐れられていたが、彼を取り巻く謎は、“神隠し”を体験したことに関わっているのか。広瀬が庇おうとするなか、更なる惨劇が……。心に潜む暗部が繙(ひもと)かれる、「十二国記」戦慄の序章。

 

ゴーストハント』『屍鬼』『残穢』といった大傑作ホラーを上梓した名手による、ホラーやミステリー、ファンタジーの要素を極めて高いレベルであわせ持った偉大な1冊である。

本編から見て極めて重要なポジションに位置する作品だが、番外編だったりエピソード0と称されるだけあって単体の作品として楽しむことができる。著者がどれだけ先のことを考えて本作を書いたのは本人のみぞ知るところだろうが、『白銀の墟 玄の月』まで矛盾なく進行しているというのは著者の力量と妄想力だと思う。

私は『残穢』を読んで小野先生に惹かれ本作を読んでファンになった。

 

 

最後に

自己啓発書やビジネス本を読んでいる暇があったら、直ちにそれらを捨てて『十二国記』を読んだ方が良い。学ぶことはとても多く、至高の読書体験が待っている。

 

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